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  • 新ジャンル「幼女980円(税)」SSまとめ@wiki
  • うたう幼女3

新ジャンル「幼女980円(税)」SSまとめ@wiki

うたう幼女3

最終更新:2008年03月16日 11:28

oreneet88

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641 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/02/27(水) 23:03:20.59 ID:/pFN5QAO
「お前何だかんだで、シャワーとかの使い方良く知らないんだな。
良い機会だから教えとくよ。
そっちから一緒に入ろうって言うくらいだし、もうこの際良いだろ?」

どうやらだめらしい。

俺たちは一方は浴槽、一方は洗い場でお互い背を向け合うという、
何とも奇妙な入浴スタイルを決行していた。

こういった事情に関しては思春期かとツッコみたくなるくらいに敏感な反応を示すこの少女はなんと鏡越しに見られるケースも考慮しているようで、
お互いの持ち場を交代する際はタオルでの目隠しを申し付ける徹底ぶりだ。
よく事情を知らない人がこの状況を見たら「これ、何かのプレイ?」と言うと思う。

余談になることを承知で言うが、個人的に言わせてもらうとちっとも楽しくない。
もっと触れ合おうぜ。全裸くらい見せろ。襲うぞ。

643 名前: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 投稿日: 2008/02/27(水) 23:07:41.90 ID:/pFN5QAO
こんなこと言ってると誤解されそうだからくれぐれも断っておくが、
俺は何も少女の裸体が見たいとか、あわよくば悪戯してやろうとか
そんなことを本気で考えてるわけじゃないんだ。

そもそも俺は自分でも意外なほどにミクをそんな目で見ていない。や、見れない。
本当だぞ。信じてくれ。お願いだから。


俺の中でのミクの位置付けを分かりやすく例えると、さしずめ妹…というのはちょっと違うな。
娘…いや、これも…

従姉妹。うん、これだ。

歳の離れた従姉妹。そんな位置付けなんだ。

で、それだけ親しみを感じているだけにこういう場で頑なに拒絶されると、
言ってみれば一人娘との入浴を断られたお父さんのような、そんな切ない心境になるものなのさ。


…と解説している先から
この女児に手を出して捕まった重度のロリコンを見るような視線、もとい空気はどうだよ。

信じてもらえたものか甚だ疑問だぜ。
別に良いんですけどね。

645 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/02/27(水) 23:10:45.87 ID:/pFN5QAO
「そんなに気に入らない?」

不満がオーラにでもなって漂っていたのだろうか、背中越しに声がとんできた。

「そんなぶすっとしなくて良いじゃない」
「別に、普通じゃないか」
「だって私のハダカなんか見たって面白くも何ともないのに…」

お見通しかよ。

「やっぱり幼女なんて性欲解消の道具に過ぎないのかな」

!?

「とんでもない!俺はただ…」
「私が普通の幼女と違うって、気付いたんだよね?」

あまりにも予想だにしない展開に、死ぬほど驚いた。そして沈黙。

静まった風呂場に、ちゃぽんと水の音が響く。
646 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/02/27(水) 23:14:49.10 ID:/pFN5QAO
「あぁ…気付いた」
「別に秘密にしてたわけじゃないんだよ。
…ただできたら、お兄さんには知られたくありませんでしたよ」

悲しそうな声だ。
後ろで少女がどんな顔をしているのか、想像するだけで胸が痛んでくる。

「私、生きてちゃダメだよね」
「そんな自分を卑下するようなこと言うな。ミクがいなくなったら、俺が悲しいじゃないか」
「まだよく解ってないだけだよ。知ったらお兄さん、きっと私を軽蔑する」
「ミク、お前さっきから何言って…」
「もういい、聞きたくない」

予想外にきつい口調だったので、少し驚いた。
だが程なくして、しょんぼりした様子で

「…ごめんね。お兄さんが私をとても大事に思ってくれてる事くらい、十分知ってるのに。
こんな嫌な子、これ以上何をするまでもなく嫌われちゃうね。
お兄さんに嫌われたらそれこそ私、生きていけないのに」

「…」


647 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/02/27(水) 23:20:02.05 ID:/pFN5QAO
勢いよく頭から湯をかぶり、
俺は無い頭をフル回転させ現状の整理を試みた。

全くもって意味が分からないが、ミクは軽く錯乱状態に陥っているらしい。
さっきから言動の不可解レベルが半端じゃないし、
そもそも警察でもあるまいし、俺がどんな手を回してところで
特定の幼女の過去を洗い上げられるはずもない。


