ふと目を覚ますと、カーテンの隙間から見える外はまだ薄暗かった。
腕の中にはすうすうと小さく寝息を漏らす愛理が収まっている。
その寝顔があまりに可愛くて私はつい頬が緩んでしまった。
こんなに無防備な愛理を見れるのは自分だけだと考えると、すごく嬉しいのと優越感を感じる。
愛理も私も衣服は身につけておらず、薄暗い空間の中に愛理の肌の白さが一際浮いて見えた。
ベッドサイドにある目覚まし時計に目をやる。
針は4時過ぎを指している。
そっか、あのまま寝ちゃったんだっけ…
寝起きの頭を回転させてほんの数時間前の出来事を思い出す。
バースデーイブだもん、なんて言って愛理が私の家に泊まりに来て。
付き合っているわけだから、当然夜はそういうことになって…。
日付が変わる瞬間すら行為に夢中になっていたんだと思う。
どこに触れてもどこにキスをしても愛理は逐一可愛い反応を返すものだから、
夢中になりすぎてしまうんだ。
でもそのせいで愛理が16歳を迎える瞬間に気づかなかったなんて、我ながら間抜けでちょっと情けない。
おめでとうって気持ちと愛しさを込めて、少し乱れた前髪から見えるおでこに口づける。
それだけじゃ足りなくて、瞼や頬にも唇を落とす。
まだ寝かせてあげたい、だけど起きてほしい。
心の中で葛藤しながら愛理をじっと見つめていると、不意にもぞもぞと愛理が身じろぎして薄く目を開けた。
「んー…」
眠そうにとろんとしていて、また今にも閉じてしまいそうな目が私をとらえる。
まだ寝てていいよ、と髪を梳くように撫でてあげると、私の胸に擦り寄るようにぎゅっと抱きついてきた。
まるで子犬や子猫みたい。
「もう、誕生日、なった?」
寝ぼけてるのか途切れ途切れで尋ねられる。
寝起きだからか少し声が掠れている。
「うん。誕生日おめでとう」
「ありがと…舞美ちゃんに、ちょっと近づいたね」
「え?」
「2月までは、二歳しか離れてないもん」
だから嬉しいよ、って、そう言って胸元でふにゃふにゃ笑ってる愛理。
年齢差なんて、気にしなくていいのに。
でもそんな愛理が健気で、すごく愛しい。
「好きだよ、愛理」
「わたしも…」
寝ぼけて力が入らない腕で精一杯抱きついてくる愛理を腕の中にぎゅっと閉じ込めて、
私は幸せと愛しさをかみ締める。
「まだ時間あるから寝ていいよ。愛理今日学校じゃん」
「ん…」
再び眠りにつこうとする愛理を促し、寝やすいように少しだけ腕の力を緩めた。
すると胸元からぼそぼそと寝言のような声が聞こえ、思わず「なあに?」と聞き返した。
「舞美ちゃんのお嫁さん、なりたいな…」
本当に本当に小さな声で、でも確かにそう聞こえた。
そういえばこの間舞ちゃんや千聖に、16歳って結婚出来る年齢じゃんとかからかわれてたっけ。
どうしよう、嬉しい。
もちろん本当に結婚が出来るわけじゃないのはわかってる。
それはきっと愛理も同じこと。
だけど、その言葉だけでどうしようもなく嬉しくて舞い上がってしまう私は、
もうどうしようもないくらい愛理に溺れているのかもしれない。
「ずっと、そばにいるよ」
私をドキドキさせるだけさせてまた眠りの世界に入ってしまった愛理の髪を撫でながら囁く。
朝になったら改めて「おめでとう」って言って、キスをして、誕生日プレゼントを渡そう。
この日の為に悩みに悩んで、だけどどうしてもあげたいと思った、お揃いの指輪。
もしも、左手の薬指にはめて、って言ったら愛理はどんな顔するかな。
喜んでくれたら、いいな。
最終更新:2010年04月28日 18:44