ラクシアでも有数の巨大な大陸。神紀文明時代から人族、蛮族ともにさまざまな文化を築いてきた歴史の古い土地。
古くから人族と蛮族の争いの舞台となっており、たくさんの国が興っては滅びている。かつての”大破局”でもこの大陸は文明を完膚無きまでに破壊されてしまった。
それから300年。人族は蛮族と戦い、領土を取り戻すことに成功した。”守りの剣”を持つ国々は復興し、おおむね文化的な生活が送れるようになっている。文明レベルは、我々の世界の17世紀ほどであり、魔法の存在によって科学はほとんど発展していない。
政治も王侯貴族が国家を収める場合が多く、封建制が主流である。ただし、一部では先代文明「魔動機文明アル・メナス」の技術や知識を継承し、共和制を敷いている場合もある。
現在、人族たちはかつての蛮族の土地であった地域へも足をのばしており、確実に勢力を高めてきている。
しかし、今でも蛮族や危険な幻獣は数多く存在している。”大破局”で滅び、文化を失ったほとんどの地域は、いまだに復興できずに野放しにされた状態だ。そうした場所は平和とは無縁の土地といえる。
テラスティア大陸は復興に向けて歩き出したばかりなのだ。
結構でかい大陸だけど地方で分かれてたり未実装だったりします。
ザルツ地方
テラスティア大陸北部に位置する、温暖な気候とはっきりとした四季で過ごしやすい地方である。
しかし、海を隔てた北には蛮族の勢力圏である北の大陸レーゼルドーンが存在し、また西にもかつて蛮族が栄えた地域があり、今なお方々から襲ってくる蛮族との争いが頻発している。ほかの地域と同様に、平和であるとは言えない状態なのだ。
この地方では交易共通語のほかに、ザルツ語という地方語がよく使われている。
大陸北部に位置するザルツ地方には、大小合わせて5つの国家が存在する。テラスティア大陸の中でも比較的平和な地方であり、都市周辺に蛮族が現れることは稀である。
しかしひとたび都市部を離れると危険なことには変わらない。”大破局”の影響はこの地方にも多く見られ、さまざまな怪異や危険、そして隠された遺産や財宝が眠っていると考えられている。
”ザルツの要塞”ルキスラ帝国
皇帝ユリウス・クラウゼ(28歳)が治める、ザルツ地方最大の勢力を誇る帝国。同名の首都には約8万もの人が住んでいる。
"大破局"以前はいち地方都市だったが、この街を守った英雄によってひとつの国となり、今に至る。いまでは人材も資源も豊富で、帝国内には治安のいい城塞都市がいくつも存在する。
もちろん、蛮族に備えて戦力強化も積極的に行われており、ルキスラが誇る”蒼鷲騎士団”はザルツ地方一の兵力を誇る騎士団と言える。
騎士団育成の他にも、国力を高められそうな遺失文化の取入れにも積極的だ。そのため、よく遺跡探索に出かける冒険者を手厚くもてなすことでも有名。つい先日も、冒険者が発掘してきたアル・メナス時代の飛空艇の核を高額で買い取り、現在飛空艇を建造しているという話題がザルツ地方中を駆け巡った。
また、ルキスラはザルツ地方全体で結ばれている対蛮族同盟の盟主国でもある。”大破局”の折、蛮族によって危うく滅ぼされそうになった隣国たちに力を貸し、人族の領土を守る大役を果たしたことは有名な話であり、それが同盟発足の発端となっている。
かつては隣国ダーレスブルグとフェンディルを併合し、ザルツ地方のほとんどを勢力下に置いていたが、100年前に大規模な帝位継承争いが起こり、内戦で国力が弱まった際に2国は独立した。現在はその2国と同盟関係にある。
しかし、若くして即位したユリウス皇帝は野心が強く、国力が回復しつつあるいま、ダーレスブルグを再併合しようともくろんでいるのではないかと噂されている。
ルキスラは近隣の国家からもっとも頼りにされ、同時にもっとも恐れられている国なのだ。
守りの剣:8本
”橋の国”ダーレスブルグ
ルキスラ帝国から北へ徒歩7日の距離にある、テラスティア大陸最北の都市国家。人口は約4万人で、アルフレートⅢ世(66歳)によって治められている。
北の大陸レーゼルドーンへと繋がる巨大で頑丈な橋を塞ぐように広がる城塞都市であり、北へ向かう冒険者の拠点となっている。
もともとは2大陸にまたがる大国だったが、”大破局”の折に蛮族によって国土の大半を占めるレーゼルドーン大陸部分が奪われてしまった。また、それ以上蛮族に侵略されないためにルキスラの力を借りたことをきっかけに、ルキスラに併合されていた時期もあったが、100年前に独立を果たし、現在に至る。
現在、橋を封じていた門は開放されている。約20年前、国の安全が確保されるに連れて増えてきた人口を収める広い国土を得るために開放された。また、レーゼルドーンに眠る過去の遺産も魅力的で、橋が開放された後は多くの開拓者や冒険者が出入りし、活気づいたのは確かだ。
しかし、北にはまだまだ蛮族の脅威があるのは事実であり、橋の開放以来、積極的に北へ開拓に出ようという「開放派」と、あくまで門を閉ざして蛮族に備えるべきと唱える「保守派」に国家は分かれている。いまだ意見の合致は見られていないが、なし崩し的に開拓は進んでいる。
王城には国家の象徴とも言われている”守りの剣”ファランダレスが安置されている。
守りの剣:6本
”花の国”フェンディル王国
ザルツ地方ではもっとも古くからあると言われている国。”双子姫”コークル(14歳)とラフェンサ(14歳)によって治められている。
ルキスラより西へ5日の距離に位置し、首都ディルクールには約3万人の人が暮らしている。
かつては西へ広がる魔法文化で栄えた大国だったが、大魔術の失敗や蛮族の侵攻など、さまざまな要因で国土は狭まり、”大破局”を経て現在の大きさとなった。
この国は魔法文明時代の遺跡が数多く残っていることで有名である。中でも世界有数の巨大な遺跡群がある丘はよく知られており、そこは年中花が咲き乱れることから、”花の国”の異名がつけられた。
また、現在でも魔法文明時代の知識を継承していることでも知られており、その独特な文化が織り成す芸術品は高値で取引されている。
フェンディルは遺跡と芸術、その他の歓楽で栄えており、冒険者や学生が多く訪れる。一部の金持ちなどが観光に来るほどだ。
また、フェンディル郊外にはルーンフォークの里が多くあるので、他国に比べてルーンフォークが多く住むことでも有名。
守りの剣:5本(首都ディルクール)
