ヌード【興味津々】
どの少年、青年がそうであったように、昔は男性雑誌の巻頭ヌードグラビアをめくりながら興奮していた柴田少年と宮崎少年。ヌードと言えば女性と相場が決まっていたが、最近では"男性ヌード"という言葉がすっかりポピュラーになってしまっている。そんな中で、間違ってもCHAGE&ASKAのもとにはヌードの話はこないだろう。きたって断るに決まっているが、CHAGEもASKAも「撮影くらいはしてみていいかも」と思っている。できあがったヌード写真を見て、自分の裸がどれくらいのものかを直視するのは大事かもしれないしね。
脱いでもすごいんです【幻滅しないでね】
現在ツアー中のふたり。素晴らしいコンサートを見た人々から称賛の声を浴びているが、彼らのコンサートはなにも舞台上だけとは限らない。あまりにもテンションの高いコンサートを行なっているため、楽屋に戻ってもその精神はハイなまま。そこで楽屋ではじまるのが、ふたりの"脱ぎっこ"である。衣装を脱いで私服に戻るとき、信じがたいことだが、彼らは踊りながらそれを行なうのである。テーマ曲は70年代に流行ったスタイリスティックス。イントロのラッパの音とともにCHAGEがクルクルと回りながら登場し、音楽に合わせて上手に衣装を脱いでいく。次のメロディーではASKAも参加。ふたり揃ってきれいな踊りを見せてくれる。汗でキラキラ光るふたりの裸体は美しく、"脱いでもすごいCHAGE&ASKA"を見せつけてくれる。前項の【ヌード】で「撮影くらいしてみてもいいかも」と思う気持ちがわかるような気もする。リアルキャストでもほんの一部のスタッフしか見ることが許されない"脱いでもすごいんですダンス"。楽屋でこの踊りが出れば、その日のコンサートは満足いくできだったという証。スタッフは苦笑いしながらも、踊りを見るたびにホッとしているのであった。
ぬう【職人芸】
過去を振り返ってみると、いつのときも忙しかったCHAGE&ASKA。ひとつのことだけに集中するということができず、常に何かをやりながら何かをやっている状況だ。例えばコンサートの合間をぬってレコーディングを行なうとか、レコーディングの合間をぬって取材を行なうとか……。だいたい途中でキレて、こんな仕事の仕方はやめようと会議にまで持ち込まれるのだが、時間がたつと結局忘れてもとに戻っている有り様。ただ、ぬうように仕事をしているわりには、つぎはぎを感じさせない完璧な仕事をしているのはさすがである。ふたりは今日も「走る者にこそ力は存在する」の言葉を唱えながら、コンサートの合間にレコーディングを行なっているのであった。
ヌクヌク【後ろめたい比喩】
どういうわけか、プロモーションビデオの撮影となると、寒い場所がロケ地に選ばれるCHAGE&ASKA。撮影時期が夏の場合、寒を求めてオーストラリアへ行かされ、冬だとさらに北へ北へと行かされる。寒い中での撮影は本当に厳しい。寒さのためにふたりの表情が死んではいけないと、用意周到なスタッフは常に温かいものを準備している。外で寒さに耐えながら働いているスタッフを前に、分厚いコートを着て暖房の効いた部屋でホットな飲物を飲んでいるふたり。そういう状況になるたびに、自分達だけヌクヌクしていていいのかと申し訳ない気分になってしまう。だからと言って暖をとらないと表情が死んで、いい作品が撮れないし、風邪でもひかれたらすべてがパー。わかっちゃいるけど、ヌクヌクはふたりをもっとも後ろめたい気分にさせる言葉である。
脱げない脱げない【パニック】
コンサートで何回も何回も衣装をチェンジするミュージシャンがいる一方で、CHAGE&ASKAの場合はあまり衣装替えというものをやらない。それでも曲と曲の間に上着を脱ぐ、程度のことくらいはやっているが。しかし上着を脱ぐという行為、簡単そうに見えて実はけっこう大変。汗で上着がビショビショに濡れているせいか、ときどき袖口が手に引っ掛かって脱げないときもある。そんなときは「脱げない脱げない!」と叫びながら大いにパニクるものだが、最近では脱げないとわかると、また着なおして平然と定位置につくという技も身につけている。ちなみに今回のツアーでは、まだ「脱げない!」はなく、今のところスムーズな脱ぎができているそうです。
