FL Studio Mobile
FL Studio Mobileはスマートフォンやタブレットで動作する FL Studioです。
デスクトップ版と比較して、操作性を一般的なDAWに寄せている印象(1つの音源が1つのトラックで完結)で、モバイルの作曲ソフトとしては好評のようです。
ここでは「デスクトップ版」との連携についての解説をします。
FL Studio Mobileを使うメリットとデメリット
総評としては、FL Studioより操作性が劣るため複雑な構成の楽曲を作るのは大変ですが、FL Studioよりも後発だけあってUIや機能が洗練されており、またお気軽に作曲できるメリットもあります。
例えば通勤時間が長くて自宅での作曲に時間が取れない場合、FL Studio Mobileを導入するのは良い選択かもしれません。
ただ画面が狭いスマートフォンでの作業は難しいので、8〜10インチ以上のタブレットで使うのをおすすめします。
またモバイル版からデスクトップ版へのデータ移行は制限が多いので、そのあたりも割り切って使えるのであればおすすめです。
メリット
メリットは「お手軽な作曲」「洗練されたUI」です。UIはミニマルな印象があり FL Studio よりも Ableton Live に近いものを感じます。
メリット |
説明 |
低スペック環境でも動作する |
一昔前のスペックの低い端末でも快適に動作します |
1音源・1トラック方式 |
DAW界での異端な存在である FL Studioと異なり、FL Stuido Mobileは一般的なDAWの操作感に近くて使いやすいです |
UIが整理されている |
FL StudioよりもモダンでミニマルなUIとなっていて機能が整理されています(FL Studioと比較してUI周りの煩雑な印象がない) |
モバイルに最適化された操作性 |
タッチ操作で曲が作れるので、電車での移動中やカフェなど外出時でも作業しやすいです |
プラグインが充実している |
シンセ・エフェクターともに数多く揃っており、プリセット数も多いです |
シンセのエディットが充実 |
モバイル作曲ソフトでありながら、FilterやLFOなどでシンセの音作りを細かく行うことができます |
エフェクターが現代的な機能に最適化されている |
エフェクターはシンプルながらも洗練されたものが揃っています(AutoduckやFilter、MultiFXなど) |
タッチでリアルタイム操作できる |
タッチ・スワイプ操作でフィルターなどのツマミをリアルタイム操作できるのが楽しい |
デメリット
デメリットは「打ち込みの手数が増えやすい」「複雑な楽曲作成には向いていない」「デスクトップ版との連携が不十分」といった部分です。
デメリット |
説明 |
FL Studioより作業効率は悪い |
タッチ操作のみなので、マウスやキーボードを使うFL Studioと比べるとどうしても作業効率が落ちてしまいます。(※1) また複雑な曲構成を作るのは大変です |
連携時のバージョン合わせが手間 |
FL Studio Mobileのモバイル版とデスクトップ版のバージョンを合わせる方法が プラグインを「手動でインストール」するしかないです。 (ただバージョンが違ってもある程度読み込めます。 またFL Studioが正式リリースされればその時点での最新版に更新できます) |
デスクトップ版の操作性は良くない |
FL Studio Mobileのデスクトップ版の操作性はあまり良くありません。 モバイル版準拠のタッチ操作をそのまま移植しているだけなので、マウスでの操作感は今ひとつです。 例えば FL Studioで使えるCTRLキーとの組み合わせ操作、ホイールクリックでパラメータリセットなどはできません |
演奏データの移行がMIDIファイル |
演奏データの移行がクリップボード経由でできません。(※2) |
シンセやエフェクター、オートメーションを そのまま移行できない |
シンセやエフェクターは FL Studio Mobile専用なので、 オーディオデータに書き出す以外にデータの移行方法がありません。 オートメーションをがっつり組んでもFL Studio Mobile専用のデータとなり移行できません |
デスクトップ版を快適に動かすには PCのスペックが必要かもしれない…? |
デスクトップ版の FL Studio Mobileを快適に動作させるには PCのスペックがそれなりに必要となりそうです (※3) |
- (※1) MIDIキーボードは接続可能なので、リアルタイム入力で打ち込みの手間を少し減らせます。またマウスも接続できると思いますが未検証です
- (※2) MIDIファイルに一度エクスポートしてピアノロールから読み込むという手順なので、演奏データの移行が不便です
- (※3) M1 Mac mini でもっさり動作だっただけで、別の環境だと問題ないかもしれません…
- 日本語UI非対応
- Undoできない操作がある
- 生楽器系が少ない
- Audio Unitsに非対応(基本的に外部プラグインが使えない)
リンク
注意点
連携する場合はプラグインの定期的な更新が必要
ドキュメントには以下の記載があります。
インストール場所は、それぞれ以下の通りでインストールフォルダにそのままコピーするのでちょっと大変です(モバイル版がバージョンアップされるたびに更新が必要となります)。
OS |
場所 |
Windows |
C:\Program Files\Image-Line\FL Studio 21\Plugins\Fruity\Generators\FL Studio Mobile |
macOS |
/Applications/FL Studio 21.app/Contents/Resources/FL/Plugins/Fruity/Generators/FL Studio Mobile |
更新が正しく行われると、ここのバージョン番号が最新になります。
