楽屋には舞美ちゃんと舞ちゃんが一緒に入ってきた。
どうやら舞ちゃんが前日メールしていたらしい。
同じ日に誕生日を迎える二人はいつもより一層元気におはよー、とドアをあけた。
その声に私と千聖となっきぃは反応する。
3人とも祝いたくて待ち構えていたのだ。
「舞ちゃん、舞美ちゃん、おめでとう!」
千聖を皮切りにして私もなっきぃもおめでとうと迎えた。
舞ちゃんも舞美ちゃんもちょっと照れくさそうに笑っていてほほえましくて
二人の誕生日が私もうれしかったりするのだけど、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ心に引っかかる。
わいわいと本格的に祝うのは今日の打ち合わせ後ということになり
各自時間がくるまで自由にしている。
私は読みかけの本を、後もう少しだったから読み終えてしまおうと思ったのだけど、
ちょっと騒いだ分集中しにくかった。
本の情景の代わりに浮かぶのはさっきの光景だった。
二人で手をつないで入ってきたのを見逃さない自分が憎い。
舞ちゃんが甘えたのだろうことは予想がつくけれど、それでも、だ。
あの入場の仕方といい、照れ笑いといい、あれじゃあまるで。
私の脳内ではぱぱぱぱーん、と音楽が流れ始めて、その軽快な音楽とは反対にどうも渋い顔になっていたらしい。
4度目の最高潮のぱぱぱぱん、で急にひょっこり舞美ちゃんが顔をのぞいてきたものだから
思わず私の口からは、ぱぱぱぱん、と飛び出した。
「え、何?きらり?」
「や、違う。」
そうきたか。あせっている割に冷静な対応をした自分に驚く。
「そんなに難しい本なの?」
「へ?」
舞美ちゃんは本のカバーをじろじろ見ているけれど、エスパーでないかぎりタイトルは見えそうにない。
舞美ちゃんがエスパーでも困るのだけど。
タイムスリップされても、心の中を見抜かれても困ってしまう。
くるくると考えるうちに舞美ちゃんは私の眉間に指をあてた。
「しわよってたよ。」
舞美ちゃんは目を細めてくすくすと笑っている。
ほんと?と眉間をマッサージしてみた。
「本は難しくないんだけど、ちょっと考え事してた。」
「何?難しいこと?」
「やー、そういうわけじゃないんだけど。」
「なになに?」
見つめてくる舞美ちゃんの目はきらきらしている。
いつも思うのだけど、眩しい。常にまっさらである。
「舞ちゃんが、羨ましいなーと思って。」
「あと2カ月くらいで愛理も誕生日じゃない。」
盛大に祝うよ、と舞美ちゃんはのりのりだ。
私の意図する通りには通じないのがとても愛しいと思う。
「そうなんだけど、そうじゃなくて、舞美ちゃんと誕生日一緒で羨ましいなって。」
呟いてみると舞美ちゃんは素直に頭の上にはてなを浮かべている。
呆けて開いた唇の隙間に指を突っ込みたくなったけれど自重した。
そんなことをしたらブレーキがきかなくなりそうだ。
「私も舞美ちゃんと一緒に祝われたいな。」
「そうなの?」
「うん。」
私の回答に舞美ちゃんはまだ満足いかない顔をしていた。
大きな目をぱちくりさせている。
3回きょろきょろと思考を行ったり来たりさせたけれどやはりわからなかったらしい。
「なんで?」
「だってさっき。」
「さっき?」
「さっき。」
「なーに?」
私は声を小さく小さくして呟く。
他の人には聞かれたくなかった。
「舞美ちゃんと、舞ちゃん、結婚式みたいだった。」
こんな子供じみたことを口にしても舞美ちゃんは笑わない。
それどころか何か思いついたように鞄をとって戻ってきた。
「そういうことなら、さ。」
かばんの中からは、仕事の時は外している舞美ちゃんの指輪が取り出されて、
私がさっき浮かべていた音楽は舞美ちゃんの口から紡がれる。
軽快な音楽は軽快に流れるべきだと思った。
舞美ちゃんは私の左手を取って、4度目のぱぱぱぱんで細い指で薬指にはめた。
「あい・らーびゅー・ふぉえばーあなただけのことー。」
某雑誌のCMの歌詞そのままに、何も意識せずに歌う。
そういうところがすごく可愛いのだけど、憎くもある。
「はい。」
舞美ちゃんは私の左手を一度握って笑った。
さすがにさっきよりずっと照れているらしく耳が少し赤くなっている。
その顔に、きゅううと胸が熱く痛くなった。
私の耳も頬も多分急激に赤くなっているだろう。頭の芯すら熱い。
「あとちょっとで愛理も16歳かあ。」
「うん。」
「早いね。」
「早い。」
会話の一言一言が短くなる。
私は今はあまり長い言葉は出せそうにない。
顔の熱を治めようと努力しているのに、舞美ちゃんは気付かない。
「愛理も結婚できるねえ。」
「そっか、そうだね。」
「相手は―」
あたし?
一瞬、目を合わせられて息がとまる。
とかいって、と笑うのもわかっていた。
わかっていても私は真剣に首を縦に振った。
あまり熱心に振るものだから舞美ちゃんは一度驚いた顔になって、
ぎゅ、と目を細めて頷いた。
その顔はずるい。
私から言葉を全部奪ってしまう。
言いたいことはたくさんあるのに、何も言えなくなって、
色々悩んだ挙句に残るのは、好きの一言なのだ。
「誕生日何がほしい?」
自分の誕生日なのに舞美ちゃんは楽しそうに私への誕生日プレゼントを考えている。
ほしいものは二つになってしまったのだけど、どちらにしたらいいのだろう。
どっちも、は欲張りなのかな。でも舞美ちゃんなら笑ってかなえてくれる気がする。
「指輪、と、舞美ちゃん。」
ノソ*^ o゚)<早貴も結婚できるよ!!
州´・ v ・)<…
最終更新:2010年02月15日 17:59