『ジェーン・ドゥと彼奴の誕生日(クリスマス) 第八部』


■ジェーンさん:白いゴスロリの魔法使い。
見た目は小学生。女難の相あり。

今生名:瑠璃堂院月子

イラストは、( 「ケモ魔女メーカー」 )にて作成


■セブンさん:ジェーンが【運命の方翼】と呼ぶ女。輪廻の中でジェーンと親子だったり恋人だったりと切っても切れない中。
セブンにはその記憶は無い。


イラストは、( 「女メーカー」 )にて作成


■那須さん:ジェーン大好き。女装男子。
中国拳法と東洋医術を修めている。
推しの幸せは...私の幸せ...



イラストは、( 「ひよこ男子」 )にて作成


■不老転生体:
殺さない限りは死なないが、死ねば数年から数十年の間を開けて人から生まれてくる。
同族により特殊な武器で首をはねられると消滅、転生できなくなる。
同族殺しを行ったものは力を得ていく。
ジェーンはこの戦いに否定的であるため魔法と口先で逃げ回っている。



ジェーン・ドゥと彼奴の誕生日(クリスマス) 第八部


12月24日 昼下がり 雨
神戸 ビーナスブリッジ

展望台になっているこの場所は
ジェーンのとってもつい最近、思い出の場所となった。

眼下には神戸の街が一望できる。

ベンチに座って傘も刺さずに、幸男(ゆき)の電話にあった大男の魔法使いについて考えていた。

思い当たるの一人だけ。
「プリスクス・アッタルス」
ジェーンの首を狙う不老転生体(同族)の一人。
その名を口にした。

不老転生体は殺すか殺されるか(やるかやられるか)だ、それ故に別の不老転生体と一緒には行動しない。
漁夫の利を狙われて自分の首を取られる可能性があるからだ。

『プリスクス』
もういつの時代か忘れてしまったけれど、最初に彼と遭遇したのも、雨の日だったように思う。

【それぞれが持つ特殊な武器で相手の首を斬り落とす】
これが不老転生体同士の戦いにおける唯一の『勝利条件』だ。
そして勝利した者は倒した相手の力を吸収する事になる。

それ以外の方法では、『肉体の死』を迎えても転生という形で蘇る。

つまり彼らは不死では無い。
人間よりも頑丈で、回復しやすく、死ににくいとは言っても、やりすぎて仕舞えば首を落とす前に死んでしまう。
そうなればその骸は即座に崩れて消える。
崩れ方は人によって違うようだが……。
そうなってしまえば『勝利』とは言えず力を吸収することもできない。
それ故に、動けなくなるまで弱らせてから、特殊武器で首を刎ねるのが彼ら同士の戦いだった。


ジェーンは今までの戦いの記憶を振り返る。
しかし、まともに戦った記憶がなかった。
ジェーンも長い転生人生の中で何人かの不老転生体の首をとったことはある。
けれどそれは、長い生に疲れた者の願いを聞いた結果だった。

頭の中に色んなことが浮かんでは消え、浮かんでは消え……。

「奈菜……」愛しい女の名前が無意識にでた。

背後で雨に濡れた足音が聞こえる。

「ついに、見つけたぞ!……小さい……?」

背後から聞こえたその言葉に、返事をする気力が湧かなかった。

「どんな作戦だろうとも、今回こそお前の力を俺のモノにしてみせるぞ!」

「昼間はセブンと同じような事を言っておったな」呟きが溢れる。

「いくぞ!」
雨の中飛来する炎の魔法。
炎の魔法は雨で弱る事なくジェーンの背中に着弾する。

躱そうとも防ごうともせず、まともに受けたそれはジェーンの背中を大きく焼く。
「……なんのつもりか知らんが、抵抗しないなら好都合だ」

声の主が近づいて来る。
魔法を撃ち込みながら。

ジェーンは服も髪も焼けて、皮膚は炭化し爛れ、血が滴る。
痛みのあまり呼吸さえも辛くなる。

「もしや罠か!?」
飛び退いて距離を取ると周囲を警戒する。
その姿は滑稽なほどに慎重だった。

それはジェーンにいいようにあしらわれ逃げられてきたからだが、当の本人は振り向きさえしない。

※※※※
葉車本邸 

連絡に行き違いなどあり空港から葉車本邸まで、本来の所要時間の数倍をかけて到着した幸男(ゆき)はセブンの部屋へ通された。

そこで、異変に気づく。
「どうしたの?……ねぇ?センセェは?」
「嫌われちまった……出て行ったよ」その言葉を口にすることすら辛そうに。

「は?そんなわけないでしょ。何言ってんの?」
「あの電話の後、追われてる理由を聞いたんだ」
「……教えてもらえなかったでしょ?」
「あぁ……その通りだ」
少し驚いたように一瞬幸男(ゆき)を見るがすぐに俯く。

