『ジェーン・ドゥとジェーン2 秋の夜長の説教タイム セブンさんの場合』


■ジェーンさん:白いゴスロリの魔法使い。
見た目は小学生。
女難の相あり。←多分自業自得。

今生名:瑠璃堂院月子

イラストは、( 「ケモ魔女メーカー」 )にて作成


■セブンさん:ジェーンが【運命の方翼】と呼ぶ女。輪廻の中でジェーンと親子だったり恋人だったりと切っても切れない中。
セブンにはその記憶は無い。


イラストは、( 「女メーカー」 )にて作成


■那須さん:ジェーン大好き。女装男子→女。
中国拳法と東洋医術を修めている。
推しの幸せは...私の幸せ...



イラストは、( 「ひよこ男子」 )にて作成


■不老転生体:
殺さない限りは死なないが、死ねば数年から数十年の間を開けて人から生まれてくる。
同族により特殊な武器で首をはねられると消滅、転生できなくなる。
同族殺しを行ったものは力を得ていく。
ジェーンはこの戦いに否定的であるため魔法と口先で逃げ回っている。


※※※※※※


 宇津帆島の上空に台風が停滞し被害を拡大させる中で、もう一つの嵐の中心がそこにはあった。
 蓬莱学園の女子寮である【弁天寮】の一室でその嵐は今日も吹き荒れていた。

「だから!この子は儂の子も同然とはいえ、儂の子ではない!」
 ジェーンさんが何度も同じようにして繰り返す釈明も、彼女の恋人であるセブンを納得させるには至らなかった。
 他人だとは思えないほど似通っているこの子は、学園のコンピュータ研が作り出したナノマシンで構成された科学的人造人間(ホルムンクス)なのだ。
 しかし、それがいけなかった。
 ジェーンさんは家庭用ゲーム機をセットアップすることすらできない機械音痴だ。
 それをよく知るセブンさんが、「科学的」だなんていっても信じるわけがなかった。

「仮にこいつがそのホルモンだかなんだかだとして、お前のことを知りすぎだろうが!お前と性格や好みまで似てるってどういうことだよ!お前の子じゃなきゃありえねぇだろう!」
 セブンさんとしてはもういっそ信じてしまいたかったけれど、ほかの女との間の子という疑念が、ジェーンさんへの愛や自身のプライド、そして幸男(ゆき)や千穂と比べてジェーンとの関係の歴史や特別な関係性の薄さによって抜くことができない心の棘となっていた。

「ホルモンってなんじゃ!そんなうまそうなもんじゃなかろうが!」

 ジェーンのそんな突っ込みを聞きながら二人のやり取りを観戦している3人、幸男(ゆき)、千穂、ジェーン2は3人でぼそぼそと話していた。
 なぜこのようになっているかといえば、5人で話し込んでいても話自体が進まないため、まずは一人ずつということになり、今はセブンさんの番だった。

 ゆ「(ホルモン……お腹がすくわね)」 幸男(ゆき)がそういうと。
 ち「(今夜のご飯はもつ鍋にいたしましょうか?)」千穂が提案し。
 2「(我……まずそうか?)」ジェーン2が我が道を行く。
 こんな具合にジェーンとセブンの会話の邪魔にならぬように部屋の隅で仲良くやっているのだった。

 ゆ「(もつ鍋、良いわね!じゃぁ手配しましょうか)」
 ち「(手配?手配とは?)」
 2「(我が……食材か)」
 ゆ「(最近、お料理研の【八味鍋】がケータリングをやってるのを知ったのよ。結構便利よ?だから、呼んで準備から料理までやってもらいましょう)」
 ち「(それでは、愛のこもった料理を月子様に食べていただけないじゃありませんか!?)」
 2「(愛でお腹は膨れないぞ?)」
 ゆ「(センセェの思考回路をコピーしてると聞いたけど……確かにセンセェも言いそうだわ)」
 ち「(たしかに月子様ならいいそうですけどね?でも、その程度の理解ではまだまだですわ。月子様なら『けれども、心の栄養になる』くらいのことはおっしゃいますわ)」
 2「(けれども、心の栄養になる きり)」幼女はキメ顔でそういった。

※※※※※
 2時間後。

「わかった……あの子は、お前のデータを取り込んで作られたクローンみたいなもんだということだな?」
「なんで、クローンって言葉だとすぐに理解するんじゃ……」
「まぁそこは、前年度の副会長を見てるからな」
「……よくわからんが、分かってもらえたようで安心したわい」
 胸をなでおろしたジェーンであったが……「で、ユキとの事を詳しく聞かせてもらおうか?」
 安心するのはまだまだ早かったようだ。

