825 名前: 【最期のひととき】8.かすり傷(1/5) 投稿日: 2008/05/09(金) 00:04:03.65 ID:4RuDXNgo
三人がやる夫屋敷を出た頃には、もう日が傾きかけていた。宿に入るにはちょうど良い時間だ。
夫の車は、VIP寺に一番近い大きな旅館の駐車場に入った。宿の看板には大きく「幼女宿泊できます」、
横に小さく「ただし幼男同伴はお断り致しております」の文字があった。
夫は車のトランクから、一泊なので大して量のない荷物を引っ張りだした。ちさとは自分の荷物と、
やる夫人形の入った袋を抱え、夫妻に続いて旅館の敷居をまたいだ。
三人がやる夫屋敷を出た頃には、もう日が傾きかけていた。宿に入るにはちょうど良い時間だ。
夫の車は、VIP寺に一番近い大きな旅館の駐車場に入った。宿の看板には大きく「幼女宿泊できます」、
横に小さく「ただし幼男同伴はお断り致しております」の文字があった。
夫は車のトランクから、一泊なので大して量のない荷物を引っ張りだした。ちさとは自分の荷物と、
やる夫人形の入った袋を抱え、夫妻に続いて旅館の敷居をまたいだ。
夫「予約していた夫だが……」
受付「夫様ですね、ご予約承っております。二名様と幼女一匹ですね」
受付「夫様ですね、ご予約承っております。二名様と幼女一匹ですね」
幼女一匹と言われ、さすがに夫妻はむっとしたが、受付嬢は慣れているのだろう、無視して
受付「では誠に申し訳ありませんが、そちらの幼女がメスであることを確認させていただきます」
妻「確認……ってどういうことです?」
受付「はい、当宿では幼男のご同伴はお断り致しておりますが、お客様の中には残念ながら」
受付「幼女と偽って幼男を連れ込む方がいらっしゃいますので」
受付「幼男は躾も難しく、幼女と接するとトラブルを起こしやすいので、」
受付「お泊りいただく全てのお客様と幼女の、安全のために確認させていただきます、御協力を」
妻「確認……ってどういうことです?」
受付「はい、当宿では幼男のご同伴はお断り致しておりますが、お客様の中には残念ながら」
受付「幼女と偽って幼男を連れ込む方がいらっしゃいますので」
受付「幼男は躾も難しく、幼女と接するとトラブルを起こしやすいので、」
受付「お泊りいただく全てのお客様と幼女の、安全のために確認させていただきます、御協力を」
夫妻は不愉快だったが、そう言われると従うしかない。ちさとは荷物を妻に渡し、
受付嬢の示す部屋に入った。夫妻に飼われ始めて以来、ちさとが夫妻から離れるのは初めてだった。
不安に駆られる中、ちさとは受付嬢とは別の、中年の女性従業員に下着を脱がされた。
下腹部を見られ、触って確認され、証拠写真(と言ってもオスメスが分かる程度だが)を撮られ、
手形まで取られた。こんな扱いを受けたのは幼女ショップ以来だ。女性従業員が投げやりに
受付嬢の示す部屋に入った。夫妻に飼われ始めて以来、ちさとが夫妻から離れるのは初めてだった。
不安に駆られる中、ちさとは受付嬢とは別の、中年の女性従業員に下着を脱がされた。
下腹部を見られ、触って確認され、証拠写真(と言ってもオスメスが分かる程度だが)を撮られ、
手形まで取られた。こんな扱いを受けたのは幼女ショップ以来だ。女性従業員が投げやりに
女「終わったよ、ほら」
押し出されるようにちさとが部屋を出ると、すぐに妻が駆け寄り、ちさとを抱きしめた。
妻「ちさと、大丈夫だった? 変なことされなかった?」
ち「……はい、大丈夫です」
ち「……はい、大丈夫です」
ちさとは妻のあたたかい胸の中で頷いた。
826 名前: 【最期のひととき】8.かすり傷(2/5) 投稿日: 2008/05/09(金) 00:04:45.79 ID:4RuDXNgo
仲居に案内され部屋に入った三人は、荷物を置き上着を脱いで
826 名前: 【最期のひととき】8.かすり傷(2/5) 投稿日: 2008/05/09(金) 00:04:45.79 ID:4RuDXNgo
仲居に案内され部屋に入った三人は、荷物を置き上着を脱いで
夫「どれ、やっと人心地ついたな」
夫は宿の部屋から外の景色を眺めて言った。ちさとは部屋をきょろきょろ見回しながら、