「で?教えてもらえなくてあんたはどうしたのよ?」
「……どうしたらいいか分からなくて……ずっと……無視して……」
「そう、やっぱりアンタにはふさわしく無いのよ」
「じゃぁ!どうすればよかったんだよ!俺だって彼奴の力になりたいさ!でも!何も教えてくれないんだ……」
「私はセンセェが好き。過去のセンセェじゃなくて今のセンセェが好き。アンタは?」
「俺だってそうさ!」
「なら、狙われてる理由なんて知る必要ある?愛した女が狙われてるってのに!アンタは何をやってるんのよ!」
「……」
「このまま失っていいの?」
「……嫌だ」
「私もよ!ジェーンは誰にも渡さないわ!例え相手が死神でもね!」
「……ジェーンがすきな相手が、俺じゃなくてお前だったらアイツも幸せだったろうな」
その台詞を言い終えた途端、幸男(ゆき)のビンタがセブンの頬を張った。

「アンタは今、私だけじゃなくセンセェも馬鹿にしたのよ!あの人が選んだのはアンタでしょう!相応しくないと思うなら!相応しくなりなさい!」
「お前……」
「さぁ!センセェを探して!センセェを助けに行くわよ!」
「……ああ!」

※※※※
ビーナスブリッジ

「罠……ではないのか?」

「どうしたのじゃ?儂をお前のものにするんじゃろう?はよう、首を刎ねよ」
相変わらずその小さな背中を向けたまま、まるで自殺志願者のような事を言う。

「!?……やはり、罠か!その手にはのらんぞ!」
無い罠を警戒して踏み込めないでいると、痺れを切らしたジェーンが「(儂の消滅まで)もう少しじゃのに」と呟いた。

ジェーンに過去何度もあしらわれてきたプリスクスは、全神経を彼女に集中していたため、辛うじてその呟きを拾うことができた。
「(もう少し!?罠まで後少しと言うことか!やはり、ウル・アスタルテ『
イシュタルの愛娘』の異名は伊達では無いな……罠の正体が分からぬ以上、深く踏み込めない)……無抵抗を装い、己を囮に罠に嵌めようと言う魂胆だろうがそうはいかん!悔しいがここまでだ!また修行して次こそはお前の首を貰い受ける!」
「……何を?……修行?」
「そうとも!俺は魔法に磨きをかけるため明で仙術を学んでいるのだ!ククク……次に会う時が楽しみだ!さらばだ!」

空高く飛び上がると、弾かれたように西の空に飛んでいく男。
プリスクスの残した光跡を見て呆れるしかなかった。
「アイツあんなに阿呆じゃったかの……」

背中に激痛が走る。
消し飛ばないように手加減しながらの魔法とは言え、確実にジェーンの背中を焼いていた。
人間なら既に死んでいるところだ。

「……え?解決?」
気の緩みと激痛で、水溜りへ倒れ込む。
「カカ……こんな事なら……」
そこで意識は途切れた。

※※※※
暗く……纏わりつくような……沼のそこへ沈んでいくような……そんな感覚と共に、自他の境界線が薄れていく。

彼女はそれを受け入れようとしていた……

呼ばれた気がする、でも知らない声?

「(儂を呼ぶのは誰じゃ……?)」
背中の痛みも感じない。

「(ああ……結局、首を取られたのか?……こんな感じになるんじゃな)」

恐怖も不安もない。

ただ、家族の待つ実家へ帰るような安心感があった。

【…………】

「(お母様?)」

【…………】

「(帰れる?……アイツの元へ)」

【…………】

「(でも……もう)」

【…………】

仄かな浮遊感が体を包み、絶対的な安心感がジェーンの胸を満たしていた。


※※※※
「……!」
「……ンセェ!」

呼ばれている

「ジェーン!」
「ジェーンセンセェ!」

儂の事か……?

「俺が間違ってたよ!ジェーン!ごめんよ!」
「センセェ!私のところへ戻って来てください!」
「俺の側に居ろ!」
「温泉!まだ約束守ってもらってませんよ!」
「この後のパーティー!すっぽかす気か!」
「アンタ!センセェが大変なときに!」
「お前だって温泉とか言ってたじゃねぇか!」

「(うるさい……)」

「センセェ!こんなやつほっといて私のところへ!」
「あの日の夜の責任はとるから!」
「はぁ!?な……なによその責任って!?」

「(うるさい!)」

「俺とジェーンはもう……な!」
「なにてれてんのよ!なんなの!?そう言うことなの!?」

「うるさい!!」

「「ジェーン!」センセェ!」

ジェーンがあまりの煩さに抗議をすると、彼女の無事を側で祈っていた二人から熱い包容を受ける。
「ジェーン!大丈夫か?」
「センセェ!おかえりなさい!」

「ちょっとお二人とも!ジェーンさんは怪我人なんですよ!」

※※※※
私立葉車大学附属病院

葉車の敷地内にあり、地域住民のみならずドクターヘリの活用による広域救急病院としての側面を持つ、西日本有数の大病院であり研究施設でもある。

背中に重度の火傷を負って運び込まれた少女を診た若い医者は、意識が戻ったと言う少女を再診察したのだが……。

「(何が!?何が起こってるんだ!?)」
それは目の前で光を発しながら塞がっていく傷を観ての事だった。

「ひゃぁん!?」
ジェーンがビクリとその身を震わせる。
「ああ!ごめん!……傷が……」
医学の常識を越えた現象が目の前で起こっていた。
その奇跡のような現象に、思わず指を這わせた。
それに反応してしまうジェーンだった。