”彩りの国”ロシレッタ
ルキスラより北西へ徒歩10日の距離にある、ザルツ地方で最も小さな国。海辺にあり、約1万5000の人々が住む港町を中心に栄えている。
ロシレッタは世界的にも珍しい、人間、エルフ、ドワーフが同じ割合で暮らしている国である。かつては近くにエルフの国とドワーフの国があったのだが、”大破局”によって滅ぼされてしまった。この国は、それらの国の生き残った者たちが集まって興った国である。
3つの種族が住むことで、ロシレッタには独自の文化が築かれている。ドワーフが武器を作り、エルフが船を造り、人間が商売することで、ロシレッタは栄えている。おもな貿易相手は大陸西部に位置するレンドリフト王国で、1日に数便の船が出港している。
しかし、3つの種族が混在することで意見がまとまらない場合も多々ある。ロシレッタは議会制で統治されているが、何か問題が起こった時でもそれぞれの種族の代表が、ほかの種族に面倒事を押し付けようとするのでなかなか議決が出されないのだ。
そのため、国が解決すべき問題でも冒険者たちに依頼することがよくある。
守りの剣:3本
ルキスラ帝国周辺の都市
バーレス
ルキスラ帝国に属する城塞都市で、帝都から北に2日の距離に位置する。
人口は約5000人で、精強な兵団を要することで知られている。ダーレスブルグとの実質的な国境となっており、北へ向かう冒険者の通過点にもなっている。
近年周辺に現れる蛮族の数が増えており、警備に立つ兵士たちの間では緊張感が高まっている。
守りの剣:2本
アルドレア
ルキスラ帝国に属する城塞都市で、帝都から西へ1日半ばかり歩いた位置に存在する。
ルキスラ第二の都市であり、約8000人の住民が暮らしています。ロシレッタとフェンディルへ向かう街道上にあり、交易都市として賑わっている。港も有し、ロシレッタへの船便も出ている。
守りの剣:4本
ディザ
ルキスラ帝国に属する城塞都市で、帝都から1日半ばかり南下した場所に存在する。人口は約7000人。
神へのきざはしから注ぐローラ川とオッド山脈から流れてくるナルア川が合流する肥沃な土地を利用した穀倉地帯を有し、ルキスラの食料生産の大半を担っています。またローラ川にかけられた巨大な跳ね橋は有名で、帝国の南の守りの要ともなっています。
守りの剣:3本
クーデリア侯爵領
カプティ山岳のふもととギザギザ海岸が接する辺りを自治領とする、ルキスラの貴族、クーデリア侯爵の領地。
人口は約6000人程度で、ルキスラの皇帝から自治を任されている。しかし現在の領主カデル・クーデリア侯爵(38歳)はほとんど領地から出ることもなく、それどころか人前にも姿を現さないと言われている。
ギザギザ海岸ではたびたび蛮族の船が行き来するのを目撃されており、侯爵と蛮族の間でなにか取引が行われているのではないかと噂されている。
帝国の監視が及ばないこともあり、犯罪の温床にもなっている。その治安の悪さから、自治権を剥奪するよう皇帝に進言する者も、帝国内に増えてきている。
守りの剣:2本
自由都市同盟
ザルツ地方南部に位置する都市国家群の同盟。6つの都市国家からなり、蛮族の攻撃に対抗する形で結束された。広大な穀倉地帯を有し、ザルツ地方の食糧庫とも言われている。同盟の総人口は約4万。同盟議長はヘルミン・カルツ(45歳)。
しかし蛮族の組織的な攻撃がなくなると、今度は各都市国家同士でもめ事が絶えなくなっており、このままではいつルキスラに征服されるかわからない状態となっている。
西端の町から時計回りに、エイラス(約3000人)、バーリント(約1万人)、セシュ(約6000人)、ドランバル(約7000人)、イルマー(約5000人)、フットランド(約9000人)と呼ばれている。近年は蛮族という共通の敵の襲撃が少なくなったこともあり、各都市のエゴが目立つようになった。そのため同盟間の関係がギクシャクし始めている。特に交易路に直結しているバーリントに富が集中するのが不満の原因となっているようだ。
守りの剣: ロシレッタ:3本 エイラス:1本 バーリント:2本 セシュ:1本 イルマー:1本 フットランド:1本
種族―ラクシアに生きる者たち
剣が作りし世界、ラクシア。
この世界には、多種多様な生き物が暮らしています。その中でも知性を持ち、文化や勢力を形成している種族について解説します。
人族
人間
ラクシアでもっとも多く見られる種族で、最初に生まれた人族だと言われています。
平均的な能力を持つ人間たちですが、住む地方によって若干の差異は見られます。テラスティア大陸の北部では肌や髪の色素が濃く、黒髪や茶髪などが多く見られます。南部では色素が薄く背が高い人々が多く、金髪で緑や青の瞳をしています。
ほとんどの場合大きな集落を形成し、防壁を巡らせた城塞都市を作って暮らしています。始祖神ライフォス、太陽神ティダン、騎士神ザイアを信仰する者が多くみられます。
エルフ
神話の時代、妖精神アステリアによって剣の加護を与えられ、誕生した種族と考えられています。その数はあまり多くなく、人族の街ではたまに見かける程度です。
身長は人間よりやや高く、男性で平均180㎝、女性で170㎝程度あります。神は金髪や銀髪、薄い茶色などが多く、ほとんどのエルフが色白で華奢な体格をしています。
エルフたちは木々の豊富な川辺や湖畔に住み、優美な木造の家屋を建てて暮らしています。自然と調和することを好むため、その集落は完全に森の風景に溶け込んでいることもあります。
エルフは海水をあまり好みませんが、海辺に集落を作る者もまれに存在します。そうしたエルフは特にギルマン(⇒『I』344頁」)とは敵対関係にあり、海辺の集落は常に戦いの危険をはらんでいます。また海辺に暮らすエルフは、茶褐色の肌を持ち、陽気な性格をしています。
湖に浮かぶ離れ小島などに集落を作ることもあり、水中まで続く住まいや倉庫を作る者もいます。音楽や絵画、細工物などの芸術にも高い才能を示し、魔術を学ぶことも好みます。ただし魔動機文明時代はあまり人間と交流しなかったため、魔動機術に関してはほとんど知識を持ちません。
長い寿命を持つエルフは、あまり精密な時間感覚を持たず、のんびりしています。その一方で好奇心が強く、気まぐれに慣れ親しんだ集落を出ることもあります。魔法や弓の扱いに長けており、その腕前は危険な荒野や森を旅するのに十分と言えるでしょう。
