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また遅くなってしまった。
今日は舞美ちゃんと一緒に帰る約束をしていたのに、いつも帰り支度をするのが遅い私はどんなに急いでもやっぱり遅かった。
マネージャーさんに用事があるからと言って先に出て行った舞美ちゃんだけど、結局私が待たせることになってしまった。

「愛理!愛理!」
「舞美ちゃん、ごめんね!」

事務所の外に出ようとした時、待ちくたびれてしまったのか舞美ちゃんが再び事務所に入ってきた。
慌てて謝ったのに、舞美ちゃんは「いいよ!」とだけ言うと、目をキラキラさせながら私の手を掴んだ。

「ど、どうしたのっ」

いつもとは違う少し強引な舞美ちゃんにちょっとだけドキドキした。
だけど、すぐに繋いだ手が冷たいことに気付いて申し訳なく思った。

「愛理っ、雪だよ!」
「え?」
「雪降ってる!」

事務所を出ると冷たい風が髪を揺らした。
さっきまではしゃいでいた舞美ちゃんも、いつもは頼もしく見える背中を丸めて小さくなっている。

「おぉー・・・!」

あまりの寒さに気付くのが遅くなったけど、顔を上げるとチラチラと雪が降っていた。

「愛理、雪だよー!」
「うん、雪だねー、舞美ちゃん」

舞美ちゃんの横顔を見ると、舞美ちゃんは空を見上げたまま白い息を吐き出した。
なぜか私も同じことがしたくなって、下を向いてそっと息を吐いた。

「愛理寒い?」
「寒いよぉ」
「そうだよね。ごめんね、急に外連れ出しちゃって」

舞美ちゃんは少しだけ申し訳なさそうに笑うと、繋いでいた手をぎゅっと握った。

違うよ。
そういう意味じゃなくて。
そんな顔してほしくないよ。

「舞美ちゃん」

私も繋いだ手に力を込めた。
舞美ちゃんが不思議そうに私の顔を見るのを確認して、かわいいなぁと思う。


「雪、うれしいね」
「うん!私、雪好きだか・・・」
「舞美ちゃんと一緒だから、もっとうれしい」
「あ、いり・・・っ」

照れる舞美ちゃんが愛しくて、私は口元が緩むのを抑えきれなかった。
舞美ちゃんが私と雪を見たいって思ってくれたこと、ちゃんとわかってるよ。
だって、きっと私も同じことを思うだろうから。

「はぁーっ、あついあつい・・・」

さっきまで寒がっていたのに、舞美ちゃんは空いた手で顔をパタパタと扇いでいる。
よく見ると頬もちょっとだけ赤くて、そんな舞美ちゃんを見ていたら、寒さなんてどうでも良くなった。

「舞美ちゃん赤くなってるよ」
「だ、だって愛理がいきなりあんなこと言うから!」

私が歩き始めると、舞美ちゃんも自然に歩き始めた。
まだ帰りたくないな。
もっと舞美ちゃんとこうしていたい。

「途中でなんかあったかいもの飲みたいなぁ」
「お!いいねー。どっか寄って帰ろうか」
「うん!」

まだ帰りたくない。
舞美ちゃんも、同じように思ってくれてる?


どこ行こうかなぁ、何飲もうかなぁって考える舞美ちゃんを横目に見ながら、私はもう一度空を見上げた。
雪はまだ降り続いている。

やまなければいいのにと思う。
このまま雪が降り続いて電車が止まったら、もっと舞美ちゃんと一緒にいられるのに。

      • なんて、さすがに舞美ちゃんはこんなことは考えないだろうなぁ。
実際こうなったら私も結構困るし。

「愛理?」

舞美ちゃんが不安そうに私の顔を覗き込んできた。
こんなこと思ってるなんて言えないから、なんでもない風に笑ってみせた。

「帰りたくないなぁ」

私がボソッと呟いたら、舞美ちゃんは「うーん」と考えるように唸った。

嫌だな。
また、わがまま言っちゃった。
謝ろうと思って顔を上げたら、舞美ちゃんは「よし!」と言って私の顔を見た。

「じゃあ、今日はギリギリまで一緒にいよう?」


「え?」
「夕飯も一緒に食べて帰ろう?」
「い、いいの?」
「うん。だって、私も愛理と一緒にいたいよ」

舞美ちゃんはニコニコと笑っている。
やっぱり舞美ちゃんは優しすぎるよ。
そんなところが大好きで、いっぱい舞美ちゃんに甘えちゃう。

「舞美ちゃん大好き」
「えへへ。ありがと!私も愛理のこと好きだぞー」
「うん!」

嬉しくて、嬉しくて幸せで、私は繋いだ手を大きく揺らした。
舞美ちゃんも、それに合わせて揺らしてくれる。

いつの間にか雪はやんでいた。
少し残念だけど、すぐ隣を見れば舞美ちゃんがいる。

何を飲もうかな。
何を食べようかな。

舞美ちゃんと一緒っていうだけで何でも特別になる。
私が無意識に白い息を吐くと、舞美ちゃんも大きく白い息を吐き出した。
そんなちょっとしたことでも、舞美ちゃんと同じだと嬉しい。

そうだ。
ブログ用の写メを撮るのも忘れないようにしないと。

もちろん、私の為にもね。


少し歩いて、ちょっと大人な雰囲気のおしゃれなパスタ屋さんに入った。
メニュー見てる間も、料理を待っている間も、料理を食べてる間も自然とにやけちゃう(笑)
何気ないことなんだけど、舞美ちゃんと一緒だと、なんでも楽しい。

そういえば・・・2人きりになったら渡そうと思ってた、舞美ちゃんへの特別なプレゼントいつ渡そう・・・
「愛理どうしたの?」
「えっ・・・あっ、あのね・・・これっ!」
バックから取り出した箱を舞美に差し出す愛理。
「はい、舞美ちゃんへの誕生日プレゼント」
「えっ・・・さっき、事務所でもらったよね?」
「ううん、これは愛理から舞美ちゃんへの特別なプレゼント。開けてみて」

受け取った箱を少し見つめた後、きれいな包装をとって、ゆっくり箱を開ける舞美。
「わぁ~、ありがとう」
舞美の手にはきれいなアクセサリーが。
「気にいってくれた?」
「うん、愛理ありがとう~。」
「良かったぁ。でね・・・これ私とお揃いなんだ。一緒に付けてくれる?」
「もちろん。さっそく」
さっそく、アクセサリーをつける舞美。
アクセサリーを見せながら、
「愛理、どうかな~?」
「似合ってるよ、舞美ちゃん」
満面の笑みで、身に付けたアクセサリーを眺める舞美。それをうれしそうに見つめる愛理。

お店を出たあと、手をつなぎながら、夜の街を歩く二人。
手を繋いだ2人には、お揃いのアクセサリーがキラキラ光っている。
最終更新:2011年02月16日 14:10