ち「旅館ってどんなところかと思ってましたけど、家とあんまり変わりませんね」
必要最低限の家具、常に清潔で片付いた室内、マンションの夫妻の部屋の和室だけを
少し広くしたようにちさとは感じた。現実には、それほど殺風景な夫妻の部屋の方が特別なのだが、
ちさとがそれを知る由もない。ただ、夫妻の部屋と違うのは
少し広くしたようにちさとは感じた。現実には、それほど殺風景な夫妻の部屋の方が特別なのだが、
ちさとがそれを知る由もない。ただ、夫妻の部屋と違うのは
子供「パパぁ、早く早くぅ」
父親「分かったから引っ張るなって、おーい楓ぇ、先行ってるぞー!」
父親「分かったから引っ張るなって、おーい楓ぇ、先行ってるぞー!」
走る子供の足音や廊下を通る人々の話し声が、襖一枚隔てた向こうからよく聞こえてくることだ。
奇妙なリズムの足音に気づいて、ちさとが襖をそっと開けると、顔の右側が包帯で縛られ、
右腕のない小柄な女性が、大きく左肩を揺らしながら歩いていた。変に思って足元を見ると、
左の足首から下がない。悪いものを見てしまった気がして、ちさとは慌てて襖を閉めた。
奇妙なリズムの足音に気づいて、ちさとが襖をそっと開けると、顔の右側が包帯で縛られ、
右腕のない小柄な女性が、大きく左肩を揺らしながら歩いていた。変に思って足元を見ると、
左の足首から下がない。悪いものを見てしまった気がして、ちさとは慌てて襖を閉めた。
妻「どうしたの、ちさと?」
ち「いえ、何でも……」
ち「いえ、何でも……」
その後は三人で外へ出て、夕食の時間まで町をぶらぶら歩いた。禅寺の門前町と言うことで
町は時代劇を思わせる古い和風建築が多い。表通りは瓦屋根に木の壁の土産物屋や旅館が
立ち並び、路地に入ると白塗りの壁や石の階段など、古きよき日本情緒に溢れている。
VIP寺は高台から、そんな町を見下ろすように建てられていた。周囲の森が紅葉で赤く染まる中、
青丹の瓦が映えている。夕食の時間が近づき旅館に戻りながら、ふとVIP寺を見上げると、
夕闇の中スポットライトで照らされた紅葉が、幻想的に浮かび上がっていた。
827 名前: 【最期のひととき】8.かすり傷(3/5) 投稿日: 2008/05/09(金) 00:05:14.87 ID:4RuDXNgo
旅館の夕食は、鮎の塩焼きや茸とブロッコリーの炒めものをワサビ醤油で味付けしたものなど、
昼食に負けないくらい豪勢だった。ちさとは癖の強い野菜を苦手としていたが、どうやら旅館は
幼女連れには幼女向けの味付けをしているらしく、ちさとが恐る恐る口に運んだセロリのゴマ味噌和えは
町は時代劇を思わせる古い和風建築が多い。表通りは瓦屋根に木の壁の土産物屋や旅館が
立ち並び、路地に入ると白塗りの壁や石の階段など、古きよき日本情緒に溢れている。
VIP寺は高台から、そんな町を見下ろすように建てられていた。周囲の森が紅葉で赤く染まる中、
青丹の瓦が映えている。夕食の時間が近づき旅館に戻りながら、ふとVIP寺を見上げると、
夕闇の中スポットライトで照らされた紅葉が、幻想的に浮かび上がっていた。
827 名前: 【最期のひととき】8.かすり傷(3/5) 投稿日: 2008/05/09(金) 00:05:14.87 ID:4RuDXNgo
旅館の夕食は、鮎の塩焼きや茸とブロッコリーの炒めものをワサビ醤油で味付けしたものなど、
昼食に負けないくらい豪勢だった。ちさとは癖の強い野菜を苦手としていたが、どうやら旅館は
幼女連れには幼女向けの味付けをしているらしく、ちさとが恐る恐る口に運んだセロリのゴマ味噌和えは
ち「あ、これなら食べられます」
夫「本当か? ……お、こりゃ一杯欲しくなるな」
妻「醤油と砂糖で味付けすれば、うちでも作れそうね」
夫「本当か? ……お、こりゃ一杯欲しくなるな」
妻「醤油と砂糖で味付けすれば、うちでも作れそうね」
美味しい夕食で満腹になった後、ちさとは一人で部屋を出た。部屋を出てすぐ振り返ると、
襖の横に木札が下げてあったが、ちさとには読めない字だった。
『桔梗』
字の上には、淡い紫の五弁の花が描かれている。花の絵と文字の形を覚え、ちさとは