主に妖精神アステリアを信仰していますが、太陽神ティダンや知識神キルヒアを信仰する者も多くみられます。
ドワーフ
神話の時代、炎武帝グレンダールによって剣の加護を与えられ、誕生した種族と考えられています。
身長は人間より若干低く、男性で平均150㎝、女性で140㎝程度です。肌は褐色や焦げ茶などの濃い色合いが多く、髪は赤や銀、ときには緑やピンクなどの奇抜な色も見られます。背は低いものの頑丈な骨格と強靭な筋肉を持ち、非常にタフで力持ちです。
なんでも鍛えることに喜びを見いだすドワーフは、清貧をこの身、自ら厳しい環境を選んで集落を作る習性があります。また武器などを鍛えることも好むため、よい鉱脈のある山岳地帯でその集落はよく見られるでしょう。
ドワーフの集落は石造り、あるいは廃坑を利用した地下都市です。しかし職人以外はあまり定住せず、己を鍛えるために傭兵となったり、武器商人となって各地を練り歩きます。ドワーフ傭兵の存在は有名で、どんな過酷な環境でも不平を言わず戦い、契約を守ることを誇りとする彼らは高く評価されています。
そうした理由から人間の街でもドワーフはたびたび見受けられ、鍛冶屋を営んでいることもよくあります。また高火力のかまどを使った豪快なドワーフ料理は人間にも人気があり、そのことでも有名です(手の込んだソースを多用するコボルド(『I』⇒340頁)の料理人とは、ライバル関係にあります)。酒豪としても知られ、酔うと陽気になります。また、酔い潰れることはまずありません。
ドワーフは総じて義理堅く、時間に正確で約束を守り、欲が薄い性格をしています。反面、頑固で自説を曲げないことでも知られ、時に扱いにくい連中とも考えられています。時間間隔の違いから、エルフとはトラブルを起こしがちです。
ドワーフは戦士以外にも、魔動機術や神官に才能を見い出す者もいます。ですがその他の魔法に関しては、あまり興味を持ちません。
主に炎武帝グレンダールを信仰していますが、騎士神ザイアの信者も多く見られます。
タビット
出自のまったくわからない、不思議な種族です。タビットたちは自分たちの事を「神々の戦いで死んでしまい、呪いを受けた神の転生した姿」とよく主張しますが、真偽はいまだ定かではありません。その数はあまり多くありませんが、人間の街々を旅している者が多く、特に学問の盛んな街ではよく見かけます。
身長は頭頂部で約1m程度。耳を入れても120㎝ほどです。手足は短く、歩く姿はユーモラスですらあります。全身はふわふわした体毛で覆われ、その色は白や褐色、黒などさまざまです。雑食でなんでも食べますが、肉より野菜を好みます。
タビットはあまり定住せず、独自の集落を持ちません。大学や魔術師ギルドのある街に長期滞在することはありますが、研究が一段落すれば次の街へ向かう場合がほとんどです。
子供も自分で判断できる年齢(5~6歳)になれば放り出すか、自分の助手として扱うようになります。高い知能と深い知識を持ちますが、死ぬまでどこか子供っぽいところもあり、気弱な者が多いくせに自己中心的です。
卓越した魔法の才能を有しますが、神々の声だけは聞くことができず、神聖魔法だけは使えません。それを根拠に、自分たちを「呪われた神の末裔」と考えています(タビットたち自身の中にも、これに異論を呈する者は多数存在します)。
自分たちが不器用で力がなく、のろまであることはよく認識しており、旅をするときは人間やドワーフなどと共に行動します。協調性がないわけではありませんが、興味のあるものを前にすると我を忘れてしまうところがあります。
ルーンフォーク
魔動機文明時代に作り出された、人造人間です。かつてはかなり多数存在したようですが、<大破局>時の戦いに矢面に立たされ、その数を大きく減じました。
ルーンフォークは自分たちを生み出すジェネレーターを中心に集落を作り、仕えるべき相手を求めて旅に出ます。まれにルーンフォークのジェネレーターを持つ人間の街も存在し、共存、あるいは管理されている場合もあります。
彼らは人間によって作られたゆえか、神の声が聞こえず、妖精の姿を見ることもできません。そのため、ルーンフォークには魂がないのではないかという議論が、昔からなされてきました。ですがいまだに答えは出ていません。このことについて、大半のルーンフォークはあまり気にしていません。ただ、中には哲学者を気取る者もいるようです。
かつては人間に対して完全に服従していたルーンフォークたちですが、<大破局>以降はジェネレーターの故障や調整不足から強い自我を持つ者や自立しようとする者も増えました。ごくまれにですが、蛮族に仕える者もいるようです。
魔動機文明時代には人間よりも下位の存在として扱われていましたが、現在では共に蛮族と戦う仲間としておおむね対等に扱われています。
その出自ゆえに忠誠心に篤く、一度主人と決めた相手を裏切ることはまずありません。物静かで口数少ない者が多いようですが、個体ごとの個性は千差万別であり、いろいろなタイプが存在します。
ナイトメア
胎児に穢れた魂が宿ると生まれると言われ、忌み子として忌避されることもある種族です。その数は極めて少なく、ほとんど見られることはありません。しかしその原因のひとつとして、生まれてすぐ捨てられたり、本人たちが素性を隠しているため、出会う率が低いとも考えられています。角が出生時に母体を傷つけ、それが原因で命を落とす母親も多いことから、癒し手の少ない田舎ほど忌避される傾向があります。
なお、ナイトメアはリルドラケンの卵から誕生することもあり、この場合のみ特に忌避されることなく育てられます。ナイトメアの角は卵を内側から割るのに適しており、母体を傷つけることもないリルドラケンには“変わった子供”程度の認識で育てられます。
ナイトメアはどの種族から生まれても、同じ姿になります。身長は人間よりやや高く、エルフと同じくらいです。引き締まった体格で、普段の肌は青白く、全体的に色素が薄く感じられます。
ナイトメアは個体数が少なく、独自の集落を形成することはありません。そのため独自の文化を持たず、育った環境でその性格や価値観も変化します。
不幸な生い立ちゆえにひねくれて悪事に走る者も数多くいますが、信仰に救いを求める者もいます。また魔法に対して優れた適正を持つため、優秀な冒険者となる者も多数存在します。実力主義の冒険者の世界こそ、彼らにとっては安住の地とも言えるでしょう。
