魔の街へ飛べ
束の間の休息
8月下旬、竜狩りをした2,3日経った頃。
テレビでは、月光洞第一次探検隊の帰還のニュースが流れている。
第一次探検隊は、月光洞時間約1年半の探検を終えて帰還。それと入れ替わる形で、第二次探検隊が出発した。
「始原の友」の部員である露子には有力な情報が得られていた。
●旧大南帝国領での大規模な戦いが勃発。
●それにより後南王国が滅亡。
●南山王国が大きく勢力を伸ばす。
5人と紅美、麗久は露子の屋台に集まり、食事をしながら情報交換をした。
そこへ血相を変えたエイブラムス・阿部がやって来る。
【阿部】「大変な事が起こった!応石研究で有名なスティーブン教授とマシュウ博士、それに十数名の学園生徒が誘拐された!大南人と思われる者達にさらわれたらしい!」
※教授と博士はスマホ応石の開発者
指輪の力
【百目紅美】「王は、『応石の製造方法』を知りたくて、教授と博士をさらったの。そして、その手法を聞き出そうとしているわ」
紅美には分かった。力の指輪の持ち主は、支配の指輪の位置しかわからない。逆に支配の指輪の持ち主は、力の指輪の持ち主の事がわかる。この韓猷という王は、力の指輪を得て数百年生きているらしい・・・。
【エステル・宮里=アーレンベルク】「なにはともあれ善なる王とは思えん。急ごう。」
月光洞へ
【椿敦也】「じゃあまずベースキャンプで情報集めましょう。それから竜を呼び出して飛ぶか、ゲート経由で大南府に出るかしましょう」
一行は装甲屋台でベースキャンプに到着したが、そこは教授たちの捜索で混乱状態だった。話では、キャンプが鎧鯨の集団に襲撃された。
それに乗ってきた大南人と思われる異形の顔をしたものたちが、教授たちをさらっていったという。(教授、博士、12人の学園生徒。)大南人は、明らかに教授と博士のことを知っていて、何の迷いもなく二人を特定したそうだ。
【椿敦也】「ヤツらSIMなしスマホに顔写真入れてますからね」
【紅美】「聖都の王宮にいるわ・・・」
皆に伝える紅美。支配の指輪を持つ者にはそこが特定出来た。
ハリン人からの情報提供
ヨハンの交渉により、航空部の無人偵察機、グローバルホークを聖都に向かわせる事ができた。数時間で聖都があると思われる空域に到達するそうだ。
露子の炊き出しが始まり、捜索範囲の方向性が決まったということもあり、キャンプは落ち着きを取り戻していく。キャンプには「ハリン人」という現地人が居て情報を得ることが出来る。
●帝国は、元々が緑衣人たちが作った国。
●帝国は皇帝がいた時はまとまっていたが、その皇帝が死んだという話が流れた時に分裂。
●巨人たちは【帝国】によって作られた。
●自然の事(ことわり)に反したことをやり戦う兵士たちを作っている。
【エステル・宮里=アーレンベルク】「彼らの聖都ってのは何か彼らにとって大切な都市なの?」
聖都の名前を出すとハリンたちは口を閉ざし、明らかに禁忌であるという表情を浮かべる。
聖都の正体
【航空部員】「あんたらが言う【聖都】の偵察写真なのだが……」
航空部員が差し出す写真には、ほぼ真円状の壁に囲まれた都市のようなものが映っている。建物は人間の内臓の写真といってもおかしくないような色や形をしている。
【相馬左門】「え、建材が人?」
【エステル・宮里=アーレンベルク】行きましょう。あの中に人質を1日たりとも留めおけない。
いざ聖都へ
敦也は応石獣「竜」を召喚し、甲屋台を抱きかかえ一路聖都へ。しばらくすると、海の向こうに人工物が見えてくる。露子は建物の素材が「人」であるのが分かる。そして少なくとも「生きている」。
【エステル・宮里=アーレンベルク】「椿さん、あの場を早く浄めてくださいませんか。」
【椿敦也】「やろう。王宮に向けてブレス!」
【ヨハン・S・アンデルセン】「ブルワァァァァァァ!!!!」装甲屋台から飛び出す。
突入
火球は王宮の正面玄関に命中し穴を開ける。真っ白な「頭のない」巨人兵が姿を現す。麗久はいざという時、脱出できるよう石像を置く。巨人の足元には身長1mほどの腕や足が武器になっている人影。数は全部で100ほど。
ヨハンの爆導索が飛び、通路の真ん中に落ちて爆発。敵兵の壁に穴が開き突入する一行。
【百目紅美】「教授たちはこの奥! 5つほど部屋をこえた先!」
あの剣士
その時、青白く輝いた石像から一本の刀が突き出され、周りの兵たちを一閃。
【護家平斬四郎】「仁や義理では振るわぬが……金のためには人ば斬る。ここは任せて先に行け。なに、代金は阿部の旦那からもらっている」
一同は前進し、階段を駆け上がりドアの無い入り口を駆け抜ける。
美女軍団
次の部屋には3人の美女。姿かたちは見目麗しいが、身長は4mほどあり艶然とほほ笑みながら、2mほどのダンビラを両手に持って斬りかかってくる!
