『Dunkle Flamme』





■星河空:天野遥の幼馴染でSS大尉。IF世界の彼はいろいろと拗らせている。

■天野遥:航空部と海洋冒険部に所属。IF世界の彼は流され系のヒロイン(笑)。



航空部員を捕らえたので尋問せよ。
俺を含めた3人に命令が下った。サディストの綾瀬が一緒なのが気になるが、まあいい。
おそらく強情な相手かそれなりの地位(おそらくは佐官以上)の相手か、あるいはその両方かなのだろう。
尋問室に向かう間に質問役が村井、拷問役が綾瀬、そして書記役が俺と、なんとなく役割分担ができ上がっていた。
綾瀬は目を輝かせて鞭を持ち出してきた‥‥変態め。

尋問室。
耐Gスーツ姿の男が手足を縛られて転がされている。うつ伏せになっているため顔はよく見えない。
「面白くないな」
綾瀬が鼻を鳴らしたかと思うと、耐Gスーツの胸元に手をかけた。
ちぎり取る勢いでジッパーを下ろし、中に着ていたアンダーシャツを小型のナイフで切り裂く。
併せてスーツも切り裂き、男をトランクス1枚の姿にしてしまった。
「‥‥せめてこれをはかせてやれ」
薄手のズボンを投げてやると、綾瀬は再び鼻を鳴らした。
「ふん、お優しいことだ。やるならお前がやれ。俺は男にはかせるなんざまっぴらだ」

男を椅子に座る形で縛りなおすため手足のロープを切り、ついでにズボンをはかせようとしたとき。
「こ、こいつ‥‥」
俺は驚愕した。
「ああ、伝えてなかったか?航空部の天野遥少佐だ」
事もなげに答える村井。
「空母計画の中核にして、月光洞帝国高原の総督だ。さぞいい情報を持っていることだろう」
綾瀬はにやにやしながら鞭を弄んでいる。
「こいつ、パイロットとしての腕は相当なもののはずだが。どうやって撃墜した?」
震えそうになる声を抑えつけながら尋ねる。
俺以外の、いったい誰が遥を‥‥怒りと悔しさ、そしてわずかな悲しみが胸で渦巻く。
「ああ、銀河帝国との演習中にアベンジャーで墜としたらしいぜ。こいつ本当にちょこまか動くから、ほとんど偶然で当たったようなもんらしいが」
そうか、横殴りか。俺が堂々と決着をつけてやるつもりだったのに。
村井はさっさと遥を後ろ手にして椅子に縛り付けると、水入りのバケツを手にした。
「さあ、始めるぞ」

‥‥綾瀬が動員されるわけだ。
確かに遥は佐官、かつ強情な相手だった。
みるみる遥の上半身がミミズ腫れで埋め尽くされる。鞭がうなるたび、俺自身も切り裂かれるような気がした。
しかし遥は綾瀬がどれだけ鞭を振るおうと、うめき声すら上げない。歯を食いしばって目を固くつぶり、決して声を出さなかった。
日焼けしていない白い肌に刻まれる、赫い傷と蒼い痣。殴られているのは俺ではないのに、頭がくらくらする。
「答えろ!」
びしっ!と鞭が振り下ろされ、ついに遥は意識を失った。
もう限界だ。俺は声を上げた。
「‥‥一時中断だ」
村井は驚いたように、綾瀬は不満そうに俺を振り返った。
「殺してしまってはまずい。我々も少し冷静になる必要がある」
「それは、確かにその通りだ。休憩にするか」
俺たちは遥を残し、尋問室を出た。
しばらく歩いたところで声を上げる。
「しまった、記録を持ってくるのを忘れた」
「何も喋っていないんだから記録なんかないだろう?」
「忘れたのは問題だろう」
「それはそうだがな」
「取ってくる」
そして俺は1人、尋問室に戻った。

