戦っている時「は」カッコいい by輝剣
「戦っている時はカッコいい」
相馬左門を知る者が等しく認める彼の評価である。
それは左門のことを異性としては評価外と判定している
露子や
忍さえも認めているし、左門に対して辛口の
フレイヤですら戦うときは相棒として遇している。
もっとも、それ以外は無口なヘタレ男というニュアンスも多分に含んでいるが。(
※注1)
では、そんなポンコツが周囲から認められている戦闘力とはどのようなものだろうか。
一例として百地忍指名手配事件(
※注2)における校内巡回班との戦闘をみてみよう。
相馬左門は百地忍から指輪を奪うべく彼女のもとへと向かっていた。
最早迷いはない。
紅美と中尾に強いられた仕事であったが、逆に彼らを利用して自分の望みをかなえる算段をつけている。
その為にも、自分自身の望みをかなえる場を整えるためにも、まずは忍から指輪を奪わねばならない。
だが…その前に障害物を排除する必要がありそうだ。
左門は脚に力を籠めると、目の前に展開している古巣の巡回班田中隊の背後に向けて跳躍した。
飲み友達であると共に敵に回すとやっかいな中村に奇襲をかける為に。
中村さんが倒れると同時に元上司の田中様のキンキン声が響きわたる。
「な、中村さん!? 相馬左門、あーたはいったい何をしているんです!!」
左門は慇懃無礼に応じる。
「勿論、忍のやつを捕縛する為の前準備ですよ。手短に言いますね。あんたら、俺が忍と戦うのに邪魔だから引っ込んでいてもらいたい。否だというなら是非もなし、邪魔できないように叩きのめすのみだ」
その物言いに班士たちが殺気立つ。
「な、な、な、何の権限があってそんなことを」
「忍のやつがやっかいなアーティファクトを持っているというのは聞き及んでいるでしょう? 俺の時(
※注3)と違って今度は本物なんでね。 俺みたいに前準備を整えていないと足手まといになるだけなんですよ。そういうわけで引っ込んでいてください、足手まといなんで」
「キーッ、相馬さん、何ですか、その物言いは! 私は先輩で上役ですよ、 意見具申するなり許可を取るなり、通すべき筋ってものがあるんではなくて!」
「俺、今の所属はお控え方なんでー、俺のやること止めたければ副長か、その上の局長の命令持ってきてくださいな。よろしいですか、田中さん?」
「ば、馬鹿にしてーっ。皆さん、この乱心者をひっとらえなさい!」
(ま、そうなるわな。ここで退いたらそれこそ士道不覚悟だしな)
左門も気を遣おうとはしたのだが、戦いの邪魔になるであろう田中隊を穏便に撤退させる方策を思いつかなかったのだ。
なので、「オレ、今回の件に詳しいんすけどー最適解これなんで独断専行しますねーあー展開している部隊が邪魔だったんで、ついでに片しちゃいましたーてへぺろ」を方針にしたのである。
とりあえず、忍の敵であることだけ伝わればいいやという雑なやり方であるが、即興なのでやむを得ない(なお、結果としてこの尻ぬぐいは後に
エステルに丸投げされた)(
※注2)
さて、校内巡回班であるが彼らは新選組をモチーフとしている組織である。
よって、その戦術ドクトリンも踏襲されており、一人に対して複数で戦い無力化するという治安組織として至極まっとうなものだ。
一方左門の基本戦術といえば、その健脚と速さを活かして敵陣に吶喊し、敵側の連携を崩して烏合の衆とさせ、数の利を逆に弱みに変えるというものである。 言わば単騎で複数を相手取る戦いのスペシャリストなのだ。
実際忍やエステルと組んで戦う際には、彼女たちが強敵と戦っている間に左門が雑兵を処理し、しかる後に合流して強敵を下すことが基本戦法であった。(
※注4)
強くない敵には滅法強い左門の戦い方は、真っ当な巡回班士たちにとって非常に相性の悪いものであった。
