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バスが発車した途端、隣に座っていた舞美ちゃんはすやすやと眠ってしまった。

ホントはたくさんおしゃべりしたかったけど、舞台が終わってすぐコンサートがあって、かなり疲れているのはわかっていた。
それなのに、疲れているところとか元気ないところとかを見せないどころか、いつだって全開で一生懸命で楽しそうにしてた。
それが痛々しいと思わない程だったけれど、実際こうして横で寝てる舞美ちゃんの寝顔を見てると、疲れてるんだろうなと思う。
そんな事、口にしないんだろうけど。

寝顔は若干辛そうだった。
眉間にしわを寄せて、呼吸も大きめだった。落ち着かないのか時々動いたり唸ったり。
それでも目が開けられる事はなかった。相当眠いのかもしれない。
クーラーが少し効き過ぎている気がしたから、車内にあった小さい毛布を膝にかけてあげると、もぞもぞと舞美ちゃんが動き出した。
あ、起しちゃったかな?・・・と思ったら、案の定うっすらと目を開けた舞美ちゃんが一瞬ぼーっとして、それから私の方を向いた。

「愛理・・・。」

寝ぼけてるのか、少し甘えたような声を出す。目がとろんとしていて、ふにゃふにゃしててかわいらしい。

「起こしてごめんね?寝てていいよ。」

そう言うと、うーんって唸ってちょっと困った表情をする。
眠気と戦ってるんだろうなぁと思うとホントにかわいらしくて仕方ない。

「私も寝るから。」

そう言って、舞美ちゃんの肩に自身の頭を乗せた。カラダを寄せるようにくっつけると服から出てる腕がひんやりとしていた。
温めてあげるようにもっとくっついてみると、舞美ちゃんのにおいがしてくすぐったい。
そのくすぐったさが嬉しくて、毛布を広げて自分のひざにもかけて、その中で誰にも見られないようにそっと手を握った。
当たり前のように握り返される手の強さが大好きだ

「愛理。」
「んー?」

頭の上から心地よい声がした。
ちょっとだけ顔をずらして上を見ると、それは一瞬で。
驚いて舞美ちゃんの顔を見たら、目をぱちくりさせて落ち着きがなさそうにだけど嬉しそうに微笑む。

座席のすぐ前ではなっきぃが寝てて、ちっさーと舞ちゃんはテンション高めに話してる。マネージャーさんたちも何やら仕事の話をしてる。
誰に見られてもおかしくない状況で、掠め取られた唇。

「ま、舞美ちゃんっ!」
「大丈夫。誰も見てないから。」

それはわかってる、けど。
こんなところでこんな不意打ちに私はただただ驚いて、悪戯っ子みたいに笑う舞美ちゃんの顔に何も言えなくなってしまう。
無邪気で真っ直ぐ過ぎて、それでいて忠実で。屈託のない笑顔には裏なんてない。
私は諦めに似ただけど嬉しい溜息をついて、再び舞美ちゃんの肩に頭を乗せた。その上に舞美ちゃんの頭が乗せられる。
毛布で隠した手は、つながれたままで。

目を閉じたその先にも開かれたその先にも、ずっと舞美ちゃんがいるんだろうと思うとひどく嬉しく思えた。
最終更新:2010年11月01日 07:53