「おい‥‥おい!」
「ん‥‥」
力なくうなだれていた遥が顔を上げた。ぱちぱちと数回瞬きして、顔色を変える。
「お前は!」
「しっ!」
叫びかける遥を押し留め、俺はナイフを出した。遥を縛り付けているロープをぶつぶつと断ち切る。
「なんで‥‥」
「黙ってついて来い」
ふらつく遥に、敢えて手を貸さない。貸してしまったら俺は‥‥
俺は黙ったまま遥の前に立ち、自分の部屋へと連れて行った。

俺は士官なので個室を持っている。当然鍵付きだ。
遥を部屋に入れると、後ろ手に鍵をかける。これで誰も手出しができなくなった。そう、誰も。
ゆっくりと体ごと遥に向き直る。
「‥‥空」
迷いを含んだ遥の声。と、怒りが込み上げてきた。
俺が、この俺がお前を撃墜するはずだったのに。お前を撃墜できるのは俺しかいないはずだったのに。
「なんで俺を?」
「黙れ」
俺は遥を睨みつけた。
なんだってアベンジャーなんかに撃墜されるんだ。なんで俺じゃないんだ。なんで!
思わず手を振り上げる。
と、遥が身を固くした。綾瀬の拷問にも耐えきった遥が。俺の手に怯えるのか‥‥
次の瞬間、俺は遥を抱きしめていた。
「馬鹿野郎!‥‥お前を撃墜できるのは俺だ。俺だけなんだ。それがこんな‥‥馬鹿野郎‥‥」
そうだ。お前を怯えさせられるのも俺だけだ。俺しかいないんだ。
「空‥‥」
戸惑っている遥の腕を引き、ベッドに座らせる。
「手ひどくやられたもんだな」
「途中からは俺も意地になってたからさ」
そう言って苦笑する遥は、ひどく弱っていて痛々しかった。

「俺が墜とされてから、どのくらい経ったんだ?」
「2日だな。ほぼ丸一日殴られ続けていた。よく耐えられたものだ」
本当にそう思う。なんて意志の強い奴なんだ。だからこそ、幼い日の約束を守り続けて、あの模型飛行機を大切にし続けていられたんだろう。
「やせ我慢も良し悪しってことだな。水をぶっかけられるたびに少しずつ飲んでたからなんとか生きてるって感じだ」
「ああ、そうだったな」
そうだった。遥はずっと飲まず食わずだったんだ。
俺はベッドサイドのテーブルから水差しを取ると、コップに注いで遥に手渡した。
「ありがとう」
受け取ったが、手が震えて少しこぼしてしまう。その水がミミズ腫れにかかり、遥は顔をしかめた。
この馬鹿。なんでそこまで意地を張り続けたんだ。こんなにぼろぼろになってしまって‥‥
「馬鹿だな。さっさと白状してしまえばいいものを」
「そんなことができるなら、俺は少佐になってないさ」
「それもそうだな」
顔を見合わせて笑いあう。ふと、幼い日の遥の笑顔を思い出した。
ああ、同じだ。成長しても、笑顔はあのときのままだ。
「しかし空。なんで俺をここに?」
軽く首を傾げて、立っている俺を見上げる遥。その表情は幼く、頼りない。
「‥‥見ていられなかった」
「え?」
「気づかなかったのか?あそこにいた3人のうち1人が俺だったんだ」
遥は眉を寄せて考え込む。と、その表情に理解の色が広がった。
「そうか、メモを取っていたのがお前だったのか」
「お前が何も喋らないから何も書けなかったがな」
思わず苦笑する。こいつ、俺がどれほど心配していたか、本当に気づいていないんだな。
そう、心配と言えば‥‥
「どうしたんだ?」
「遥。俺はときどき、お前を見ていた。お前、ずっと悩んでいただろう?」
遥は一瞬戸惑ったが、すぐにうなずいた。
「‥‥ああ、悩んでいた。お前と戦わなきゃならないのか、殺し合いをしなければならないのか。ずっと悩んでいた」
「本当に馬鹿だな」
ふわり。再度遥を抱きしめる。駄目だ、もう我慢できない。

