なんか舞美ちゃんがおかしい。
喋る時のニコニコ笑顔、ちょっと全力な力加減、これはいつも通りだ。
でもなんか違う、なんか違和感を感じる。
あくまで「なんか」だからどうもできなくて。
はっと舞美ちゃんと目があった。
言葉には出なかったけど、どうしたの?って顔してる。
ちょっと見すぎちゃったみたい。
とりあえずなんでもないっていう意思表示で笑いかける。
舞美ちゃんがふわっと笑いかけてくれたその瞬間、ドキッとした。
目が、なんかこう、鋭いっていうのかな。
見つめられたら背中から腰に電気が走るような感覚。
「なんか」だったぼんやりしたものがはっきり形を持った。
今日の舞美ちゃんの目、あの時の目と同じなんだ。
一度そう感じてしまうとどうにも意識してしまう。
舞美ちゃんが近くに来るたび、顔を見るたび、あの時のことが頭に蘇る。
綺麗な指先かを見るとどうにも仕事に集中できなくて。
ほしい…なぁ。
頭をぶんぶん振ってそんなイケナイ考えを振り払う。
舞美ちゃんはそんなつもりないかもしれない。
こっちが勝手に勘違いしてるだけかもしれない。
うん、違う違う!
そんなこんなで今日はすごく疲れた一日だった。
主に精神的な方面で。
一人で悶々としてしまった…。
荷物の準備する手にも力が入らない。
こんな日は早く帰るに限る。
おいしいご飯食べてあったかいお風呂入って…。
「あーいり」
呼ばれてボーッとした思考が止まる。
あ、そうだ舞美ちゃん待たせてたんだ。
いけないいけない。
「あ、ごめん舞美ちゃん!もう終わったから!お待たせし…」
そう言って立ち上がって後ろを向いた瞬間ぎゅって抱きしめられた。
いつもより温かい舞美ちゃんの体温がそこにある。
その温かさに安心して背中に手を回す。
そう言えば今日は一回もこうしてなかった。
どのくらいそうしてただろうか、なんとなく時間が気になってきた。
いつまでもここにいるわけにはいかない。
このあと舞美ちゃんはうちに泊まりに来てくれるしね。
楽屋よりお部屋でゆっくり舞美ちゃんを感じたい。
「ね、舞美ちゃん。とりあえず帰ろうよ」
そう言って離れようとしても舞美ちゃんは離してくれない。
むしろ抱きしめる力が強くなった気がする。
「ねぇってばぁ…」
「やだ」
「でも…」
「やだ」
本当にどうしたんだろう。
こんな駄々っ子みたいな舞美ちゃん珍しい。
私だってこうしてたいけど、ここ楽屋だし…ね?
イチャイチャするには落ち着かない場所だもん。
どうしようか迷ってたら舞美ちゃんが抱きしめる腕を緩めてちょっと体を離した。
心なしか潤んだ目が私を捉える。
その目を見た瞬間、昼間思ったことがフラッシュバックする。
さっきまで静かだった鼓動が急にドキドキうるさくなった。
その…そーいう気分になってるってことだよね?
私の気のせいじゃないよね?
「あの、舞美ちゃん…その…し、たいの?」
意を決して聞くと目を逸らしてあー、とかうー、とか言ってる舞美ちゃん。
耳まで真っ赤になっちゃってる。
やっぱりそうなんだ。
でも自分から面と向かって言うのは恥ずかしいからぎゅーぎゅーしてきたと。
そういうことだよね。
そんなところが可愛いなって思う。
ここは楽屋
電気ついたまま
お母さんへのお迎えメール
などなど頭をよぎったけどお互い止まれそうもない。
舞美ちゃんはしたいし、私はしてほしい。
完璧に重なった今を逃したくない。
離れた距離を自分から縮めて、舞美ちゃんの耳元に唇を寄せる。
ちょっと舞美ちゃんの体が震えた。
吐き出された息と回された腕が熱い。
「…して?」
その一言を待ちわびてたようにキスが降ってきた。
最終更新:2010年02月22日 16:11