だが状況は掴みかねるものの、ともかくかなり切羽詰まっているのは見てとれる。
その様子はどこまでも同情を禁じ得ない。

ミクの性格なら俺が世界で一番良く知ってるつもりだ。
その俺の知る限り、彼女が愛されこそすれ恨みを買うシチュエーションなど想像できない。

こんなに明るくて優しい朗らかさんは、幸せになって然るべきだろうが。
なのに何故ここまで追い詰められねばならんのだ。


…そして今、俺がどんな言葉をかければ
彼女は救われるのだろう。

648 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/02/27(水) 23:22:23.64 ID:/pFN5QAO
…悩んでもみた所で、俺の語彙力などたかが知れてるのだが。
つくづく己の無能さが恨めしい。


結局、俺の考えている事をそのまま口に出してを言ってみる。
形だけの、なんとも薄っぺらい言葉を。

「とにかく、俺はミクと出会えて嬉しく思ってるんだ。
ミク以外の幼女が良いと考えたことなんか、これまで一度だって無かい。
これからもずっと一緒にいて欲しいんだが…それすらもだめなのか?」


649 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/02/27(水) 23:27:30.62 ID:/pFN5QAO
言い終わると、不意に後ろでミクの立ち上がる気配がした。


なんで立つんだ?そういやまだ目隠ししてねえぞ?
などと考える間もなく、俺の目は何やら細っこくて温かいもので覆われた。
目蓋に置かれた手から、少し火照った体温が伝わる。


「ありがとう。私もお兄さんで本当に良かったと思ってるよ。すごく感謝してる。
だからこそ、もしも今の関係が壊れたらって思うと凄く怖くなるの。
それでも必ずいつか全てを隠さず話すから、それまでもう少しだけ待っていてね。
大好きだから。」

声が震えていたことが印象に残っている。
言い終えると、するりと指の目隠しを解いた。
視力が復帰した俺は湯けむりでボヤける視界の奥に、
鏡に映るミクの一糸纏わぬ後ろ姿を見た。


彼女は最後に唖然とする俺へ向けて顔だけ振り返ると、
これまた鏡越しに「嬉しい?」とでも言うような表情を見せ、風呂場を出ていった。


650 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/02/27(水) 23:31:09.92 ID:/pFN5QAO
あんな顔されたら、こちらはもうどうしようもない。
俺は二分ほどその場でアホみたいに硬直していた。
…何だよ、これ。


こっちは思春期の娘と父親の図を想定してたのに、
これでは性に興味を示す小学生男子と、それに大人の対応で知識を施すお姉様じゃないか。
…結果だけ見ればまさに願ったり叶ったりなのに、なんだろうこの絶大な背徳感は。
嗚呼人間の心境の複雑よ。


…他にも色々面倒な問題があった気がするがそれはひとまず置いといて、
今は風呂を出たミクへの謝罪兼事情説明に殉じることにしよう。
…いやしかしさらにその前に、もう少し温まってから出よう。


明らかな混乱を覚えつつ、俺はとりあえず幼女の残り湯(決してヤラシイ意味はない)に
ざぶんと浸かるのだった。

186 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/05(水) 03:31:30.14 ID:UYxs/ME0

「だーれもさわーれーないー」

「ふーたりだけのーくにー」

「「きーみのてをーはーなーさーぬよーうにぃ――♪」」


前をゆく二つの頭が楽しそうに揺れる。
というかこのくそ暑い中、なんでこの二人こんな元気なんだ。


季節は夏。それもインド人も裸足で逃げ出す夏真っ盛りである。

ともすれば人も殺せるんじゃないかという日差しの中、
俺たち三人は視界の端から端、さらには地平線のむこうまで緑一色という
割と絶望的とも言える光景に囲まれるあぜ道を歩いていた。
この状態があと三十分続いたら死ぬ自信すらあるぞ。


187 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/05(水) 03:34:39.57 ID:UYxs/ME0
それもこれも、ミクのせいだ。
電車の中でのミクの寝顔が可愛すぎるからだ。しかも先輩の膝枕って、
何それ。ちょっと俺と代わってくれ。いやそんなことはどうでもいい。

その寝顔があまりに可愛すぎたから、余波で癒された俺たちまで眠ってしまったんだ。
それで電車乗り過ごして、田舎の馬鹿みたいに間隔の長いバスも逃し、
こうして炎天下の空の下歩いている羽目になっているんじゃないか。
…えっと、もうマジですみません。


ま、その被害者のお二人方があまり苦にしてない様子であることが救いといえば救いである。
唯一男である俺が一番へばってるってのも情けない話だがな。
つーかあの二人が元気すぎるんだよ。


消失しそうな意識にしがみつき、俺はここに至るまでの己の生き方を後悔しはじめていた。
しかし、本当になんでこんなことになってしまったんだっけ。
…あぁ、そうだ、そもそもの事の起こりは、一本の電話に由来する。


188 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/05(水) 03:44:25.47 ID:UYxs/ME0
その電話を受けたのは、大学も夏季休暇に突入して一週間ほど経った頃だった。