「センセェのあんな色っぽい声、初めて聞きました!ねぇセブンもそうでしょう?」
「え?あぁ、うん、そうだな?はは」
「……え?……嘘でしょ?え?待って?責任って……そう言うことなの!?」

幸男(ゆき)の追求にたじたじのセブン
「そ、それは……ジェーン!」

「なんじゃ?責任とってくれるんじゃろ?」
「あ、う……そんなことは後だ!」
「ほう?儂との事は『そんなこと』……か」
「センセェ!今からでも私にしましょう!」

奇跡のような現象を観た若い医者は思う。
「(傷が塞がる事よりも、この子達が笑いあえる事こそが奇跡か)」

※※※※
12月24日 夕方
葉車本邸 ジェーンの部屋

ジェーンの傷は夕刻前に塞がって、本人からすれば本調子の8割の回復との事だった。
医者の許可を得て、一時帰宅の形をとって帰宅したのだ。

「荷物、運んでおいてくれたんじゃな」「当然だろ?」
「荷物おいて行った原因はセブンだけどね?」

「「…………」」

「まぁそうセブンを責めるでない、温泉に入れるのもセブンのお陰でもあるんじゃし」
「元々センセェがちゃんと言ってくれてれば、二人っきりだったはずなんですけどね?」

「怒られてやんの」
「そもそもアンタが『神戸行きはやめだ』とか紛らわしいこと言ったからよ」

「「ごめんなさい」」
二人して頭を下げた。
その息のあいっぷりを見て、胸のうちにざわつきを覚える。
けれど、幸男(ゆき)は今後も増えるであろうこんな感情に慣れるべく、呪文を口にするのだった。

「推しの幸せは私の幸せ」


※※※※
12月24日 夜 
葉車本邸 ダンスホール

「……ダンスホールって、なんじゃ……」

そこはまるで『会議は踊る、されど進まず』の言葉が生まれることになった場所、シェーンブルン宮殿のそれであった。

「いいかジェーン、ダンスホールってのはな、社交界などで開かれるダンスパーティーなどの会場「知っておるわ!」」

今日の昼間に完成したばかりのドレス――朝焼けから青に変わる空の色をした、オフショルダーのロリッぽさのある――を纏って入場し、開口一番のセリフだった。

そんなジェーンを揶揄うのは薄い赤紫のボディラインのハッキリでるドレス――首元から胸の谷間をレースでカバーしている――を纏うセブン。

「馬鹿なこと言ってないで、お父さんとか挨拶してきたらどうです?」
メイド姿の幸男(ゆき)が、お盆を片手にそう言ってため息をつく。

「よう似合っとるぞ」
「ほんとですか!嬉しい!」その場でくるりと回って見せた幸男(ゆき)だった。
けれど、先輩メイドはそんな幸男(ゆき)を見逃さず、ツカツカと歩み寄るとセブンにお辞儀をして幸男(ゆき)の耳を引っ張って行った。
「痛い!痛いです!ちょ!ちぎれる!ちぎれる!」

「メイドさん達、はりきっとるの」
「今日は非公式とは言え外交の場だからな」
「は?」

「ほれ、あそこの髭の人、中米のM国の大使だし、その隣の隣は南米のC国、あっちの窓際でメイドを口説いてるのは中東のS国、あっちは中東のQ国」
「まぁ……クリスマスパーティに参加しとること自体、心配になる国がいるようじゃが?」

「それだけこの場が重要だってことよ」
「儂、腹が痛くなってきたんで帰っていいかの?」
ジェーンの手を慌ててとり「ダメだ!今日はずっとそばに居ろ!」
「カカカ!泣き虫セブンめ!」
「……そうならないようにしろよ」
「……そうじゃの……ところで」
「なんだよ?」
「綺麗じゃな、よう似合っとる」
「……遅い」
「お主だって言うておらんではないか」
「言ったし」
「いつ?」
「仕立て上がったとき」
「……無視しておったくせに」
「だって……あれは……」
「カカカ ほれ、九重ちゃん所へ行ってみようではないか」

ダンスホールでは各国要人や葉車グループの重役、各部門の責任者など達が歓談している。

「のぉ、儂 こういうクリスマスパーティに参加したの初めてなんだが、こう言うもんなのか?」
「知らん」
「……」思わずジト目でセブンを見上げると「この場にいると思うか?真面目な信徒が?」
とぶっちゃける。

