舞美ちゃんは最近食べ物の苦手克服に燃えている。
この前はウニ、その前は青じそドレッシング。
青じそドレッシングなんて克服しすぎて大好きになったみたい。
ケータリングの青じそドレッシング一人で全部使いきっちゃう勢いだった。
その克服の一環にチョコが入っていた。
どういう風の吹き回しか知らないけど、食べてみる気になったみたい。
差し入れの生チョコを舞美ちゃんが3個も食べたことにみんなでビックリした。
これでチョコに味をしめたのか、突然愛理の手作りチョコが食べたいって言い出した。
断れるわけもなく、バレンタインに初めての手作りチョコを…だった計画がパーになった。
とりあえずインターネットで生チョコの作り方なんか調べて頑張って作った。
お母さん、ご協力まことにありがとうございました。
当方のお菓子作りに後片付けは含まれておりません。
「はい、舞美ちゃん」
「本当に作ってくれたんだ。うれしぃ~」
そう言ってチョコを持ったままぎゅうぎゅう抱きしめてくれる舞美ちゃん。
ちょっと…いやかなり苦しい。
全力で来てくれて嬉しいんだけどね、ちょっと手加減してほしいな~なんて。
「ま、いみ…ちゃん、苦しいよぉ」
「ごめん、嬉しくてつい…。あ、チョコ食べなきゃだね」
そう言って舞美ちゃんはチョコの箱を私の手のひらに置いた。
どうしていいかわからなくて首をかしげながら舞美ちゃんを見た。
「えっと…あの…」
「愛理に食べさせてほしいなーと思って。だめ?」
だめ、なんて言えるわけない。
そんなお願いまっすぐな目でしないでよ。
どんなに恥ずかしくても断れないじゃない。
ずるいよ。
きっと顔真っ赤になってる。
チョコを持つ手もちょっと震えてるし。
人差し指と親指で一つつまんで舞美ちゃんの口元に持って行く。
舞美ちゃんはニコニコしながらチョコを見てる。
パクッて指先ごと口に含まれた。
チョコを運ぶ舌に指先を舐められて体がビクッてなる。
恥ずかしくなって慌てて指を引き抜いた。
なんだか舞美ちゃんの顔を見れない。
「んー!これおいしい!すっごくおいしい!」
私の恥ずかしさなんてよそに何回もおいしいを繰り返してくれる舞美ちゃん。
はー、よかったぁ。
自分で言うのもなんだけどちょっと自信があった。
味見しておいしかったし、お母さんにも食べてもらって万全の体勢で臨んだんだもん。
でもやっぱり舞美ちゃんに食べてもらうまで不安だった。
おいしいって言ってもらえなかったらどうしようって。
でも、もう1個、なんて口に入れてる舞美ちゃんを見たらそんなの飛んでった。
「よかった、おいしいって言ってもらえて」
「ふふ、愛理が作ったんだもん。おいしいに決まってるよ」
かなり甘めの基準がちょっと不満だけど、おいしいって言ってくれるからいっか。
ありがとね、なんて頭を撫でてくれる手が心地いい。
「このおいしさを愛理にもおすそわけ」
えっ、と思う間もなく舞美ちゃんの顔が近づいてぼやけて距離がゼロになった。
ちゅっ、ちゅっと軽く啄むようなキスをされる。
唇が離れていくのが寂しくて思わず服の袖をつかむ。
それが合図だったようにもう一度舞美ちゃんが近づいてくる。
今度は舌も入ってきて、深く深くキスをされる。
さっきより鮮明にチョコの味がして
舞美ちゃんの舌の感触が気持ちよくて
頭がクラクラした。
「チョコおいしかった?」
キスが終わった後、舞美ちゃんはいつものニコニコ笑顔で聞いてきた。
素直においしかった、なんて言いたくない。
せっかく顔の熱が引いてたのにさっきの一言でまたぶり返した気がする。
「ばか…」
照れ隠しに抱きつくと、さっきの半分くらいの力で優しく抱きしめてくれた。
ちょっと恥ずかしかったこととか全部帳消しになるくらい気持ちいい腕の中。
その中でバレンタイン当日もおすそわけしてくれるかなーって思ったのは内緒。
最終更新:2010年02月15日 18:09