ジェーン・ドゥに恋
とある週末の午後。
ジェーンの自室にはコンピューター研の最新ゲーム機が置いてある。
なんでも、ソミーという研究グループ作ったらしいが、よくできている。
ネットに繋がる事でソフトを無料でDLできると言う。
詳しいことは分からなかったが「現時点では犯罪じゃ無い」という事だった。
コンピューター研での事件を解決した際の報酬としてせしめた物だが、大変気に入っている...セブンが。
このゲーム機がもらわれて来てからというもの、ほぼ毎日セブンが入り浸っている。
昨日などは委員会が終わってから【ジェーンの部屋に直帰】したくらいだ。
「おいセブンよ、夕飯ができたぞ」
「ああ...後で食べるよ」
「後でってなんじゃ!片付かんじゃろうが!」
「もう少しだけ!」
「ええ加減にせい!儂はお主の母では無いんじゃぞ!」
「...ちっ...わかぁったよ!」
ゲームを一時中断してテーブルにつくセブンだったが、ゲームに未練があるらしくぶつぶつと文句が口をついて出ていた。
「....どっちかっていうとババァだけどな」ボソッとでた言葉であったが、聞き逃すジェーンではなかった。
「見た目が小学生の儂がババァならお前はなんじゃ!」
確かにジェーンは高校生とは思えない低身長であるし、見た目も身長に相応しい幼さをしている。
秘密ではあるがジェーンは不老転生体である。つまり、一般的な人間ではない。
大きく異なるのは3つ。
1つはジェーンが超能力系魔法を使いこなすという事。
もう1つはその成長の仕方である。
最初の10年は少々ゆっくりな成長速度をとり、さらに20〜25年をかけて成体になる。
見た目は20歳前後で成長が止まり、後は老けることがない。
成体になれば前世までに修練した魔法を、十全に使えるようになるのだが...幼体のうちはそうもいかない。
だからこそ、人に紛れて生活する必要がある。
不老転生体が自己の生存戦略のために、そのコミュニティで庇護対象に見られるような外見をとるのは、こういった事情があるからだろう。
とは言え、生前の特徴を備えていないわけではない。
ジェーンは銀髪金眼であるし発生はメソポタミア地方であるため、日本人の両親の下に転生してもハーフのような顔立ちになる。
最後は、転生するという点である。
宗教的な話ではない。
種族としての機能の一つである。
不老不死では無い。
殺されれば死ぬ。
しかし転生を繰り返す。
数年から数十年の間隔を空けて任意の場所で生まれてくるのだ。
実質的に不老不死のように見えるが、転生を止める方法はある。
が、それはここで語るべきものでは無い。
閑話休題
「見た目が小学生の儂がババァならお前はなんじゃ!」立ち上がって腰に手を当てて抗議すると、セブンはそれに釣られるように立ち上がって同じく腰に手を当てて言い返す。
「見た目の話じゃねぇ!言動がババァだってんだよ!」
「ぐぬぬ...言わせておけば!お主だっておっさんじゃろうが!」大きく見上げる形になるが勢いは止まらない。何せ、いつものことである。
「んだと!ババァが週末寂しいだろうと、男の誘いをふって一緒に過ごしてやってるってのになんだよ!誰がおっさんだ!だれが!」胸の前で腕を組み己の胸部を強調すると、ジェーンも同じように身長の割には豊かな胸を強調して言い返す。
「はん!寂しくなんか無いわい!儂こう見えてモテモテじゃし!本当はデートも誘われとったんじゃて!」
「嘘言うな!」
「本当じゃし!」
「...それはそれで問題があるだろう!」
「ふん!よくは分からんが「ごうほう」とかで「もーまんたい」で超好みって熱烈な求愛じゃったぞ!」
「...やめとけ」
「あん?」
「そいつはやめとけ、な?」
「な、なんじゃ...急に...」
「理由は...まぁ...とにかくやめとけ」
「お...おぅ」
こうしていつもにように夜が更けていく。
日付も変わろうかという頃。
「のうセブンよ。お主いつになったら自分の部屋へ帰るんじゃ?」
「オレココキニイッタ、オレココニスム」
「巫山戯んな」思わず笑いが込み上げてくるが、ここで受け入れようものなら、本当に住み着いてしまうのは目に見えている。
それ故に「どうせゲームが目当てじゃろうが!そんな奴と同棲などできんわ!」
「じゃーここに住んでもいいって事だな!」
「はぁ?何を言うとる?日本語能力どこへ置いて来た?」
「ゲームが目当てじゃなきゃ同棲してもいいんだろう?で、目当てはゲームじゃ無いし!はい同棲決定!不束者ですがよろしくお願いします」三つ指付いて頭を下げるセブンに慌てるジェーン。
「な?!なんじゃ!?急に しおらしくなりおって!?」
「こういう方が好きだろ?」顔を上げてニカッと笑うセブンに毒気を抜かれて
「礼儀正しい方が良いは良いが...って違う!」
セブンに抱き寄せられるジェーン
顔に胸を押し当てられる形になる。
「......」熱のこもった眼差しでジェーンを見つめる。
潤んだ瞳はジェーンの瞳を覗き込む。
「.....本音は?...怒らんから言ってみよ」
「もっとゲームがしたいです!」
「はぁ...いつ来ても構わんが部屋には帰れ」
「よっしゃぁ!」
「おい、しおらしいのどこへ置いて来た」
「元から持ってねぇよ!」
「はぁ...この小悪魔め」
了
最終更新:2022年10月19日 18:16