176 名前: 幼女100000000円(税) 投稿日: 2008/02/07(木) 22:56:19.11 ID:LD//mQAO
運命、というものがある。
ものごとのなりゆきや人の身の上を支配し、人の意志で変えることも予測することもできない力。それが運命だ。
……まあそんな有るか無いか判らないものは、気にしたって仕様がないのだが。
運命、というものがある。
ものごとのなりゆきや人の身の上を支配し、人の意志で変えることも予測することもできない力。それが運命だ。
……まあそんな有るか無いか判らないものは、気にしたって仕様がないのだが。
「おおおおお!! 当たり当たり、大当たりぃ! 特賞が遂に出たあーっ!」
「……へ?」
カランカラン、とけたたましく鐘をかき鳴らしながら、赤はっぴの男は何やらとても嬉しそうに叫んだ。どうやら目の前の回転箱から転げ出た金色の球が原因らしいのだが、あまりの急展開に頭が付いて行けていなかった。
「おめでとうございます! 特賞の超高級幼女引換え券です、どうぞ!」
「は、はあ……」
満面の笑みを携えた赤はっぴが差し出した封筒を受け取る。よく見ると、赤はっぴには木下商店と刺繍が施してあった。
辺りには拍手と、感嘆と、羨望が満ちていた。なんだか気恥ずかしくて、足早にその場を立ち去る。人込みを抜け出すときに、何度か頭を叩かれた。
そう。これは福引きだ。たまたま通りすがった商店街で、さらに都合良く財布に一枚だけ福引き券があったりしたもんだから、参加してみたのだが……。
まさか。
まさか、特賞を当てるとは。
それも今話題のペット、幼女の引換え券を。それに聞いた。確かに聞いたぞ、超高級、とあの赤はっぴは言っていた。ピンからキリまである幼女の中、超高級と言ったら相当お高いことが想像できるわけで、同じ超でも超貧乏な俺が手の届くものではない。
「よし、なんかツイてる俺」
顔がニヤける。手に持つ封筒には、引換え券在中、の文字。横には、店のものらしい住所と電話番号が書かれていた。
さすがは高級なだけあって、他の幼女とは扱いが違うのだろうか。高鳴る胸を抑え、示された店へと向かった。
「……へ?」
カランカラン、とけたたましく鐘をかき鳴らしながら、赤はっぴの男は何やらとても嬉しそうに叫んだ。どうやら目の前の回転箱から転げ出た金色の球が原因らしいのだが、あまりの急展開に頭が付いて行けていなかった。
「おめでとうございます! 特賞の超高級幼女引換え券です、どうぞ!」
「は、はあ……」
満面の笑みを携えた赤はっぴが差し出した封筒を受け取る。よく見ると、赤はっぴには木下商店と刺繍が施してあった。
辺りには拍手と、感嘆と、羨望が満ちていた。なんだか気恥ずかしくて、足早にその場を立ち去る。人込みを抜け出すときに、何度か頭を叩かれた。
そう。これは福引きだ。たまたま通りすがった商店街で、さらに都合良く財布に一枚だけ福引き券があったりしたもんだから、参加してみたのだが……。
まさか。
まさか、特賞を当てるとは。
それも今話題のペット、幼女の引換え券を。それに聞いた。確かに聞いたぞ、超高級、とあの赤はっぴは言っていた。ピンからキリまである幼女の中、超高級と言ったら相当お高いことが想像できるわけで、同じ超でも超貧乏な俺が手の届くものではない。
「よし、なんかツイてる俺」
顔がニヤける。手に持つ封筒には、引換え券在中、の文字。横には、店のものらしい住所と電話番号が書かれていた。
さすがは高級なだけあって、他の幼女とは扱いが違うのだろうか。高鳴る胸を抑え、示された店へと向かった。
179 名前: 幼女100000000円(税) 投稿日: 2008/02/07(木) 23:00:37.44 ID:LD//mQAO
