暑くて目が覚めた。
見るとちゃんと律儀に肩まで布団をかぶっていた。
それなら暑くなるのも当然で、隣に寝ている舞美ちゃんも苦しそうに少し顔を赤らめて眠っている。
私はとりあえず掛け布団を剥ぎ、タオルを出来るだけ音を立てないように上下に揺らして布団に風を入れた。
暑さが和らいだらしく舞美ちゃんの顔から苦しみが抜ける。
額にびっしょりと汗をかいて前髪がひじきになっている。
私も汗をかいていてTシャツが湿っている。
舞美ちゃんの前髪をかき分けると舞美ちゃんの、においがした。
そういうことは舞美ちゃんが忙しくて疲れているからしなかったのに、汗をかいているのは結局同じで、
舞美ちゃんらしいと思ったり、子供みたいに汗をかいてる舞美ちゃんが愛しくなったりで
自然と頬が緩んだ。
ねがおどくせーん、と声に出さずに呟いてみる。
窓のカーテンから街灯の光が微かに漏れて入ってくるおかげでかろうじて舞美ちゃんの顔が見える。
その造形ももちろん、できる影まで美しくて見とれる。
私が惚れているからよくみえているのはあるかもしれないけれど、それを差し引いても、綺麗だ。
目、鼻、口、頬のラインをまじまじと息を殺して見つめていると美しいものに惹かれる以上の感情が湧く。
こういったことは何度も経験して、そのたびに、好きなんだと自覚する。
舞美ちゃんも私に対してそう思うこと、あるんだろうか、と思って、あるだろうなと思い返した。
舞美ちゃんの目は正直だからすぐわかる。
今は閉じられた目が、開かれて私を見つめている姿が、今見ているものを乗っ取って浮かんで一人で恥ずかしくなる。
そんな風に一人でぼんやりしていると舞美ちゃんの首筋に一筋何かが光って下に消えていった。
何だろうと思い触れてみると、なんと、寝汗が伝っていったようだった。
さすが舞美ちゃんである。
あれだけの汗が額にあるくらいなのだから、と私は鞄から使ってないタオルを出して拭こうとすると、また一筋流れていった。
その時舞美ちゃんの顔が微かにゆがんだ。
まだ暑いのかとも思ってけれど、そうではない気がして私はそっと観察することにした。
3回目はなかなか遅かったけれど私が眠ってしまう前にやってきた。
つう、とつたった瞬間、舞美ちゃんは小さな声で、しかし確かに、ん、と唸った。
とりあえず額と首の汗は拭いてあげた。
それから、水が伝う感じと同じように私は舞美ちゃんの首筋を撫でた。
するとさっきと同じように舞美ちゃんは顔を歪める。
苦しいわけではないらしい。私の手をはねのける気配はない。
それどころか微かに息が乱れている、気がする。
やらしい顔になってきている、気もする。
せっかく布団に入ってから我慢したのになんだか水の泡になりそうで、
自分で苦笑いしながら静かに舞美ちゃんの上に馬乗りになった。
ちょっとべたつく首元に指先で触れてくすぐると舞美ちゃんは目を閉じたまま逃れようとする。
ここまでされても起きないものだろうか。
私は触れているのと反対側の首元に顔を寄せて、その間も指で遊んだ。
逃げ切れずに舞美ちゃんは息を漏らす。そして、愛理、と囁いた。
思わず顔を離して顔を見たけれど起きたわけではないようだった。
たかが寝言、が嬉しくて私はもう一度顔を寄せる。
舞美ちゃんのにおいがする。私が好きなにおいだ。
口づけるとさすがにしょっぱい。
それでも構わずに唇をずらして、舌でちろりと舐める。
そのたびに体が揺れる。可愛くて可愛くてたまらない。
指先も首筋で遊んだままで、さすがの鈍感な舞美ちゃんでもおかしいと思ったのか、起きた。
「んん、あ、愛理?」
体を離して舞美ちゃんを見ると、寝起きで頭が回っていないのか、ひどく困惑していた。
でもそれだけではない、と思う。
ばつが悪そうな顔をしているようにも見えた。
寝ている間にそんなことされたら、普通そういう夢見てもおかしくないとは思うけれど、
舞美ちゃんは正直ものだから、そんな夢を見たことを恥ずかしそうにしている。
とは口に出さないところも全部可愛くて愛しい。
多分これはどこまでもとまれなくなるだろうなあ、と冷静な自分が自分を分析している。
だって舞美ちゃんが悪いよ、と冷静じゃない自分が言い訳する。
こんな顔されたら、止まれるはずがない。
せっかく我慢したのに、せっかく汗を拭いたのに、全部無駄になってしまったけど、それはそれで。
最終更新:2010年11月01日 07:39