「九重ちゃんかわいいのぉ」
あからさまに話題を変えるのだった。

九重の隣に妙に馴れ馴れしい感じの、タキシードを着た男性の背中がみえる。
衆人の目を気にしない……と言うよりも、わざと衆目を集めるように振る舞ってるようにも見えた。

「九重ちゃんの横にいるのは誰じゃ?」
「……九重の婚約者だ」
「……納得づくか?」
「アイツさ……『葉車の為なら』って言うんだぜ……」
「……皆んなはそれで納得しておるのか?」
「曾祖父さん同士の約束らしいが、メリットもデメリットも……天才のアイツのことだ、理解しての事だろ……」

「お主は納得しておるのか?」
「『手を引くのは慈悲であり優しさなれども、負ぶって行くのは無惨なり』てな」
「なんじゃそれは?」
「うちの訓育に有るんだよ『決めるのは本人』って言う意味も含んでてな……アイツがOKだと言うなら、俺達はそれをサポートするだけだ」
「だが、あの子はまだ13歳じゃろ?人生を決めるのは早くないか?」
「俺達も同じ歳の頃に選択したんだよ」
「みんなか?」
「一重兄さんだけは、選択できないって聞いたな」
「長男がそうなら九重ちゃんまでせんでええじゃろ?」
どうやらジェーンは不機嫌な様子。

「それにあの男が九重ちゃんに相応しくなかろう?」
「どうしてそう思う?」
「……儂のよう知っておる男に雰囲気が似とる」

セブンが手を離さないので見に行けず、その場から顔が見えなかとぴょこぴょこしてるジェーン。

「雰囲気か? まぁお前が言うなら、他の連中よりも何かあるんだろうけどよ……」
「なんじゃ?」
「雰囲気ってだけじゃな……」
「とにかく見に行こうではないか」
「余計なことはするなよ?」
「儂は、九重ちゃんの味方じゃ、任せておけ」

※※※※
九重とその婚約者の顔が見える場所へ移動した二人は、声をかけてくる男達を適当にあしらって二人を観察していた。

「どうにも……見覚えがあるの……彼奴の名前は?」
「確か……菱丸……菱丸なんとかだな」

腕を組んで首を捻りひねり考えるジェーン。
「どこかで見たんじゃがなぁ……」

「あ!お姉様!」
先程からずっと大人しくお淑やかに振る舞っていた九重が、セブンを見つけるなり声を弾ませて駆け寄ってきた。
その姿は年相応の女の子。

椿が描かれた振袖に袴姿という、この洋装多い場では浮く出立ちだけれど彼女らしい格好だと二人は感じた。
「よう似合っとるぞ」
「ああ、うちの妹は本当に可愛いな」
「奈菜お姉様もジェーンお姉様もとてもよくお似合いです!」

「九重、急に走り出してダメじゃないか、君は僕の隣にいるのが仕事だろ?」
菱丸なんとかが、九重の肩に腕を回しながらそう言った。

九重の表情が、二人と話していた子供っぽい――年相応の――表情から、先程までのお淑やかな――感情を感じさせない――表情を張り付かせた。

「……陽一さん、こちらは姉の奈菜とそのご学友のジェーン様です」
「はじめまして、陽一さん。姉の奈菜です。なにぶん忙中の閑も無くご挨拶が遅れた事、お詫び致しますわ」

「……九重の姉なら僕の姉ですから、次から気を付けてくれたらいいですよ」

「「「……」」」

「さ 九重あっちでやる事があるだろ」
九重の腕を引いていく。
「あっ お姉様……」
手を伸ばす九重。
けれど、セブンがその手を取る寸前にその手を退き、どこかでぎこちない笑顔で菱丸着いていく。

「見たか?」
「うむ」
「あれはダメだな」
「うむ……馬の骨……馬に失礼じゃの?」
「菱丸……菱丸……たしか……家柄はそれほどではないけど、そこそこ金持ちだった気がするな……?」
「ふむ」

「ごきげんようお嬢様方、何か悩み事ですか?」

二人が唸っているとスラリとした40前後の男性に声をかけられる。
「ごきげんよう、相談相手には間に合ってますから大丈夫ですわ」
「(普段のセブンとは別人のようじゃな)」

