バンチョウ皿屋敷




熱い学ラン男


9月上旬。おりからのコロナ禍によって、9月の入学式や新入生歓迎式典などは簡素化したもので終わり、いつものにぎやかさに少し影が差したある日の朝。



正門駅の方から一人の学ラン男がやって来る。身長は2m近くの筋骨隆々で、肩にを乗せ、のっしのっしと歩いて。通学時間帯だった宗仁と弓子と鉄華は、その姿を目撃する。


学ラン男の学ランは時代錯誤の長ランで、その裾はボロボロ。学帽は上の部分が破けており、ツンツンと伸びた髪が突き出ている。履いている鉄下駄をガランゴロン言わせながら、学ラン男は講堂坂下にたどり着く。


【学ラン男】
「今こそ我々は、硬派の存在を諸君の目に見せてやる。我々が愛する歴史と伝統の学び舎、蓬莱学園だ。これを骨抜きにしてしまった軟弱たる軽薄な空気に我らは立ち向かおう。

【風杜宗仁】「うわー。なんか暑苦しいのきちゃったなあ」


【北大路鉄華】(ヒト科の胸肉…じゅる)←実は宇宙人である鉄華



変化



【風紀委員】「そこのおまえ! ここでの演説や活動は校則によって禁止されている! 学園騒乱罪で逮捕する」



警棒を抜いた風紀委員が近づくと、学ラン男は眼をカッと見開き、目にもとまらぬ速さで風紀委員たちを一撃で倒していく。


宗仁は50mほど離れた建物の屋上に向かい。麻酔銃を用意する。どさくさに紛れて鉄華は僅かに残った学生に観戦お弁当を売っている。


宗仁の麻酔銃は見事ヒットするが、学ラン男は微動だにしない。しばらくすると、倒れている風紀委員たちに変化が!風紀委員の制服が緑から黒に変わり……裾が長くなり……靴も鉄下駄に……。


おっす!おっす!


学ランを着た角刈りの生徒になって!それを見たやじ馬たちは一斉に逃げ出す。正門前講堂坂下は大混乱!



【北大路鉄華】
『あーお客さんお釣りお釣り!!!(儲けちゃった)』



鉄華のスマホがなり、所属するオカルト研の部長【エイブラムス・阿部】から電話がかかってくる。番長と接触した生徒がヤンキーになった事を伝えると、引き続き監視を行ってもらいたいと頼まれる。


元風紀委員たちは、学ラン男の前に並ぶと「おっす、おっす」と何かを聞いて、三々五々散らばっていく。



【エイブラムス・阿部】「なに? 変身した者が動き出しただと! まずいぞ!まずは安全が第一だ。対策は考える、今は避難したまえ」



宗仁は道脇に止めてあるオート三輪を拝借し、加賀と鉄華を乗せて避難する。鉄華は平行して狂的科学研に連絡。面白そうな素材が暴れている事を伝えると「ひゃっはー」モードで飛び出す部員。


講堂坂下からは時折「おっす、おっす」という声が聞こえてくる・・・・・。


病院にて


3人がオート三輪で委員会センターの方まで走っていると、委員会センターから風紀委員会の8輪装甲車が数台出てきてすれ違う。暫くすると「バンチョウファイアー!」「バンチョウコレダー!」などという声が聞こえてくる。


学食横丁の裏にある病院に辿り着くと院内は保健委員達が右往左往している。窓の外を見ている宗仁には分かるが、門柱のある所で何かの工事が始まっているのが見える。


学ラン生徒が一抱えもある切り出した岩のブロックを抱えて、それを積み上げる姿。
風紀の装甲車は全部車体がひん曲がって動かなくなってしまう。



【風杜宗仁】「奴さんたちなにやってんだか」



推理すると岩の大きさ、並べている範囲や形などから推測されるのは・・・彼らは「ピラミッド」を建てようとしている!?


アビゴール様


そうこうしていると、全員のスマホが起動する。


【アビゴール様】
「ふははははは。どうかね? 蓬莱学園の諸君。我々が開発した人型決戦兵器「バンチョウ」の威力は?我々はネオSS!このままバンチョウを放っておくと、学園は大変なことになるぞ。すべてがバンチョウに侵食され、学園は番長学園になるだろう」


【北大路鉄華】『別のシステムになってしまう!』


変身の原因



【エイブラムス・阿部】
「阿部だ。先ほどの通信は見たようだな。こっちでは、微生物研の協力を受けて、被害者からナノマシンを検出した」



【北大路鉄華】「ナノマシン?!それで接触感染…」



鉄華が話していると、窓の外を見ている宗仁は気づく。先程の学ラン達とは違う、別の学ラン一群がやって来るのを・・・。「蓬」と書かれた大きな旗を掲げて。その後、学ラン生徒たちと乱闘に。旗を持った一団は、しばらくたっても誰も変身している素振りがないのに気づく。