リルドラケン
直立した小型のドラゴンです。
ドラゴンは、本来人族より古くから存在した知的生命体でしたが、その腕は剣を持つには適さず、始まりの剣の持ち手とはなりませんでした。ですが人族が生まれ、始まりの剣の持ち手となり、さまざまな文化や道具が生まれるにつれ、ドラゴンの一部にそうしたものを利用しようと考える者が現れたのです。そうした一部のドラゴンがある日、ついに剣の加護を得て、現在の姿になったと伝説には語られています。
小型とはいえ、リルドラケンの身長は2mを下回ることはまずありません。長い尻尾と大きな翼のために、さらに大柄に見えます。全身は鱗で覆われ、男女で外見の差がほとんどありません。鱗の色は青や緑などの寒色系が基本ですが、中には紫や赤、複数の色を持つ者なども存在します。頭髪やたてがみのような毛を持つ者もよく見られます。
リルドラケンは古い時代から独自の国家を築き、他の種族と交流してきました(古代魔法文明時代の文献に、記録があります)。もっとも強く賢明な王を中心に国家を形成することが多く、交易を国策の中心において世界中を旅しています。
その性格は見た目に反して温厚かつ陽気で、人見知りをしません。優れた体格を生かして武人となる者も多く、隊商の護衛を務める姿はよく見られます。
他種族の文化を受け入れることにも躊躇がなく、彼らの街は人間やドワーフの建築士が建てた壮麗な石造りの建物が並び、エルフらの織物などで飾られています。
リルドラケンは卵生であり、一度に1個、生涯に数個の卵を産みます。親子の感情は希薄で、卵は多くの場合孵化専門の施設で育てられます。同時期に生まれた子供は兄弟のように育てられ、同じ集落や街で生まれた同士はみな家族と考えています。
リルドラケンは基本的に肉食で、生肉でも消化でkますが、他種族との交流が長い影響かなんでも食べます。酒好きですが、飲みすぎると寝てしまう者が大半のようです。
始祖神ライフォス、風来神ル=ロウド、酒幸神サカロスなどを信仰し、商売繁盛を祈願します。
グラスランナー
いつのまにか、どこからかラクシアに現れた種族です。その出自には謎が多く、古代魔法文明時代の記録にはまったく存在していません。現在でもあまり数は多くありませんが、放浪を好むことからあちこちで見受けられます。
身長は1m前後で、人間の子供によく似た体形をしています。髪の色は黒や褐色、肌も黒みがかかった濃い色をしています。耳が若干尖っていることで、人間の子供と見分けられるでしょう。
グラスランナーは定住せず、常に放浪しています(子供を産むときだけ、しばし足を止めます)。旅の目的は特になく、気の向くままに行動します。その影響か所有物に関する倫理観が若干いい加減で、目に付いたものを勝手に持っていく悪癖は有名です。
元来能天気な性格で、悩んだり過去を悔いるといったこともほとんどしません。記録を残す風習もないため、彼ら自身も自分たちのルーツは知りません(興味もないようです)。
マナに反応しにくいという特異な体質を持ち、魔法を扱うのが極めて苦手です。反面魔法にかかりにくいという特徴もあります。
なぜか地下迷宮や古代遺跡でデーモンと一緒にいるところがしばしば目撃されており、デーモンとの因果関係を研究する学者もいます。
手先の器用さや素早さを生かし、優秀なスカウトやレンジャーになりますが、逆に魔法を学ぶものはほとんどいません。
蛮族
妖魔
コボルド、ゴブリン、ボガードなど、妖魔語を主言語とする蛮族たちのことを、特に妖魔と呼びます。
彼らは蛮族の中でも最も数が多く、よく見られる存在です。全体的に知能が低く、好戦的で残忍ですが、劣勢になればすぐに逃げ出す者も少なくありません。
数は多いものの統制は取れておらず、腕のいい冒険者の前では烏合の衆と言えるでしょう。しかし強力なリーダーに統率されている場合、その数の多さはそのまま脅威となります。総じて強いものに従う習性を持つため、ドレイクやバジリスクの配下となって働いていることは少なくありません。
基本的に大した力を持たない妖魔ですが、ときにずば抜けて優秀な個体が現れることもあります。特にボガード種にはよく見られ、そうした存在は熟練冒険者にとっても脅威となります。
妖魔の多くは短命で、生まれて5年もすれば大人と同じように扱われます。30年以上生きるものはまれで、ほとんどはもっと若いうちに戦いの中で命を落とします。
トロール
蛮族の中でも異彩を放つ種族のひとつが、トロールです。
彼らは強靭な肉体と卓越した戦闘技術を有し、極めて旺盛な戦闘意欲を持っています。ですが他の蛮族と異なり、残虐な行為や無意味な殺戮を好みません。
強い者がリーダーとなる蛮族の基本的な階級構造は変わりませんが、己の力を振りかざすことをよしとはせず、必要なとき以外は無駄に動きません。たとえ人族であっても、弱い相手ならば見逃すことはよくあります。
逆に強い相手と出会ったときは、旺盛な戦闘意欲を見せます。彼らにとって強い相手と戦う事こそが生きがいであり、全力で戦って相手を殺すことこそ至上の喜びなのです。
ほとんどのトロールが熱心なダルクレム信者であり常に最高の敵を求めています。またドレイクとは古来より盟約があるらしく、その要請を受けて戦場に赴くこともあります。
彼らの寿命は長くとも300年程度と考えられており、200歳程度で肉体的なピークを迎えると言われています。
ドレイク
蛮族の中でも、特に力を持つ存在として知られるのがドレイクです。
他の蛮族を従える強力なカリスマと、それに見合う実力を持ち、多くの場合が強力な軍勢を従えています。地上の覇者たらんとする野心が強く、常に人族の領域へ陰謀を巡らしています。
知能は極めて高く、好戦的な蛮族の中にあって冷静沈着で深慮遠謀に長けています。ときには人族へ魅力的な代価を提示し、協力者として抱き込むことさえします。
ドレイクは不老なうえに極めて長命な種族であり、その寿命は1000年を超えると言われています。その能力も年齢と共に高まり、ドレイクの古老ともなればとてつもない強さを秘めています。
多くは<大破局>の際に倒されましたが、いまなお世界中で強力なドレイクたちが野心を満たすべく牙を研いでいます。ドレイクたちはプライドが高く、互いに協力することはまれですが、そんな彼らを束ねるドレイクの“王”が現れれば、再び世界に危機が訪れるかもしれません。
