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人のつながりって本当に不思議だ。

人と人の繋(つな)がりってなんだろうね。今から話すことはとても不思議で、これを偶然というなら、そう言い切れる根拠を教えて欲しいと意地悪に思う。
僕のソロをサポートしてくれているメンバーとの話。一人は松本晃彦というミュージシャン。そう、あの「踊る大捜査線」の音楽を担当しているのが彼です。そして彼の音作りで大きな存在となっているシンセサイザーなども操作するマニピュレーターの森下晃だ。
先日、三人で六本木のお店に飲みに行った。その夜はお客さんも少なく、その店の"売り"であるママが僕たちの席に座った。「松本さんは、ご両親のどちらか音楽されてたの?」「両親は特別そうじゃないんですけど、実は伯父が松本秀彦と言ってテナーサックスを」「え!?ヒデちゃんのおいっ子さんなの!?」
「ASKAちゃんは?音楽やってた人は?」「親父(おやじ)は自衛官だしー」。と、その時ふと思い出したのが「あ、親戚(せき)の○○さんが米軍キャンプでクラリネット演奏してたって言ってたかなあ」と説明の途中で、「ウッソみたいなことが続くものねぇ。○○ちゃんも、ウチのパパとか、その秀ちゃんなんかとセッションしてた仲間よ」。そんな、嘘(うそ)でしょ。
四人で座ったテーブルの三人が繋がった。「森下さんの身内には?」「親父が歌を歌ってはいるんですけど、プロではないですし、カントリーですから」。「私の店にはね、もう日本一って言うくらいのカントリー歌手が長いこと歌ってくれてたのよ。森下さん…? その人は森下さんって言うんだけどまっさかねぇ」。
もう、違っていてもこの場はそうしてしまえー。松本と僕はまったくそう思っていた。普通ならあるワケがナイ。ない。無い。
それよりどうだったかって? どうにもこうにもママが森下のお父さんのフルネームを口にしたんだよ。
「今も遠くも、人は誰も真っすぐに伸びた円を歩く」。僕が書いた歌詞の一節。この歌詞と今の話に直接的な関係は無いが、すべての出来事は予定されたところに向かっているのかいないのか、『気の遠くなるほどの』と比喩(ひゆ)される歴史さえも、それは未来だけが知っていると言っているようだ。
万物は答えのでないところで繋がり、引き合い避けあい、意味を持たせながら意味も無く回っている。
最終更新:2025年08月16日 12:58