宇津帆物語





6月に入った蓬莱学園では、震度1~2程度のごく弱い地震が頻発するようになっていた。

そんなある夜、露子は路上に何かを置いては何かメモしている男を見かけた。
よく見ると、彼が路上に置いていたのは風水で使われる羅盤。興味をひかれた露子は彼に話しかけてみる。
彼は地球科学部の部長・土御門保憲と名乗り、地脈を診ていたところだと語った。宇津帆島には非常に強力な地脈が流れているが、学園による無秩序な開発によりそれが乱れ、流れを阻まれていると。

一方の左門。
相変わらず屯所でのんびりしていると、上司の田中さんにと党が動き始めているので怪しい動きをしていたらしょっ引くよう命令される。

ちょうどその頃、忍は中央校舎群近くで土木建築研と鉄道委員会の面々と出会う。
地下鉄計画のため、試坑を掘っているとのこと。

そして星祭の巫女に選ばれたエステルは、物忌みに入っていた。

コロナの影響で生徒会選挙が延期になり修学旅行も中止。
さらに日々起こる地震のため、学園は不穏な雰囲気に包まれつつあった。

そんな中、露子の屋台を土御門が訪れる。
土御門は地脈の流れを正すため、流れを詰まらせている「何か」を排除しようとしていた。
問題はその「何か」がある場所。それは旧SS本部の地下だった。

引き留めようとする左門。
それに対し土御門は、早急な処置が必要だと主張する。
ちょうど土木研に入部したばかりの露子と、金の匂いをかぎつけた忍が左門を巻き込んで手伝いに立候補、4人で土木研と交渉することになった。

一方エステルは、学園アイドルのぱふぇーむや鬼の娘・烏丸ネレディとともに星祭の準備にかかりきりだった。
ネレディが言うには、コロナの影響で星祭には一般参加が認められていないにも関わらず、羽知那村周辺をうろつく学園生徒の姿が見られる。
自分たちは彼らに祭りの妨害をさせないため巫女に選ばれたのだろう、と。

その夜。

羽知那村やはちろう神社周辺に出没すると党の取り締まりを命じられた左門は、同じくはちろう神社周辺の見回りに出ていたエステルと出くわす。
宮里家の伝承によれば星祭には島中の古応石がそれ自体応石である弓美島に集まると言う。
しかもこの年は、前回卦が立てられた1990年から30年が経過し、陰陽が改まる。
と党が何もしないとは考えられない。
エステルと左門はネレディにメールで報告を入れ、半島の東側と重点的に警戒することにした。

エステルと左門が見回りを行っているころ。

露子と忍は土御門とともに地下鉄工事の試堀坑を進んでいた。
工事現場の先端、委員会センターと旧SS本部のちょうど中間あたりにさしかかったとき。

ライトに照らされ、ぶよぶよした肉塊のような巨大な姿が浮かび上がった。
露子と忍はその醜悪な姿に本能的な恐怖を感じるが、なんとか踏みとどまる。
その肉塊は、木星の化身とも言われる神格・太歳。
古来祟り神と恐れられ、見つけた場合は埋め戻すしかないと言われている。
しかし埋め戻して太歳が移動するのを待っていては、押さえられた地脈が暴走もしくは死んでしまう。
早く対処しなければならないが、普通の人間では太歳の姿を見ただけで恐怖にかられ、精神を保てなくなってしまう。

「……たとえばそれって、アンドロイドとかでもそうなりますか?」

忍は土木研に入部したアンドロイドの麗久ならば恐怖を感じないのではないかと思いついたが、肝心の麗久はメンテナンス中。
やむを得ずその夜は工事の一時中断を土木研に申し入れるだけにとどまった。

そして翌日、6月30日の夜。

露子は麗久とともに太歳退治に、忍と土御門は地脈を正すため捨て村にと手分けすることになった。
警備の手伝いのため中村渠家にいた左門は、土御門から事情を聞いてふたりを捨て村に案内する。ネレディの計らいで、少し遅れてエステルも合流した。
廃寺では土御門が地脈を正す儀式を行っていたが、それにと党が目をつける。
こっそりと近づくと党に左門が飛び出した。
当たるを幸い斬りまくる左門に忍とエステルも加わり、と党はゴムボートで宇津帆新町を目指して逃げ去った。

そして、太歳退治に向かった露子と麗久。

麗久のレーザーと荷電粒子砲で太歳の身体に大きな穴が開き、その中に真っ赤なボール状の器官が現れる。

「とどめよ!」
「残念ながら弾切れであります」
「物理で!」
「解体は露子さんにお任せします」
「えっ」

という会話の末、応石「百」を使った露子の連続パンチで太歳は破裂した。

同じタイミングで土御門の儀式が完成し、地脈が開放される。
と同時に廃寺の床から霞のようなものが立ち昇り、不思議な光景……紺色の空を飛ぶ無数の鳥、そしてそれを率いるかのように空を泳ぐ巨大な鯨……が映し出される。

「……これは『地球最後の秘宝』と言われる──月光洞だっ!」

かくして各クラブによる協議の末、廃寺は特殊環境委員会の管轄下におかれ、巡回班と銃士隊による警護を行うものとするSG(スターゲイト)協定が結ばれたのである。

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最終更新:2022年10月19日 00:14