「おや、それは良かった!私はてっきりあの『菱丸』についてお悩みなのかと……」

アイコンタクトを交わした二人は男の両腕を取って引っ張っていく。
「おっとっと!いやぁ、美女二人に腕を取られて僕は幸せ者だなぁ!」

※※※※
庭へと続くテラス

ダンスホールの大窓から溢れる灯りが、三人を照らす。

「つまらん洒落じゃな」
「おっと!これは手厳しい!」
「アイツがスパイだなんて証拠はあるのかよ?」
「まだ無いよ」
「……まだ?」
「まだならダメじゃろ」

男は内閣調査室のタナカと名乗って、菱丸を某国のスパイに利用されようとしているとうち開けた。
その上で証拠はないと言って二人を呆れさせた。

「しかし、いずれ彼が九重嬢を連れて国を出て、そこで彼女を利用する計画だよ?」
「……」
「葉車としても九重嬢という金のなる木を手放すのは避けたいんじゃないかな?」
「葉車父や爺さんが手放すとは思えんが?」
「いくら葉車が世界的に影響ある存在だとしても、世界のルールから外れる国なんていっぱいあるからね?例えば、そうやって拉致した人間を働かせるっていう国があるだろ?」
先程まではどこか飄々とした雰囲気だったのに、この一瞬は怒りを滲ませていた。

「まぁそんなわけでさ、こっちとしてはそうならないようにしたいわけですよ」

ジェーンがセブンの手を握る。
『(セブン、聞こえるか)』
「んお!?」びくりと震えて慌てて小さな相棒に視線を移す。

『(テレパシーというやつじゃ、彼奴にバレぬように振る舞え)』
『(わかった……すげぇな!)』
『(彼奴の事が信用できるかどうかはさておいてどの道、九重ちゃんをあんな奴にやるわけにはいかぬじゃろ?)』
『(ああ、その通りだ、真剣な顔も可愛いな)』
『(そこで、彼奴を利用する形で九重ちゃんを守ろうではないか)』
『(ああ!九重は俺の大事な妹だからな!ジェーンお前もだぞ!可愛いなキスしてぇ)』
『(ダダ漏れじゃ!今それどころではなかろう!まぁ嬉しいがの)』

タナカからすれば、手を繋ぐ二人のうち大きい方がビクッとしたり慌てるような様子だったり、小さい方の顔が赤くなったりと、二人の事を知る身としてはおおよその察しはついてしまうのだった。

「お二人さん、イチャつくのはそこまでにしてもらえませんかね?」

「「……」」モジモジする二人に肩をすくめるタナカ。

「私としても、思いつきでお二人に話を持ってきたわけじゃないんですよ?私も学園のOBなので、ね?」
「なるほど、元公安かスパイ研ってとこかの?」
「まぁそんなところですよ」

「儂らに具体的に何をさせたいんじゃ?」
「お二人なら、一番自然な形で九重嬢の気持ちをハッキリさせられるんじゃないかと」
「説得すれば良いのかの?」
そんな事で、葉車家の決めた事が覆るのかと隣の大きな相棒を見上げる。
「……最悪、学園に引きこもっちまえば……」

タナカはタバコを咥えてライターを探しながら「結果として君のお兄さんのスパイ行為を防ぎ、九重嬢を葉車へ留める事ができればいいんです。方法はお任せしますよ」

「分かった。取り敢えず、九重を守るっていう方針は決定したんだ、一先ず礼を言うよ」

その言葉を受けてタナカはダンスホールへ戻っていく。
背中越しに「応援してますよ」と告げて。

テラスに残る二人は大窓の中、九重を見ながら肩を寄せ合い寒さに耐えていた。

「タナカの奴、菱丸を儂の兄じゃと言わんかったか?」
「……そう言えば、あれはお前に向けて言ってたように思うな。ウチの兄さん達が巻き込まれるのかと思ったが、思い返してみると確かにジェーン、お前に言ってたな」
「儂の兄……なら、菱丸っておかしくないか?」
「養子……とか?」
「長男をか?」
「瑠璃堂院の家の事は聞いたが、あり得るんじゃないか?」
「ほう?」
「気を悪くするなよ?」
そう前置いてセブンは瑠璃堂院家の現状と現当主、つまりジェーンこと瑠璃堂院月子の父の人柄など述べていく。

「つまり、家を潰す結果になっても子供にいい未来を残してやりたくて、菱丸家へ養子に出したと?」
「調べてみないと分からんけどな」
「しかし、儂の実家について儂より詳しいの!カカカ!」
「まぁ、そこはほら、子供のことを心配しない親はいないって事で」
「……千夜重殿か」
セブンは嬉しさと、恥ずかしさと、申し訳なさとの混ざったなんとも言えない表情をするのだった。

※※※※
「九重、ちょっといいですか?」
セブンが『あっちへ』とジェスチャー付きで九重を誘う。
「はい!」嬉しそうに着いて行こうとする。
しかし、菱丸がその腕を取り「どこへ行くんだい?ダメじゃないか、僕の隣で引き立ててくれないと」

そんな菱丸を冷たい目で見ながら「陽一さんにはお相手がいらっしゃるでしょう?さ九重、行きますよ」

「というわけじゃ、兄上よ」
菱丸陽一は声の主へ振り向くと、そこには九重の姉と一緒にいた小さい女の子が立っていた。
銀髪金眼、絹のような緩くウェーブにかかった肩まである銀髪、右眼を眼帯で隠してる少女の事は、よくよく見れば見たことある顔だった。