親父からの電話など俺にしてみれば珍事中の珍事であり、しかも過去の経験から
こういった時大抵面倒極まりないことを押し付けられるであろうことを、俺は知っている。

そんなわけで十二分の警戒を以って俺はこの電話の対応に望んだ…はずだったのだが、
例によって通話が終了した時点で予想に違わぬ面倒事を押し付けられた俺がいた。


・祖母が盆のご先祖参りを機会に一度くらい顔を見せろとうるさい とのこと
・しかし自分は仕事の都合で手が離せない状態にある とのこと
・「墓参りなんかついでで良いから、里帰りのつもりでお前、行ってくれ。そのための資金は出す」…とのこと


早口でそれだけ伝えると、親父はこちらの了解の声も待たずに電話を切りやがった。

…もしかして俺が最近電話を一方的に切る傾向にあるのは親父ゆずりかもしれんな。


189 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/05(水) 03:47:07.01 ID:UYxs/ME0
いつもの俺なら、んなもん知るかとばかりに無視を決め込むのだが、
そのとき頭にふとミクのことが浮かんだ。

図らずもここの所ずっと家の中に閉じ込めてしまっているし、
その間も休みなく家事を強いる形になっている。
…さらに先日の風呂騒動での負い目もある…
そんなわけで俺はミクを婆ちゃんの田舎へ連れ出してやろうと決めた。


で、先輩は何故一緒にいるのかと言うと… なんでだっけ。
たしか以前例によって飯食いに家へきたとき、テンション上がったミクが誘ったんじゃなかったか?
まぁ、さして断る理由も無いし、最近ミクの面倒もよく見てもらってるしな。

ああ、先輩ってのは例の店員さんのことだ。
あれから週に二、三回という結構な頻度で顔を合わせる彼女のことを
いい加減店員さんなどと呼ぶのは変に余所余所しいということで、
結局は先輩と呼ぶのに落ち着いた。

ま、実際彼女は俺の在校する大学の卒業生らしいから、
あながち的外れでもないぞ。


190 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/05(水) 03:55:02.02 ID:UYxs/ME0
…話が若干それた気もするが、そんなわけで奇妙な三人組ぶらり珍道中なのである。
そうなのである。とはいえ景色はもう一時間ほど田畑しか見えない。
暑さも手伝って、そろそろ精神が崩壊するんじゃないかなと思うね。
日中を歩くゾンビのような足取りの俺と引き換え、前をゆく二人は不思議なくらい元気そうだが。
この二人、何者?


ささやかに響くくらいならまだ風情もある蝉の声も、これくらいになるともはや騒音にしか聞こえない。
それくらい昆虫も自然に事欠かないクソが付くど田舎のあぜ道の上、
俺たちの終わりの見えぬ徒行は続いてく。

192 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/05(水) 03:59:21.86 ID:UYxs/ME0

本来バスなら十五分程度で着く道のりを俺たちは二時間かけて歩き、
ようやく目的地である祖母宅に辿り着いた。

いやぁ朦朧とした意識の中、幾度と無く「もう死ぬ、あと五分で死ぬ」と確信したりもしたが、
案外人の体ってのは丈夫にできてるもんだね。


古い家にありがちな錆びれたインターホンを鳴らすと、
おそらく結構前から中でスタンバっていたと思われるばあちゃんが
感嘆すべき早さで戸をあけて出迎えてくれた。

「さあさあ、よく来たね!ほら遠慮なく上がって――」

と、ここまで言ってばあちゃんは俺の後に続く二人の姿に気づいたらしく、
しわしわの顔をパッと輝かせた。その表情、まるで新しいオモチャを見つけた子供の如し。
さぁ面倒なことになるぞ。


193 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/05(水) 04:05:29.28 ID:UYxs/ME0
元気な年寄りに連れられるまま居間に通され、冷えた麦茶を一気に飲み干すと
ようやく一心地がついた。

「さてさて―。」

俺たちの顔を一人ずつ交互に眺め、このイイ顔をした人が口をひらく。

「お前、いつのまにこんな可愛い嫁さんもらったんだい?しかも早々に娘まで…」
「ちゃうわ!!」

思いきり否定したら、ひどくむせた。
ミクが心配そうに背中をさすってくれる。ええ子や。
ばあちゃんはというと、ケラケラ笑ってやがった。くたばれこのクソババア。

「わかっとるわかっとる、その子幼女だろう。まぁかわいい良い子じゃないか。
して、はてさてそっちのお嬢さんはどんな関係だろうねぇ?」

そう言って不気味にニヤリと笑った。キラリと光る金歯が眩しい。

「全くお前ももっと年寄りを大事にして、もう少し頻繁に顔を出すもんだよ。
さぁさ、可愛い孫の土産話をたっぷりきかせておくれ。」


194 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/05(水) 04:19:28.58 ID:UYxs/ME0
正直もう、すぐにでも布団に倒れこみたかったが
この老人の天井知らずのテンションに観念し、俺は一通りの近況を話し終えた。
この間ずっとババアのターン。