バジリスク
ドレイクと双璧を成す強力な蛮族のひとつが、このバジリスクです。
強力な石化の魔力をその瞳に秘め、流れる血は猛毒という危険な存在であり、しかもその性格は残忍かつ好戦的で狡猾です。
ドレイクと違い、領土や勢力を増やそうという野心には乏しい反面、自分の快楽や楽しみのために侵略や殺戮、略奪を行います。ただし自ら動くことを好まず、配下を使って物事を進めるのが普通です。
バジリスクは財宝を集めることを好み、怠惰で勤勉さとは無縁の存在です。自らを蛮族の中の貴族と考えており、自分のために他者が働くのは当然のことと受け止めています。人族の事も見下しており、油断することもしばしばです。ただし美しい人族を愛でる趣味もあり、老いる前に石像にしてコレクションする者もいます。
同じ蛮族の陣営ではありますが、バジリスクはドレイクとあまり仲が良くありません。バジリスクはドレイクのことを生真面目な威張りやと考えており、逆にドレイクはバジリスクのことを気まぐれでいい加減な存在と考えているためです。そのため、このふたつの種族が同盟を組むという悪夢は滅多に起こることではありません。
ドレイクと同様に変身する能力を有しますが、バジリスクは変身すると知性が下がり、獰猛な獣のようになってしまいます。そのことから、バジリスクはもともと幻獣で、人型に変身する能力を有して蛮族となったという説もあります。
バジリスクもかなりの長命種と考えられ、500年以上生きたという記録があります。
ノスフェラトゥ
ノスフェラトゥは蛮族の中でも特に謎めいた存在として知られています。
“不死者”の異名通り、彼らは寿命を持ちません。強力な再生能力や多数の特殊能力を有し、その戦闘力はドレイクやバジリスク以上とも言われています。
ただし致命的な弱点も多数あり、基本的に他者の血を吸わねば生きていけません。それゆえ“吸血鬼”という呼び名でも知られています。また太陽の光も致命的な弱点の一つで、その活動時間は制限されています。
ノスフェラトゥは魂の“穢れ”を極限まで高め、紙一重でアンデッドにはなっていない種族と考えられています。彼らは生殖行為によって子を成すことはせず、ほとんどの場合人族に“血の接吻”と呼ばれる儀式を施して一族へ引き入れます。
積極的に他の蛮族と関わることはありませんが、<大破局>の際は戦いに参加していました。多くの蛮族がアンデッドを嫌っていますが、ノスフェラトゥはアンデッドをしもべとし、軍勢として率いることさえあります。
美しい異性の人族を最高の獲物と考えることから、人里近くの廃墟や、ときには大胆にも人族の都市に潜んでいることがあります。また特に強い“穢れ”を持つことから“守りの剣”を嫌悪しており、人族を操ってこれを破壊しようと画策することもあります。
ハーフについて
人間だけは、さまざまな種族との間に子供を儲けることができます。これを、人間からエルフやドワーフといった種族が派生していったことの証拠だと考えている学者もいます。
人間は、エルフ、ドワーフと子供を作ることができます。生まれてくる子供は、両親のどちらかと同じ姿、能力となります(例:人間とエルフが子供を作る場合、生まれてくるのは人間かエルフです)。
またナイトメアは、出自と同じ血筋と考えてください。人間とエルフ生まれのナイトメアの間からは、人間かエルフが生まれることになります(リルドラケン生まれのナイトメアとは、子供を作れません)。
過去に血が混じっていた場合、まれにですが人間同士からエルフやドワーフが生まれることもあります。またナイトメアは、どのような場合でも極めて低い確率で生まれてきます。
なお、滅多にあることではありませんが、人間やナイトメアと、蛮族の間にも子供が生まれることがあります。ミノタウロスなどは人間と交わることで子供を成すとも言われていますが、真偽は確かめられてはいません。
施設と設備―ラクシアでの冒険
盗賊ギルド
大きな都市になれば、非合法な行為を行う者たちの相互補助組織、盗賊ギルドが存在します。盗賊ギルドは裏の社会を束ねる組織で、都市の規模によっては複数存在することもあります。
ギルドに所属するのは、いわゆる犯罪者です。盗賊や強盗、麻薬密売人、暗殺者、人身売買などの非合法活動をする者たちが所属し、情報交換を行ったり相互に仕事を助けるなどしています。
国家にとっても盗賊ギルドは本来取締の対象ですが、さまざまな取引によって犯罪者の動きをコントロールすることが可能なため、存在を黙認している場合も多々あります(盗賊ギルドを撲滅しようとする国家もあります)。
盗賊ギルドのありか
犯罪組織である盗賊ギルドが、看板を上げて店を開いているわけはありません。普通、酒場や賭博場などに偽装しています。
そうした店舗の裏や地下にギルドの施設は存在し、合言葉を告げることで通してくれるのが普通です。合言葉も、普通の会話を装うようなものがほとんどです(例:客「上等なワインをくれ」→店主「うちは安いのしかないよ」→客「じゃあ冷えたエールだ」→出てきたエールを一口飲む→客「こんな馬のションベンみたいなエールが飲めるか」→店主「お客さん、奥で話しましょうか」)。
こうした店のありかは、ある程度信用を得ていれば、冒険者の店で教えてもらうことができます(普通は情報量として50~100G程度取られます。)
冒険者と盗賊ギルドの関わり
普通の冒険者にとって、あまり関わり合いになる組織ではありません。ですが彼らは裏の情報に精通しており、盗賊ギルドでしか得られない秘密情報も存在します。
盗賊ギルドへ接触することに成功すれば、会員になることで裏情報を買うことができます。会員になるには、相場で1000Gが必要です。もちろん、個々の情報を買うにもお金はかかります。信憑性や新鮮さで値段は変わり、最低でも100G程度は取られます。より正確で新鮮、かつ重要な情報となれば、値段は天井知らずです。チンピラの隠れ家なら100Gくらいで情報を得られますが、貴族の愛人の素性ともなれば500Gは下らないでしょう。数十万Gが動く大きな取引の情報や、国家機密に関わることならば、軽く1000Gを超えます。
なお、冒険者の店と盗賊ギルドはゆるやかに共存しており、積極的に交流することはまれですが、情報交換や貴重な品の売買などを行うことはあります。
