サカナ跳ねた【隠れた名曲】
「いい楽曲」が必ずしもヒットするとは限らないということは、CHAGEもASKAも過去の経験から十分承知している。「なんでこんなにいい曲がヒットしないんだろう」というボヤキは、ふたりの口からだけではなく、多くのスタッフ達からもよく漏れていた。それはCHAGE&ASKAの楽曲以外の、他のアーティストへの提供曲でもよく聞かれた。
彼らは多くのアーティストに楽曲を提供してきた。その中でどの曲がお気に入りですか?と尋ねられたとき、ASKAが真っ先に思い浮かべるのが芳本美代子さんに提供した『サカナ跳ねた』である。もともと彼女のアルバム用に書いていた曲だったのが、完成してみれば哀愁のあるいい楽曲になっていて、急遽シングルとしてリリースされた。タイトルは当時としては画期的で、このタイトルが世の中にどういう受け止められ方をするかを心配していたASKAだったが、「インパクトがある」「ヒット確実」などの関係者からの言葉にASKAは胸を撫で下ろしていた。
ところが「いい楽曲ですね」と褒められていたにもかかわらず、残念ながらヒットしなかった。ASKAはここでも「いい楽曲がヒットするとは限らないんだなあ」と納得するしかなかった。しかし、いい結果にならなかったにもかかわらず「あの曲好きなんです」と人々に長く言われ続けたASKA。自分がいいと思ったものは、人もいいと思ってくれることに少しだけ自信をつけたのであった。
そういう意味でも『サカナ跳ねた』は印象深い曲としてASKAの中に残っている。
魚釣り【夢】
小学生時代の宮崎少年は無類の釣り好きだった。家の近所に三笠川という川があり、彼はここで魚釣りをするのを楽しみのひとつにしていた。
月、水、金、日は剣道の練習があったから、三笠川で釣りをするのは火、木、土。それでも飽き足らず、朝5時に起きては登校前の1時間を釣りに当てていた。
中学、高校と進むにつれ釣りとは疎遠になり、いちばん新しい記憶といえば大学のときである。CHAGEとともに山口県萩市にある知り合いの家を尋ねたとき、時間を持て余したふたりが裏の川で釣りを楽しんだのだ。ASKAは夢中だったが、相棒のCHAGEはあまりおもしろそうではなかった。
最近、なぜかまた釣りへの情熱が過熱している。「リアルキャストの釣り師」と豪語する岡田と何度も釣りの計画を立てるが、何度も潰れている。ASKAが川でのんびりと釣りをできる日は、いったいいつのことになるのであろうか。
酒【大吟醸】
「酒といえばCHAGE」である。ただし「CHAGEといえば酒」の図式は当てはまらない。彼が酒を飲んで酔っ払った状態をおもしろおかしく何度も誌面で紹介してしまったため、「CHAGEってただの酔っぱらい」のレッテルが貼られてしまいそうだが、連日連夜飲んでいるわけでもなく、健康と仕事を考えきちんとセーブしている。
ちなみにCHAGEは、MULTI MAXのツアーがはじまる前は、好きなビールを絶っていた。ツアーの成功を祈り、願をかけていたのだ。その代わり、日本酒は飲んでいた。そこで新たに発見したのが大吟醸酒のおいしさ。まったりとしてて嫌味がなく、ワインのような上品な辛さがとても優雅な気分にさせてくれる。と言って、なにもみなさんに大吟醸をおねだりしているのではない。どうか気を使わないようにしてください。
サザーランドアベニュー【感傷的】
2年前、アルバム『GUYS』のレコーディングで何ヵ月もロンドンに滞在をした。そのとき、スタッフが住むフラットの通りがサザーランドアベニューだった。打ち合わせはすべてこのフラットで行われ、CHAGEもASKAもひんぱんにサザーランドアベニューに出向いていた。無事レコーディングが終わり、CHAGE以下スタッフはASKAを残して帰国するが、ASKAはいつになく感傷的になっていた。