そして、左門は最近まで所属していた田中隊のことを知悉しており、その指揮系統も連携も全て計算して戦いを進めていた。最大戦力の中村を最初に潰しており、さらに…
「渡辺君、右から回り込みなさい!」
「渡辺君、左から回り込みなさい…キーッ、その声真似やめなさいよ、相馬左門!」
左門のコロナ能力「様々な音を声真似できるようになる」によって田中の声色を真似て指揮をかく乱したのだ。
そして、1対1に持ち込んでしまえばマジックアイテムと如意片「竜」によって強化された左門に対抗できる者はなく…勧善懲悪時代劇のクライマックス殺陣の如き光景が繰り広げられる。
田中隊が周辺にいた公安委員会などの他の部隊を巻き込んで一時的に戦闘能力を喪失するまでにさほど時間はかからなかった。
左門のもとに一通の電話が入った。
先程から何度も入れられている、エステルやフレイヤからのものではない。
左門が待ち望んでいた相手、今の形式上の直属上司、巡回班副長からのものだった。
「よう、俺の命令を持ってこいと啖呵を切ったんだってな。田中と、ついでに公安の方からも苦情と連絡がそれぞれ来ている。で、いつから公安とつるむようになった?」
「今でも険悪な仲ですよ、ただ、まぁこのバカ騒ぎを終わらせるのに奴らを利用しているだけです。お互いに、ではありますが」
「フン、で?」
「百地忍の追撃を一時停止してください。 俺が止めます」
「できるのか」
「そのための鼬斬りと特殊装備です。生憎と時間制限がありますので味方を気遣ってでは戦えません。なにしろ相手は何でもありの忍者ですから」
「わかった。あの女相手に手こずっているのは事実。部隊再編の時間も必要だ、しばらく時間をくれてやる。だから、何としてもあの女を止めろ」
「了解」
「それとな、明日から貴様は職務停止だ。」
「おや、お優しいことで。てっきり除名処分ぐらいはいくかと思っていましたが」
「馬鹿を言うな、貴様のような危険人物を野放しにできるか」
「あー、ハイハイ。邪魔をしないでいてくれれば御の字ですよ。じゃあ、切りますねー」
かくして左門は一時的なフリーハンドを手にし、空港の連絡橋へと向かう。
そこには友人との死闘が待ち受けており(
※注5)、そしてそれを乗り越えた先にこそ彼の望みはあった。
とまぁ、こんなものである。具体的な戦闘描写がほとんどないが、中村を背後から9連撃して戦闘不能に追い込んだ以外はバッタバッタと薙ぎ払うとしか表現のしようがないのだ。
このようにいわゆるトループ敵(雑魚集団)には左門は非常に強い。
宇津帆物語の対と党戦や
月光洞からの使者でのロイ一党との戦いがその代表例である。
一方でボス戦や一対一の戦いではあまり活躍していない。
ロイ、月光洞での指輪の持ち主たち、忍、エステルと毎回苦戦している。愛刀が鼬斬りと呼ばれるようになった
勇気ある戦いでもロクショウ様相手に(PLがルールを間違えたこともあって)何度も仕留め損なっている。
鉄拳オークションでは珍しく一対一で活躍しているが、やはり左門の戦いの真骨頂は支配の指輪キャンペーンに代表される対多数にあるようだ。
なので、皆さん、SS残党やテロ組織と戦うときには是非左門を伴っていただきたい。
君が因縁ある相手や敵ボスまでの道を必ず切り開いてくれるだろう。
注1:旦さんことエステルの援助と、母テルことお師匠様こと香織さんの指導によって多少マシになってきたとはいえ、ポンコツなのは衆目の一致するところ。 エステルに乞われて尻ぬぐいをしてやっているフレイヤさんの苦労は尽きない。
注2:
忍、指名手配参照
注3:
左門、指名手配参照
注4:左門はそのことを合理的と考え、率先して引き受けていたが、内心忸怩たるものがあったようである。詳しくは
忍、指名手配参照
注5:
二人の指輪物語参照
最終更新:2022年10月19日 00:23