その後矛先を変換し、先輩へ向けて怒涛のごとく質問を投げ続けているばあちゃんを傍目に
ぼりぼり煎餅を齧っていると、何の前触れも無く一人の少女が入ってきた。


白く短い髪を揺らめかせ、そいつは幽霊のような足取りで俺の向かいに座ると
何が可笑しいのか微量の笑みを浮かべ

「こんにちは、本日はなんとも澄んだ良い空気だね。蝉の音がいつもより脳天に響くよ」

などとちょっとアレな発言をしやがった。何こいつ。…本当に何こいつ。
俺が狐につままれたような間抜け面をしていると、ばあちゃんが割って入った。


「ああ、紹介をすっかり忘れてた。
ウチでもちょっとばかり前から飼いはじめたんだよ、この……幼男をね」


196 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/05(水) 04:27:01.62 ID:UYxs/ME0
視界の隅で俺の背にサっと身を隠すミクを捕らえた気がした。
その間も白い髪のそいつは穏やかな笑みで俺たちを見ている。

「幼男?」
「そう」
「ほんとに幼男?幼女じゃなくて?」
「そうだよ。そりゃまぁ…少し女顔かもしれんが」
「幼男って幼女を見つけては手当たり次第に腰を振る、あの幼男?」

いきなりババアの口から飛沫が飛翔する。俺は回避の術もない。

「こら!お前はこの子に失礼なことを!うちのタマはそんな子じゃないよ!」
「タマって、猫か!」

そこはレンかカイトだろ、空気読め!…とでも続けたかったが、
このアナログババアに通じる筈ないので自重した。


197 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/05(水) 04:28:08.04 ID:UYxs/ME0
「そうですよぅ。幼男だってちゃんと躾ければ、幼女と一緒なんですから。
まあ確かにあの旺盛な性欲を抑えるのは至難の業ですけど……」

と、先輩。
タマと呼ばれたそいつはふるふると頭を振り、先ほどと同じく
夢を見るようなふわふわ心許ない声で言った。

「別にいいよ、幼男といえばそういうイメージが定着してるものだから。だけど
ということは、今日僕がここにいる皆さんに会えたことで
世間の幼男に対する概念を僅かに底上げできたのかもね。」

そしてふと考える素振りを見せ、

「でもそのためには僕はもっと誠実で立派な人格を身につけなくちゃいけないんだよなぁ」


198 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/05(水) 04:31:17.83 ID:UYxs/ME0
幼男のくせに、なんて哲学的なことを言いやがる。
ミクとはまた少し違った感じの落ち着いた気配から、生まれ持ったスペックの高さが予想される。
こいつかなりの額するのでは?

「まぁね、老後金を使う当てもないし、どーんと張り込んでやったのさ。世界に一人のオーダーメイドだよ。」

ばあちゃんが幼男を数えるのに「~人」を用いたことを少しだけうれしく思ったのは秘密だ。
こいつの素性も判明したところで、俺はさきほどの非礼を詫びる。

「えーとなんだ、さっきはすまんかったな。タマくんとやら。
これから数日世話になる。同居人として、よろしく頼むよ」

「あ、えと、ミクです。よろしくお願いします。」

幼男と聞いて俺の背に隠れていたミクも、ようやく顔を出した。


「よろしく、みなさん。今日は本当にいい日だなぁ。
同じ国に暮らしながら今まで知り得なかった人に、三人も知り合えたから。」

377 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/07(金) 21:46:58.44 ID:y0d9.0g0

そんな感じでその後もダラダラ雑談し、やがて夕食時になると
ばあちゃんは俺たちに自慢の田舎料理を振舞ってくれた。

ばあちゃんは来客の急な増員にもかかわらず、宿泊、食事、その他諸々の環境を快く提供してくれた。
こればっかはばーさんの懐の大きさに感謝だな。

良いかんじで飯を食らい空腹を満たし、良いかんじで風呂に入り疲れを癒し、
(余談だが先輩とミクは一緒に入 ry)
あとは速やかに健やかに寝るだけという時になって、問題は起きた。

378 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/07(金) 21:49:25.86 ID:y0d9.0g0
「…あはは、困っちゃいましたね」

というのは先輩。うん、俺もそう思う。

俺たちが通された部屋には二枚の布団が綺麗に敷かれていた。
言うまでもなく、この部屋にいる人間は三人。ばあちゃんは言う。

「何せ急な増員じゃからのう。部屋も寝具も足らんのさ。
悪いがあんたら三人、一部屋で眠ってもらえるかね。」


まあ、実際はこの性質の悪い年寄りがただ面白いからという単純な動機で
この状況を図ったに違いないと俺は思ってる。
なぜって↑の説明の途中、何度か「ブフォwwww」とか吹き出してたからな。