「……ペットショップVIP、か。やたらとでかいな」
異様な存在感に気圧されながらも、店内へ。
「う、これは」
見渡す限りの幼女、幼女、幼女。……他の動物はいないのか。
「いらっしゃいませ」
しばらくぼーっとしていると、客の来店に気付いたのか店員らしき男性が営業スマイルと一緒にやって来た。少し茶色がかった前髪の奥に見える顔は、客観的に見て水準以上だった。要するにイケメンだ。
「何かお探しですか?」
イケメンがそう尋ねると、店内のようすが変わった気がした。気のせいだろう。
「あ、ああ……ちょっと、幼女を」
「……ペットショップVIP、か。やたらとでかいな」
異様な存在感に気圧されながらも、店内へ。
「う、これは」
見渡す限りの幼女、幼女、幼女。……他の動物はいないのか。
「いらっしゃいませ」
しばらくぼーっとしていると、客の来店に気付いたのか店員らしき男性が営業スマイルと一緒にやって来た。少し茶色がかった前髪の奥に見える顔は、客観的に見て水準以上だった。要するにイケメンだ。
「何かお探しですか?」
イケメンがそう尋ねると、店内のようすが変わった気がした。気のせいだろう。
「あ、ああ……ちょっと、幼女を」
瞬間、爆発した。幼女たちが。
「わたちを買ってくだちゃい!」
「いいえ、あたしのほうがいいわよっ!」
「わ、わたしを……」
「私はすごいテクニックよ? お兄さん」
「ボクを買ってーっ」
もちろん、爆発というのは比喩だ。正しくは『爆発したように一斉に騒ぎ出した』になる。
「な、なっ……」
一瞬のうちにバーゲンセール会場と化したペットショップに順応できず、ただ狼狽した。幼女がこんなにパワフルだとは……。
「はいはいはい! 君達静かに! うるさい子は買って貰えないよー」
と、手を叩きながらイケメンが言った。すると、どうしたことだろう、爆発は嘘のように収まった。
「すいません、お客様が来るといつもこうなんですよ」
ニコッと営業スマイル。こいつは女を泣かせるタイプだ。間違いない。
「それでお客様、どんな幼女をお探しですか? ツンデレにヤンデレ、いろんなのがいますが」
「あ、実はさっき福引きでこちらの引換え券を当てまして。えっと……これです」
「! ……なるほど、話は聞いています、どうぞこちらへ」
男に促されるまま、奥の部屋へと付いていった。
「いいえ、あたしのほうがいいわよっ!」
「わ、わたしを……」
「私はすごいテクニックよ? お兄さん」
「ボクを買ってーっ」
もちろん、爆発というのは比喩だ。正しくは『爆発したように一斉に騒ぎ出した』になる。
「な、なっ……」
一瞬のうちにバーゲンセール会場と化したペットショップに順応できず、ただ狼狽した。幼女がこんなにパワフルだとは……。
「はいはいはい! 君達静かに! うるさい子は買って貰えないよー」
と、手を叩きながらイケメンが言った。すると、どうしたことだろう、爆発は嘘のように収まった。
「すいません、お客様が来るといつもこうなんですよ」
ニコッと営業スマイル。こいつは女を泣かせるタイプだ。間違いない。
「それでお客様、どんな幼女をお探しですか? ツンデレにヤンデレ、いろんなのがいますが」
「あ、実はさっき福引きでこちらの引換え券を当てまして。えっと……これです」
「! ……なるほど、話は聞いています、どうぞこちらへ」
男に促されるまま、奥の部屋へと付いていった。
180 名前: 幼女100000000円(税) 投稿日: 2008/02/07(木) 23:02:00.98 ID:LD//mQAO
そこは、別世界だった。
トンネルを抜けるとそこは雪国でした、とはまた違う。
例えるなら、大衆食堂のトイレに行ったらそこが一流ホテルの一室のように広くキレイで、挙句に便器が純金で出来ていたような。そんな違和。
