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本当に世の中は便利になったけど…

遠く、どの時代でもきっと言われ続けてきたこと。それを今更のように僕も繰り返させてもらうと、本当に世の中は便利になったものだと思う。つくづくとは言わないが、取り敢(あ)えず思う…。
「便利」なものを他人に紹介する時、よく耳にする「優れもの」には「手間が掛からない」、つまり楽ができちゃう便利なものという魅力が含まれている。子供の頃(ころ)に両親や学校の先生から「何でも楽をしようと思わないように!」「遠回りだと思わないで、何事も面倒だと思わないでやりなさい!」と教えられたはず。みなさーん、そうじゃなかったですかー?
時代はデジタルによって「便利」を通り越し、飛躍する企業は拡大と成功と謳(うた)い、デジタルの発達は「住み良い社会、豊かな生活」をテーマとし、世間に希望を植え付ける。
日本の誇るデジタルカメラは世界の常識となり町の写真屋が消えて行き、株の底上げが経済を右上がりにさせるとブラウン管の中の人たちは強調するも、自宅からのネット取引族により証券会社は自社の防衛のために人員整理を選択する方法をとらざるをえない。
「優れもの」の誕生は世間に喜ばれ、人力は経費節減の対象となり雇用問題は深刻化を増す。そしてそれを別次元の出来事かのような顔をした人が「元気を出せ」と若者に投げかける。
と、ここまで書いて読み直してみたら、メジャー新聞の天声○語口調の偽物みたいになってしまってる。迷うこと小一時間。ナンチャッテコラムと読み流して頂ければ気持ちも楽になる。いや、楽をしちゃいけないと言われてきたべやー!と逃げてみちゃうのはどうですか?
「つまらん!お前の話はつまらん!」と諭すおじいさんの出てくるCMを笑って観(み)てるが、内心笑えない自分を隠せない。もし時代というものが言葉を喋(しゃべ)る生きものであったとするなら、こういう矛盾を題材にした独り言に向かってはこう言うだろうね。「言いたいことはそれだけか」
最終更新:2025年08月16日 12:56