Newtone

Newtoneは "Signature Bundle" 以降に含まれます
Newtoneは、ピッチ補正と時間操作エディタです。





概要

Newtoneを一言でいうと、"AutoTune" や "Melodyne" に代表されるピッチ補正ソフトです。それらと比べると機能は少なめですが、ちょっとしたボーカルの修正であればおおよそこのツールでなんとかなります。

なおリアルタイムのピッチ補正をしたい場合は Pitcher で行います。

また解析したオーディオファイルのMIDIを出力できるので、例えばボーカルのメロディを耳コピなしで別音源に差し替えることも可能です。

リンク


使い方

Newtoneの起動方法

Newtoneはプラグインのカテゴリとしては「エフェクター」ですが、オーディオ編集が中心のため Sampler やオーディオクリップから直接起動することができます。
例えば Sampler の波形を右クリックして「Edit in pitch corrector」から起動できます。

オーディオクリップの場合は、オーディオクリップの左上をクリックして表示されるメニューから「Pitch-correct sample」を選びます。

編集したオーディオの保存

Newtoneでの編集はその波形を直接編集しているわけではなく、別のデータとして扱われます
そのため編集後はこのアイコンをドラッグして保存します。


もしくはこのアイコンをクリックすると自動でプレイリストに送られます。

基本的な操作方法

ピアノロールとは若干異なる操作性となっているため注意が必要です。
同じかどうか 機能 操作・ショートカットキー 補足
同じ操作 再生・停止 SPACE
上下にスクロール ホイール
上下左右にスクロール カーソルキー
ホイール長押しドラッグ
ズーム スクロールバーの橋をドラッグ
カット Cキー カットツールに持ち替える。
解除するにはもう一度Cキーを押します
異なる操作 再生開始位置の設定 右クリック 何もないところを左クリックしても
再生開始位置が変わります
複数回Undo CTRL+ALT+Z
(設定画面でAlternate undo modeを有効にしても反映されません)
スクラブ再生 マーカーの三角アイコンをドラッグ
ズーム CTRL+右クリック 全体をフィットさせるだけで
拡大する方法はありません
半音補正 右クリック 一番近い音に自動で補正します

プロジェクトのテンポと同期を取って再生したい
左上のメガネのようなアイコンを点灯させると、FL Studioの再生 (PATTERN/SONG) と同期して再生することができます。ショートカットキーは「H」キーです。

ボーカル素材単体を再生したい場合は、▶ボタンをクリックするか、SPACEキーで再生(Newtoneを選んだ状態で再生)します。

スケールの設定
スケールは自動で判定してくれないため、手動で設定する必要があります。
ハサミアイコンから "Scale" のところにあるキーとスケールを選びます。

また "Snap to scale" を選ぶと、自動でそのスケールにピッチを合わせてくれます。
波形の3つの移動モード (タイミングとピッチ補正)
波形を上にマウスカーソルを持っていくと、マウスが3つの形状に変化します。
まずは両端の部分です。

この部分でマウスを左ドラッグすると左右に広げたり縮めたりすることができます。

「境界の前後にある波形のみ変形させたい」場合に使用します。
なお "ALT"を押しながらドラッグするとグリッドを無視した細かい調整ができます。

次に中央から左の部分です。

この部分にマウスカーソルを移動させると「手の形」に変化します。
この状態でマウスを左右にドラッグすると、「選択中の波形はそのまま」で「前後の波形を変形」させます。(※上下の移動はできません)

選択中の波形を変形させたくない場合に使用します。
これも "ALT"を押しながらドラッグするとグリッドを無視した細かい調整ができます。

最後に中央右側にカーソルを移動させると上下の矢印が表示されます。

この状態で上下にマウスをドラッグするとピッチを変更することができます。
ピッチ補正は「半音〜全音(+半音)」よりも大きく補正すると、
いかにも機械で補正したような声になってしまうことに注意します。
CENTER / VARIATION / TRANS について
左上にある "CENTER" / "VARIATION" / "TRANS" についての説明です。

"CENTER" の値を "大きく" すると、自動でピッチを正確に合わせるようになります。ただあまり大きくするとピッチが合いすぎて機械的な印象になります。この特性を利用して最大にするといかにも補正したような歌声にすることもできます。
"VARIATION" の値を "小さく" すると、ピッチの揺れが小さくなります。これも小さくしすぎるとロボットボイスのようになってしまうので注意です。