※※※※※

 目の前にはぐつぐつと湯気を立て、視覚、聴覚、嗅覚に訴えてくる千穂特性のもつ鍋が出来上がっていた。

 ゆ「(鍋出来たわね……おなかすいたわ)」キッチンから取り皿やお茶碗を持ってきて配膳しながら、鍋をのぞき込んでそういった。
 ち「(月子様をまちませんと)」鍋の蓋を閉めながら、ジェーンとセブンの様子を見る。
 2「(うまうま)」いつの間によそったのか、一人で食べ始めるジェーン2。
 ゆ「(あ……ふふ)」
 ち「(まぁ!……ん~!名前!名前がまだありませんわ!)」未だ決まらないジェーン2の名前がないことで呼び方に困ってしまって、つい語気が強くなってしまう。
 2「(これはもつ鍋である、具はまだ煮えてない)」先ほど食べて煮えているのは確認済みだけど、そんなことを言うジェーン2。
 ゆ「(酒樽に落ちそうな感じね?ぼっちゃん、ぼっちゃん ふふ)」
 ち「(今宵が嵐でよかったわ……だって、お月さまで返さなくてすむもの)」

 終わらない二人を見て、先に食べ始めることにした3人だった。

 ち「(そういえば、貴女さっきから飲んでるそれ、お酒じゃありませんの!?未成年の飲酒は違法ですのよ!)」
 2「(般若湯といえば仏も黙る)」
 ゆ「(私、成人式すませてるわよ?)」心の中で「済ませた【だけ】だけどね」と可愛らしく舌を出すユキさんだった。
 ち「(え!そうだったんですの……失礼しましたわ……ってああもう名前がない!あなたは飲んではいけません!)」
 2「(これはトウモロコシのジュース、問題ない)」
 ゆ「(うふふふ……千穂ちゃんも飲んでみたらいいわ、おいしいわよ?)」
 ち「(未成年に飲酒を進めるのも犯罪ですよ!)」
 2「(神代より受け継がれた酒をして人が罪だなどと、片腹痛いわ)」
 ゆ「(あはははっ!いいそういいそう!)」
 ち「(はぁ……もういいです。飲みたい人は飲めばいいんです。私は知りません!)」
 2「(痛いお腹に医食同源、肉をよこせ)」小鉢を差し出して、彼女なりのおねだりだった。

 ※※※※※

「つまり、ユキとは一線を越えてないんだな?」
「……一応、聞いておくが一線とはどの辺を指しておるんじゃ?」
「そりゃぁ……あれだ……」
「……どれじゃ?」
「……わかるだろうが!」
「儂は、寝ても覚めてもいついかなる時も、セブンのことを思っておる。故に、心移りなど断じてない!」
「!……ほんとうだな?」
「ずっとそう言っておるじゃろうが!」
「ジェーン……そんなに俺のことを……」
「儂が、運命の片翼と呼ぶのはお主だけじゃ」
「ジェーン」
「うむ、しかし儂は傷ついた、しばらく距離を置こうと思う」
「!?冗談言うな!……冗談だよな?」
「……」
「ジェーンごめんよ……俺……お前がいないと」
「……」
「ジェーン……ぐす……ごめんなさい」
「はぁ……安心せよ、わしはお主のもの、お主は儂のものじゃ」
「うん……ありがとう」

 こうして、セブンの誤解(?)は解け仲直りできたのでした。
 しかし、お気づきだろうか?ジェーンさんは「一線を越えたか?」という質問に答えていないことに!

※※※※

 お腹いっぱい食べた3人はヒーロー映画を見ながら雑談にふけっていた。

 ゆ「(理想はピュアッピュアな方がいいよね)」
 ち「(実現させようとする熱い行動力が必要だわ)」
 2「(手段を択ばない覚悟もね)」

※※※※

「そもそも、女同士で子供ができるはずがないじゃろ」
「いやぁお前ならありうるかなって」
「儂は聖母なんぞになるつもりはないわい!カカカカ!」

「そういえば、この外の台風そろそろなんとかしろよ」
「無理じゃな」
「は?……お前がやったんだろ?」
「そうじゃな」
「じゃーなんとかしろよ」
「カッとなってやった、後悔はしていない」
「……俺は何も見ていないし、聞いてないからな!」
「我が運命の片翼よ、一蓮托生って言葉を知っておるか?」
「悪魔かよ」
「カカカカ!自称神より神っぽいじゃろうが!」

※※※※

 こうしてジェーンさんとセブンさんは以前のように仲直りを果たしましたとさ。

※※※※※※

 ジェーン・ドゥとジェーン2 秋の夜長の説教タイム セブンさんの場合 おわり

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最終更新:2022年10月19日 18:24