アットウィキロゴ
 
「舞美、ちゃん?」
「愛理がよかったら、だけど。いい?」

ダメなはずなどない。泊まる事もお母さんには了承済みだし。
だけど・・・だけど。いいの?舞美ちゃん・・・。

私の返事がなかなかこないからか、今度は念を押すように「ダメ?」って聞く。
それは、拒否するのを許さないというような声の強さがあった。
そんな舞美ちゃんをあんまり見た事がない。
「ダメじゃない。」そう言ってカラダを密着させると、またさっきのように背中を撫でて体を揺らす。

「あ、でもここで寝ちゃダメだもんね・・・。お布団行こっか?」

私の体を抱きかかえるようにしてベッドに運ぶ。
私は体重の半分以上を舞美ちゃんに預けた。
チカラが入らなくてふらふらしたのは、眠いだけじゃなくてこれから一緒に寝る、という事を考えていたからだ。

…何もしない自信が、ない。

そうは思っていたけど、どうなのか自分でさえも想像つかなくて、それがすごく怖かった。
取り返しのつかない事になったらどうしよう。
舞美ちゃんを苦しめたら・・・どうしよう。
そう思うと、これから一緒に布団に入るのがとても、怖かった。

初めて一緒に入るベッド。
いつも抱きしめられたり、近くに体温を感じる事はあっても、ベッドに入ってるってだけでいつもと違う気がした。
舞美ちゃんは、私の体を引き寄せて腕の中に入れると、さっきとは違ってぎゅうって抱きしめた。
いつもより濃く、舞美ちゃんのにおいがした。

「愛理。」

その声は刹那を含み、私の心に刺さるように届いた。
やっぱり今日の舞美ちゃんはどこかおかしい。

「舞美ちゃん?」

顔が見たくて少しカラダを離したら、困ったように笑ってる舞美ちゃんと目が合った。

「どうしたの?」

そう呟いた瞬間。
ゆっくりと近づいてきた、唇。
それを目で追っていたら、それはすぐに見えなくなって。
私の唇に、舞美ちゃんの唇が落ちて、きた。

初めての感触に、全身が痺れた。
触れたらやっぱりもっともっと、欲しくなって。私は舞美ちゃんのカラダをぎゅっと抱きしめた。
柔らかくて気持ちがよくて、そしてこの考えてもいなかった状況に、私は考える能力を忘れて求めた。
時折、漏れる声を唇で塞いで、だけどもっと聴きたくて。

だけど、胸の奥が悲しく泣いていた。
このまま進んでしまっていいのか、急に思考が動き出した。

ハッとして唇を離すと、顔を真っ赤にして乱れた呼吸で私を見る舞美ちゃんがすぐ目の前にいた。
どんな顔していいのかわかんなくて俯くと、舞美ちゃんが私に甘えるように胸の中に入ってきた。

やっぱりいつもの舞美ちゃんとは、違う。
どういうつもりで、舞美ちゃんから・・・そんな事を。
いつも人の気持ちを優先する舞美ちゃんが、どうして?

いつも私の上にある舞美ちゃんの顔が、私の下にある。
頭のてっぺんを初めて見た気がして、それをぼーっと見つめた。
どうしていいのか、わかんない。

しばらくそうしていたら、舞美ちゃんが動き出した。
見上げるように顔を見られた。それも初めての事だった。
もう、心臓が持たないと思うくらい、バクバク音を立ててる。
胸に顔を当てている舞美ちゃんにもきっと届いてる。

舞美ちゃんはそのまま顔を近づけてきた。また今すぐにでも唇が触れてしまいそうなくらい、近く。
その唇に吸い込まれそうだったから目を逸らすと、舞美ちゃんが私の頬に手を添えた。
その手のひらはひどく熱い。
その熱でさえも、私を乱してしまいそうだ。

だけど、舞美ちゃんはそんな私に更に熱を与える。

「もう1回、してもいい?」

舞美ちゃんは私の答えを聞かずに・・・私の顔を引き寄せて、もう1度お互いの唇が触れ合った。

舞美ちゃんが、悪い。

もうどうなってもいいから、だったらこのまま舞美ちゃんが欲しい。
叶わなくなってもいい。どうしても欲しい。

舞美ちゃんが、悪い。
私をそうさせた舞美ちゃんが、悪いんだ・・・。

舞美ちゃんの上に乗って、私はさっきより激しく口づけた。
もう止められない。それは舞美ちゃんもわかってるはずだ。
なのに、もう1回なんてそんな事・・・。

足が絡まる。呼吸が乱れる。熱くなる。

どれもこれも、私を欲情させる。

そのまま唇を首筋に落とすと、塞がれていない舞美ちゃんの口から甘い声が漏れた。
そして、手で胸の膨らみに触れた瞬間、この前と同じように危険信号が点滅した。

慌ててカラダを離すと、舞美ちゃんの潤んだ目が私を捕らえた。
その表情からは感情が読み取れない。だからこそ、このまま進んではいけない。
止まれたのが自分でも不思議だった。

「舞美ちゃん・・・。どう、して?」

声が掠れた。でもそんな事どうでもよかった。
舞美ちゃんの気持ちが知りたかった。
ただカラダを重ね合わせることは簡単だ。だからこそ、気持ちが知りたい。

「どうして・・・。」

もう一度問うと、舞美ちゃんの目が伏せられた。私は頬をつかんで、顔を上げさせる。
諦めたように、舞美ちゃんが私の目を見る。ゆっくりと唇が開かれた。

「愛理が、好きだから。」

その答えはなんともシンプルなものだった。
好きだから求める。当たり前の事だった。
だけど・・・いつから?そんな素振り見えなかった。

「この前・・・愛理がキスしようとした時・・・嫌じゃなかった。それどころか、して欲しいって思った。」
「・・・ホント、に?」
「自分で気がついてなかったけど、あの時にはもう・・・愛理が好きだったんだと思う。」

ウソみたいだった。言葉が心の中に入ってこない。
だけど、これはウソなんかじゃなくって・・・でも、ホント?
疑ってるわけじゃなくて、ただ舞美ちゃんの気持ちが私に向いてる事が信じられない。

「だけど、こんな簡単に愛理と付き合っていいのかなって・・・。そう思うと気持ちを言えなかった。」

舞美ちゃんが私をぎゅっと抱きしめた。
私はそれを全身で受け止めた。

「でも、どう考えても愛理が・・・好き。」

今まで目の前にあっても手に入らなくて、でもずっと欲しくて仕方なかったものが、手に入った瞬間。
今まで待ち続けて、心に閉まっていた気持ちとかそういうもの全部が、私の体中にあっという間に広がっていった。

「私で、いいの?」

震えた声で私が聞くと「愛理じゃなきゃダメだよ」って幸せそうに笑うから。
もう、止められない。

私は舞美ちゃんの全てに触れて、心の中まで入り込んで触れて。
切なげに、だけど幸せそうに笑う舞美ちゃんが愛おしくて。
何度も何度も触れた。

全部、全部、私の舞美ちゃんだってわからせるように。
最終更新:2010年04月28日 18:33