純和風旅館の『探検』に出発した。
襖の横に木札が下げてあったが、ちさとには読めない字だった。
『桔梗』
字の上には、淡い紫の五弁の花が描かれている。花の絵と文字の形を覚え、ちさとは
純和風旅館の『探検』に出発した。
旅館は最近建て直したものらしく、何もかもが新しかった。壁はマンションのものとは違う材料で、
模様をよく見ると、何か荒い粒と毛のような細いものが塗り込められている。柱は木製、
階段も木製で壁に覆われている、窓の手前側に障子がついているなど、夫妻のマンションと
違っている全てが珍しかった。ちさとが背伸びして廊下の窓から外を眺めていると、後ろから
模様をよく見ると、何か荒い粒と毛のような細いものが塗り込められている。柱は木製、
階段も木製で壁に覆われている、窓の手前側に障子がついているなど、夫妻のマンションと
違っている全てが珍しかった。ちさとが背伸びして廊下の窓から外を眺めていると、後ろから
女「迷子になったのかい?」
ち「あ……」
ち「あ……」
ちさとは振り返って、声を詰まらせた。受付でちさとを『検査』した、あの中年女だ。
女「桔梗の間のお客さんとこの幼女だね、こんなところで幼女の放し飼いなんて無用心だねぇ」
女「ほら、部屋に戻るよ」
ち「あ、そ、その前に、トイレ……」
女「ああ? 桔梗の間からトイレ行くのに、何でこんなところ通るんだい」
女「ほら、部屋に戻るよ」
ち「あ、そ、その前に、トイレ……」
女「ああ? 桔梗の間からトイレ行くのに、何でこんなところ通るんだい」
中年女は呆れつつ、ちさとの手を無理やり引っ張ってトイレまで連れて行った。
ち(たった1ヶ月なのに忘れてた……私は『幼女』だから……これが当たり前なのに)
828 名前: 【最期のひととき】8.かすり傷(4/5) 投稿日: 2008/05/09(金) 00:05:39.34 ID:4RuDXNgo
中年女はちさとを部屋の前まで連れてくると、さっさと行ってしまった。だからもう一度
『探検』に行ってもよかったが、また見つかると厄介だと思い、ちさとはそのまま部屋に戻った。
828 名前: 【最期のひととき】8.かすり傷(4/5) 投稿日: 2008/05/09(金) 00:05:39.34 ID:4RuDXNgo
中年女はちさとを部屋の前まで連れてくると、さっさと行ってしまった。だからもう一度
『探検』に行ってもよかったが、また見つかると厄介だと思い、ちさとはそのまま部屋に戻った。
夫「やっと帰ってきたか。そろそろ風呂に行こうか、ここの風呂はうちのと違って広いぞ」
妻「着替えは用意してるわよ」
妻「着替えは用意してるわよ」
妻は夫とちさとに着替えとタオルを渡すと、立ち上がった夫とちさとに
妻「じゃ、いってらっしゃい」
ち「おかあさんは行かないんですか?」
妻「……ごめんね」
夫「おかあさんは知らない人と風呂に入るのも、こういうところの熱い風呂も駄目なんだ」
ち「おかあさんは行かないんですか?」
妻「……ごめんね」
夫「おかあさんは知らない人と風呂に入るのも、こういうところの熱い風呂も駄目なんだ」
と言うわけで、ちさとは大浴場の前で夫と別れ、一人で女湯の脱衣所に入った。そこには……
服を着ている老婆が一人と、服を脱ぎながら会話している姉妹らしい少女と若い女性、
二人の保護者らしい妙齢の女性の三人組がいた。
初めてで勝手の分からないちさとが、おずおずと中に入り、何をどうしたらいいのか迷っていると、
服を着ている老婆が一人と、服を脱ぎながら会話している姉妹らしい少女と若い女性、
二人の保護者らしい妙齢の女性の三人組がいた。
初めてで勝手の分からないちさとが、おずおずと中に入り、何をどうしたらいいのか迷っていると、
姉?「お嬢さん、お一人? お母さんかお姉さんは一緒じゃないの?」
ち「あ……その……おかあさん、ここのお風呂には、入れなくて……」
姉?「じゃあ、私たちと一緒では嫌かしら? あやめ、オバさん、いいでしょう?」
妹?「もちろんです、お母様」
熟女「あざみ様とあやめ様が良いのでしたら、私は構いませんわ」
ち「え、でも……私……お邪魔じゃ……?」