ぬしくる【言葉の妙】
聞き慣れない言葉「ぬしくる」。これはCHAGE、ASKAの生まれ故郷である福岡の一部で使われる言葉だ。「なすりつける」と同義語らしいが、「ぬしくる」の場合、例えば「鼻クソを村田の服にぬしくる」とか「鼻水をリアルキャストのカーテンにぬしくる」なんて感じで、もっとも下等がものを何かになすりつけるときに使われる。だから「罪をなすりつける」ってときには使わない。罪は鼻クソより上等なものらしい。CHAGEはこのような、鼻クソとか鼻水とかウン○などの下等なものだけに使われる言葉を生んだ福岡県の一部地域に、改めて敬意を表したいとものすごく興奮していた。ところでASKAは、こんな言葉知らないと言っていた。
盗む【ギルである】
人聞きの悪い言葉であるが、コンサート中のCHAGEやASKAは盗人になったりする。何を盗むかと言えば、楽屋に置かれている飲物、食べ物を、コソコソとホテルに持って帰るのである。その行為は「ギル」と呼ばれ、「おまえ昨日牛乳ギッただろ!」なんて会話がなされる。もともとふたりのために用意されたものだし、持ち出し禁止のおふれがあるわけじゃないから、コソコソする必要ももめる必要もないのだが、何故か悪いことをしているような気分になってしまうのだ。
ところで楽屋ギル大賞はCHAGEでもASKAでもない。マネージャーのN氏である。CHAGEは勇気を振り絞ってギッた、たった1缶のビールを握りしめながら、両手に抱えきれないほどのビールをウキウキとギッていくN氏をジッと見つめているのだった。
濡らす【疑問】
今年の1月にASKAのソロアルバムがリリースされたのは記憶に新しい。今回のASKAソロは、新しさを求め、アートディレクター、カメラマンなど、過去におつき合いのない方々と仕事をさせてもらった。撮影の際は、事前に数回の打合せが行なわれた。そのとき、アートディレクションサイドから何度も何度も提案されたのが、"ASKAを濡らす"というビジュアルだった。「雨の中でズブ濡れになりながらASKAがたたずむっていうの、かっこいいと思うよー」なんてディレクターは熱心に説く。実はこの手の提案は、そのときが初めてではなかった。過去にも新しいディレクター、新しいカメラマンと打合せするたびに「ASKAを濡らしたい」というアイディアは出た。しかし、こちら側の返事はいつだってノー。ASKAは見た目よりも前髪が長く、濡らすと髪が額に張りつき、形になりにくいからだ。それを知らない人達は、しつこく濡らそう濡らそうと言う。それにしても、クリエイティブな人々は、なぜ揃いも揃ってASKAを濡らしたいと言うのか。ビジュアルディレクターをやっているミヨコでさえも解けない謎である。ただ、最近ASKAの前髪は以前程長くなく、「濡らしても形になる」と本人が断言しているので、ひょっとしたら近いうちに「濡れたASKA」を撮影できるかもしれない。
ヌルリ【周辺シリーズ】
ムキッとした後にヌルリとした歯ぐきを見せて笑う奴が、とりあえず周辺に3人いる。
ヌンチャク【アチョー】
故ブルース・リーの『燃えよドラゴン』が日本全国一斉にブームになったとき、柴田君と宮崎君はもっとも流行物に乗りやすい高校生だった。胸に3本の傷を負いながら、手にヌンチャクを持って戦ったブルース・リーに憧れ、柴田君はリレーのバトンを使ってさっそくヌンチャクを作った。教室で「アチョー」なんてやってみたが、映画で観るほどうまくいかなかった。一方宮崎君は、通信販売で本物を入手。学校へ持っていって「アチョー」をやってみたが、やはり映画ほどうまくいかない。なぜか。実は映画でのヌンチャク技は、早まわしという技法がとられていて、ブルース・リーのように軽く振り回すことなんてできない代物なのだ。高校生の頃はわからなかったけど、大人になってもう一度『燃えよドラゴン』を観たとき、「なーんだ」と微笑みながらも、少し悲しくなったふたりだった。
最終更新:2025年06月23日 22:19