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そこにお姉ちゃんが居た。
一緒の高校出身じゃない訳だし、ここに来るなんて自分に用事がある以外に考えられない。

見かけたのは職員室前。向こうは気付いてないみたいだ。
ココで一言声をかければお姉ちゃんはたぶん自分の教室に来ることはないだろう。
でも何もしなかった。

別にクラスを訪ねて欲しいわけではない。いや、寧ろあまり来て欲しくはない。
じゃあ何故あそこで避けたのだろう・・・






「矢島ぁ~!お姉さんが来てるぞぉ~」
「はぁい」
気のない返事をして教室前の廊下に出た。

目の前には白いワンピースにかるくブランケットを掛け、カゴバックを持ったお姉ちゃんが・・・
あらら何処かメルヘンの国に旅をするのでしょうか?
「何?」
挨拶もなく無愛想に一言
「あ、愛理!おべんと忘れてたよ」
「あ、ありがと・・・別にいいのに」
「そんな事言わないの、お昼どうする気」
「だって学食とかあるし、考えれりゃわかるじゃん」

あ~あ、沈黙だ。
なんでこんな言い方になっちゃうのかな?

「じゃあ、帰るね」
「今日は休み?」
「うん!だから散歩でもして、このへんウロウロしようかなって」
「ふうん・・・・・・それはそうと、もう少しカッコなんとかなんないの?」





あちゃ~。今度は言いすぎだよ
なんでお姉ちゃんにはこんな言い方しちゃうのかな?
「そ、そう?変かな!?」
「変て言うより歳考えなよ。」
「う、うん。ファッションとかよくわかんないんだ。そうだ!愛理の制服着ようかな?」
「馬鹿!!。・・・・授業始まるからもう行くね」
「う、うん。ごめんね」

はぁ、話が噛み合わないよ・・・
なんで「うん」しか言わないんだろ。しかも「ごめん」て。
悪いのは私なのに。

「あいりー」
教室に入るなり中島さんが側によって来た。
「あれ愛理のお姉さん?」
「どうもそうみたいね」
「何それ?」
ニヤニヤしながら近寄られる。まぁニヤニヤは、日常茶飯事なんだけどね。
「愛理お姉さんと仲悪いの?」
「さーどうでしょ」
「え~!なにそれ。めちゃくちゃ綺麗な人なのに」
あ~、やっぱ他の人から見ても綺麗なんだ
「愛理お姉さん嫌い?」
「・・・・・・・・・・・・・・」

嫌えたらどれほど楽か











ガチャ
「ただいまぁ」
少し普段より重く感じたドアを引き、玄関を入るとおかあさんの声がした。
「おかえり~ごはんは~」
「後でいいや・・・」
ソフトの練習のある日は必ずご飯を何より先に食らいつくのだけれど、そんな食欲を奪うくらい妙な重圧感があった。





ベッドに横になる。
中島さんの言葉が耳から離れない
「お姉さん嫌い?」
嫌いな訳ない・・・寧ろ好き過ぎて辛い。
姉だよ。家族としてただ好きならそれでいい
彼女を女として好きなんだ。
少し自信なさげなしぐさとか、馬鹿正直なトコとか、おせっかいなトコとか
イライラさせるすべての要素が、好きで好きで止まらない。
妹なんだよ。姉なんだよ。女なんだよ・・・あたし。
弊害多すぎるよ、なんかの間違いだよこれは。

「めちゃくちゃ綺麗な人なのに」
知ってる。だから余計辛いんだよ。
えりかちゃんも、かんなもお姉ちゃんが好きだった。
仲いいだけだよ、知ってるよ、でも不安になる。
どんなにありえない事だと理屈で判断できても、もしかしたらって・・・

メール新着。
『舞美です。いまから部屋いっていい?』
あ~!!!もうイライラする。なんでこんなのメールするんだろ
言いたい事あるなら言えばいいじゃん。部屋横なんだし来ればいいじゃん。
メール返信。
『どうぞご勝手に』

トントン
ノックの音・・・何も言わないでドアの逆を向いてふて寝する。
返事はしてないのに、彼女は勝手に入ってきた。



「なにかごようですか?」
「愛理・・・今日学校行ったの怒ってる?」
「なんで?」
「うん・・・なんか、」
「なんかってなによ」
苦笑いして振り向くと今にも泣き出しそうなお姉ちゃんがいた。

「ちょ・・・どうしたの?舞美ちゃん」
真顔になって呼びかけた瞬間、倒れ込んだ私のお姉ちゃんはすっぽりと胸の中に納まった。
「ねぇ、どうしたの?」
ゆっくりと背中をなでながら話しかけると、お姉ちゃんが口をひらいた。
「今日なんで学校行ったか知ってる?」
「お弁当届けにきてくれたんでしょ?」
「口実だよ・・・本当は学校の愛理を見たかったんだ」
「なにそれ?」
「不安なんだよ。家以外の愛理をしらなすぎて、他の人とどんな顔でどんな事話してるのか
 想像するだけで不安で怖くて・・・・・・好きなんだよ愛理が」

何言ってるんだろ・・・こんな時なんて言えばいいんだろ
よくわかんない。わからないから勝手にカラダが動く通りにした。
そしたらキスしてた

唇が触れ合ったまま、何もしないキス。
でも震えて怖くて、目があけれない。






やっとの思いでカラダを離して、目蓋を開いた時、生まれたての子みたいな真っ赤なお姉ちゃんがいた。
人間てこんな赤くなるんだ。

「しっかりしてよね、舞美ちゃんはお姉ちゃんなんだから。」
「でも愛理の方がお姉ちゃんみたいだよ、しっかりしてて」
「・・・・・じゃあ今日だけ交代してあげようか?」
「ホント!じゃああたしが愛理の制服を着て、愛理があたしの服着て」
「はぁ何それ?」
「制服プレイだね」
「馬鹿!!」

お姉ちゃんは、デリカシーなくて、泣き虫で、しっかりしてなくて
でも周りからは綺麗で優等生で、妹想いと思われて。
どんどん嫌いになる要素が増えていく。
そして嫌いになる部分が増えるたび、私は舞美ちゃんを・・・
好きになる。
最終更新:2010年11月01日 06:58