この家広いし、ほかにいくらでも無難な手段などあろうに…なんて考えはするが、言わないのね。
無駄だって分かってるから。それが大人の対応ってもんだ。
つーか、あのばーさんの精神年齢の低さは異常だろ。

379 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/07(金) 21:50:53.71 ID:y0d9.0g0

だがしかし、今一番の問題は一部屋に二つの布団という状況のもと
男一人に女二人がいかに健全に一夜を過ごすかということだろう。ううむ、こいつぁ難問だ。


考えてみれば俺とミクは一度だけだが同じ布団(というか、ソファだが)で寝たこともある仲だし、
今回もそうすべきか。
いやしかしここは妥当に、男女で割り切って女性陣は同じ布団に入ってもらうか…?
だがまがりもなにも客人に狭い寝床を強いるのも失礼な気が…

などと考えている内に、先輩はさっさと行動を始めていた。
二つの布団を接近させ、な、なんとぴったり密着させたではないか!

これは「私と一緒に寝ましょう///(はぁと」という意思表示に他ならない…なんてことはさらさら無く。

先輩の提案のもと、俺たちは川の字ならぬ小の字、
つまり俺の両脇に一人ずつという陣形に決定した。

380 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/07(金) 21:51:28.31 ID:y0d9.0g0
しかしこれだとちょうど俺が布団の境目になって、背中が落ち着かん。

「あ、ならもう少しこっち来ます?どうぞ―♪」

などと両腕を広げる先輩。
冗談でもそんなこと言わんほうが良いですよ。
全ての男が、俺のような(変態という名の)紳士とは限りませんし。

しかし…当然ながら三人とも風呂上り。
しかもばあちゃんの粋な計らい(うん、これはマジでGJ)によって、
女性陣はよく旅館にあるような浴衣を身に纏っている。

知ってるか?浴衣は脱ぐ姿が一番そそる衣服なんだぜ、ハァハァ。
因みにソースは俺。いやそれはこの際どうだっていいんだ。
問題は、そんな両人に挟まれた俺はどうなるか。

381 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/07(金) 21:52:28.72 ID:y0d9.0g0

→答え:眠れるわけがない。

畜生。昼間の体力の消耗を考えると、今ちゃんと眠らんと明日もたんぞ。
だが左からは先輩のシャンプーの香りが、右からはミクの吐息がかかって、ああ!

二人ともすでにすよすよと寝息を立てていて、俺の右腕はなぜか無意識のミクによって
抱き枕状態にされている。顔が近い、顔が。女の子ってなんでこんなに柔らk



結局俺が寝付けたのは明け方近く、
しかも正確さに関しては定評のある俺の体内時計で三十分もたたないうちに
ババアに叩き起こされた。

382 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/07(金) 21:53:41.57 ID:y0d9.0g0
昨夜のばあちゃんの粋な計らい(今度は皮肉です)のせいで、
その日俺は朝から眠かった。

まだ半分夢の中にいる心地で味噌汁をすすりながら、ばあちゃんが

「さあ、食べ終わったらお墓へ行くよ。掃除を手伝っとくれ。
そもそもあんたたちに来てもらったのは、これのためなんだからさ」

というのを聞いた。

まあ特にその日の明確な予定も無いし、
この最寄のコンビニまで徒歩なら三十分はかかるであろう現代文明離れした土地で
他にすることも思いつかない。

そんなわけで俺たち三人にばあちゃんとタマを加えた、
RPGなら最初の城付近で全滅するんじゃないかというヘンテコなパーティが完成した。
移動手段はもちろん『徒歩』である。 うええ。

383 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/07(金) 21:54:29.08 ID:y0d9.0g0
ばあちゃんの相方、つまり俺の祖父がこの世を去ったのはほんの二、三年前である。
病気らしい病気もせず、まさに古き良き日本男児な感じで元気なじーさんだったが
ある日なんの前触れもなく倒れたかと思うと、そのままあっけなく逝ってしまわれた。

じいちゃんの葬式のことは、まだ記憶に新しい。
いつも底抜けに明るいばあちゃんだが、長年連れ添った相方を失ったわけだから
さすがにこたえていただろう。傍から見てもずいぶん仲の良い夫婦だったからな。

だがばあちゃんはそれを態度に表すことなく、
ともすれば『そっけなく』見えるような静寂さを以って、棺を見送った。

「馬鹿、お前は何もわかっとらん」

後にばあちゃんは語る。
384 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/07(金) 21:55:52.07 ID:y0d9.0g0
「死者を送り出すってのはなあ、ただやたら悲しめば良いってもんじゃあない」