「戦わなくてすむ方法があるじゃないか」
俺は遥をベッドに押し倒した。
傷がシーツに擦れたのか、遥がわずかに眉を寄せる。
ああ、こんなに傷だらけになって、それでも耐えていたなんて。
たまらず、肩口の傷に舌を這わせる。
「くっ‥‥!」
遥の口から吐息が漏れる。熱い息。
「なあ、お前もこっちに来いよ。そうすれば俺たちが戦う必要なんかなくなる」
抱きしめて、いくつもの傷に唇を這わせる。遥の息が徐々に荒くなる。
「‥‥それは‥‥」
「お前ももう悩まなくてすむんだ」
そうだ。遥、俺と来い。俺のところに来い。
「空‥‥俺は‥‥」
その声にはすでに喘ぎが混ざっている。
「わかってる。お前は航空部員だ。俺たちとは敵同士だ。でも、俺はお前が大切なんだ」
応じると、遥は目を見開いた。
「俺だって!俺だって、お前が大切だ」
その言葉に頭が熱くなる。ああ、遥。お前も俺を大切に思ってくれていたのか。
「なら、争う必要はないだろう。俺と来い、遥。お前の腕と軍の知識があれば、すぐにでも幹部になれる」
「でも俺は‥‥」
声を震わせ、それでも反論しようとする遥。
「今は喋るな」
唇を重ね、言葉を遮った。

椅子に縛り付けられていたため、背中には傷がない。
俺は背後から遥を抱きすくめ、肩に顔を載せるようにしてその頬に唇を滑らせた。
「そ‥‥ら‥‥」
「俺に任せろ、遥」
拷問前にはかせていたズボンを剥ぎ取る。遥の身体に残っているのは、トランクス1枚だけだ。
抱きすくめていた手を前へ回し、その中心に当てる。
ゆっくり手を滑らせると、徐々に膨らみが感じられてきた。
「は‥‥あっ‥‥」
自分も服を脱ぎ、ボクサーパンツ1枚になる。俺のそれは、すでに完全に張りつめていた。
「遥‥‥」
もう一度唇を重ねると、舌で遥の唇を割り開いた。遥はすでに抵抗しない。
吸い上げるように、吐息を交わす。あふれた唾液がつっと流れ落ちた。
片手で頬をゆっくりと撫でながら、もう片手でトランクスをずらす。
ぷるんと飛び出してきたものにそっと指を這わせると、遥がぎゅっと眉を寄せた。
「我慢するな」
声をかけると、寄っていた眉が元に戻る。同時に薄く開いた唇から、吐息が零れ落ちる。
そうだ、遥。俺の前で我慢するな。俺にだけはすべてを見せろ。涙も、笑顔も、俺にだけは隠すな。
「空‥‥空‥‥」
切なげな声が、さらに俺を奮い立たせる。
俺は一気に、遥を割り開いた。小さな門に先端を当て、ゆっくりと沈める。
「うぐっ!」
苦痛の声とともに、遥が張りつめていたものを放った。
「きついか?」
「大丈夫だ‥‥お前になら‥‥」
小さいが、はっきりした言葉。
俺はゆっくりと腰を進める。遥が小さく啼く。悲鳴のように。それでも俺はやめない。遥に、俺を刻みつける。

「じゃあ、それでいいんだな?」
俺の言葉に、遥はうなずいた。
「ああ。撃墜からもう3日経つんだろう?それでも見つからないんだから、俺はもうMIA扱いだ。戻る必要はない」
俺のベッドに横たわったままの遥は、何も身に着けていない。そんな遥を抱き寄せ、俺はささやいた。
「学園には戻れないぞ?」
「構わないさ‥‥お前がいるんだから」
その目には、昏い決意が見える。自分が堕ちたことを認め、堕ちたところで生きていく決意が。
「わかった、歓迎しよう。SSへようこそ、天野遥“元”少佐」

‥‥遥は、堕ちた。俺と共に。

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最終更新:2022年10月18日 23:58