ペットショップの一室であるはずのそこには、何故か広大な絨毯床が広がっており、天井には存在自体が眩しいシャンデリアがいくつも備えられていた。
「ようこそ、VIPルームへ。ここに来たのはあなたが初めてです」
男が言った。柔らかな笑みを浮かべて。
「す、すごいところですね。まるで……」
まるで、中世ヨーロッパが好みそうな、お城めいた造り。
「驚いたでしょう? 無理もありません。――こんな部屋はペットショップには不釣り合いに過ぎます。でも仕方無いんですよ? 最近ここに運ばれてきた商品のために、この部屋は造られたんですから」
きらきらと宝石が四方八方から輝きを撒き散らす中、部屋の中央、一際飛び抜けた存在感を放っているベッドを見る。それは大人が三人は余裕で寝れるぐらいの大きさで、天蓋付きの、いわゆるお嬢様ベッドだった。その光景だけで、どこかしらの貴族の寝室にお邪魔している気分になる。
「まさか、あの中に……?」
「ええ。既に引換え券は回収致しました。どうぞ、超高級幼女をお持ち帰り下さい」
すっ、とベッドに向けて手を差し延べるイケメン。行け、という意味だろう。
「……」
ベッドに歩み寄る。近付くにつれて、内部からすぅすぅと気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。
胸が落ち着かない。何しろ幼女を飼うのは初めてだ。しかも、超高級というのだからさらに緊張する。
「ん、これは」
値札だった。ベッドにぶら下がっている。商品名、幼女Z。――見ないほうが、良かったのかもしれない。
そこは、別世界だった。
トンネルを抜けるとそこは雪国でした、とはまた違う。
例えるなら、大衆食堂のトイレに行ったらそこが一流ホテルの一室のように広くキレイで、挙句に便器が純金で出来ていたような。そんな違和。
ペットショップの一室であるはずのそこには、何故か広大な絨毯床が広がっており、天井には存在自体が眩しいシャンデリアがいくつも備えられていた。
「ようこそ、VIPルームへ。ここに来たのはあなたが初めてです」
男が言った。柔らかな笑みを浮かべて。
「す、すごいところですね。まるで……」
まるで、中世ヨーロッパが好みそうな、お城めいた造り。
「驚いたでしょう? 無理もありません。――こんな部屋はペットショップには不釣り合いに過ぎます。でも仕方無いんですよ? 最近ここに運ばれてきた商品のために、この部屋は造られたんですから」
きらきらと宝石が四方八方から輝きを撒き散らす中、部屋の中央、一際飛び抜けた存在感を放っているベッドを見る。それは大人が三人は余裕で寝れるぐらいの大きさで、天蓋付きの、いわゆるお嬢様ベッドだった。その光景だけで、どこかしらの貴族の寝室にお邪魔している気分になる。
「まさか、あの中に……?」
「ええ。既に引換え券は回収致しました。どうぞ、超高級幼女をお持ち帰り下さい」
すっ、とベッドに向けて手を差し延べるイケメン。行け、という意味だろう。
「……」
ベッドに歩み寄る。近付くにつれて、内部からすぅすぅと気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。
胸が落ち着かない。何しろ幼女を飼うのは初めてだ。しかも、超高級というのだからさらに緊張する。
「ん、これは」
値札だった。ベッドにぶら下がっている。商品名、幼女Z。――見ないほうが、良かったのかもしれない。
185 名前: 幼女100000000円(税) 投稿日: 2008/02/07(木) 23:06:02.39 ID:LD//mQAO
「……!?」
ゼロが、ひとつふたつ、みっつ。さらによっついつつ、むっつななつやっつ……。
「いっ!」