応戦団


【エイブラムス・阿部】
「制服が変化するのはナノマシンによるものだろう。それにより接触する相手との違いを認識しているやものしれん」


【北大路鉄華】
『蓬の旗を持ってる人は感染してないみたいです!』


【風杜宗仁】
「似たような暑苦しいのは見分けがつかないってこと?」
※同時に彼らが応援団であることに気づく。


【北大路鉄華】
「…『真の男』は感染しない?」


麻沼竜子


病院を出て、学食横丁をつっきる。旗の下では、応援団が座り込み肩で息をしている。状況は至って不利だ。応援団の団長【麻沼竜子】はそう答える。



【麻沼竜子】
「まぁ、ウチらは直線的な事しかできないさね。ウチらが囲みを破る、そこからはあんたたちに任せる。そういうのでどうさね?」



鉄華はナノマシンの性質としては、命令を出しているヘッドクォーター(門柱)を沈黙させた方が早い。門柱は起点、ピラミッドは拡散装置だと予想がついた。



【北大路鉄華】
『電波の起点が門柱なのね。ピラミッドが完成すると一気に宇津帆島全体に…完成前に元を叩かなきゃ』


突入


軍事研でうまいことc4を入手する宗仁。狂化に連絡をする鉄華。一同が動き出そうとした時、後ろの方から轟音が鳴り響く。振り返ると、巨大な狂科ロボ32号が歩いてくる!



【狂科ロボ】「喰らえ、殲滅ミサイル!」

【学ラン男】「バンチョウフィールド展開!」



狂化のミサイルはピラミッドに達する前に赤い障壁に阻まれてしまう!放たれる雷撃、倒れる狂科ロボ。三人と応援団はそれを機に突入する。「学ラン、着てかないといかんだろ?」と竜子に促され汗くさい学ランを着ながら・・・。


【加賀弓子】
【鉄華さん・・・・サラシまで巻かなくても・・・・笑】


ATフィールド?


応援団が学ラン生徒と衝突! そこに大穴が開く。応援団と学ラン生徒が乱闘するのを背後に、3人は学ラン男の前に立つ。



【風杜宗仁】
「じゃあ早いとこあなたの目を醒まさせて、僕は昼寝に戻らせてもらいますよ」



デザートイーグルで3点バースト。目からビームで牽制する鉄華。弾とビームが学ラン男に命中する──と思いきや、その寸前で赤い障壁に阻まれる。



【学ラン男】「漢なら拳で語るのだ」



ホームズの必殺技



【学ラン男】「ゆくぞ、バンチョウファイアー!」



加賀は一瞬弓子が炎に包まれまれたが、炎が通り過ぎた後にはノーダメージ。(炎耐性)。ガンフー(ゼロ距離射撃格闘技)で攻撃する宗仁だが効かない。鉄華は番長をかわして柱に辿り着き、頭突き&ビームを命中させる!ぐらりとなる学ラン男。そ



【北大路鉄華】『風杜さんいまのうち!』



【風杜宗仁】
「とうとうこれを出さなきゃいけない時がきたか」



宗仁の心の中のシャーロックが語り掛ける。「我々探偵には【バリツ】がある」と。


一瞬宗仁と学ラン男が高い崖の上から滝壺へ落ちていく幻影が見えたかと思うと、学ラン男が地面に伸びている・・・。


番長の正体


柱に取り付きC4をセットする。宗仁の提案で、気絶した学ラン男を避難させる二人。C4が点火すると、門柱はばらばらに吹き飛ぶ。



周りを見ると、学ラン生徒たちがふにゃふにゃと地面に崩れ落ち、次々と緑の制服に戻っていく。そして目の前に転がっている学ラン男も──変わりません。


【風杜宗仁】「変わらんのかい!!」


【麻沼竜子】
「こいつは、3日前から行方不明になっていたウチの団員の皿屋敷ってやつだ。なんでわかるかって? こいつの背中には右に昇り龍、左に下り龍、真ん中にRX-78の刺青があるはずだよ」



どうやら飲んだくれて道端で寝てたところを拉致られという。検査でも実験でも好きなようにして、ほとぼりが冷めたらウチに戻してくれ。と竜子。


番長学園の阻止成功・・・その後



【鉄華】『もしもしー部長?はい今終わりましたー』



【エイブラムス・阿部】
「そうか。よくやった。今他のメンツが行くから待っていてくれ」



【アビゴール様】
「バンチョウが倒れただと? まあいい。──というわけだ、学園の諸君。我々は再び諸君らに挑戦するだろう。それまで待っているといい」



【北大路鉄華】
『…とりあえず【検査】してもらいましょうねーオカ研と狂的科学部に…ニチャア』



【風杜宗仁】
「酒は飲んでも飲まれるなって言うでしょ、こってり絞られるといいよww」




ピラミッドは数日後には撤去され、いつもの学園が戻ってくる。皿屋敷は色々された後に解放され、あだ名が「番長」に。学園史上20年ぶりの番長の出現である。

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最終更新:2022年10月19日 00:18