Slicexを使ってボーカルチョップを作る方法
このページでは
Slicexを使ったボーカルチョップを作る方法について書きます。
概要
ボーカルチョップとは
ボーカルチョップとは、ボーカル素材を切り刻んで新しいメロディやリズムを作る方法です。
主にダンスミュージックやEDMで用いられる手法で、個人的には「歌を聴かせる」ためではなく「リズムやグルーヴ感を強調」したり、「ボーカルの余韻を表現」するパートとして使われる印象です。
ボーカルチョップが使われるタイミング
個人的に考えるボーカルチョップがよく使われるタイミングは以下の3つです。
- 1. ビルドアップ
- 2. ドロップ
- 3. ボーカル入りのドロップ後の余韻パート
「1. ビルドアップ」でのボーカルチョップは、歌モノのEDMでよく使われます。
ボーカルの歌い出しを切り出して、ビルドアップとして使います。
ドラム演奏のFill-inのように使うパターンです。
このとき Slicex を使うと歌い出しを繰り返す部分を楽に作れます。
また
Pitch Shifter を使ってボーカルのピッチを少しずつ上昇させる方法も有効です。
「2. ドロップ」「3. 余韻パートで使う」この2つは、ボーカルチョップをループとして再構築する方法です。
リズムに合うようにボーカルを切り出します。
ボーカルチョップでビルドアップを作る方法
ビルドアップであれば、わざわざ Slicex を使わずに Audio Clip でもボーカルチョップを作れますが、ここでは Slicex を使ってみます。
まずは Slicex にボーカル素材を読み込ませます。
このときの注意点は、素材のBPMとプロジェクトのBPMを合わせることです。Slicex でもタイムストレッチはできますが、BPMを変更したときなどに前後のつながりが悪くなったりします。
そのため、もしBPMを変更したい場合はAudio Clipを使うか、Edisonで録音して書き出すなどしておきます。
ボーカル素材を読み込ませると以下のようにトランジェント(音の区切り)でマーカーにより分割されます。右クリックでそれぞれの音を確認できます。
ボーカル素材が長すぎるとマーカーが作られないことがあるので、その場合は "Regions" アイコンから "Auto-slice > Medium auto-slicing" を選ぶとマーカーが作られます。
ピアノロールを開くと以下のようにマーカーの単位でノートが作られます。
ビルドアップのボーカルチョップでは出だしの部分しか必要ないので、最初の部分以外は消しておきます。
ここからビルドアップ用のフレーズを作りますが、「マーカーを作り直す」「マーカーの区切り位置を変更する」などRegionsを変更するとピアノロールの情報が消えてしまいますので、マーカーを細かく調整したい場合はピアノロールに打ち込む前に済ませておく必要があります。
後はフレーズを繰り返したり、繰り返し速度を上げていきます。
これはやってもやらなくても良いですが、Slicexのマーカーを右クリック「Rename」を選ぶとマーカーに名前を入れることができます。日本語は直接入力できないのでテキストエディタからコピーするなど一手間かかりますが、わかりやすい名前をつけておくと、ピアノロールでの編集がやりやすくなります。
使うかどうかは好みにもよりますが、Slicexではスライドノートを使うと再生速度を上げたり下げたりする効果が得られるので、アクセントを付けたい場合に便利です(再生速度を下げると、テープストップのような効果が得られます)。
一般的なEDMのビルドアップと同様、高速の同音連打は耳障りになりやすいので、
Fruity FilterなどでHighpassをかけると耳障りさが軽減されます。
さらに
Pitch Shifterを保有している人向けのテクニックとなりますが、"FORMANT" の値を少し上げて幼い感じにすると馴染みの良い声質になることがあります。
また "PITCH" 部分をオートメーションで少しずつ上げるのも良いです。
仕上げとして、ボーカルチョップを馴染ませるため、ReverbやDelayを薄くかけておくと良いと思います。
ボーカルチョップでループを作る方法
ボーカルチョップでループを作る場合も Slicex で刻んだノートを並べていくだけなのですが、Slicex ならではコツがあるのでそれを紹介します。
拍刻みにして組み替える方法
Slicexの Regions は通常「トランジェント(音の区切り)」で区切られます。
生の歌声はリズムに揺れがあるため、これによって作られるノートはグリッドからずれてしまうという問題があります。
元のリズムを残してフレーズを組み替えるとき、このズレを意識しながらノートを組み替えるのは大変です。
そこで、ビート(拍)単位で Region を作ります。
方法は Regionアイコンをクリックして "Detect beats" を選びます。
素材によっては若干グリッドからずれることもありますが、この程度であれば問題ないと思います。
拍単位で分割する理由は、元のボーカルのリズムを崩すことなくチョップできるためです。
ノートを並べる前に Region を調整します。
調整すべき部分としては、このような発声が弱い部分を取り除くことです。
この部分はチョップ素材に使えないので、マーカーを右クリックして "Delete" を選びます。
これで Region が統合できました。
他の調整すべきポイントは、画像だとよくわからないですが以下の3つの Region は「えー」というロングトーンなので、統合してしまいます。
それ以外のポイントとしては、聞いたときに耳障りに感じたりはっきりしない部分があれば、どんどん統合してきます。
Regionが作れたら、ピアノロールで新しいフレーズを作ります。
ここでのポイントは、ランダムな配置ではなく、メロディ作りと同様に、ある程度の規則性のあるリズムや形にします。
方向性としては、元のボーカルの雰囲気を残すのか、完全に崩してしまうか完全に別の形にするかどうかです。
形を崩す場合にはMIDIキーボードを使って色々なフレーズを試してみて、良いと思った部分を切り出すのが良いです。
よいフレーズが思いつかない場合は、[CTRL+U] でChopperツールを呼び出して作られたフレーズを参考に手直ししてみるのも良いと思います。
Chopperツールの使い方は以下のページに記載しています。
トランジェント区切りで組み立てる(ボーカルの後の余韻として使う)
拍区切りでしっくりくるフレーズにならない場合はトランジェント区切りで作ってみても良いです。
トランジェント区切りだと、発声そのものは不自然にはならないので、違和感が少なくなるのが特徴です。
フレーズの作り方としては、ボーカル素材のメロディーを借用したリズムにすると、ボーカルパートから接続しやすくておすすめです。
動画
基本的な操作の説明のみですが動画を作成しました。
最終更新:2024年04月30日 00:21