隣の人は行くらしい
いや、あるんだってば。それはスゴイもんだよ。ステージ上にいる僕のつま先から頭のてっぺんまで、トリ肌に似た電気のようなモノが駆け抜けて行くんだから。その瞬間、会場のお客さんも同じだと思う。これが「気」なるモノの正体だと言い切って間違いは無いと確信したね。最近は雑誌のインタビューの中でもそう話している。
それはね、二〇〇〇年を迎える福岡でのカウントダウンでの出来事。千年前に同じようなイベントが行われ、同じような感覚を覚えた人たちがいたかどうかは知らないけれど、二〇〇〇年に暦が飛び込もうとするその瞬間を体験できる時代に、僕らは偶然生きていた。その時を一緒に迎えようと集まってくれた観客が教えてくれたモノ。
二〇〇〇年まで残り三十秒になり、二十秒を唱え、最後の十秒を切るとドームの中の興奮は、パレードに参加した群衆と化したんだ。十、九、八と秒読みが始まった光景は忘れない。その時数字以外のことを考えていた人はいたんだろうか? 四万人をゆうに超える人たちの集中は互いに空気感染し合ってるかのように一つになったよ。
三、二、一と、その時がすぐそこまで来たときに、それは起こったんだ。つま先から頭のてっぺんまで、体の中心を駆け抜けていった電気のようなものがあったんだ。僕自身もそうだったろうけど、すべては到達へ向けたイメージの合体が感じさせたモノだったと思ったよ。「気」が織りなすモノ。人の気持ちは伝わる。だから上辺(うわべ)ではなく心から伝えようとしたときに相手は心のドアを開く。
そんなことを思い出した翌日のリハーサルは特別なメニューを加えた。メンバーに「気」の統一を求めたんだ。「エンディングから次の曲のイントロに入る瞬間、同じタイミングで同じ絵を浮かべて、観客を導こう」。これまで各個人ではあっただろうけど、ステージ上のメンバーと「気」を統一させるような試みはなかったからね。
その本番はどうだったかって? 「気」というモノの存在をみんなで認めたね。そしてあの感覚をもう一度味わうべく、今年十二月三十一日に札幌ドームで「カウントダウンライブ」を行う。音の溢(あふ)れかえる中で迎える新年、そして会場いっぱいに張り巡らされる「気」を体験してもらいたいなと。
そして僕らCHAGE&ASKAが活動二十五年目に突入する年の明けを、見届けてほしいと思います。「隣の人は行くらしい。」これが今回のコンサートタイトルです。
最終更新:2025年08月16日 12:57