思わず叫んだ。叫ぶほかにない。
「一億だとおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?!?」
「うるさいっ!」
甲高い声と同時に唐突にベッド内部から飛んできた枕が顔面に直撃。絶叫を消し去り絨毯へ落ちる。この間、一,三秒。
「な、なんだ?」
鼻をさすりながら枕の発射地点を見る。
そこに居たのは、透き通るような青い目をした、金髪の幼女だった。
「わらわが眠っている横で吠えておったのは貴様か、愚民」
幼女は眠そうな目をこしこしと擦りながら、それでも気品溢れる動作で立ち、こちらを見据えた。それは上流階級のソレであり、金の髪に白いキャミソールがよく似合っていた。
「え……え?」
全く予想外の事態に頭がメダパニ。さっき見た幼女たちの反応とはどう見ても違う。まるで、立場が逆転しているような錯覚さえ覚える。
「だ、大丈夫ですかお客様? すいません、この幼女は……他とは少し勝手が違いまして」
イケメンが苦笑いを浮かべながら説明を始めた。
「……!?」
ゼロが、ひとつふたつ、みっつ。さらによっついつつ、むっつななつやっつ……。
「いっ!」
思わず叫んだ。叫ぶほかにない。
「一億だとおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?!?」
「うるさいっ!」
甲高い声と同時に唐突にベッド内部から飛んできた枕が顔面に直撃。絶叫を消し去り絨毯へ落ちる。この間、一,三秒。
「な、なんだ?」
鼻をさすりながら枕の発射地点を見る。
そこに居たのは、透き通るような青い目をした、金髪の幼女だった。
「わらわが眠っている横で吠えておったのは貴様か、愚民」
幼女は眠そうな目をこしこしと擦りながら、それでも気品溢れる動作で立ち、こちらを見据えた。それは上流階級のソレであり、金の髪に白いキャミソールがよく似合っていた。
「え……え?」
全く予想外の事態に頭がメダパニ。さっき見た幼女たちの反応とはどう見ても違う。まるで、立場が逆転しているような錯覚さえ覚える。
「だ、大丈夫ですかお客様? すいません、この幼女は……他とは少し勝手が違いまして」
イケメンが苦笑いを浮かべながら説明を始めた。
190 名前: 幼女100000000円(税) 投稿日: 2008/02/07(木) 23:11:41.64 ID:LD//mQAO
いろいろなことを知った。
イギリス生まれの血統書付きの幼女であること。身の回りを高価な物で埋めなければ機嫌が悪いこと。……元は皇室で飼われるはずが、幼女数の飽和から日本に売られたこと。
だからこんなデタラメな値が付いてるのか、と納得する。それにしても、こんなものを福引きの景品になんか出してあの商店街は大丈夫なんだろうか。
「なるほど……とりあえず、こいつの態度のでかさの理由は判った」
何しろ皇室だ。カルチャーの違い、というのもあるだろう。
「はい……慣れるまでは大変かと思いますが、きっと満足なさいますよ」
どのくらい大変なのかは知らないが、といった台詞を付け足してやりたかった。とにもかくにも、未だにお嬢様ベッドに籠城している幼女Zを出さないことには――
「わらわは嫌じゃぞ! 誰がそんな貧乏くさい男に貰われるものか」
――どうにもならん。とりあえず今のは聞き捨てならん。
「だーれーが、貧乏くさいだって?」
「ひゃっ!? は、離せ無礼者! 本当のことじゃろうが!」
『高い高い』の姿勢で暴れる幼女Z。だが無駄だ。振りほどくには、体重が圧倒的に不足している。
「ほれほれ」
「あうぅ!? め、目が回る!?」
何をしているかはご想像にお任せ願いたい。……しかし、こうじっくり見るとやっぱり、綺麗だ。光を吸って白く輝く肌は眩しくて、手にかかる金糸の髪がくすぐったい。……さすが一億。
