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部屋の二人で分けて食べるように、と果物の差し入れをいただいた。
今日は愛理と同じ部屋で、二人で容器の中の色とりどりのフルーツを覗いて、
おいしそうだね、と部屋に戻った。
「全部は食べきれないから、明日の朝と分けて食べよう。」
提案すると愛理は今食べたいものを選んでいく。
行き詰ったあたりで舞美ちゃんは、とあたしに選択権を譲る。
ちらりと見上げた黒目が、中の苺より鮮やかに光を反射する。
余計に肌が白く見える。
髪を一つにまとめたせいで覗えるうなじが、どうにもさっきから目に入る。
目を逸らして果物を選ぼうとするけれどだいたいは丁度良い加減で選ばれている。
「これでいいよ。」
「じゃあ、残りは冷蔵庫に入れておくね。」
愛理は明日の分をしまいあたしの横に座った。
ベッドの上で飲食はあまり好ましくないけれど部屋には椅子は一つしかない。
愛理が容器を持って、あたしにプラスチックのフォークを手渡す。
「あれ、もしかして。」
「うん。一つしかない。」
となると、必然的にこの一本で食べるしかない。
「愛理どれ食べたい?」
「んー、パイン。」
肩を寄せて甘えてねだる。

シャンプーや他の人工的なものではなくて愛理の匂いが届く。
あたしはこの匂いに弱い、自覚がある。
3つに割れたフォークの先を黄色に突き刺すと裂けた繊維の隙間から果汁がでてくる。
みずみずしいね、と愛理は口を開く。
そこに刺したパインを与えるとぱくりと食いついた。
頬張った瞬間に目尻を下げて、おいひい、と力の抜けた声をあげた。
愛理が言うとなんだっておいしそうに見える。
幸せそうな顔をぼんやりと、十分に噛んで飲み込んで送られていくまで眺めていた。
ぼーっとするあたしを愛理は不思議そうな顔をして、
手に持っていたフォークを奪っていった。
「舞美ちゃん何が食べたい?」
「あ、オレンジ。」
んふふ、と鼻から楽しそうに声を漏らしながらフォークの先にオレンジを刺してあたしの口元に運ぶ。
年上なのにこうされるのは少し恥ずかしいけれどされるままに従った。
愛理はさっきのおいしい顔よりずっと幸せそうに笑っている。
上唇から特徴的な八重歯がのぞく。
あまりに無防備な顔をするから、それに捕らわれてオレンジの味が良く分からない。
「おいしい?」
甘いことはかろうじてわかったから頷いておいた。
満足げに愛理は次のフルーツを選んでいる。
あたしの目の前には愛理の大きめの耳が揺れて動いている。
当然耳も白い。
目線を下げて首、鎖骨の辺りに移るも、やはり白い。
体中のどこの肌も白いのかな、と、Tシャツから延びる腕にも目が行く。
ところどころある見知ったほくろを追いかけながら、
繊細な作りをした手首から指のラインが、愛理の思う通りに変化していくのを見ていた。
視線を感じたのか愛理はあたしの目線を捕まえる。
どことなく色が違うような気がしてあたしの意識が戻される。
「舞美ちゃん、疲れてる?」
口の端をきゅ、とあげるから、隙間からまた八重歯が見えるのだ。
「そういうわけじゃないんだけど。」

どうにも妙に意識してしまう。
はい、と差し出された苺が鮮やかに、赤い。
その向こうにある愛理の薄ピンクの唇とは異なるし、愛理の白い肌にはよく映えた。
あたしはまたされるがままに苺に唇を寄せる。
全部口入れるのを愛理はあたしが食べる反対側を食べて阻止した。
自然に唇同士が触れてしまう。
その柔らかさは果物とは全く違う。
一度の匂いに混じって微かに愛理の匂いがする。
苺の方が香りが強いはずなのにどうして、どうしても、愛理の匂いばかり意識してしまう。
一口足らずの分はあっという間に口からなくなった。
味は全くわからないしわかる必要はない。
「疲れてるわけじゃないみたいだね。」
愛理はサイドテーブルに容器を置いてふたを閉じる。
食事の時間はどうやらお終いみたいだ。
フォークを置いた手があたしの頬を包んで愛理の顔がぐっと近づく。
見られることも見せることも愛理は自由自在だ。

香る程度の色はさっきよりずっと強く、視線に射抜かれてあたしの頭の奥の方がじりじり熱をもつ。
見なくてもわかる細い指先がつつ、とあたしの首筋を辿る。
脊髄に電気が走っていくように背筋がぞくぞくした。
唇に落とされると思ったキスは右の頬に落ちて、そのまま耳元で囁かれる。
「しよっか。」
首元にあった手であたしの肩を軽く押すと自分でも驚くほど簡単に背中がベッドに倒れた。
愛理は軽々とあたしの上に馬乗りになる。
自分でもわからなかった自分の感情を愛理は簡単に見抜いてしまう。
捕食に取りかかる豹やライオンのように首をもたげてあたしの首筋に吸いついた。
どこかでずっと期待していたのか、やけに自分の体が敏感だったことが自分でも恥ずかしくなる。
それも仕方ないとも思う。
あたしは、愛理の虜になってしまっているから。
愛理の魅力に囚われすぎてしまっている。
愛理から与えられる快楽に身を捧げるためにあたしは目を閉じた。


州´・ v ・)<フルーツより舞美ちゃんの方が美味しかったです
最終更新:2010年03月23日 23:39