旧主人公

登録日:2011/08/11 Thu 12:01:12
更新日:2025/09/27 Sat 21:37:14NEW!
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旧主人公とは、世代交代のあった作品・原作者・同制作会社など、何らかの繋がりによって同じ世界観を持つ作品に登場する、別作品の主人公。
同じ世界観でなくても、時空を超えて現れるルール無用のサプライズもある。
直接的な続編のみならず、いくつかの作品を跨いだ共演も含んで、“旧主人公”と呼称して本項目では解説する。


オーソドックスな形だと、新主人公とは何らかの血縁関係にあることが大半。
兄弟よりは親子の割合が多く、または遠い親戚としてあくまで前作と同一世界観だと示唆するだけの死に設定であることも。
伝説的な英雄として崇められていたり、失踪していたり、前作以降の身の振り方は多岐に渡っている。


デザインや名前に若干の変化が加えられ、別人として所謂スターシステム的な参加も存在。
これらは設定的に本当に旧主人公の生まれ変わりであることもあり、前作の結末が悲劇的であれば、もし幸せを掴めると感慨もひとしおである。
ひみことかおんは本当に良かったね。

なお、新旧で性別が異なる場合でも、新主人公と恋愛関係に陥ることは殆どない。
せいぜい新主人公が「昔憧れてた」くらいである。


やはり一つの物語を駆け抜けただけあってその存在感は抜群であり、それは下手をすると新主人公の影を薄くさせるほどである。
逆に、せっかく出てきても新主人公の引き立て役にされ全くいいトコがなかったり、不当に貶められてしまうのも困りもの。
制作側のリスペクトが不足していると、単に新主人公を持ち上げる為のかませ犬やピエロとして利用される。

複数ヒロインがいるタイプの作品で続編を作られると、かつての主人公が誰とくっつくか確定してしまうことも少なくない。
当然だが、この点は選ばれなかった方のヒロインファンには納得しがたいものがあり、
特にPCゲームはそれほど人気も魅力もない女の子(勿論ファンもついているが)が続編だとメインヒロインという特権だけで正妻に収まっているケースは多く、
えらく不評を被ることになりかねない。
中には前作で大団円を迎えておきながら、あの後でヒロインと破局し別の相手と結婚していたりした主人公も存在し、
「あれはなんだったんだ……」という微妙な気持ちになる。


こういった現象も確かに存在する為、続編ないし同じ世界観の物語が始まると「出てこないで欲しい」と願うファンも決して少なくない。
そういう意味では賛否両論と言える。
新主人公を庇って石化したり、死亡してしまうこともあるのだから……。


こういったマイナス的な部分も多々あるので、確かに旧主人公の扱いは難しい。
新主人公との兼ね合い次第では、どちらかを立てればどちらかが立たなくなるということに陥りやすく、
そのさじ加減一つで作品が成功も失敗もするなんてことはザラである。
いわば“諸刃の剣”だが、それでもファンにとって新旧主人公両者の共演は一大イベントである。
図鑑所有者歴代ジョジョ歴戦の決闘者達など……いや、好きな作品の主人公が勢揃いしたイラストに、
ファンならほぼ間違いなく高揚感を感じるだろう。

因みに、旧主人公の他の作品への出演にはいくつかタイプがあり、分類することが可能である。



【共闘型】

最も肯定的に受け入れられる、伝統の共同戦線。
旧主人公が登場した瞬間、かつての主題歌BGMが流れたりすると最高に熱い。
特にラスボスに分身がいて“同時に倒さなければ滅ぼせない”というケースだと非常に効果的。
新旧主人公の同時変身は、いつの時代でも男の子たちの浪漫である。
もっとも、これは前述したとおり新主人公を完全に喰ってしまうことになりかねないので、細心の注意が必要なのも事実。
余談だが、最初から信頼全開で協力し合う場合だと、体育会系的な先輩後輩のような関係である。
クロスボーン・ガンダムシリーズキンケドゥトビアフォント→アッシュが順々に共闘を続けており、作品シリーズ全体のコンセプトに近い。
Zガンダムにおけるアムロ・レイ鋼鉄神ジーグにおける司馬宙もこのパターンの代表格。
ジョジョの奇妙な冒険第3、4部のジョセフ・ジョースター、第4、6部の空条承太郎もこの部類に入るがこの二人は支援型としての側面も大きい。
宇宙刑事シャリバンにおけるギャバンは、ゲスト出演しても蒸着せずに助言と生身アクションのみの活躍を続けていたが、最終話のみ上記の「同時に倒さなければ~」タイプのラスボスを倒すために蒸着し、シャリバンと共闘した。