「でもそりゃ泣かないよりは泣いてやったほうが、死んだ人も浮かばれるんじゃないか」

「泣いた泣かんはこっちの都合だろう。こんな汚いババが泣いたとこでジジイが生き返るわけもなし、
悲しんでる姿を見せ付けられるもんでも無かろうが。」

「じゃ、どうすれば一番いいんだろうな」

「それは人によって違うじゃろ。
せいぜいよーく考えた上で、一番相応しい態度でシャンとしてりゃええ」

「それじゃばあちゃんの場合は何が正解だったのさ」

「じつは、まだよく分かっとらん。だがあまりあからさまに悲しむのは違う気がしたね。
ま、でもちーっとくらい違っとっても、笑って許してくれるじゃろ、あのジジイは。
ウチら夫婦ウン十年の絆をなめちゃいかん」

そういうと、水戸黄門よろしくかっかっかと笑った。

「よくわかんないもんだな」
「わかるさ、お前も大事な人がいなくなればな」
「そんなんなら別にわからんままで良いさ」
385 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/07(金) 21:57:02.63 ID:y0d9.0g0
「…素敵だなあ」

というのは墓地への道中、暇なのでミクに聞かせてやった話である。

「人間は歳月と共に世代は入れ替わっていくけど、
いなくなった後も残った人たちに思ってもらえるんだね」

そして少し残念そうに、

「幼女のお墓なんか、聞いたこと無いもんな。…しょうがないか、消耗品だもんね」

まぁたこいつはそうやって悪いほうへ持ってく。

「別にあんな石のかたまり、当の本人にしてみれば死後のことなんだから
あってもなくても変わらんとおもうぞ」

「そういうもんじゃないの。あれは残った人たちに『こういう私が生きてましたよ』って
証明するためのものだよ。たまに思い出して、懐かしんでもらうために」

「そんじゃ俺がミクより先に死んだら、もう四六時中墓の前にいてくれよ。
一人じゃ寂しいからな。飯とか小便も、墓の前でだぞ」

「それはヤだなあ。」

やっと笑顔を見せた。うん、やっぱりこの顔だ。
386 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/07(金) 21:57:48.02 ID:y0d9.0g0
ミクは(ぶかぶかじゃない)半そでのTシャツに短パン、
そして白い帽子をかぶっている。
これは昨日あまりに日差しが強かったのでとりあえず駅で買ってやったものだ。

その帽子のつばが、目元に影を落とす。
どこか物憂げな美しい少女は、何を思うのだろう。


「ほら、着いたぞい」

先頭のばあちゃんが声をあげる。
一行の最後尾を歩いていた俺とミクは、小走りで皆のもとへ向かう。

582 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/11(火) 16:52:16.33 ID:6aJ5OoAO
そこは彼岸花のぱらぱらと咲く丘に面した、美しい場所だった。
こんな場所で眠るのなら、死者も浮かばれることだろうと思える。

「この近くに参拝客用の小店があるからね。花やら線香やら買いにいくよ。
女衆は一緒に来とくれ。」

そう言ってばあちゃんはミクと先輩を引き連れ、行ってしまった。
腰の曲がった後ろ姿が小さくなってゆく。


「老婆に連れ添い歩く美しい少女たち。うーん、絵になるね」

おお、タマくん、風情があるな。何か一句詠んでみろよ。

「『静けさや 墓地に染み入る 蝉の声』…いや、ごめん、今のなし。
ていうか無茶言うなあ、もう。」

「うはは、悪い悪い。
…なあタマくん、
やはり幼女が人間として生きるというのは不可能なのだろうか」


583 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/11(火) 16:54:06.38 ID:6aJ5OoAO
突然の話題の転換にもさして驚く素振りも見せず、
少年はじっくり考えた上で問いに応じた。

「世界中一人残らずの意識を覆す…というのは、えらく困難な話だね。
でもたとえ他がどうであろうと、あなたに限ってはそうなんだと思っていてあげることは
さほど難しくはないはずだよ。」

例のえもいわれぬ不思議な目が、真っ直ぐ俺を見てる。
見るもの全ての心を揉みほぐすような、穏やかな目。

「もっとも幼女か人間か、そんなことさして重要じゃないと、僕は思うなぁ。
大切なのは幸せか不幸か…とてもシンプルな二択さ。
そしてあなたなら、ミクちゃんが幸せになるか否かの要因に
十分なり得るんじゃない?」


584 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/11(火) 16:56:50.97 ID:6aJ5OoAO
…なんつーか一を投げたらあろうことか百が返ってきてしまった、みたいな
予想の遥か斜めをゆく回答だった。
そんな期待して聞いたわけでもなかったのだが…