妹?「でしたら、私たち、お友達になりませんか?」
妹?「お友達となら、一緒にお風呂に入って下さるでしょう?」
ち「え……あ……はい!」
ち「あ……その……おかあさん、ここのお風呂には、入れなくて……」
姉?「じゃあ、私たちと一緒では嫌かしら? あやめ、オバさん、いいでしょう?」
妹?「もちろんです、お母様」
熟女「あざみ様とあやめ様が良いのでしたら、私は構いませんわ」
ち「え、でも……私……お邪魔じゃ……?」
妹?「でしたら、私たち、お友達になりませんか?」
妹?「お友達となら、一緒にお風呂に入って下さるでしょう?」
ち「え……あ……はい!」
ちさとはようやく笑顔になった――脱衣所の奥の張り紙に気付くことなく。
『幼女は、必ず飼い主と一緒に入ってください』
829 名前: 【最期のひととき】8.かすり傷(5/5) 投稿日: 2008/05/09(金) 00:06:13.89 ID:4RuDXNgo
三人の女性に教わり、ちさとは脱いだ服を篭に入れて空いた棚へ置き、大浴場への引き戸を開けた。
829 名前: 【最期のひととき】8.かすり傷(5/5) 投稿日: 2008/05/09(金) 00:06:13.89 ID:4RuDXNgo
三人の女性に教わり、ちさとは脱いだ服を篭に入れて空いた棚へ置き、大浴場への引き戸を開けた。
ち「わぁ!」
大浴場は、ちさとが想像していたよりずっと広かった。蛇口がずらり並んだ十畳ほどの洗い場と、
タイル張りの八畳ほどの湯船。目の前が曇るほどの湯気にちさとは驚いた。案の定、湯船のお湯は
妻と入る風呂よりずっと熱かったが、女性三人組の熟女が、ちさとに少しずつお湯をかけて
慣らしてくれた。他にも熟女は、ちさとの体や髪を洗ったりと、ほとんどつきっきりでちさとを
世話してくれた。熟女の洗い方はゴシゴシと乱暴だが手際がよく、ちさとに声をかけるタイミングも
絶妙で、ちさとを壊れ物のように扱う妻とは対照的だ。
タイル張りの八畳ほどの湯船。目の前が曇るほどの湯気にちさとは驚いた。案の定、湯船のお湯は
妻と入る風呂よりずっと熱かったが、女性三人組の熟女が、ちさとに少しずつお湯をかけて
慣らしてくれた。他にも熟女は、ちさとの体や髪を洗ったりと、ほとんどつきっきりでちさとを
世話してくれた。熟女の洗い方はゴシゴシと乱暴だが手際がよく、ちさとに声をかけるタイミングも
絶妙で、ちさとを壊れ物のように扱う妻とは対照的だ。
熟女「こうしてお嬢ちゃんを洗ってると、坊ちゃまが子供だった頃のことを思い出しますわ」
ち「坊ちゃま?」
ち「坊ちゃま?」
熟女の話によると、彼女はさる資産家に仕えていて、子供の頃に両親を亡くした主が
成人するまで、後見人として身の回りの世話をしていたらしい。手際の良さも納得だ。
ちなみに、同伴の少女は主の婚約者、姉だと思っていた若い女性は少女の母親とのこと。
成人するまで、後見人として身の回りの世話をしていたらしい。手際の良さも納得だ。
ちなみに、同伴の少女は主の婚約者、姉だと思っていた若い女性は少女の母親とのこと。
ち「お母さんなんだ……いいな」
その後は少女や母親も交え、明日の紅葉祭りの話になった。彼女らの主は、今日は用事で
別行動だが、明日合流して一緒に紅葉見物をするらしい。少女の母は若い頃(現在でも若いが)に
亡夫と紅葉祭りに来たことがあるらしく、その頃の思い出をいろいろ話してくれた。
別行動だが、明日合流して一緒に紅葉見物をするらしい。少女の母は若い頃(現在でも若いが)に
亡夫と紅葉祭りに来たことがあるらしく、その頃の思い出をいろいろ話してくれた。
話が終わり風呂から上がるときも、熟女はちさとの体を拭いたり濡れたタオルを畳んだり
忘れ物を確認したりと、いつの間に服を着たのかと思うほど手際よく、ちさとの面倒を見ていた。
ちさとが三人と一緒に女場から出ると、目の前で夫が待っていた。夫は三人に礼を言い、
忘れ物を確認したりと、いつの間に服を着たのかと思うほど手際よく、ちさとの面倒を見ていた。
ちさとが三人と一緒に女場から出ると、目の前で夫が待っていた。夫は三人に礼を言い、
少女「明日VIP寺で会いましょうね」
少女はちさとと約束して別れた。