Padを作るための基礎知識



Padの特徴と役割

Padの特徴としては、以下の2つが挙げられます。
  • 1. 持続音中心のフレーズ (デュレーションが長い)
  • 2. コード進行を演奏する
Padの役割としては以下のとおりです。
役割 説明
音像空間を埋める 幅広い周波数帯域とステレオ空間を埋めることで、
曲に厚みをもたせる
雰囲気を作り出す 薄く広がる空間は楽曲全体の
雰囲気を作り出すことができる
リズムを生み出す 基本的にPadは白玉(1分音符、2分音符)を中心としたコード弾きだが、
Sidechainなどでゆったりとした抑揚を与えることで
リズミカルな印象を与えることもできる

Pad作成のワークフロー

Pad作成の大まかなワークフローは以下のとおりです。
1. 波形の選択
まずはPadに使う波形を選択します。

Squareに近づくほど硬い尖った「はっきりした」音になります。
Sineに近づくほど、柔らかくて丸い「ぼやけた」音になります。
波形 概要 詳細
Square, Saw Synth pad シンセ感の強い音
Triangle Strings pad 弦楽器のような音
Sine Choir pad クワイア。合唱団の歌声のような音
どの波形を選ぶかは個人のセンス次第ですが、特に明確な目標がない場合は「キャラ被り」を避けるという方法がおすすめです。
例えばリードが "Supersaw" であれば、Sawを避けて "Triangle" や "Sine" にすると楽曲に広がりを持たせることができます。
2. Unison設定
MAINタブにあるUnisonで波形のデチューンを設定することで広がりのある音になります。

Pitchのデチューンを大きくすると歪んだ音になるので、PTの値は 50〜60% くらいにして、それ以外(PN, VL, PH)は基本的に大きくします。
1オクターブ下を重ねる SB を大きくすると低域の厚みが増して安定感・重厚感のある音になります。

3. VOL > ENV
Padの大きな特徴が「ゆったりとした立ち上がりのEnvelope」です。

Padはコード楽器の側面も持つので、はっきりとした立ち上がりにしたい場合はAttackを小さくし、環境音としての空間作りを優先したい場合にはAttackを大きくすることでより「ふわっ」とした印象が生まれます。

Attackを大きくすると無音が長くなるので、無音が気になる場合はReleaseを長くするのも良いと思います。
4. FX
Padのエフェクトの2つの大きな指針としては以下のものです。
方針 説明
Chorus 音の「厚み」や「太さ」を補強して存在感を出す
Reverb 音の「広がり」や「柔らかさ」を表現する
どちらか1つしか選んでいけないということはなく、むしろ両方のエフェクトをかけることも多いですが、Padで表現したいものや楽曲でのPadの役割を考えてエフェクトのバランスを決める必要があります。


コーラスのパラメータは "ORD" の数でどれだけコーラスを重ねるか、コーラスの音量 "VL" をどれだけにするか、あたりがわかりやすいパラメータになると思います。


リバーブのパラメータは多いので少し難しいですが、方針としてはリバーブの種類 "COLOR" を暖かさのある Warm、エッジのある Brightにしてみる、空間の広さであるRS(Room size)、拡散する範囲のDF(Diffusion)、持続時間のDE(Decay)、リバーブの音量のVL(Volume)といったパラメータの調整がわかりやすいと思います。

その他のテクニック

上記の4つがPadを作る上での大きな要素ですが、それ以外にも LFOで Pitchを小さく揺らして不安定さや不思議空間を演出したり、Cutoffをカーブで動かすことで「しゅわーん」とした音にしたりする工夫も考えられます。
LFO で Pitchを揺らす方法
オペレーター(OP)から、"PITCH > LFO" でLFOのカーブを設定することでPitchを揺らします。

このとき "PE" の値は 20.0〜30.0 cents にしてピッチの揺れはわからないくらいの変化にするのがおすすめです。

CutoffのEnvelpeで立ち上がりに変化をつける
Filterの "CUT > ENV" でゆったりとCutoffを開いていくことで、より緩やかな立ち上がりにしたり、Saw系であれば「しゅわーん」という変化をつけることができます。

コンプでダイナミクスを整える
Padのダイナミクスの揺れが大きい場合は、Fruity Compressor や Maximusなどのコンプを通して、音量を整えます。
もちろんかけすぎると、音が固くなってしまうので適度に行う必要があります。
Cutoff または EQ で Low passする
CutoffやEQでLow passで高域を削ると、とても落ち着いた印象となって静かな雰囲気を出すのに向いています。

単に落ち着いた音を出すだけでなく、例えばDropの後のBreakでこのPadを使って徐々にCutoffを開いていく、といった展開にも使えます。

サイドチェインでリズミカルなPadにする
サイドチェインやオートメーションでPadの Envelopeをリズミカルに揺らすのも良いと思います。
サイドチェインは、Fruity LimiterFruity Love PhilterGross Beatなどで実現できます。

Stereo Imageテクニックを使う
Padはステレオの広がりが重要なので Fruity Stereo EnhancerFruity Stereo Shaperでステレオ感を増したり、ステレオ分離でステレオトラックのみReverbやSidechainをかける方法があります。
詳しくは以下のページに記載しています。

参考


プロジェクトファイル

シンセPadのサンプルプロジェクトファイルです。
SynthPad.zip
最終更新:2024年06月01日 22:28