「やめんか、あほ愚民!」
めり。
これは幼女Zの足の裏が顔面にめり込んだ音だ。
「いでっ!」
思わず手を離すと、幼女Zはベッドに着地、そのまま布団を被ってしまった。
「くっ……お前なあ」
鼻をさすりながら(本日二回目だ)幼女Zを睨む。
「……どうせ」
何か、呟いた。
「え……?」
「どうせ、そなたもわらわを売るのじゃろう? ……あの皇室の奴等のように木下商店の店長のように、用無しになったら売るのじゃろう」
その幼女の目は他と違う。全てを諦めたような目で、全てを否定している。
「貴様のような貧乏人には、わらわの痛みなど判らぬじゃろう。帰るがよい。もうわらわは……人間など信じない」
いろいろなことを知った。
イギリス生まれの血統書付きの幼女であること。身の回りを高価な物で埋めなければ機嫌が悪いこと。……元は皇室で飼われるはずが、幼女数の飽和から日本に売られたこと。
だからこんなデタラメな値が付いてるのか、と納得する。それにしても、こんなものを福引きの景品になんか出してあの商店街は大丈夫なんだろうか。
「なるほど……とりあえず、こいつの態度のでかさの理由は判った」
何しろ皇室だ。カルチャーの違い、というのもあるだろう。
「はい……慣れるまでは大変かと思いますが、きっと満足なさいますよ」
どのくらい大変なのかは知らないが、といった台詞を付け足してやりたかった。とにもかくにも、未だにお嬢様ベッドに籠城している幼女Zを出さないことには――
「わらわは嫌じゃぞ! 誰がそんな貧乏くさい男に貰われるものか」
――どうにもならん。とりあえず今のは聞き捨てならん。
「だーれーが、貧乏くさいだって?」
「ひゃっ!? は、離せ無礼者! 本当のことじゃろうが!」
『高い高い』の姿勢で暴れる幼女Z。だが無駄だ。振りほどくには、体重が圧倒的に不足している。
「ほれほれ」
「あうぅ!? め、目が回る!?」
何をしているかはご想像にお任せ願いたい。……しかし、こうじっくり見るとやっぱり、綺麗だ。光を吸って白く輝く肌は眩しくて、手にかかる金糸の髪がくすぐったい。……さすが一億。
「やめんか、あほ愚民!」
めり。
これは幼女Zの足の裏が顔面にめり込んだ音だ。
「いでっ!」
思わず手を離すと、幼女Zはベッドに着地、そのまま布団を被ってしまった。
「くっ……お前なあ」
鼻をさすりながら(本日二回目だ)幼女Zを睨む。
「……どうせ」
何か、呟いた。
「え……?」
「どうせ、そなたもわらわを売るのじゃろう? ……あの皇室の奴等のように木下商店の店長のように、用無しになったら売るのじゃろう」
その幼女の目は他と違う。全てを諦めたような目で、全てを否定している。
「貴様のような貧乏人には、わらわの痛みなど判らぬじゃろう。帰るがよい。もうわらわは……人間など信じない」
194 名前: 幼女100000000円(税) 投稿日: 2008/02/07(木) 23:13:48.95 ID:LD//mQAO
それが、最後だった。もう幼女Zは、こちらに顔を向けることもしない。店員はやれやれといった表情で、携帯電話を開いていた。
それが、その雰囲気が、可笑しかった。
そっとベッドに潜り込む。まだ何も、始まっていない。
「……ん!?」
「こちょこちょ」
脇腹を捉えた。もう止めることは叶わない。
「えっ、ちょっ、貴様なにを! やめっ、あっ」
「こちょこちょ」
「~~~~~~~~ッッッッッ!!!!」
声にならない声を上げて、幼女Zは悶えまくっている。
「貧乏人は禁句だ」
「はわっ、っ~~~~ま、待て、やめ、ろ」
「こちょこちょ」
「ふわあぁぁああ!?!? ふぁっ、あぅう!?」