プラグイン版は今後有料となる可能性がある
FL Studio Mobileのプラグイン版(デスクトップ版)はいずれ有料となる可能性があります。
FL Studioプラグインバージョンは、すべてのFL Studio所有者に無料です。いつものように、当社はこれらの条件を変更する権利を留保します。したがって、FL Studio Mobile(Android、iOS、またはWindows App用)を所有している場合は、ILアカウントに登録し、FLプラグインバージョンに引き続き無料でアクセスできます。アドオン購入として販売することを決定した場合(現時点では計画はありません)。簡単に言えば、すべてのFL Studioの所有者は、このプラグインを無料で入手できます。モバイル版をILアカウントに登録すると、そのままでいることが保証されます。
ですが、もし有料になったときでも、モバイル版を所持していればアカウント連携すると無料で使えるとのことです。
現状デスクトップ版の FL Studio Mobileプラグインはあまり操作性が良くないので、連携以外の目的で使うことはないと思います。ですが今後デスクトップ版の使い勝手が良くなったときに、有料化する狙いがあるのかもしれません…。
モバイル版との連携
FL Studio Mobileのメリットとして、外出中でもお手軽に作曲できることがあります。
その場合、モバイル版のプロジェクトファイルをデスクトップ版の FL Studio Mobileで開くことができます。
モバイル側で現在開いているプロジェクトを直接共有することはできず、
プロジェクトファイル(*.flm)にいったん保存する必要があります。
モバイル版のデータをデスクトップ版で開く (Wifi経由)
Wifiを使ったデータ移行の手順です。前提条件として同一ネットワーク上にお互いが接続していなければなりません。
方法はデスクトップ版の FL Studio Mobile から "FILES > Direct share" から "localhost" ボタンをクリックします。
そしてモバイル側の "FILES" に表示される "Direct share" サーバーをタップします。
するとダイアログが表示されるので "Send Mine" を選びます(このとき "Send All" を選ぶと追加コンテンツを含めてすべて送信します)。
するとデスクトップ版側でプロジェクトファイルを開けるようになります。
モバイル版のデータをデスクトップ版で開く (クラウドストレージ)
クラウドストレージを使って同期するには "Google Drive" または "One Drive" といったクラウドサービスを使用します。
まずはモバイル版側の手順ですが、右上のFLアイコンをタップ。
右上の "FILES" から Cloud backup の "Sign in" ボタンをタップ。
利用しているクラウドストレージサービスを選びます(ここでは Google Drive を選びました)。
無事連携できたら、"Synchronize" で同期します。
編集中のプロジェクトは同期してくれないので、
事前にプロジェクトファイルは「保存」しておく必要があります
後はデスクトップ版の FL Studio Mobile でも同じことをして連携します。
(手順はまったく同じです)
連携がうまくいくと、保存したプロジェクトファイルが "SONGS" の一覧に表示されるので、これを開きます。
無事プロジェクトファイルを読み込むことができました。
トラブルシューティング
デスクトップ版とモバイル版でバージョンが異なる場合
なお、デスクトップ版とモバイル版でバージョンが異なると以下の警告が表示されることがあります。
この場合、バージョンに依存するプロジェクトファイルでなければ「Yes」で開くことができますが、できるだけ
最新のプラグインをインストールした方が良さそうです。
ストレージサービスへの連携がうまく行かない場合
ストレージサービスへのログインがうまく行かない場合「went wrong」というメッセージが表示されることがあります。
その場合、一度 "Sign Out" を選んで再びログインを行うと解決する可能性があります。
モバイル版の演奏データをFL Studioに移行する方法
1つのトラックの移行方法
モバイル版の演奏データをFL Studioに移行するにはMIDIファイル経由で行います。
まずはチャンネルを右クリックして "Save as MIDI" を選びます。
MIDI出力ウィンドウが表示されるので "SEND" を選びます。
すると保存先を選ぶダイアログが表示されるので、任意の場所に保存します。
複数トラックの移行方法
プロジェクトすべての演奏データをまとめて出力したい場合は、"SONGS" から "Save" ボタンをクリック。
"MIDI > SEND" を選ぶと、トラック情報をまとめてMIDI出力できます。
なおこのMIDIファイルですが、複数トラックがまとめられたMIDIとなるため、そのままチャンネルにドラッグ&ドロップするとこのように1つの
ピアノロールにまとめられてしまいます。
チャンネルごとに分離したい場合は、チャンネルラックの何もないところにMIDIファイルをドラッグ&ドロップします。
このとき "Channel type" に "FLEX" を指定すると、FLEXのチャンネルが複数作られます(基本的にピアノかドラムのプリセットになります)。
特にFLEXを立ち上げる必要がなければ、"MIDI Out" に変更してもOKです。
"Accept" を押すと、トラックごとにチャンネルが作られMIDIをインポートすることができました。
その他
復元用 FL Studio Mobile.fst ファイル
これを
ブラウザの "Plugin database > Misc" に入れると復元できます。
最終更新:2024年07月03日 13:12