【対立型】

誤解や方針の違いから、避けられない戦いへ発展するパターン。
ファン的には夢の対戦カードでもあるが、同時に悪夢といっても過言ではない。
実際、あるヒーロー番組では「戦っちゃヤダよー」と子供が泣きだした例があるらしい。
新主人公は旧主人公との差別化の為に正反対の性格に設定されていることも多く、それが対立に拍車をかける結果を生み出す。
まれに無理のある理由で戦わされることもあるが、近年の作品ではさすがにどちらか片方がアホみたいに間違っていることは少なく、基本的に人の数だけ考え方があるので「どちらも間違ってない」という落とし所にもっていく。
まあ、演出的にそうなっていても、客観的に分析すれば片方の主人公がどう見てもおかしいということもあるが。
なお、大抵は後々に和解し共闘型へと変化するが、中には最後まで険悪で争う姿勢を崩さなかった者たちも存在。
また新主人公が旧主人公の敵対組織に所属していた場合はまずこの対立型からストーリーが進んでいく。

機動戦士ガンダム オレら連邦愚連隊の主人公ユージは、続編世界のカタナでは一度連邦軍を辞めてから復帰した経緯が描かれ、カタナの主人公イットウと対立する組織の兵として登場・交戦。更に強化人間手術を施されてしまうも…と堕落・対立・共闘(救済)、エピローグでは客演型という、旧主人公ポジションの様々なセオリーが詰め込まれた役割を担っている。
SEED DESTINYのキラ・ヤマトも少し近いとも言われる。
また、平和な意味合いでの夢の対決というパターンでは魔法少女リリカルなのはvividのヴィヴィオVSなのはの対戦が挙げられる。

スポーツジャンルでは、ドカベンシリーズが「大甲子園」において複数の過去作主人公チームを山田の明訓と戦わせ、後の「ドリームトーナメント編」でも山田のいるチームと歴代主人公たちが次々に対戦(その上、試合の結果は大方の読者の予想通り山田側の全勝)という、ちょっと他に類を見ないコンセプトが有名。
出版社も異なる「一球さん」などの連載開始時点で「大甲子園」の構想があったかは不透明だが、少なくとも「ダントツ」の連載には当初からその意図があったと思われる*1



【支援型】

同じ土俵に立つことはないが、指導役や後方支援に徹して新主人公を全力で手助けするタイプ。
既に精神的に大きな成長を遂げているだけあって余裕があり、新主人公の「先駆者」として的確な助言をしたり、陰ながら危機を何度も救ったりも。
中には当時の精神年齢のままハチャメチャなことをしでかす者もいるが、いざという時には歴戦の風格を見せつけるのが常。
恋愛系の少女漫画なら、新主人公をかつての自分と重ねて温かく見守るお姉さんだったりする。
バトルものでは何らかの事情で戦う力を失っているケースが多いが、力を取り戻し戦線に復帰すると、やはり桁違いの強さを発揮して無双状態へ。
また戦わない場合は新主人公が旧主人公の装備などを使う、という展開もある。
MGS2のソリッドスネークや、UFOロボグレンダイザーにおける兜甲児がこのパターン。
宇宙刑事シャイダーの終盤では、終盤でフーマの侵略が活発になった際に「宇宙のどこかで戦っている」という扱いでギャバンとシャリバンが説明とバンクフィルムのみで客演したという例があった。


【堕落型】

新主人公が頑張っている半面、その裏で肝心の先代がどんどん落ちぶれている有様。
普通の主人公が次回作でこうなると最初は批判されがちだが、主人公時代には描けなかった弱点や悲哀を描くことで、よりキャラクターに深みが出る場合もある。
ひどいのになるとラスボス化したりする。中には前作の時から作者がそこまでストーリーを計算していたというケースも。
それならまだ箔がつくが、子供騙しの猿芝居に引っかかって会ったこともない新主人公へ勝手に敵意を募らせたり、邪悪な意思にいいように操られたり、あまつさえ旧ヒロインが健在なのに別の女性と肉体関係を持ったりすると、本当に情けなさ過ぎて涙が出てくる。
特にgrand theft autoⅣTlaDのジョニー・クレビッツはヤク中に堕ちてしまった(彼の率いていたバイカーギャングはクスリが禁止だった)上、新主人公・トレバーのイカれ具合をプレイヤーに見せつけるため登場から1分22秒で蹴り殺され、ついでに仲間も皆殺しにされ、組織も壊滅させられるというあんまりな結末を迎えている。(組織の壊滅は元から弱っていたという理由もあるが)