「…ありがとう、よくわからんがなにやら頭がすっきりしたよ。
時にタマくん、君にとっての幸せとはなんだ?」

「僕なら今こうしていることが幸せだよ。ここ最近は特にね。
これからもずっと、おばあさんと一緒におしゃべりして、ご飯食べて、畑仕事の手伝いなんかもして、
…もしそれが本来の幼男らしからぬ生き方だとしても、この生活が終わるまでずっと…
それで十分さ」


ううむ、なにやら幼男相手に頭の下がる思いだ。
ミクの幸せは、俺次第…か。
なら精々頑張ってみましょうかね。


585 名前:SS@ミク[] 投稿日:2008/03/11(火) 16:58:16.75 ID:6aJ5OoAO
その後は帰ってきたばあちゃんの指揮のもと大雑把に敷地内の清掃を行うと、
形式に習って花を供え、線香を上げた。

ばあちゃんが横で手を合わせるのを見て、俺もそうする。
直接祖父に所縁のない三人も、墓に手を合わせてくれた。
これでミッションコンプリート…と。


少し行ったとこにあったうどん、そば屋で昼食を済ませ、もと来た道をぶらぶら帰る。
道中ふと思い出して、ミクに

「お前は俺が幸せにしてやるからな」

などとプロポーズ紛いのことを言ってみた。

「今でも十分幸せなのに、もっと幸せにしてくれるの?
えへへ、じゃあ楽しみにしてるからね」

言われた方も特に気にもかけない様子でそんな返答をし、無邪気に笑うのだった。


851 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/14(金) 12:18:30.19 ID:lN./Xco0
「だから、ミクちゃんの歌が聞きたいんですってば!!」

…というのは、先輩が顔を合わせて以来ずっと唱え続けている願望であり、
そして墓参りから帰宅後、いよいよやることがなくなって、でもまぁいいかなどと
各々だらけモードに移行しつつある俺たちに突如投じられた提案でもある。
…正直、いきなりもいいとこだ。


「…先輩まだそれ言ってるんすか?
ていうかここに来る道中、二人して仲良く歌ってたじゃないすか」

「…うーん、そういうのじゃないですよ。ちゃんと腰を据えてじっくり聞きたいんです。
といいますか、私の声でよく聞き取れなかったですもん。」

返す言葉が見つからないとは、正にこのこと。
タマくんといいこの人といい、どうして俺を取り巻く人々はこう常軌を逸した者ばかりなのか。
いやまぁ、ミクもばあちゃんも普通ではないけどね。

852 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/14(金) 12:19:29.46 ID:lN./Xco0
「つーかそもそも、俺たちと知り合ってから、結構な期間経ってるんですから
その間にミクに頼む機会なんていくらでもあったでしょうよ」

「頼みましたよぅ。でも一人で音楽もなしで歌うのは恥ずかしいって、いつも断わられちゃうんです」

ちらりとミクに目を向けると、なにやら居心地の悪そうな様子でもじもじしてる。
なるほど、変なところで内気なミクだ。そんなこと言いそう。
ん?待てよ?

「それじゃ、今この場で言ってみても同じことじゃないですか。
歌ってくれないことに変わりはないでしょう」

「うふ、でも違うんです。ねぇおばあさん、あのピアノってまだ弾けますか?」

853 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/14(金) 12:22:03.84 ID:lN./Xco0
ピアノ?――と先輩の指す先をたどると、
なるほど上に置かれた大量のがらくたに埋まってしまってほとんど見えないが、
その下からきらりと光る漆黒の物体は遥か昔、音楽室なんかでよく目にしたそれっぽいね。

「あれ、本当だ。ばあちゃん、いつのまにあんなもん買ったの?」

「ばかもん、お前が生まれたときからここにあったわい。
弾くもんがいないもんで、今じゃただの物置棚になっとるがの。
長いこと調律しとらんが、まぁ叩けば音くらい出るじゃろ」


それを聞くと、先輩は嬉しそうな顔でミクの視線の位置までしゃがみ、

「ね、お願い。ミクちゃんの歌聞かしてよ。
私が一緒にピアノ弾くから、それならいいでしょ?ね?」

はい、喜んで! …と俺が答えてしまいそうな魅惑の仕草であることは、この際どうでも良いんだ。うん。

肝心のミクはというとしばらく迷ったように目を伏せていたが、
やがて真っ直ぐ先輩に向きなおし、とろけてしまいそうな(俺がな)ミクスマイルで頷いてみせた。


854 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/14(金) 12:23:47.00 ID:lN./Xco0

暇つぶし第二段、ミクによる独奏コンサートの開幕の決定である。

というわけでその準備…もとい、ピアノに積まれたがらくたの移動作業を押し付けられたのは
果たして、我々男衆であった。 男は辛いな、タマくんよ。
しかもこれが結構な重労働。 時給要求するぞ。

そんなこんなで準備が整うと、ミクと先輩は音合わせと称して
なにやら打ち合わせっぽいことを始めた。
二人で何かを話しては、先輩が断片的な音をポロポロと奏でる。

…というか先輩、さらりとおっしゃりましたけど
知ってる曲とはいえ楽譜も無しに「なんとなく」弾けるってのは結構凄いことじゃないのか。
マジでこの人、何者?

