あなたはだあれ?
敦也を含む狂的科学部員すべてに非常呼集がかかる。
部室で開発中のメカやパーツがすべて盗まれてしまったというのだ。
防犯カメラは延々リピート画像、宿直は突然昏倒というありさまで、内部犯の可能性すら考えられる。
怒り心頭の松戸教諭は、敦也に彼女が開発していた給仕ロボの奪還を命じたのだった。
例によって露子の屋台で食事をする忍、そして警備中のエステル。
その光景を物珍しそうに眺めるひとりの女子生徒がいた。
少女はとことこと露子たちに近づくとどこかのんびりした調子で口を開いた。
「あの~、つかぬことを質問するのですが、わたしはいったい、誰なんでしょうか?」
露子の能力で人間ではないことが分かったとは言え、彼女には自分にまつわる記憶がいっさいない。名前を問われても、「RX-78とかT800というとこでどうでしょうか?」とズレた返答。
やむを得ず露子たちは「RX」→「レックス」から彼女に「麗久(れく)」と名づけ、空腹を訴える麗久に次々と食べさせる。
そこへ行き会ったのが敦也。
露子から麗久が人間ではないと耳打ちされた敦也は、麗久が松戸教諭の給仕ロボではないかと考える。
念のためレーダーで反応を探ってみると、縮退炉の位置は敦也のすぐそば、15cm脇。そこにいるのは麗久。
麗久に松戸教諭のことを確認しようとしたそのとき、学食横丁が騒ぎに包まれた。
騒ぎの方向を眺めると、巨大な蟹がのしのしと歩いてくる。
全長5mはあろうという蟹は巨大なハサミを振り回し、口から大砲らしい砲口を突き出して周囲を威嚇しながら近づいてくる。
エステルが行った射撃は命中はしたものの、ほんの数秒の足止めにしかならなかった。
エステルは応石の能力で蟹を探り、方向が弱点だと悟る。
そこで忍が鋼線で蟹を縛り上げ、エステルが砲口を狙撃。
動かなくなった蟹を調べると、巨大蟹に装甲をつけたものではなく蟹型のロボットで、ロボット工学研の技術とは違うらしいことが判明した。
狂科からの盗難に関連していると考えた敦也は松戸教諭に電話して、それが3年生部員の開発した「メカラッパ」だとわかる。
続けて麗久のことを尋ねると「あー、それだそれだ」という答え。
これで麗久は松戸教諭が開発した給仕ロボに間違いないことが確定した。
一行は狂科部室に麗久を連れて行こうと路面電車に乗る。
が、そこを再びメカラッパが襲撃してきた。
メカラッパは一向に催眠ガスを浴びせるが、なんだかんだで修羅場をくぐってきている一行には効果がない。
そこへもう1体メカラッパが現れ、麗久をハサミでつかんで連れ去ろうとした。
忍の短刀、敦也の応石攻撃、露子のフライパンはいずれも空を切る。
最後にエステルのサーベルがメカラッパのハサミを切り落とし、麗久を助け出した。
狂科部室に到着すると、部室は現場検証のためロックアウトされており、1年生部員が見張に立っていた。
立ち番の部員は麗久を先輩たちに預けるように言うが、麗久に対して情が湧いていた一行はそれを断る。
と、立ち番の雰囲気が変貌した。
「君たちが連れている人形は、何を積んでいるかしっているかい?」
「知ってるよ、あれを持ち込んだのはそもそもボクなんだから」
「それなら話は早い。僕はあれが欲しいのだよ」
ネオSSは縮退炉から手を引くと約束したはず、と主張する敦也に、立ち番は平然と
「ここは学園であって秋葉原ではない」と掌を返す。
ならば戦いも辞さない、と気色ばむ一行に立ち番の少年は「今回は僕たちのほうが点数を挙げた」と手を引く様子を見せる。
「そろそろここに援軍がやってくる。それと一戦交える気はあるかな?」
あくまでも余裕を見せる少年……アーゴイルを縛り上げようとした忍の鋼線は空を切った。
アーゴイルの姿はホログラフィに過ぎず、本体は理系クラブ会館の500m上空に浮かぶ飛行船の中にあった。
と、そのとき。
アーゴイルの姿が「ジジッ」というノイズとともに揺らいで消え、飛行船の窓から水があふれだした。
露子の応石による意趣返しである。
メカラッパたちの襲撃を避け理系クラブ会館を脱出した一行は松戸教諭に連絡をつけ、研究部を目指す。
一行が研究部に到着すると、待っていた松戸教諭が麗久にヘッドセットを装着した。HORONに接続した麗久はすでにネオSSには手を出せないくらいの強さを持つようになっていた。
そして麗久は学籍簿ファイルを受信する。
かくして蓬莱学園にまたひとり、おかしな生徒が増えたのだった。
最終更新:2022年10月19日 00:14