前作で悩みを抱え、SEED DESTINYでそれを引きずったキラ・ヤマトがかなりこの例に当てはまる。
またZZのカミーユもどちらかというと支援型ではあるが、少し近いとも言われる。
中にはR-TYPE TACTICSⅡのように、旧主人公との戦いを通じて現主人公の行く末を暗示させるパターンも。


【略奪型】

旧主人公を新主人公の踏み台にする堕落型の逆で、旧主人公が新主人公を完全に喰ってしまい、作品のメインを張ってしまう所謂“主役の降格”である。
意図的に交代させるか、また一応新主人公は中心であるものの、ドラマの濃さが段違いで視聴者的に主軸がすっかり入れ替わってしまう現象を指し示す。
理由としては製作側の異常な愛情の賜物であったり、新主人公が非常に動かし辛くてやむを得ない処置である場合。いずれにせよファンからは批判されることが多い。
このタイプの主人公が高評価されるのは、オールスター系の作品で過去の主人公を引き立てるために活躍するパターンや、実は悪役で旧主人公に倒されることが運命付けられているパターンなど。

アークザラッド2の後半でエルクより主人公として目立つアークはかなりこのパターンに当てはまるが、両方ともバランスよく出番があるからか高評価されている。
なおSEED DESTINYがよく話題に挙げられることが多いが、あちらは厳密には前作主人公(キラ・ヤマト)より、前作ライバル(アスラン)が新主人公を喰っている形の方が近いためやや特殊例。




【客演型】

必然性はなく、いわば単純なファンサービス。もしくは設定上居なければならないから出しただけのもの。
アパートの隣室から聞こえてくる声が内容や言葉遣いから判断するに恐らく旧主人公と旧ヒロインであったり、
よーく見ると“ウォーリーを探せ”の如く背景にいたりする。
直接的な接触はなくても、テレビで新主人公の姿を見て「俺も昔はああだったなぁ」と感慨深げに評価する時も。

爆走兄弟レッツ&ゴー!!MAXのアニメ版最終回で星馬豪がまさにその発言をしている他、原作では一文字兄弟との新旧主人公対決を制している。
アニメ遊戯王GXでは前作主人公の武藤遊戯が初回導入部で登場。再登場したラストデュエルのクライマックスは闇遊戯が務めた。特に後者は、年次を重ねるごとシリアスに傾斜したGXの〆の印象をデュエル1つで大きく変えた名客演と言って良いだろう。
リリカルなのはシリーズ高町恭也のように世界線が違うタイプも割り振り的にはこれになる。なお『VividS』ではこういう形ですら旧シーズン主人公3人が登場しない
劇場版マクロスF 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜における、イサム・アルヴァ・ダイソン
同小説版における熱気バサラマクシミリアン・ジーナスミリア・ファリーナ・ジーナスなども該当するか。
なお、熱気バサラは最前線に出してしまうと「もうあいつだけでいいんじゃないかな」レベルで歌で解決してしまうため出せなかったとのこと*2
幻星神ジャスティライザーでも、前作ヒーローのうち4人がおまけ程度に登場した例があった。

やや毛色が異なるが、同時代の歴史ものを複数手がけた作者の場合、歴史の流れの中で客演しやすい。特に戦国時代は膨大な作品数の割に、三天下人や信玄の周辺に題材が集中しがちなので…。
史実通りに旧主人公が落命する場合も、旧作ファンに配慮し(或いは作者の贔屓が残り気味で)キャラクターを崩壊させないような雰囲気の窺える扱い方は少なくない。



【誕生型】

続編が前作の過去話、かつ新旧主人公が親子だった場合のケース。
ストーリーの最後に子供の誕生もしくはそれを匂わせる描写が存在し、子供の名前を決める。といったシーンが多数。
映画ならスターウォーズ辺りが有名か。