冒険者が盗賊ギルドに所属するかどうかは、プレイヤーしだいです(GMと相談して決めてください)。その場合、習得している技能が問われることはありません。
有名な盗賊ギルド
帝都ルキスラに存在する「闇夜の鷹」は数百人の犯罪者を束ねており、規模ではザルツ地方最大です。またクーデリア侯爵領を本拠に置く「デスクリムゾン」は麻薬密売、人身売買、強盗殺人なども平気で行う危険な犯罪者集団として知られています(蛮族との繋がりも噂されています)。
飛行船
ラクシアにおける極めて貴重な魔法の品、その中でも筆頭格と言えるのが空飛ぶ船―飛行船です。
魔動機文明時代、世界の国々は飛行船の航路によって結ばれ、自由に行き来できました。最盛期には相当な数が飛び交い、一般人でもちょっと贅沢すれば乗ることができる交通手段だったのです。
ですが現在では船を浮かせるための魔動核を作る技術は失われており、魔動機文明時代から伝わるものや、発掘されたものを使用して飛行船を作っています。
その形状はさまざまですが、多くの場合は普通の船を改造し、魔動核を取り付けて使用します。魔動核があれば自在に空中を移動できますが、そのためには燃料として魔晶石が必要となります。なので推進装置として帆を使い、魔晶石の消費を抑えているのです。
魔動核の能力にも種類があり、核単体の力で浮かぶもの、核に触れた空気をより軽い気体に変えて風船状の船体を浮かすものなどが知られています。風船状の船体のほうが低燃費ですが、積載量が少なく速度が遅い点が弱点となります。
飛行船は、国家や豪商でなければ簡単に所有できない、非常に高価で珍しい存在です。それだけに遺跡から飛行船用の魔動核を発見してくれば、莫大な金額で買い取ってもらえるでしょう。
比較的よく見られる中型飛行船で、人間なら50人ぐらいは運べます。小型ならば10人まで、逆に大型は人間100人を超える重さの荷物も運ぶことができます。そのため、多数の飛行船を持つ国家は貿易などで栄え、同時に隣国にとっては上空から攻められるのではないかと、脅威を覚えるようになるのが普通です。
現在でも飛行船を使って他国と貿易や交流を行っている国家は存在し、運賃を支払えば乗船することも可能です。運賃は最低で500G、乗客扱いしてくれるのは5000G以上というのが相場のようです。
ベテラン冒険者たち
冒険者レベルが5に到達した冒険者は、ひとかどの人物として人々に名が知られるようになっているはずです。そして7レベルを超える者は、もはやベテランとして注目されるようになるでしょう。
ここでは、そうしたベテラン冒険者が挑む冒険や生活などを紹介します。
困難な冒険へ
駆け出しの冒険者の仕事は、ほとんどの場合都市部周辺の遺跡や廃墟の探索、低レベルな蛮族の退治が中心となります。ですがベテランともなれば、人跡未踏の領域へと踏み込み、新たな冒険と発見を求めて前進していくことになります。
テラスティア大陸でさえ、人族が安全に暮らせる領域は限られています。ベテラン冒険者は積極的に蛮族の領域へ足をふみれ、より強力な蛮族のリーダーや王を倒し、駆逐します。
またそうした先に存在する遺跡や廃墟を発見し、探索することにもなります。ベテラン冒険者が道を切り開けば、そこには探し屋がやってきて、取りこぼした遺跡や廃墟を発見し、後続のより未熟な冒険者たちへその情報を売るようになるでしょう。その頃には、さらに危険な領域へ進んでいるのが、より熟練した冒険者の矜恃とも考えられています。
権力者との繋がり
7レベルを超える冒険者には、貴族や神殿、大商人などがスポンサーにつくことがあります。冒険者に出資を行い、優先的に先史文明の遺産を手に入れようとするからです。
集めた名声、名誉によって、住居や領地、爵位などを得る冒険者もいます。こうなってくると、若干自由度は失われ、出資者の依頼を優先的に受けるようになります。ときには実力を過大評価され、無理難題を依頼されることもあるでしょう(名声のためだけに強大な魔物の退治を依頼されたり、極めて危険な領域への探索を命じられたり)。
ですがうまく立ち回ることで、冒険者を引退して国家の要職につくことも可能となります。
自分の国を築く
10レベルを超え、15レベルに到達するほどの冒険者となれば、蛮族を放逐した領域に自分の国を打ち立てることも不可能ではないでしょう。
自分の国を切り開くのは、生半可なことではありません。ですが10レベルを超える冒険者の英雄的な活躍は広く知られており、さまざまな協力者が集まってきます。勇名を聞きつけ、従者や配下を希望する者も現れるかもしれません。
優秀かつ強い人物には、人々も集まってきます。実力を示し続ける限り、その国は大きくなり、成長を続けるでしょう。未探査の遺跡が周辺に多いとなれば、新たに冒険者の店ができるのも時間の問題です。
もちろん、そうした新しい国は蛮族にとって格好の標的となります。また冒険者としての名声を元に国を興すことをよしとしない国家が近隣に存在するかもしれません。そうなれば、いち冒険者だった頃以上に忙しく戦うことが求められるはずです。
自分の国を造ったからといって、簡単に引退したり安らいだりできないのがこの時代であり、冒険者なのです。
NPC―ザルツ地方に関わる有名人たち
ここでは、ザルツ地方で知られている有名な人物を紹介します。これらのNPCを登場させてシナリオを盛り上げたり、世界の雰囲気を掴むために活用してください。
こうしたNPCを依頼人として登場させたり、あるいは敵対するグループのリーダーや黒幕として活用するのも有効でしょう。
もちろんGMはこれら以外の人物を自由に設定し、シナリオに登場させることができます。ここに紹介されているNPCも、GMが必要に応じて性格や年齢などを変更して構いません。
“野心の皇帝”ユリウス・クラウゼ(人間/男/28歳)
「野望?ふふ。大なり小なり、誰だって持つものだろう?」
ルキスラ帝国を治める若き皇帝です。
口調は丁寧で物腰も穏やかですが、非常に野心的で秘密主義であり、めったに本心を口にすることはありません。国を大きくするために兵力の増強や、失われた文明の遺物の収集を積極的に行っています。特にいまは、大型飛行船の建造に力を入れています。
先代の皇帝が病に倒れた時、彼の義理の兄が不慮の事故で亡くなっており、それは偶然ではないと誰もが思っていますが、真相はいまだ謎のままです。