「レコーディングのためにみんながロンドンにきてくれて、日本にいるときみたいに楽しい日々だった。みんなに会いたいときはサザーランドアベニューに行けばいいってこともあって、いつのまにか自分の中では大切な通りの名前になっていた。みんなが帰るときは、フッとひとり残される淋しさを感じて。サザーランドアベニューにももう来ることもないんだなって思った瞬間、胸が締めつけられるような思いを感じた」(ASKA)
サザーランドアベニューの名前も景色も、未だにASKAの胸の中に深く刻まれているのだった。
ザックリいこう【得意の擬音語】
「ザックリいこう」「ザックリした音で」「ザックリしたフレーズで」…。この「ザックリ」は、レコーディング中にふたりが多用する言葉である。意味は「大まかだけど気遣いがある」「荒っぽいけど細やかさがある」といったところ。具体的に言うとすれば「ちょっとひずんだ音で8ビートを思いっきり刻んでみたい」ときなど、「ザックリといこう」で表現したりする。さらに具体的に言えば、1月リリースのASKAソロシングル『晴天を誉めるなら夕暮れを待て』のレコーディング中は、ASKAの口から「ザックリ」がしょっちゅう飛び出していた。もうすぐリリースのザックリしたASKAシングルをどうかお楽しみに。
佐多美保【ディレクター】
C&A広辞苑の【さ】の欄でも登場したポニーキャニオンのディレクター、佐多美保。実はこのたび、おめでたいことに結婚することになった。女性スタッフが結婚すると「遠くへ行ってしまうようだ」と淋しさを感じるCHAGEとASKAだが、やはりめでたいこととして心から祝福したいと思っている。本当におめでとう。
サバ【ひとりごと】
「おれさあ、魚の中でいちばん好きなのがサバなんだよ。どんなに高級な魚よりも好き。とくにサバの塩焼きがいい。それも尻尾の部分がいちばんうまい。あとゴマサバもいいなあ。サバをみりん醤油かなんかにつけてゴマをふりかけて焼いたやつ。それをほぐしてご飯の上にかけてわさびをのっけてお茶漬けにすると、うまいんだこれが。ただし新鮮なサバじゃないとダメだよ。東京にいるとなかなか新鮮なサバが手に入らないから淋しいよね。ひさしぶりにサバの刺し身も食べてみたいな。おれ、ほんっとにサバが好きだからさ」(CHAGE)と言って、別に彼はみなさんにおねだりしているのではないので、どうかお気遣いのないようお願いします。
フランス語の「サヴァ」も気に入っている。
座布団回し【かくし芸】
人はひとつやふたつかくし芸を持っている。もともと歌が好きだったCHAGEとASKAのかくし芸は「歌」そのものであったが、今では仕事になってしまっているので、かくし芸とはいえなくなっている。そんな彼らに残されたかくし芸は、ASKAの手品とCHAGEの座布団回しである。ASKAの手品の代表演目は、手に持っている百円玉がどこかへ消えてしまうというもの。またCHAGEの座布団回しは、座布団をひとさし指一本でクルクルと回すものである。
リアルキャストのの宴会で調子にのったふたりは、スタッフの前でヘタな手品とくだらない座布団回しを披露しては場を盛り上げている。が、盛り上げていると思っているのは当人達だけで、実はふたりのこのパフォーマンスがはじまると「ああ、またはじまった」と場が一瞬のうちに暗くなるだけなのだ。いい加減気がついてほしいもんである。
三振【屈辱】
CHAGE率いるマルチマックス軍、ASKA率いるバーニッシュ軍で、ときたま野球の試合をしていることはみなさんもう御存知のはず。何度やってもマルチマックスの圧勝で、ASKAは自らのチームのメンバーチェンジを考えている最中だ。しかし、連勝しているチームのキャプテン・CHAGEは、勝ち負けとは違うところで落ち込んでいる。それは自分がよく三振をするということだ。しかもカラ振りの三振。見逃し三振の場合は審判のせいにすればいいが、カラ振りはすべてにおいて自分の責任。悔しくて悔しくてたまらない。なんとか三振をしないようにとバットを抱え、日夜練習もしないで考えているだけのCHAGEであった。
ちなみにCHAGEのカラ振り三振を思い出してはクスッと思い出し笑いをして、負けの悲しさを忘れるASKAだった。
最終更新:2025年06月23日 22:16