そろそろ死にそうなので止めておく。くすぐり地獄はある意味核以上に恐ろしいな……。
「目、覚めたかナマイキ幼女」
「はぁ、はぁ、はぁ、ふぇ……?」
何のつもりだ、と幼女Zはトロンとした目で問いかけてくる。顔は紅潮し、息は荒い。
「俺は、売らない」
「な、に……?」
ポン、と頭に手を乗せる。
「俺は、絶対にお前を売らないよ。それなら、貰われてくれるだろう?」
言ってやった。言いたいことを言ってやった。……ここで俺が帰ってしまったら、このお姫様幼女の勘違いを、誰が正してあげられるのだろう。
幼女Zの顔がさらに赤みを増した。耳まで真っ赤だ。
「へえ、幼女でも照れるんだな?」
「ばっ、ここ、これは、ちがうぞ。別にそなたは関係ない!」
「俺が関係あるなんて一言も言ってないぞ?」
「う!? ち、ちが――」
実に判りやすい。これは案外、いい買い物なのかも知れないな。
それが、最後だった。もう幼女Zは、こちらに顔を向けることもしない。店員はやれやれといった表情で、携帯電話を開いていた。
それが、その雰囲気が、可笑しかった。
そっとベッドに潜り込む。まだ何も、始まっていない。
「……ん!?」
「こちょこちょ」
脇腹を捉えた。もう止めることは叶わない。
「えっ、ちょっ、貴様なにを! やめっ、あっ」
「こちょこちょ」
「~~~~~~~~ッッッッッ!!!!」
声にならない声を上げて、幼女Zは悶えまくっている。
「貧乏人は禁句だ」
「はわっ、っ~~~~ま、待て、やめ、ろ」
「こちょこちょ」
「ふわあぁぁああ!?!? ふぁっ、あぅう!?」
そろそろ死にそうなので止めておく。くすぐり地獄はある意味核以上に恐ろしいな……。
「目、覚めたかナマイキ幼女」
「はぁ、はぁ、はぁ、ふぇ……?」
何のつもりだ、と幼女Zはトロンとした目で問いかけてくる。顔は紅潮し、息は荒い。
「俺は、売らない」
「な、に……?」
ポン、と頭に手を乗せる。
「俺は、絶対にお前を売らないよ。それなら、貰われてくれるだろう?」
言ってやった。言いたいことを言ってやった。……ここで俺が帰ってしまったら、このお姫様幼女の勘違いを、誰が正してあげられるのだろう。
幼女Zの顔がさらに赤みを増した。耳まで真っ赤だ。
「へえ、幼女でも照れるんだな?」
「ばっ、ここ、これは、ちがうぞ。別にそなたは関係ない!」
「俺が関係あるなんて一言も言ってないぞ?」
「う!? ち、ちが――」
実に判りやすい。これは案外、いい買い物なのかも知れないな。
197 名前: 幼女100000000円(税) 投稿日: 2008/02/07(木) 23:17:03.50 ID:LD//mQAO
「さて、じゃあそろそろ帰ります」
「はい、お買い上げありがとうございます」
ニコッとお約束の店員スマイル。最後までこの調子とは……このイケメン、実は大物なのかもしれない。
「あ、そうだ」
「なんでしょう?」
「このベッドとかって、付いてくるんですかね」
「別売りです」
「……ですよね」
やっぱり大物かもしれない。
「さて、じゃあそろそろ帰ります」
「はい、お買い上げありがとうございます」
ニコッとお約束の店員スマイル。最後までこの調子とは……このイケメン、実は大物なのかもしれない。
「あ、そうだ」
「なんでしょう?」
「このベッドとかって、付いてくるんですかね」
「別売りです」
「……ですよね」
やっぱり大物かもしれない。
ありがとうございましたー、というお馴染みの挨拶をBGMに、幼女Zを連れて外に出る。
「お、おい。わらわはまだそなたに付いて行くとは……」
「そのわりには、ちゃんと付いて来てるじゃないか」
剃刀のようなツッコミに、幼女Zはむぅと唸って下を向く。……そもそも、俺のジャケットの裾を掴みながら言うことじゃないだろ、それ。