「……お前……月子か?」
「そうじゃ、10年ぶりじゃの」
「いや、おかしいだろ、月子なら今年で…18位のはずだ。お前はどう見ても小学生だろ」
「カカカ!儂のこと散々『異常』とか『妖怪』だとか言っておったのに、今更何をいう」
「……話しかけるな、異常が感染る」
「カカカ!そうもいかん、連れ合いの頼みでの」
「『連れ合い』?……どういう事だ?それよりも、なんでこんな所にいるんだ?」
「なんで『瑠璃堂院』ではなく『菱丸』なのかを教えてくれたら、答えよう」
「はぁ、まいい……九重も取られてしまったし、隠すような事でもないしな。暇潰しに相手をしてもらおうか」
「ならば、着いて参れ。場所を変えて話そうではないか」
陽一は微かな眩暈のような揺れを感じたが、すぐに治ったので小規模の地震かとすぐに気にしなくなった。

暗い部屋に陽一と彼の妹の月子――ジェーン――だけがいる。

菱丸陽一――瑠璃堂院陽一はセブンの予想通り菱丸家へ養子に入ったこと。そして曾祖父同士の約束で子か孫か曾孫を結婚させようと話していた事。没落した瑠璃堂院家から養子に出されたときは悲観したが、ようやく運が向いてきた事、九重の名前目当てではあるものの、海外の企業から高待遇で誘われていることなど聞いてもいないことまでベラベラと話してくれた。

「で、なんでお前がここにいるんだ?」
「だって儂、友達じゃもん」
「九重の?」
「九重()じゃ」
「……なんだ、お前も上手くやってるんだな、金のなる木が近くにあるってこんなに良いんだな!はははっ!」
二人きりと安心して本音を口にする。

「金のなる木か……しかし、結婚を了承するくらいなら、九重ちゃ……九重の事を好きなんじゃろ?」
「確かに可愛いが、俺はロリコンではないからな、どちらかと言えば奈菜だっけ?あっちの方がいい、お前もあんなスタイルになったら遊んでやるよっはっはっは!」

「兄上は結婚した後どうするんじゃ?」
「さっきも言ったろ、海外へ移住するさ。アレがいれば一生遊んで暮らせるからな!」
「そんな企業よりも葉車の方が信用できるじゃろ?」
「日本にいたら、遊べねぇだろう?」
「……」
「アレが、姉のようなスタイルになれば毎日でも良いかもな、どのみち愛人は三人は欲しいな!」
「……(クソが)」
「アレの親父も愛人六人だっけ?七人だっけ?孫敬するなぁ!いっそお前も愛人になったらどうだ?見た目は悪くないんだしよ?」

「もういい……虫唾が走る」
「あ?なんだと?」

ジェーンが指を鳴らす。
すると、先程まで暗く二人しかいないと思っていた部屋に、九重、セブン、九重達の父の京一、葉車家の現当主である那由多、九重の生みの親であり兄弟達の母を自負する千夜重、他にも数名のメイドや女中が居て総勢二十名ほどの姿が現れた。

「陽一……お前……」40代男性が血の気のひいた顔でヨロヨロと陽一へ歩み寄る。
「お父さん……なんで……?これはいったい……?」
「(お父さん?するとアレが菱丸の……哀れじゃな)」

「菱丸さん、生前の親父の話で其方との縁談を設けていたが、どうやらその必要は無くなったようだの」
那由多が重々しくそう言うと続いて京一が「残念だよヒッシー、俺とお前の中だからこそ娘が幸せになるならと思っていたんだが……」

「ちょ……ちょっと待ってください!一体何を……」陽一慌てた様子で声を上げる。

セブンの後ろから顔だけ出して九重が
「陽一さん、貴方との婚約は破棄いたします。二度と私の前に現れないでください」そう言って顔を引っ込めた。

「九重!何を言ってるんだよ!?君は僕のものだろう!こっちへ来るんだ!」

「チェーンバインド」
ジェーンが呟くと陽一の周囲に複数の魔法陣が浮かび上がり、そこから飛び出した魔法の鎖が、彼をその場に繋ぎ止める。

「なんだこれ!月子!お前の仕業か!そうだ!この月子は化け物なんですよ!皆さん!見たでしょう!きっとみんなこいつの妖術とかに幻覚を見せられてるんですよ!離せ!月子!この化け物めぇ!」

そんな陽一の頬を張る音響いた。
「もう辞めなさい、陽一」
陽一の養父だった。
彼は葉車家の面々に深く頭を下げ
「この度は息子の言動に九重嬢、さらには葉車家の皆さんに不快な思いをさせてしまった事を心よりお詫び申し上げます。本日はこれにてお暇し、後日改めて謝罪に参りたいと思います」
「父さん!何を言ってるんだよ!悪いのはあの化け物だろ!俺は悪くない!」