“元大剣使い”のルーサー・エレルデン(人間/男/50歳)
「お、新入りか。ちょうどいい依頼があるぞ」
冒険者の店<蒼き雷の剣亭>の主人です。
彼も元冒険者であり、大剣使いとしてバジリスク退治をした武勇伝は有名な話です。
面倒見がよい事でも知られ、新米冒険者を立派に育てることに生きがいを感じています。ベテランからの信頼も篤く、彼の店はいつも冒険者で賑わっています。“葉っぱをのせた”マイエルというエルフの探し屋が彼の店に出入りしているため、遺跡の情報にも事欠かず、冒険のネタに困ることはないでしょう。
“大魔動機師”ドルッケン・ガーデル(ドワーフ/男/52歳)
「この装置を解明すれば、30年は技術を取り戻せるぞい!」
帝都ルキスラにあるマギテック協会の会長です。
魔動機文明時代の技術を完全に復活させることにすべての情熱を注いでおり、未知なる装置や文献を発見すると狂喜乱舞します。
そのため冒険者への期待感は強く、優秀な者とは積極的に交流しています。黙っていれば渋い外見ですが、興奮すると子供の用にはしゃぐため、あまり威厳は感じられません。基本的には善人ですが、奇妙な新装置の実験を冒険者に依頼してはひどい目にあわせるなどの奇行が目立ち、敬遠する者も多いようです。
“神を追う者”ノノ・バニラッテ(タビット/女/17歳)
「新しい神が見つかったって!? それは見に行かないと!」
ルキスラを拠点に、ザルツ地方を転々と旅しているタビットの魔法使いです。かわいい外見に反して新語魔法から魔動機術まで、あらゆる魔術に精通していますが、彼女がもっとも知りたいのは、神とタビットとの関係です。そのためにあちこちの神殿を巡り、神について研究しています。
最近では大陸南部で極めて若い神の存在が確認されたことに注目し、研究に向かうため準備を進めているようです。ですが高所恐怖症のため、飛行船に乗るべきかどうかが最近の悩みのようです。
“隻眼の鷹”ショウン・グラハム(ナイトメア/男/45歳)
帝都ルキスラに本拠地を置く盗賊ギルド、「闇夜の鷹」のリーダーです。「闇夜の鷹」はルキスラ帝国内のあちこちに支部を持つ大きなギルドであり、正確で素早い情報網を持ちます。一通り犯罪行為も行っていますが、目立つことが嫌いなショウンの性格もあって、強盗殺人のような派手な犯罪はまず起こしません。
ただし敵対者と裏切り者には容赦がなく、血と死をもって制裁を加える残酷さも持ち合わせています。本人も剣と魔法の達人であり、暗殺不可能と言われています。
“聖者”イシュメル・チャーチ(人間/男/63歳)
帝都ルキスラのライフォス神殿を束ねる大司祭です。
慈愛に満ちた柔和な顔立ちと、ザルツ地方全体の融和を図るべく各国を渡り歩いていることから、“聖者”と呼ばれ、信者から絶大な人気を誇っています。
ダーレスブルグ・カシュカーン周辺
“剣の折れた剣豪”アルフレートⅢ世(人間/男/66歳)
ダーレスブルグ公国の現公王です。
すでに枯れ木のようにやせ細った老人で、武門で知られるダーレスブルグ公王としては驚くほど無気力です。
政にもほとんど興味を持たず、すでに記憶や思考も曖昧になりつつあると噂されています。年齢のために愛剣を操れなくなったのが原因と言われていますが、真偽は不明です。王がそういった状況にあるため、ダーレスブルグは現在、「保守派」と「開放派」に分かれ、混乱が見られます。
“姫将軍”マグダレーナ・イエイツ(人間/男/19歳)
「この身に代えても、蛮族は絶対に通さん」
ダーレスブルグ第4軍を束ねる将軍であり、20年前に戦死した伝説の英雄オトフリート・イエイツの娘です。
蛮族への盾となることに誇りを持つ武人であり、自身も優秀なザイアの神官戦士です。楽観視する「開放派」とは対立する立場にあり、蛮族の襲撃を常に警戒しています。しかし開拓が進んでいる以上後戻りはできないと考え、冒険者を雇って積極的に調査も行っています。公王の姪にあたり、第5位の王位継承権を持ちます。そのため、最近ではルキスラ皇帝との政略結婚の噂もささやかれています。
“鋼鉄の騎士”ハウル・バルクマン(人間/男/25歳)
「蛮族の襲撃? 姫様には知らせるな。俺がやる」
マグダレーナの右腕とも呼ばれる騎士で、現在はカシュカーン守備隊の隊長です。
主であるマグダレーナを助けるために働き、常に最前線に立ってきました。しかし現在はカシュカーンの守備隊長として、蛮族への警戒や冒険者の管理なども行っています。
主以上にカタブツで、真面目すぎてあまり融通がききません。ですが職務には熱心で、いつも寝不足で怖い顔をしています。根は優しい人物ですが、鬼隊長としてのほうが有名です。
“博愛”シャドルニック・シューリガン(リルドラケン/男/59歳)
ダーレスブルグの冒険者の店<ロンリードラゴン>の主人で、彼も元冒険者のリルドラケンです。コボルドのドリーと店を経営しており、種族を問わず誰の面倒も見ることから“博愛”の二つ名で呼ばれています。
“不平屋”ジェイムズ・コバール(人間/男/44歳)
現在カシュカーンの統治を任されている執政官です。開放派貴族の尻馬に乗ろうとしてカシュカーン執政官を任命されてしまったため、本人はダーレスブルグに帰りたいと日々思っています。そのため不満やグチが多く、町の人間には不人気です。
“冒涜者”セス・スサロ(人間/男/32歳)
カシュカーンで暮らす、腕利きのコンジャラーです。
彼は誰でもどんな状態でも、死体さえあれば蘇らせることから“冒涜者”の二つ名で呼ばれています。アンデッドを愛していると口走り、多数のレブナントを飼っているとも噂されています。
ロシレッタ周辺
ロシレッタの三無能
この不名誉なあだ名を冠せられたのは、アデラ・カルバート(人間/女/46歳)、シモン・ボンヌフォア(エルフ/男/122歳)、ヨルゲン・レイグリフ(ドワーフ/男/71歳)の3人です。
彼らはロシレッタを統治する議会の種族代表ですが、アデラはいつも攻撃的な主張を繰り返し、ヨルゲンはそのことごとくを受け入れず、シモンは「また考えておきます」といって答えを先延ばしにするため、ロシレッタの議会はいつも結論を出すのに長大な時間を費やすため、このように呼ばれています。
そして大概のことは「では冒険者に任せよう」で終わってしまうため、議会そのものの機能が進歩改善されることはなく、住民の不安は徐々に高まっているようです。