ちなみに、今幼女Zはオプションで付いてきたフリフリの洋服を着ている。これを連れて歩くのは相当恥ずかしいものがあるのだが、これも運命だと思って我慢することにした。
「……のう、愚民」
不意に、幼女Zが失礼極まりない呼び止め方をしてきた。
「あいたっ」
「……人を愚民呼ばわりしてはいけません」
「ぶ、ぶれーものめっ! わらわの頭をひっぱたくとは何事じゃ!?」
やれやれ、この幼女は飼い主を何だと思ってるのか。
「で、なんだ?」
「む……そなたの名はなんと申す。い、いやな、気まぐれに聞いておるだけじゃぞ!? 他意はない、他意はないのじゃぞ!?」
いやー、ほんと。
素直じゃないなあ、こいつ。
そのくせ判りやすいから、笑いを堪えるのが難しくて困る。
「お、おい。わらわはまだそなたに付いて行くとは……」
「そのわりには、ちゃんと付いて来てるじゃないか」
剃刀のようなツッコミに、幼女Zはむぅと唸って下を向く。……そもそも、俺のジャケットの裾を掴みながら言うことじゃないだろ、それ。
ちなみに、今幼女Zはオプションで付いてきたフリフリの洋服を着ている。これを連れて歩くのは相当恥ずかしいものがあるのだが、これも運命だと思って我慢することにした。
「……のう、愚民」
不意に、幼女Zが失礼極まりない呼び止め方をしてきた。
「あいたっ」
「……人を愚民呼ばわりしてはいけません」
「ぶ、ぶれーものめっ! わらわの頭をひっぱたくとは何事じゃ!?」
やれやれ、この幼女は飼い主を何だと思ってるのか。
「で、なんだ?」
「む……そなたの名はなんと申す。い、いやな、気まぐれに聞いておるだけじゃぞ!? 他意はない、他意はないのじゃぞ!?」
いやー、ほんと。
素直じゃないなあ、こいつ。
そのくせ判りやすいから、笑いを堪えるのが難しくて困る。
199 名前: 幼女100000000円(税) 投稿日: 2008/02/07(木) 23:19:26.10 ID:LD//mQAO
「ん……俺か? 男だ」
「男、か。ふん、これからわらわの家臣になるからには、名ぐらいしっておかねばな」
「あほ。逆だ。俺がお前のご主人様になるんだよ」
「なんじゃと!?」
家に帰るのに、こんなに騒がしいのは久し振りだ。やっぱり、いい買い物だった、と思う。引換え券だが。
もしも運命なんてものがあったなら。おそらくこれが、俺の運命なんだと思う。
この幼女の『勘違い』を正してやることが、俺の運命なんだろう。
「着いた。ここが我が家だ」
「……どこじゃ?」
「あるじゃないか。目の前に」
もうすぐ築60年を迎えるボロアパートの家賃は一万五千円。ペットは……大丈夫だろう、多分。
「男、わらわを売る気は……」
「無い」
横でがっくりと肩を落としているのが、よく判った。
「ん……俺か? 男だ」
「男、か。ふん、これからわらわの家臣になるからには、名ぐらいしっておかねばな」
「あほ。逆だ。俺がお前のご主人様になるんだよ」
「なんじゃと!?」
家に帰るのに、こんなに騒がしいのは久し振りだ。やっぱり、いい買い物だった、と思う。引換え券だが。
もしも運命なんてものがあったなら。おそらくこれが、俺の運命なんだと思う。
この幼女の『勘違い』を正してやることが、俺の運命なんだろう。
「着いた。ここが我が家だ」
「……どこじゃ?」
「あるじゃないか。目の前に」
もうすぐ築60年を迎えるボロアパートの家賃は一万五千円。ペットは……大丈夫だろう、多分。
「男、わらわを売る気は……」
「無い」
横でがっくりと肩を落としているのが、よく判った。
幼女Zの一生は、いま始まった。さあ、次はどんな運命になるのだろう。
終
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