陽一はそのまま養父に連れられて行く
「月子!化け物め!お前が生まれてきたせいで!死ね!化け物!死ねぇ!」
連れて行かれてからもしばらくはその叫び声が聞こえていた。

メイドと女中が退出し、ジェーンと葉車の血族だけが残る。
ジェーンは動けないでいた。

不老転生体は、肉体の死を迎えると数年から数十年の間隔をあけて、人間から生まれてくる。
意識や異能は生前のそれを引き継いでいて、肉体的特徴も生前のものと同じように生まれてくる。
これにより時代や文化によって、忌避されたり有り難がれたりする。
現代の日本ではどうか?
銀髪金眼である不老転生体は一見、遺伝子疾患のアルビノのように見える。
アルビノは医療機関で判別できる、現代では広く知られているものだ。

しかし、今回のジェーンの例で言えば顔立ちが日本人の両親から生まれたと言うよりも、母が外国人と浮気したと言った方が納得できる顔立ちだ。
これにより両親は離婚。
幸せだったはずの瑠璃堂院家の最初の不幸となる。

生まれたばかりの不老転生体はその異能が弱く戦う事はできないが、さらに言えばその制御さえもろくにできない状態になる。
寝ている間に周囲のものを浮かせたり破壊してしまったりと、通常ではあり得ない事を引き起こしてしまう。

そんな時期のジェーンを知っているからこそ、陽一は彼女を『化け物』と呼び、ジェーンは自分のせいで家庭崩壊したと負い目に感じている。

「何度転生しても、家族から言われるのは堪えるのぉ」誰の耳にも届くことのない呟きは雫となって床のシミになる。

肩を落とし涙を流すジェーンを優しく包み込んでくれる者がいた。
セブンである。

「……全部……全部愛してる」

それは全てを受け入れるという意味だった。

しかし、彼女はまだ知らないのだ。
自分の愛する者が、その小さな身体に3000年を超える人生を生きた魂が入っていると言う事を。

その事を知られた時に、その愛を失ってしまうのではないか……そんな可能性にジェーンはただ恐怖を感じるのだった。


※※※※
12月24日 深夜
葉車本邸 ジェーンの部屋

「どう?」
パジャマ姿でソファーに寝転がって寛いでいる幸男(ゆき)が、顔だけむけてセブンに聞く。

「二人とも寝たぜ……ずっと泣いてた」
ジェーンが寝るまで付き添っていたセブンはそう言って、自分の目頭を拭った。

その仕草に気がつかないふりをして
「そう、お疲れ様……なんか飲む?」
勢いつけて起きた幸男(ゆき)が冷蔵庫を開けながらセブンを労う。

「炭酸がいいな」
「……さすが葉車の本邸ね、全部自分とこのやつじゃん」ふふふと笑みをこぼす。

お互いに缶を開けて「カンパーイ」

この1ヶ月で起こった事件を振り返りながら、互いを労った。
「怒らずに聞いてくれ」
「内容によるわね」

「……俺はお前が羨ましいよ」
「私はあんたの方が羨ましいけどね」
「ああ、立場ってわけじゃなくて、ジェーンと生死を共にして誰より深い絆がある様に見えるんだよ」
「……そう、それでも私はセンセェと結ばれる方がいいわ」
「ぶれねぇな」
「あんたのは『隣の芝は〜』ってやつよ」
「……そういうもんか」
「そういうもんよ」

ソファーに座って、特に何をするでもなくただ落ち着いたこの時間を二人は大事にしていた。

セブンのスマホが鳴る。
『千夜重お母さん』

「もしもし」
『奈々ちゃん、十美恵ちゃんの事知らせておくわね』
「はい、お願いします」
『万事解決よ。明日の朝には公式に発表されるのだけど、アメリカは完全に手を引くわ』
「さすが!千夜重母さん!ありがとう!」
『我が子の為ですからね、当然の事をしたまでですよ』
「(アメリカ相手に要求を飲ませるのは普通じゃないけど……黙っとこう)」
『それじゃ、明日の朝を楽しみにね。おやすみなさい』
「おやすみなさい。ありがとうお母さん、大好き」
『ふふふ、おやすみなさい』

「なんだったの?」
「問題が一個解決したんだ」
「そう、おめでとう」
「ありがとう」

どちらともなく、欠伸が出る。
「私も寝るわ……お休み」
そう言ってジェーンたちが寝るベッドへ向かう幸男(ゆき)
「ああ、おやすみ……っておい!お前の部屋は隣だろうが!」
「いやよ!今日こそ、センセェと添い遂げるの!」
「バカいうな!さっさと部屋へ戻れ!」
「あんたばっかりずるいわよ!」
ドアのところで押し問答する二人を、遠巻きに女中たちが見守っていた。

