狙われた街
2月に発生した怪獣ゲスラの襲撃により、チョコレートが極端に不足している蓬莱学園。
小売店ではポッキーが1箱500円、園芸部のカカオ豆で作られる生チョコに至ってはkg数万円すらマークしている。
そんな中、
リン・スーランの所属する探検部で備品のチェックが行われていたが、明らかに数が合わない。
どうやら2年生の男子部員がチョコほしさに備品の横流しを行っていたらしい。
と、その部員が突然ピッケルを振り回して暴れ始めた。
リンが取り押さえて事なきを得たものの、男子部員はそのまま失神してしまった。
そのポケットからはチロルチョコくらいの大きさの赤い小さな包みが転がり出る。
タコか髑髏のように見える包装紙に包まれたそれは、小さなチョコレートだった。
一方の狂的科学部部室。
車座になった部員たちの中央に置かれたテーブルには、髑髏の包装紙に包まれたチョコレートが山をなしており、これからその接種実験を行おうというところである。
じゃんけんで勝ち抜いた椿敦也はどうにか実験台を免れるが、実験台となった3年生部員は多幸感に包まれた表情で次々にチョコを口に放り込んでいく。
15個も食べたろうかというとき、突然その部員が立ち上がり、絶叫した。
松戸教諭は予測していたのか、さっさとテイザーでその部員を失神させると、チョコの解析を部員たちに命じた。
次いで錬金術研部室。
マナが異常な高水準を示しているということで、部内に動揺が走っている。
その数値はざっと普段の12倍程度。部の中では上位に位置するとはいえ、未だ根源に至っていない
ディアナ=ルーピンシュタインにすら、卑金属から貴金属・黄金が作れてしまうほどである。
部員たちはこの異常事態に対応すべく、それぞれに行動を開始した。
そして探偵・推理小説研部室。
目覚めのチョコを探していた風杜宗仁は、いつものチョコのかわりに髑髏の包装紙のチョコを発見する。
彼は何の気なしにそのチョコをポケットに突っ込み、部室を出た。
ばらばらに行動していた彼らは、生徒たちの流れに乗って学食横丁にたどり着いた。
いつものようにごった返している学食横丁は、しかし妙に雰囲気が荒れている。
あちこちで口論や、取っ組み合いさえも。
そんな中、爆発音と破壊音が響いてきた。
軍事研のM60戦車が屋台を踏みつぶしたり砲撃したりしながら、ふらふらと走っている。
暴走戦車を止めるべく、まず敦也の応石による缶の雪崩が降り注いだ。
次いで宗仁のエアガンにより、操縦士へのヘッドショットが決まる。
さらにディアナが屋台のサラダ油を操って戦車のコクピット内にぶちまけた。
こうして止まった戦車のコクピット内には、例の髑髏マークのチョコが散乱していたのだった。
ちょうどその頃。
公安委員の一団が恵比寿寮のとある部屋に踏み込んだ。
髑髏マークのチョコを売りさばいている売人の部屋だったのだが、一足違いで売人は部屋から脱出。
包装途中のチョコと包装紙だけが残されていた。
公安委員はそこで二手に分かれ、片方のチームは売人の足取りを追い、一條すみれと他2名が売人の部屋の捜査に当たることとなった。
そこで、チョコ売買の帳簿であるメモ帳と、勘合符である手話研の学札を発見したとき。
軍事研部員でもあるすみれに、学食横丁で戦車が暴走しているとの連絡が入った。
駆け付けたすみれは、戦車を止めた生徒たちのひとりである敦也に一目ぼれしてしまう。
一同は連絡先を交換し、チョコを分析するべく部室に戻ったディアナ以外はすみれの発見したメモについて調べ始める。
その結果、メモに記された電話番号は任侠・ヤクザ研の若頭のひとりのものだと判明する。
その若頭はかなりの野心家で、危険な依存性のあるチョコをシノギに組頭を狙っているらしい。
さらに調査を進め、宗仁はチョコの流通ルート、すみれはその日の夜に大きな取引が行われることを突き止める。
同じころ、錬金術研の部室でチョコの分析を行っていたディアナは、実はそのチョコが生き物であり、自分を誰かに食べさせたいという本能を持っていることを発見する。
報告を受けたすみれは、取引に踏み込む際の協力を一同に依頼した。
その夜。
一行は悪徳大路の一角にある廃ビルに潜入した。
取引現場である地下に踏み込んで任侠・ヤクザ研部員を確保したが、取引相手は床に穴を開けて下水道へと逃げ込んだ。
水路の脇にはメンテ用通路があり、資材搬送用のトロッコの線路が敷かれている。
宗仁が突き止めた流通ルートは、このトロッコの線路網に重なっていた。
ディアナが下水の振動を感知して方向をつかみ、筋力の高いリンが手動トロッコを操作して進む一行。
トロッコが突っ込んだのは、地下に作られたチョコの秘密工場だった。
そこには学園の制服を着た少年がひとり。
彼は武装SSの残党で、危険なチョコを流通させることで学園内に疑心暗鬼を広め、南豪を復活させるのが目的だと言う。
そのとき、ディアナが動いた。
分析のため溶かして液体にしていたチョコを操って少年の口に飛び込ませ、それ以上しゃべれなくする。
同時に宗仁のエアガンと敦也の缶雪崩が少年を襲った。
倒れた少年をすみれが取り押さえ、液状のチョコを吐き出していたバルブも閉める。
こうして危険なチョコの流通事件は解決したが、臨時生徒会はそれを受けてチョコレートの「製造・所持・飲食」を禁止する「禁チョ法」を制定。
かくして学園はさらなるチョコ不足にあえぐこととなったのだった。
最終更新:2022年10月19日 00:15