Patcher
Patcherはインストゥルメント(楽器)またはエフェクターとして扱われますが、インストゥルメントとエフェクターの両方を含めて接続することができるプラグインです。
概要
Patcherを簡単に説明すると、既存のシンセを組み合わせて新しいシンセを作ったり、既存のエフェクターを組み合わせて新しいエフェクターを作ったり、はたまた演奏の補助ツールを作ったりもできるジェネレーターツールです。
例えば以下のPatcherは VFX Key Mapper と
FLEX を組み合わせて「コード入力支援 (指1本でコードが弾ける)」ようにしたものとなります。
また、標準で用意されているプリセットに有料プラグインに近い機能を持ったものが用意されていて、色々探してみると掘り出し物が見つかります。
リンク
基本的な使い方
VFX Key Mapperを組み込むチュートリアル
Patcher の基本的な使い方として、音階を入れ替えるプラグイン “VFX Key Mapper” を組み込んでみます。
まずは Patcherをチャンネルラックに追加します。
Patcherを追加すると空の状態から始まります。
何もないところを右クリックして「Show plugin picker」から、”VFX Key Mapper” を選びます。
すると “From FL Studio” から “VFX Key Mapper” に緑の線でつながれた状態となります。
この緑の線は “MIDI信号” を意味します。
続けて右クリックで “Show plugin picker” から “FL Keys” を選びます。
追加されたFL Keys は緑の線とオレンジ色の線でつながれています。オレンジ色はオーディオ出力の線となります。
今回は “VFX Key Mapper” で加工した MIDI信号を “FL Keys” に流し込む、ということをしたいので、FL Keys に入力される緑色の線を削除します。線を削除するには「終端の結合部分を何もないところにドラッグ&ドロップ」します。
そして “VFX Key Mapper” から “FL Keys” へ MIDI信号を渡すように修正します。“VFX Key Mapper” の右側の緑色の丸をドラッグして “FL Keys” の左側の緑色の丸でドロップします。
これでルーティング完了です。“VFX Key Mapper” をダブルクリックして開き、Presetsの矢印を右クリック > Chords > Minor progressionを選びます。
以下のようにプリセットが読み込まれました。これは指一本でコードが弾けるという便利プリセットです
試しに何かの単音を弾いてみると、マイナーコードで演奏されることが確認できます。
VFX Key Mapperプリセット
おすすめの Patcherプリセット
以下の情報を参考にまとめてみました
Filterカテゴリ
Mid/Side EQ
- プリセット:Filter > Mid Side EQ
X WiseLabsカテゴリ
帯域ごとのステレオ幅の調整 (高性能版)
3 band stereo separationの機能強化版。
帯域や出力値を細かく調整できる。
- プリセット:X WiseLabs > Envergure
XYマップで音を好きな位置に置ける
BINAURAL PLACEMENTのXYマップのポインターを移動するだけで、音の定位を自由に動かすことができる。
- プリセット:X WiseLabs > Albinaur
ビットクラッシャー
Lo-Fiな音にしたい場合に便利な1ノブツール。
- プリセット: X Wiselabs > 1K Crusher
レイヤード・デチューン
回すだけでデチューンされた音がレイヤーされる1ノブツール。
シンプルなモノラルな音、例えば倍音の少ないベース音にかけることで音の厚みやステレオ感を増すことができます。
- プリセット:X WiseLabs > 1K Detuner
スケールスナップするピアノ音源
スケールにスナップしてくれるピアノ音源です。スケールの響きをいろいろ試したい場合に便利です (VFX Key Mapperより使いやすいです)。
- プリセット: X WiseLabs > Midivore
緑色の枠から使いたいスケールを選びます。青の枠がキーとなります。
Specialカテゴリ
帯域ごとのステレオ幅の調整
High/Mid/Lowそれぞれのステレオ幅を調整できる。
上3つのノブがステレオ幅で、下2つのノブが帯域となる。
- プリセット:Special > 3 band stereo separation
マルチエフェクト
エフェクトの詰め合わせセット。Gross BeatのTime Slot系のプリセットが付属していて使い勝手の良いものが多いので、Gross Beatのためだけに使っても良いかも。
- プリセット:Special > One knob multi effects
X Youleanカテゴリ
Simple EQシリーズ
X Youlean の "Simple EQ" には、パートごとのEQ調整ツールが多数用意されていて便利です。