“彩の豪商”ダン・シャイロウ(リルドラケン/男/73歳)
「一番大切なのは、信頼だよ。なにせ金だけでは買えんからな」
ロシレッタの港を本拠地に置く、有名な豪商です。
船を使った異国との貿易で財をなし、現在ではザルツ地方で並ぶ者なき大商人です。
一方で大変な浪費家としても知られ、冒険者から珍しい工芸品や美術品を高値で買い取っています。彼が主催するオークションには王侯貴族すら参加し、世にもまれなるものが出品されることもザラにあります。最近では極めて貴重な中型の飛行船(空飛ぶ帆船)を入手し、空輸業を始めたことでも有名です。
フェンディル周辺
“双子姫”コークルとラフェンサ(人間/女/14歳)
「女王になる?」「そのうちにね」
フェンディル王国を事実上束ねている、双子の姫です。
先王が1年前に病死し、現在フェンディルは国王が不在です。長子は双子の姉コークル姫でしたが、宰相つきの王位継承を拒否、双子の妹とふたりで即位することを望みました。そのために一時は混乱も生みましたが、想像以上の政治手腕で双子の女王を認めさせる方向に国をまとめつつあります。
二人とも卓越した魔jつの才能を有し、その可憐な容姿から国民の人気も相当なものです。
“不朽の大樹”ラーゼン・エルシャレード(人間/男/66歳)
“花の国”フェンディル王国で最も古い歴史を持つ、大貴族エルシャレード家の先代当主です。
外交・政治戦略に優れ、武力に劣るフェンディル王国を、蛮族や隣国ルキスラの圧力から守り続けた希代の政治家です、表舞台を去って数年が経ちますが、今なおその発言力は強く、いかめしい姿と淀みない口調は前に立つ者を圧倒します。
フェンディル王家への忠義に篤い一方、御意見番として王家に苦言を呈することも辞さない、公正な人物です。
“月夜の天才”ヴァランタン・カルノー(人間/男/26歳)
フェンディルに暮らす芸術家です。常に前衛的なモチーフを求めており、冒険者の護衛を伴って遺跡巡りをすることでも知られています。特殊な画材や絵の具を求めて冒険者を雇うこともあります。美形の自信家で、女性をすぐ口説く悪癖も有名です。
自由都市同盟周辺
“同盟議長”ヘルミン・カルツ(人間/男/45歳)
自由都市同盟の議長を務める人物です。
苦労性な性格をしており近年意見が対立しがちな6つの都市国家の意見をまとめるのに四苦八苦しています。バーリント出身の彼は、親ルキスラ帝国的な外交を行うことでも批判を受けており、苦労は絶えないようです。
クーデリア侯爵領周辺
“冷酷王”カデル・クーデリア侯爵(人間/男/38歳)
クーデリア侯爵領を治める現当主です。
自らの領地にこもったまま病気などを理由にルキスラ皇帝の召喚にも応じないことから、独立をもくろんでいると疑われています。
その性格は酷薄で残忍、しかも秘密主義であり、最近では城からほとんど外に出ません。それどころか、城内で蛮族を見た者がいたり、城勤めの者が不意に行方不明になる事件も続出しています。
魔術の研究も熱心であり、アンデッドの兵団を作っているとも言われていますが、城の地下を調べにいって帰ってきた者はいません。
“狂った暗殺機械”ガートルード(ルーンフォーク/女/年齢不明)
「奪え。殺せ。そうすればあの方も喜ぶ」
クーデリア侯爵領を根城にする盗賊ギルド、「デスクリムゾン」のリーダーです。
真紅の髪と瞳を持つ、寒気を覚えるほどの絶世の美女ですが、表情はありません。性格は冷酷非情で、感情は一切差し挟みません。
彼女が「あの方」と呼ぶのがクーデリア侯爵だと大半の者が思っていますが、死んだ初代ギルド長のことだとも言われています。現在は帝都やその周辺にまで手を延ばしつつあり、「闇夜の鷹」とは抗争勃発直前と噂され、恐れられています。
ルーフェリア周辺
“大空の船長”アメリア・スカイフィッシュ(ナイトメア/女/45歳)
「ムーテス? ああ、彼はいい人だったよ、実にね」
最近飛行船の核を手に入れ、小型の飛行船を再建することに成功したルーフェリア国の商人です。正体は隠して人間として暮らしていますが、その自信ある表情と美貌はひときわ目を引きます。
現在は“彩の豪商”ダン・シャイロウと契約を結び、ロシレッタとの定期便を運航しています。1000G払えば、片道3日で人ひとり運んでくれることで知られています。
“湖の大司教”バトエルデン・エラー(エルフ/男/321歳)
「まさか300年、おてんば娘の面倒を見るとは思わなかった」
湖国ルーフェリアの守護神、ルーフェリアの本神殿を纏める大司教です。
徳は高いのですが、ほとんど礼拝や儀式に参加しないのは、神官的厳かな口調が長続きしないためだと言われています。<大破局>時代を生き抜いてきたエルフで、今も蛮族の大規模な襲来には、神官戦士団を率いて最前線に立つことも少なくありません。
人間であった頃のルーフェリアと幼馴染で、いまだに時折わがままを聞いていると言われています。
最近は外国からの人の流入が増え、外交の仕事も担っています。そのため、そちらのトラブルも頭痛の種となっているようです。
放浪者
“放浪王”アルベール・ドゥラランド(人間/男/27歳)
「俺は俺の王国を見つける…必ず」
ザルツ地方でも有名な、熟達冒険者です。
まるでなにかに取り憑かれたかのように危険な冒険を繰り返し、数々の成功を収めてきました。しかし彼の冒険心はいまだ満たされることはなく、最近はレーゼルドーン大陸に渡り、霧の街を目指していると言われています。
彼が挑戦する冒険は極めて過酷なものばかりであり、彼のパーティには欠員が出がちです。そのため、最近では“死神”とも呼ばれていますが、本人はまったく意に介していません。
“幸せの青い小人”ブルー・リブ・レベット(グラスランナー/男/不詳)
「オラに会えたんだもん、君も幸せになれるんじゃない?」
ザルツ地方を休むことなく旅している有名な吟遊詩人です。
「彼の奏でる陽気な歌を聴いた者は、不思議と幸運が訪れる」という噂があり、彼を見かけた冒険者は、誰もが旅の無事と成功を祈って彼に1曲頼みます。
彼自身も優秀なスカウト、バードで、ザルツ地方の伝承という伝承を知っているといわれています。そのため、少しのヒントでも欲しい歴史研究家が、彼の知識に頼ろうと血眼になって探していることもあるようです。