434 名前: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 投稿日: 2008/09/13(土) 00:33:56.23 ID:MguWyPc0
「ゲージ日和」
「ゲージ日和」
隣の幼女が爪を噛む。苛立った時にやる彼女の癖だ。
苛立つのも仕方がない。もう6ヶ月もの間売れ残っているのだから。
「今日も残ったね」
にまにまと笑いながら言ってやると、彼女は表情を歪め私を睨んだ。
苛立つのも仕方がない。もう6ヶ月もの間売れ残っているのだから。
「今日も残ったね」
にまにまと笑いながら言ってやると、彼女は表情を歪め私を睨んだ。
「ふふ、怖いなあ。あと6ヶ月……半分もあるじゃない」
「……そうだね」
「……そうだね」
随分不安なのだろう。声が震えている。
彼女は自分のゲージに貼られた紙切れをしきりに気にしていた。
時折ショップの店員によって張り替えられるその紙は、勿論私のゲージの前にもある。
何か書いてあるようだけれど、こちらからでは何と書いてあるのかよくわからないのだ。
随分前に一度、ゲージの外へ連れ出された幼女に聞いてみたことがある。
彼女は自分のゲージに貼られた紙切れをしきりに気にしていた。
時折ショップの店員によって張り替えられるその紙は、勿論私のゲージの前にもある。
何か書いてあるようだけれど、こちらからでは何と書いてあるのかよくわからないのだ。
随分前に一度、ゲージの外へ連れ出された幼女に聞いてみたことがある。
「この紙には何が書いてあるの」
けれどその幼女は蔑むように私を見下ろし、
「外に出られる幼女にしか知る権利はないんだよ」
そう言って、店員に連れられどこかへ行ってしまったのだった。
435 名前: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 投稿日: 2008/09/13(土) 00:35:12.69 ID:MguWyPc0
部屋の奥から店員がやってきた。
鼻歌まじりに、随分と機嫌が良さそうだ。
435 名前: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 投稿日: 2008/09/13(土) 00:35:12.69 ID:MguWyPc0
部屋の奥から店員がやってきた。
鼻歌まじりに、随分と機嫌が良さそうだ。
「さあ、おいで」
私のゲージの鍵を開け、優しく頭を撫でる。
頭を撫でられるのは何ヶ月振りだったろうか。覚えていないけれど……悪くなかった。
私はゲージから出て大きく伸びをする。
きしきしと背骨が痛んだけれど、とても些細な事だ。
頭を撫でられるのは何ヶ月振りだったろうか。覚えていないけれど……悪くなかった。
私はゲージから出て大きく伸びをする。
きしきしと背骨が痛んだけれど、とても些細な事だ。
ふとゲージに貼られた紙が目に付いた。
ゲージの外に出た私には、長い間気になっていたそれをついに見ることが許されるのだ。
私はしゃがみ込んでまじまじと紙切れを見詰める。
436 名前: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 投稿日: 2008/09/13(土) 00:37:24.87 ID:MguWyPc0
『980円(税)』
ゲージの外に出た私には、長い間気になっていたそれをついに見ることが許されるのだ。
私はしゃがみ込んでまじまじと紙切れを見詰める。
436 名前: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 投稿日: 2008/09/13(土) 00:37:24.87 ID:MguWyPc0
『980円(税)』
……わからない。何と書いてあるのだろう。
「ねえ」
隣のゲージの彼女と目が合った。
「何が書いてあるの」
震える声で問い掛ける彼女に、吐き捨てるように言ってやった。
「外に出られる幼女にしか知る権利はないんだよ」
「行かないで」
「じゃあ、お先に」
「じゃあ、お先に」
さて、そろそろ行かなければ。
今日は私の処分の日だ。
今日は私の処分の日だ。
おしまい