【オマケ型】

【客演型】とはまた違うファンサービス。
ゲームで見られる特殊な例。ストーリークリア後に前主人公が使えたりする。
ストーリー上の絡みや、会話等が無く、本当にただ使えるだけ。会話する場合もあるが、ほんの少しだったりする。
SIREN2須田恭也などが一例。
上でちょっと触れた『なのは』あたりになると、作品展開の順番では「旧主人公」だが時系列的には未来の人物、がオマケ的にプレイアブル参戦した*3クソややこしい作品まで存在する。


【暗示型】

旧主人公の存在自体は匂わせながらも、あえて直接的に登場させないというパターン。
【客演型】に扱いは近いがストーリーにはきっちり絡んでいるパターンが多い。その作品の外伝や漫画・アニメ版になったとたんに実際に登場する場合もある。
主人公に近かったライバルや親友などのキャラを続投させ、その活躍を伝聞で語らせたり、連絡を取り合っているシーンを挿入したりする。
旧作のファンをそれなりに引っ張れるが、同時に新主人公と食い合うこともない、ある意味では一番いい落としどころである。
ガンダムビルドファイターズトライにおけるイオリ・セイ、同アイランドウォーズにおけるレイジや『ガンダムブレイカー4』におけるマイスター・ジン、『ビルドダイバーズRe:RIZE』におけるヒロトがAVARONに在籍していた・有志連合戦に参戦していた設定など、『ガンダムビルドシリーズ』ではこの「このキャラや設定は過去作主人公の行動の結果、として健在なのを暗示する」はなかばお約束要素となっている。
…そのせいで明確に全員集まるのはゲーム作品を別にすれば10thアニバーサリー記念アニメ『メタバース』を待つことになった
ペルソナシリーズの歴代主人公の扱い方や*4、トップをねらえ2のタカヤノリコもこれ。
牙狼-GARO- 魔戒ノ花の冴島雷牙も、設定上は前作主人公の息子でありながら、本編では直接明言されなかった。


【死にました型】

作中で旧主人公が死ぬ、すでに亡くなっていたなどの死を明らかにされるパターン。
主人公やその仲間をかばって、不慮の事故で、前作の段階ですでに不治の病に罹っていてなど…
旧主人公との永遠の別れが描かれることもあり、名エピソードになることが多いが、前作のファンとしては悲しいことは間違いない。
稀に死亡フラグバリバリ*5建てた後行方不明になって最終局面で帰ってくるパターンもあるが…
これ系で最も衝撃的なのはいきなりOPが前作主人公が事故死しての葬式から始まるセンチメンタルグラフティ2であろう。
時代設定が作品間で全く異なるせいで、普通に寿命で亡くなっているパターンもある。ときには子孫が登場したり、かつての活躍が伝説や神話として残っていることも。
蒼天のソウラ』において、「メラ担当・ヒャド担当・出力調整担当・発射役の4人で撃つ魔法であるメドローアをひとりで使う技として軽々撃っていた魔法使いが過去にいたらしい」として、『Ⅹ』では『ダイの大冒険』ポップマトリフが昔話(神話?)の人物になるほど時代が流れたことが示唆された『ドラゴンクエストシリーズ』も主人公パーティというくくりではある意味このパターンと言える*6


あなたが好きな作品の主人公たち。
彼らが一堂に集結する─────そんな光景に胸躍る人は追記・修正をお願いします。

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最終更新:2025年09月27日 21:37

*1 何しろ同じ週刊少年チャンピオンで、県予選を優勝して「山田、甲子園で会おうぜ!」と主人公監督が吠えた最終回の翌週から「大甲子園」が連載を開始している。

*2 過去作主人公とは言えないが、同じ理由でマックスも使いどころに困る「バルキリーに乗れるキャラ」だった様子

*3 厳密には当時現行作品だった漫画媒体からの参戦

*4 『Q』などダブル主人公扱いにすることで明確に登場する作品も一応存在する

*5 ここは俺に任せて先に行け!系

*6 ただしこの時は他のパーティメンバーから「(4人のなかのひとり、でもこんなに負荷がかかる魔法である以上)いくらなんでもありえない」「メドローアを決め技のひとつにできるパーティが過去にいたのは事実なんだろうが、だとしてもこの逸話すべてが真実ではないのではないか」とも言われており、明確に世界観がつながっているわけではない様子。ただしポップの驚異的な天才性は『ダイ大』以外のメディアミックスを主とするプレイヤーからも指摘されていることには留意