…いや、こちとらどうしようもなく素人につき、結局よく分かってないんだけどさ。


855 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/14(金) 12:24:52.32 ID:lN./Xco0
その間のばあちゃんなのだが、一度姿を消したかと思うと
何やら小さな機器を大事そうに持ち抱えて再登場した。

…うわ、えらい久しぶりに見たよ、カセットテープのウォークマン。しかもマイク付きとか。
それもしかして、もはや日本で最後の一つの絶滅種じゃないのか?

この機を逃すまいとミクの歌を録音するつもりらしく、ばあちゃんはなぜかにこにこと嬉しそうだ。

そういや年寄りって、なんか知らんがやたら子供の歌とか聞きたがるよな。
そんな感覚に近いものがあるのかもしれない。 ま、良いんですけどね。
856 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/14(金) 12:26:00.16 ID:lN./Xco0

そうこうしている間に二人の「音あわせ」が終了したらしい。

「はい、じゃぼちぼちいきまーす」

先輩が告げると、待ってましたとばかりにばあちゃんが盛大な拍手。
壁に寄りかかって座ってるタマくんもにこやかにそれに続く。
場の流れでなんとなく俺も手を叩く。 なんのこっちゃ。


二人はお互いちらりと目を合わせると、同時に小さく息を吸った。

その一瞬で、部屋の空気が、変わった。


857 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/14(金) 12:27:32.53 ID:lN./Xco0
ありふれた出来事が――

そんな出だしで始まったのは、俺の知ってる曲だった。
そして……いつかの光景がフラッシュバックして、蘇る。
そうだ、いつだったかミクが台所で口ずさむのを立ち尽くして聞いた、あのうただ。


記憶にあったのは、原曲の歌い手のクセの強い独特な声だったが
同様のメロディをなぞるミクの声は、それと全く違う。

形の良い唇から発せられた彼女の声はどうしようもなく優しく、
しかし同時に、ともすれば壊れてしまいそうな脆さを含んでいた。

かといって、その名を持つ本家ボーカロイドの無機質な声とも違う。

ミクの声には、たしかに温かな血が通っていた。


858 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/14(金) 12:28:35.87 ID:lN./Xco0

上手いだとか下手だとかそういう概念やら、ともすれば全ての理屈さえ越えて
人の心を惹きつける声というのが、ある。

そしてミクの声こそ、まさにそれだった。

俺はその響きに、――自分でもよく分からないが――まるで赤ん坊が
母親に抱きかかえられるような安心感を覚えた。
そんな癒しに全てを委ね、ただ演奏に聴き焦がれる。

演奏は続く。

もはや俺の耳には先輩のピアノの調べさえ届かなくなってしまった。
周りの音がザーザーとラジオの雑音のように霞んでゆく中で、ミクの声だけ明確に浮かび上がる。
彼女の声はけして大きくはなかったが、ミクはただ楽しそうに、そして健やかにに歌い続けた。

ああ、まるでそれらの音を残して、世界中の全ての音が欠落してしまったみたいだ。
その心地よい周波が永遠に続くような気さえした。

それが今の自分には、なんと幸せなことだろうと感じた――。


859 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/14(金) 12:29:39.13 ID:lN./Xco0

「…大丈夫かい? なんだか昼間からずっと上の空って感じだよ」

不意に話しかけるのは、一人の少年。
伸ばされた手には、一切れの西瓜が差し出されている。
礼を告げそれを受け取り、もそもそと齧る。
やがて少年も俺と並ぶように縁のふちに腰かけた。


…確かにタマくんの言うとおり、あの演奏の後からどのように時間を過ごし、今に至っているのか
自分でもよく覚えてない。頭の中ではミクの声だけが深い余韻となり、
延々と渦巻いていた。 …全く、どうしてしまったことだろう。

860 名前: SS@ミク 投稿日: 2008/03/14(金) 12:30:27.81 ID:lN./Xco0

おかげで目の前に繰り広げられる『花火に興じる浴衣美人二名』という夢の如き光景にも、
集中して見入ることができない。寝巻きの浴衣もそれはそれで風情があるが、
この華やかに鮮やかな衣装を着こなす女性というのは、
もはや日本の夏の風物詩と言って差し支えなかろう。異論は認めん。

ちくしょう、なんてこったい。こんなの絶対に網膜に焼き付けておかなければならない光景なのに…



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