※※※※
ジェーンと九重が寝るベッド

「まったく、ゆきの野郎めしつこい野郎だぜ」
ジェーンと九重は向かい合って寝ている。
ジェーンを背中から抱く様にベッドに潜り込むと
「ん……セブンか」
「ああ、安心して寝ろ」
「儂……お主の……こと……」
「……どうせなら最後まで行ってから寝ろよ……まぁいいや……おやすみ、俺の『運命の方翼』」
ジェーンの首筋に印を幾つも付けて満足したのか、セブンもそのまま眠りについた。

※※※※
12月25日 朝
葉車本邸 ジェーンの部屋

「おはようございます!お二人とも起きてください!」
そう言ってベッドへダイブする九重。

ジェーンとセブン

友を失いかけた。
命を失いかけた。
愛を失いかけた。

けれど

友を救い
命を救い
愛を救った


二枚の『翼』はこうして、ようやく羽ばたくのだった。

※※※※

ジェーン・ドゥと彼奴の誕生日(クリスマス) 第八部 完


エピローグ

「温泉♪温泉♪温泉♪」
「ウキウキじゃのぉ」

幸男(ゆき)とジェーンの約束である『温泉』へきたのだ。
神戸で温泉と言えば、代表的なものは有馬温泉だろうと言う事でセブンの運転する、この日のために購入改造しておいた、ローバーミニMk-3で坂道を登ってきたのだ。
改造内容は排気量を1998cc、V型6気筒、180馬力へ。
これの説明をした際にセブンとジェーンが顔を赤くしていたのだが、幸男(ゆき)は気づかないふりをしたのだった。

「そりゃそうですよ!センセェ温泉なんですから!」
「カカカ!待たせたのぉ」
「本当ですよ!でもぉ!許しちゃう!約束守ってくれたから!」
「男女別だからな?」
ウキウキの幸男(ゆき)に冷や水をかけるよな事を言うセブン。

「……なるほど!」ポンと手を打ち
『一人称が俺』っていう男らしいセブン君が男湯で、センセェと私は女湯ですね!わかります!」
早口で捲し立てるとジェーンの手をとって温泉へ向かう幸男(ゆき)

「行かせるわけねぇだろ!」
「なんでよ!私みたいな綺麗所が男湯なんかに入ったら事件が起きるでしょうが!」
「女湯の方が事件だろうが!」
「たまには譲りなさいよ!」

名物の『炭酸せんべい』と『温泉サイダー』を手に持って二人の相棒を優しげに見守るジェーン。

彼女は今、幸せだった。



エピローグ2

※※※※
12月24日 昼
宇津帆島 九重の屋敷

「あはははは!もっと!もっと!」
十美恵がおおはしゃぎで喜んでいるのは、兄達に肩車されたりお姫様抱っこからパスされると言う、男兄妹がいて初めてできる遊びを始めて経験したからだった。

十美恵は彼女が作成した【演算補助アプリ:Om-E-Kne】の、アメリカからの製作者引き渡し要求を躱す為、宇津帆島に一時的な避難をしていた。

そこで彼女が普段経験することのない男兄弟の遊びを経験しているのだ。

「お兄様方、そろそろ変わってくださいな。私たちだって十美恵でげふん 十美恵と遊びたいんですの」
「そうですわ、お兄様。十美恵でげふん十美恵と遊ぶのをそろそろ変わってほしいですわ」
五葉と六花がそう抗議して、「それなら十美恵争奪戦をやろうと言う提案がなされ、それはいつの間にか兄弟だけでなく学園生徒を巻き込んだ『クリスマスの女神争奪戦』というお祭り騒ぎとなっていった。
優勝者には『葉車十美恵』と遊ぶ権利が授与されるだけなのだが、いつの間にやら『葉車の美女と仲良くなれる』という噂が一人歩きし遂には葉車が手に入ると言う話に。
もちろんそんなことはないのだけれど、五葉と六花が面白そうだからと、その噂をあえて否定せずお祭りはスタート。

双子の美人姉妹からすれば、こうやって遊ぶ事こそが義務だと信じて疑わないのだった。

結局は、優勝者は「百地忍」という女生徒がなり後日、身内同士の出来レースと囁かれたが、2021年夏の『南郷の再来:百地忍騒動』の際の動画が拡散されたおかげで、優勝者にふさわしい身体能力と証明され、その噂は程なくして沈静化。

図らずも活動写真部の作成したドキュメント映画『二人の指輪物語』のBlu-ray、DVDの売り上げが上がり、一般生徒が撮影して投稿された動画も、軒並み再生数を伸ばすことになった。

「【演算補助アプリ:Om-E-Kne(オモイカネ)】ですか?……なんか、いざという時のために作っておかなきゃっていう想いに駆られて勢いでつくりました!」

例え宇宙が巻き戻っても姉を救いたいと言う強い思いは、彼女を動かし続けていたのでした。

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最終更新:2022年10月19日 18:21