とあるメイドのお嬢様お世話日誌 第1790回 By旭ゆうひ
とあるメイドのお嬢様お世話日誌 第1790回
本日の担当 小明戸
2020ねん11月01日 はれ
AM 04:50
お嬢様を起こしに寝室へ向かう。
一昨日、本土から派遣されて来たばかりの私にとってこの時間はつらい。
なんてったって3時半起きだし……起きてシャワーを浴びて化粧して身だしなみを整える。
5時にお嬢様を起こそうと思ったらどうしてもこんな時間になる……
こんな大変な仕事だとは思わなかった。
大旦那様のお屋敷ではとても盛大にお祝いしてくれたし出世コースだと聞かされていたけれど……はぁ もう帰りたい。
あ、冗談です(>_<)
給料がいいのはありがたいけど、使う場所がなぁ……ユニバいきたい!ネズミー行きたい!宝塚で推しに貢ぎたい!
本物のお嬢様にお仕えするってことで志願したんだけどなぁ
ヅカみたいなお嬢様を想像してたのになぁ……
和服だし……子供だし……めっちゃ可愛いけども……
初めてのお嬢様番、はじめてお嬢様を起こしに行く。
このお嬢様番って1日中お嬢様に付きっ切りでお世話するんですよね?
休憩って……それに、自室からお嬢様の部屋まで遠い!自転車導入希望!
お嬢様のお部屋前
ドアの外からお嬢様へお声がけをする。
「お嬢様、起床のお時間です。湯浴みの支度も整っております」
……
「お嬢様起床のお時間です!」
何度かお声かけしてみたけれど起きてくる気配もないので、つい大きな声出してしまった。
大名東さんに知られたら怒られちゃう。
けど、何時まで経っても起きてこないので失礼しますとドアを開ける。
人の気配はない。
それどころか部屋を使った様子もない、もしかして朝帰りでも?
おもわずニヤケてしまったけれど、考えてみたらお嬢様はまだ13歳。
まぁ正直、めちゃくちゃかわいいから、めっちゃモテるよね。
ありうるかなぁ……
まぁ分からないときは先輩に聞いてみよう。
内線を使いメイドルームの先輩に聞いてみる。
「あのぉ、お嬢様のお姿見えなくって、朝帰りとかですかね?あはは」
すると電話の向こうは大騒ぎだ「お嬢様が朝帰りですって!?」
「あ、でも、お姿がみえないので詳しくは「朝帰りでお姿が見えないですって!?」
電話の向こうで叫ぶ声が聞こえる。
『警報!警報!第一種装備でお嬢様を保護せよ!繰り返す!第一種お嬢様を保護せよ!』
途端にけたたましい警報音が屋敷中に響き渡った。
なんだかとても大事になってしまった……
そういえば、第一種装備って何だっけ?
防弾ベストに自動小銃かぁ転職前を思い出すなぁ。
AM 7:30
結局お嬢様は工房にこもっておられただけだった。
大名東さんにめっちゃ怒られた。
寝室って工房の事かよ、最初っから言っててほしかったよ!
普通寝室って言えば寝室じゃん。
工房は工房だよ!
「何年メイドやってるの!」って、私まだ1か月なんですけど!
退官して葉車家へメイドとして入って一昨日此処へ来たんですけど!
……私、大名東さん苦手です。
今朝の献立は
【魚沼産コシヒカリ、国産大豆の自家製お味噌汁、北海道産バフンウニとイクラの小鉢、ホッケのみそ焼き】
朝から大変な仕事だったけど、この朝食で一日頑張れる。
この仕事についてよかった。
お嬢様は私たちと同じ卓で朝食をとられる。
同じものをお召し上がりになられる。
逆を言えば、お嬢様が召し上がるものを私たちも頂けてるということ。
葉車へ就職した時に不安になって
『給料から天引きとカですか?』ってきいたら
『家族なのだから同じものを食べるのは当たり前でしょう』と笑われたのを思い出しちゃった。
本当に、この仕事についてよかった。
AM 08:20
朝の騒ぎで湯浴みの時間が遅れてしまった。
朝からお風呂とは金持ちの家は凄いですね。
たしかにこの家のお風呂は総檜風呂で気持ちいいし
開閉式の壁を開けば日本庭園を一望できる露天風呂に早変わりする
何度も入りたくなる気持ちはわかる。
本土の実家がすっぽり入るくらいの浴室……もう、ここに住みたい。
お嬢様をお風呂に入れてさし上げる。
何でここまでするのかって初日に大名東さんへ聞いたら
お嬢様ご自身にお任せしてしまうと、ずーっと工房にこもってお風呂に入らないかららしい。
めっちゃかわいいのにもったいない性格ですねっていったら、めっちゃ怒られたんだった。
しかたない、私が綺麗にしてあげましょう!
AM :10:40
めっちゃ可愛い……なにこの生き物……
お風呂上りということもあって肌艶もよく、潤いのある長い髪……
私が男だったらロリコンにめざめてしまうね。
世の男性諸君は大変だなぁ。
片や私はそんな、めっっちゃカワイイお嬢様と朝からお風呂に入ったなんて
これはもう自慢していいのでは?