"TRANS" はピッチ移動の速度で、この値が大きいほど補正量の変化が速くなります。

ピッチ補正の基礎知識

事前にコンプやディエッサーを軽くかけておく
ボーカロイドであればピッチやダイナミクスが安定しているので不要かもしれませんが、生声の収録であれば通常はダイナミクスの揺れが大きかったり、歯擦音(耳障りなサ行の音)が存在します。そのため、事前にコンプやディエッサーでダイナミクスを安定させたり、ノイズを除去して整った状態にしておくとピッチ編集もやりやすくなります。

例えばFLには Maximusに "De-essing" というプリセットがあるのでそれを使用しても良いですし、歯擦音が発生しやすい 5000 Hzあたりに Highバンドでコンプレッションをかけても良いと思います。

ダイナミクスに関しては、Patcherに Waves社の "Vocal Rider" を模倣した "X Youlean > Vocal Rider" というプリセットがあるので、これを使うと簡単にダイナミクスを安定させることができます。

しゃくりの扱い方
歌い出しなどの部分でピッチが少し下がっている部分があります。これは後半部分にかかる「しゃくり」という歌唱の技法です。このしゃくりにより歌に「なめらかな印象」を与える、「柔らかい感じ」や「深み」「ノリ」を出したりすることができます。
そのためリズムのよれがない限りは、基本的に修正してはいけません。

ただ後半部分のピッチが合っていない場合は補正が必要です。

あとこれは好みの問題ですが、同じフレーズが繰り返される場合には、ピッチの差を大きく補正してより大きな動きを与えることもできます。

しゃくりのない波形に対してしゃくりを意図的に作りたい場合は、前半部分を カットツール(Cキー)でカットしてピッチを下げます。
"ALT" を押しながらカットすることで、グリッドから外れた部分でカットすることもできます。

ボーカルChopを作る場合
ボーカルChopは Slicex で作ったほうが扱いやすいです。
ピッチ補正後、オーディオデータを Slicex に読み込ませてボーカルChopを作りましょう。

オーディオデータからMIDIを抽出する

読み込んだオーディオファイルをMIDIに変換したい場合は階段状にノートが並んでいるアイコンをクリックします。


あからじめEQで倍音成分 (1kHzあたり以上) をカットしてからEdisonで録音したオーディオファイルを読み込ませると、より正確な MIDI が書き出せるようになります。

テンポを変更する

Newtoneは自動でプロジェクトのテンポに同期しますが、ファイル名を右クリックしてテンポを指定することもできます。

Advancedモード

左上にあるこのアイコンを点灯させるとAdvancedモードとなります。

Advancedモードを使用すると個別の波形のパラメータを細かく調整できるようになります。
個別の音量設定
波形にマウスカーソルを移動させると特殊な枠が表示されます。

左上と右上がそれぞれ音量のフェードイン・フェードアウトの設定で、優しい歌い方にする場合などはここで音量を小さくします。
もし全体の音量を変更したい場合は、上部中央の部分をドラッグすることで波形全体の音量を変化させることができます。
個別のRamp / Variation補正
下部にはピッチ補正周りの項目があります。

rampとは傾斜のことでピッチの変化の入りや出の速度を変化させることができます。
全体を補正したい場合には中央のrariationの値を変化させます。

もっとケロケロボイスにしたい場合

ピッチ補正後のオーディオデータに、さらにPitcherをかけるといかにも補正したようなボーカルになります。

参考

Melodyneとの比較

NewtoneとMelodyneを比較して、Melodyneを使うと何が良いのかをまとめてみました。
エディション 機能
Essential キーを指定して自動でピッチ補正 (キーにスナップ) できる
全体のダイナミクスを均一化する機能がある
Assistant以上 歯擦音を検出してグラフィカルに表示し、歯擦音の音量を簡単に調整できる
Editor以上 ポリフォニック(和音)を編集できる
Studio以上 複数のMelodyneトラックを比較(ゴーストノートのように表示)しながら編集できる
Melodyneの最下位バージョンの "Essential" だと、個別の波形の音量編集(ピッチ変更は可能)やピッチのカーブの修正、MIDI出力ができないので、そのあたり Newtone の方が優れています。ただ "Assistant" 以上になると Melodyneの方がダイナミクスの調整や歯擦音の表示など、Newtoneより優れている点がいくつかあります。

といった特徴から考えて、Newtoneは「MelodyneのEssential以上 Assistant未満」という機能評価となります。

なお FL Studio は "ARA" に対応していないので、Melodyneを使用しても別のオーディオファイルとして編集する必要があります。
最終更新:2023年12月25日 13:19