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高次元侵略

消え去れ、輝く天堂の世界よ
崩れ落ち塵と化せ、壮麗な城よ
然らば、欺瞞に盈つ神々の栄華よ
歓喜の中に滅びよ、永遠の神の輩よ
運命の綱を引きちぎれ、運命の女神達よ
昃きたまえ、神々の黄昏よ
帳を降ろせ、滅亡の夜よ
私には今、彼の星が輝く
其は我が永遠、我が遺産にして財産、一にして全
輝きのうちに愛を
笑いのうちに死を
 ――――リヒャルト・ワーグナー『ニーベルングの指環』第二夜『ジークフリート』より

滅びに直面していた人類は浅ましくも再び立ち上がり、過去の苦難もすっかり忘れて更なる高みを目指していた。
しかし、やがて人類は、宇宙そのものの寿命が著しく減少している事に気付く。ディエス・イレを始めとした時空間災害や、エーテルドライブ技術などの与える宇宙への影響が、無視できないレベルにまで達したのだ。宇宙のエントロピーは増大を続け、その先に待つのは熱的死という結末のみ。
それでも人類は、こういった危機に幾度となく立ち向かい、克服してきた。今回も同様に繰り返す。宇宙が死ぬと言うのなら、それより外に行けばよい。
即ち、高次空間への侵攻である。
観測結果によれば、そのような空間は確かに存在し、20世紀頃までは地球に対しても干渉していた形跡があった。

ティエラ?はこれを止めようとしていたのだが、今や止める者はいなかった。

やがて人類はアスガルドへ到達する。
そこに住んでいた奇妙な生物のようなものを兵器によって薙ぎ払い、侵攻。数えきれない量の弾が飛び交い、計りきれない量の血が流れた。
虹の橋を渡り、辿り着いた先は、アスガルドの中央に鎮座する宮殿ヴァルハラ。そこに残されていた記録の断片は、それまで人が知る由もなかった事実であった。

神の高座フリズスキャルヴで、人類はウォーグ達と相見える。
語られざる歴史を、そしてここに来てしまった以上、人はもはや滅びから逃れ得ない事を語り、彼らは“世界”と称した光の球体を人類に渡し、その行く末を決めるように命ずる。
そして“世界”は、人の手によって砕かれた。


人類は、人類の手で、歴史に幕を引いた。
神の領域に足を踏み入れた代償は、全宇宙の崩壊によって贖われるだろう。
だが、すべてが消滅に向かう今、人類は初めて、何者にも支配されず、管理も、監視もされず、ひとつの自由な種として存在している。
それはきっと、誇るべきことだ。
最終更新:2014年05月31日 05:39