お風呂上りに大名東さんからお嬢様宛の荷物が来てると知らされる。
受け取りに行くと、これまたデカイ。
冷蔵庫かってくらいデカイ。
運び入れてもらおうとしたら、業者が荷物を倒してしまった!
なんてことを!
これがいくらの物かわからないけど、お嬢様が発注したということは絶対めっちゃ高いやつ!
しかも、中身の人形が飛び出しそうになってるじゃない!
私が強く抗議してるところで、お嬢様の視線に気が付いた。
お嬢様はふるふると首を振っておられる……どうやら抗議は必要ないと。
あのかわいいふるふるを見るために、もう少し抗議してもよかったけど
上司の機嫌を損ねるのはよろしくないってことは知ってる。
大人だからね。
PM 03:11
SSSの坂本さんが、お嬢様へお客人だと伝えてきた。
お客人はクラスメイトの、なんとか君。
お嬢様を前にしどろもどろ、真っ赤になって視線を合わすことができないでいる。
お嬢様を見ると「この人だれ?」って顔で私や大名東さんへ視線をやってる。
私は肩をすくめ、大名東さんはコッソリ耳打ちしていた。
お嬢様は得心が言ったようになんとか君へ視線を戻されたけど、
なんとか君はいまだにしどろもどろ。
「あんたさぁ!お嬢様はお忙しい中わざわざ、会ってくれてんだよ!?時間を無駄にするんじゃないよ!」おもわずイラッときて声を荒げてしまった。
大名東さんは呆れながらも、よく言ったという顔だ。
お嬢様はなんだかキラキラした顔を向けてこられてる。
え?なにこれ、めっちゃかわいいんですけど!
坂本さんから後で聞いたところ
結局、彼は一目惚れしたお嬢様へラブレターを渡したかったそうだ。
返事は後日でいいんだってさ。
だけど、お嬢様は彼の事を覚えてすらないので、結果は予想できるけどね。
PM 04:15
お嬢様は工房で午前中に届いた人形を観察・解体・組み立て・を繰り返していた。
工房の隅で椅子に座って本を読んでいた私はふと気になってラブレターの返事をどうするのかと聞いてみた。
するとお嬢様は意外なことに顔を真っ赤にしてごにょごにょとなにかをおっしゃったけどもその瞬間、人形が爆発した!
すぐに火は消されて大事には至らなかったけども
いや、普通は大事だけど先輩メイドたちのあの慣れた手つき……
どうやら今回が初めてじゃないみたい。
消火設備も充実してるし……金持ちってすごい。
お嬢様も私もチョット煤けた程度で済んだもの凄い。
大名東さんからお嬢様をお風呂へといわれたので、
本日2度目のお風呂。
やっぱり何度はいってもキモチイイ。
PM 07:00
夕食の献立
【お好み焼き定食】
えぇ……名家の晩御飯が庶民の味、お好み焼きって……
しかも、定食かぁ……
あらぁ お嬢様おいしそうにほおばっちゃって!
微笑ましいから良いんだけど、もっとこう、お嬢様にふさわしいコース料理とかあったんじゃないの?って……
大名東さんからは、お嬢様のリクエストだときいたけども……お嬢様ぁ……
PM 11:20
3回目の入浴が終り後は寝るだけ…のはずなのに、お嬢様はまた工房に。
お嬢様が寝るまで私の番終らないんですけど……
まぁそれでも、日付が変われば交代が来るはずだし。
あともうすこし。
今日も一日大変だった。
こうやって日誌を書いていると一日の事が思い出される。
ほんっと大変だった。
大名東さんは、すぐ慣れるわなんていうけどホントかなぁ。
正直此処の仕事につけてラッキーだし、できれば長く続けていけたらと思う。
お嬢様は手がかからないし家のことだって苦にはならない。
ちょーっと広すぎるけどそれは人数いるしそれほど大変じゃない。
もともと、メイドというよりも護衛だしね。
お家の事はあまり担当しないことになってるし。
とりあえず、明日は休日だしどこかへ遊びに行こうと思う。
けどなぁ、本土に残してきた彼が遊びに来てくれる……なんてないよねぇ。
ここめっちゃ遠いもんね。
そういえば、昼間のあのラブレターの返事どうするんだろう?
気になったのでそれとなく聞いてみたら
爆発
本日4度目の入浴……うちのお嬢様、恋愛耐性なさ過ぎ。
将来悪い男に引っかからないか心配だわ。
入浴はさすがに4回目なのでさっとすませた。
お嬢様と工房へ向かう途中、大名東さんが葉車印のコーヒーやサンドイッチ等をもって出かけるところだった。
くぎを刺しに行くのだという。
何の事かわからなかったけど、いずれ説明してくれるというので
今日のところは良しとしよう。
日付が変わり、引継ぎをし、お嬢様へ挨拶をしてから、自室へ戻る。
はぁ疲れた。
ご飯がおいしいのと、カワイイお嬢様が救いの仕事。
なんとかやっていけそうな気がする。
以上
追記:先輩方のフォローにも大変感謝しています!
最終更新:2022年10月19日 18:11