エステルの応石「伏」で1体が伏せ状態。残り2体は敦也の「べび花火」で赤子がのし掛かる。そこへヨハンの無数の銃剣が突き立ち、美女を撃破する。
エステルを乗せた麗久の自転車が走り抜け、左門が抜け、敦也の順に部屋を駆け抜ける。露子は屋台で帰る場所を確保する。
阿部からの援軍
【鳴神徹】「お呼ばれしてないが」
【烏丸ネレディ】「手助けにきたで」
石像からワープしてきた彼らは露子の屋台の周りに立ち、敵兵をなぎ倒していく。
肉の部屋
次の部屋は一面の肉の壁になっている。内臓をひっくり返したかのような壁からは、人のような形をした肉塊が行く手を阻むが、エステルの一撃で次の道が開かれる。
捕らわれた12人の生徒
道を進むと、先程と同じような肉壁の光景が広がる。壁面には12人の学園生徒が塗りこめられようとしている。中央には4本腕の巨人兵が、今まさに手にした手術道具を振り上げようとしている。
すかさず、ヨハンと敦也の攻撃。爆導索が爆発し、巨人兵を爆炎が包む。そこに花火が飛び、アッパーカットで巨人兵を天井までめり込ませる。
気絶している生徒達を無事救出する事が出来た。紅美が応石獣「飆」を出し、ケロベロスの様なそれは生徒達を器用にくわえる。
王の間
王の間には、巨大な芋虫か白アリの女王アリを思わせる巨大な肉塊が居る。その肉塊の一部には人間の顔と手足が生えている。
【百目紅美】「こいつが、韓猷よ──!」
【韓猷】「封人炉の復活と支配の指輪が同時に我が物になるとは! おまえたちは生きたまま応石にしてやるから安心しろ。もうその二人に用はない」
左門と敦也が教授と博士らを救い出すと、韓猷は自らの身体から7体の人体を繰り出す。ヨハンの一撃で人体の一つがバラバラになり、左門の一撃で人体の一つが真っ二つになる。
麗久のホーミングレーザーが人体の手足を焼き払い、エステルの突きが胴体を貫く。紅美が両手に抜いた2挺のモーゼルで人体の一つをハチの巣にする。動いている人体は残り3体。
【韓猷】「やるな。しかし、これは避けられるか?」
韓猷の顔の前に「雷」の文字が浮かび上がり、突然雷撃が襲ってくる。麗久は直撃を受けて静止。紅美も雷撃を喰らう。そこに人体が襲いかかってくる。左門にしがみついた人体が自爆。怪我はなかったが、床の一部に脚が引っかかり抜けなくなる。
【韓猷】「さて、支配の指輪を・・・」
倒れている紅美に韓猷は腕を向けて伸ばす。ヨハンとエステルは人体に邪魔されてしまう。大急ぎで屋台を向かわせる露子。敦也の放った花火は韓猷の手を弾き飛ばすが、残りの花火が誘爆して敦也は部屋の隅まで吹き飛ばされる。
人体に向けたヨハンの攻撃が見事ヒットするが銃剣が尽きてしまう。そこへエステルの多段突きで、残り全ての人体が撃破する。
そこに露子の屋台が突入するが、人体の残骸を踏んで、車がスリップして止まってしまう。左門は応石「土」を使い、床を土化して抜け出す。
【韓猷】「この一撃はどうかな!」
韓猷の眼前にまたもや「雷」の文字が浮かび上がり、雷撃が降ってくる。同時に露子が応石「邪」で押さえつける。紅美を救おうと屋台のアクセルを踏み込む露子だったが瞬間、屋台のエンジンが爆発する。
【韓猷】「さぁ、どうする? もやは手も足もでないか?」
エステルは巨大化と応石「棒」の力を使い韓猷の腕を撃破。敦也は竜を呼びドラゴンブレスを発射。ブレスは韓猷の身体、その後ろの肉塊に次々と命中する。
激戦後
【韓猷】「──こ、これが支配の……」
【椿敦也】「違うね。ボクはおまえの同類だよ……さっさと眠るんだね」
韓猷の顔や手足が燃え上がり、左手から金色の指輪がポロリと落ちる。それは床を転がり、紅美の前で止まる。
紅美はそれを左手で受け止め、支配の指輪に飲み込ませます。韓猷が燃えつくされると同時に、地鳴りが響き始める。
【椿敦也】「崩れる!?」
雷の石
露子は急いで韓猷と「雷」の石を分離させる。露子は手の中には「雷」と浮かび上がる石が・・・。
脱出
巨大化したエステルによって全員脱出。ワープできる石像で無事、宇津帆島に戻る事が出来た。その直前、露子の頭に飛んできた鍋が命中。
露子は重傷。病院送りになった。もちろん雷撃を受けた紅美もである。麗久はロボット工学研が引き取りにくる。
ゲイトで負傷者などを保健委員会に引き渡し、各種報道クラブ・委員会の取材を受けて一同が解放されるのはそれから数時間後であった。
その後
事件もなんとか解決し、学園はまた普段どおりの空気を取り戻した。
第二次探検隊は予定通り派遣され、さすがにこの件で軍事研が護衛につくことになり大部隊となった。
【エイブラムス・阿部】「封人炉の破壊はオカルト研が責任をもって果たしておこう。南豪の件、王国の件、指輪の件。それぞれにSS残党やいろいろなクラブが関わっているようだ」
メロン12個
【エステル・宮里=アーレンベルク】「じゃぁ、みんなで美味しいものでも持って、露子さん達のお見舞いに行こう!」
メロンの箱を抱えて一行は病院に向かうのであった。
最終更新:2022年10月19日 00:17