オールパス・フィルター (Gainを変えずにPitchを変える)
Disperserを模倣したオールパス・フィルター。トランジェントシェイパーのようにアタック感を調整したりもできます。
- プリセット:X Xenofish > Disperser
自動EQ (ダイナミックレゾナンスサプレッサー&ディエッサー)
soothe2のように耳障りな音 (突出した倍音) を自動でカットしてくれるエフェクタ。
使い方は中央にある「Glue Frequencies」を右に回すだけ。
- プリセット:X Youlean > Freq Glue – General / Mastering
ローファイ (ピッチとダイナミクスの揺らぎを付与)
ローファイ系でよく使われるピッチと音量に揺らぎを出すエフェクタ。
Pitch Variationの値は小さめにしたほうが良さそう。
- プリセット:X Youlean > Humanizer
ボーカル処理 (ダイナミクスを一定に整える)
Wavesの「Vocal Rider」を模倣したボーカルオートメーション。
ボーカルの音質変化なしに、音量を一定に整えることができる。
- プリセット:X Youlean > Vocal Rider
- Range Min: 音量変更が適用される最小値
- Range Max: 音量変更が適用される最大値
- Target: 音量が最大となるスイートスポット
- Sansitivity: 音量フェーダーが反応する感度
- Output Volume: 出力ボリュームの制御
- Live Mode: レイテンシを無効にする(※計算の精度が下がる)
基本的にSansitivityの値は最大にしておいてTargetやRangeを必要に応じて動かす、といった使い方になりそうです。
マルチバンド・サイドチェイン
Trackspacerのようにぶつかる音を自動で整理するエフェクタ。
- プリセット:X Youlean > Multiband Sidechain
- Inspect Sidechain: サイドチェイン無効
- Low Cut: ローカット
- High Cut: ハイカット
- Sidechain: サイドチェインの適用量
- Release: リリースに適用する量
公式フォーラム
Patcherのプリセットには含まれていない便利なプリセットの紹介です。
以下は公式フォーラムからダウンロードする必要があります。
VC-20 (RC-20 Retro Color を再現)
"VC-20_v1.2.fst" と "20_Noise.zip" の2つをダウンロードします。
(noiseエフェクトが不要の場合は "20_Noise.zip" はなくても良さそうです)
"VC-20_v1.2.fst" は Patcherのエフェクトプリセットがあるフォルダ、"20_Noise.zip" は
ブラウザの "Pack" フォルダの直下に配置する必要があります。
使い方は四角のボタンをクリックして青色にして、ツマミを右に回すと有効になります。
SAUSAGE FATTENERを再現したPatcher
Dada LifeのSAUSAGE FATTENER (倍音成分を足したり、高域を足したりするプラグイン) を再現したPatcher
もう1つ別の方が作ったSAUSAGE FATTENERもあるようです。
REMAP - Polyphonic Pitch Manipulator
ポリフォニックピッチマニピュレーター。
Color Bass や Color Houseなどのような「カラフルな」サウンドを実現できます。
- 'Tone Selector': ノートを任意のスケール/コードにマッピング
- 'Band Freq': 影響を受ける周波数範囲の設定
- 'Wide': デチューン/コーラスモードの切り替え
HardStyle Kick
Tips
Patcherに既存のシンセやエフェクターをコピーする方法
コピー先のPatcherを "
ALT+クリック" すると表示したままにできます。
この状態でコピー元のシンセやエフェクターを表示します。
後はコピーしたいプラグインの ▶ボタンをクリックして "Save preset as" (または "Save channel state as") を Patcherにドラッグ&ドロップするとコピーできます。
さらにこの方法を使うと PatcherにPatcherを含めることが可能となります。
CPU使用率を確認する方法
Patcherが重たい場合に処理負荷を計測することができます。
方法は左上の▶ボタンから「View > Performance」にチェックを入れます。
すると以下のようにPatcher内のプラグインのパフォーマンスが表示されます。
トータルではおおよそ 3.3% ほどの使用率で、この中では Fruity Reeverb 2 が "1.3%" と一番負荷が高いことがわかりました。
自作Patcher置き場
動画
Patcherの基本的な使い方をまとめた動画を作成しました。
最終更新:2024年09月15日 15:44