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ツアー中のホテルで愛理と相部屋になった。
珍しく相部屋になれて嬉しくって、今日はいっぱいお話しようと私は胸を弾ませていた。
先にお風呂に入った愛理を待たせちゃいけないと思って私はガーッとシャワーを済ませ、
乾かす手間のかからなくなった短い髪をタオルで乾かしながら出ていく。
もったいないってみんなに言われたけど、私は案外ショートカットが気に入っていた。楽だし。

一方ドレッサーの椅子に座っている愛理は、長い髪をドライヤーで熱心に乾かしている途中みたい。

「まだ乾かしてるんだ」

当の愛理は時折こくりこくりと頭が動く以外は微動だにせず無言でドライヤーを握っている。

「寝てるの?…とか言って」

まさかね、と思いながら恐る恐る覗きこんでみると、やっぱり。
すぅすぅと小さな寝息をたててその器用な態勢のまま愛理は眠っていた。
どんな状況でも寝れるってことは知ってたけど、うーん、これはひどいよ。
とりあえずドライヤーの電源を切って、愛理の手からゆっくりドライヤーを離す。
すると「んー…」という声と共に愛理の目が薄く開いた。

「愛理、寝るならベッドいかなきゃだめだよ」
「ん…舞美ちゃん」

いつもよりもさらに舌足らずな口調で呼ばれて思わずどきっとする。
こういう時、愛理に片想いをしている自分に改めて気づかされてしまって、何だかだめだ。
こんな些細なことにもどきどきしてしまって、その度にやっぱり好きだと痛いほど感じて。
伝えてしまいたいけれど伝えられない、伝えてはいけない愛理への『好き』が大きくなるほど辛かった。
それに加えてリーダーなのにメンバーにこんな気持ちを抱いてしまっていることへの罪悪感が、
私を苦しませていた。

リーダーとして℃-uteを引っ張っていくとファンの人やえりと約束したにも関わらず、
心の中には愛理と特別な関係になりたいと願ってやまない自分がいる。
でも私がもし想いを伝えでもしたら愛理が困るのは目に見えているし。
それどころか、℃-ute全体の歯車が狂ってしまうんじゃないかって、そう思うと怖かった。

今現在自分達がすごく不安定な状況にいるのはわかってる。
めぐと栞菜がいなくなって、えりも卒業してしまって…もう今は私達五人で前に進むしかない。
最初は八人で見始めた℃-uteという夢。残ったのはもう私達だけ。
だからこそリーダーの私はグループ全体をちゃんと見ていかなくちゃいけないから。
愛理だけを特別になんて想っていちゃいけない、それは痛いほどわかっていた。

「舞美ちゃん…いいにおいする…」

眠そうに、まるで子猫が甘えるようにふわっと抱きついてくる。
この恋心は捨てなくちゃいけないのに、いつもこの優しい温もりが私の心を掴んで離さない。
いつからとか何がきっかけとかそんなのわからない。
気づいた時にはもう私は愛理が好きだった。

壊れ物を扱うようにゆっくり抱きしめると、満足げに胸元にすり寄ってきてすぐに寝息が聞こえてきた。
胸元に感じる息が妙に熱い。

ねえ、愛理。
もしも私が愛理に好きだって伝えたら私達はどうなるのかな。
℃-uteも愛理もなんて、私はやっぱり欲張りで。
だけどどっちも大切。どっちもかけがえのないもの。どちらかなんて選べない。
どうして大切なものは一つだけじゃないんだろう。

「愛理…好き」

眠ってしまった愛理に聞こえないように呟いて綺麗な黒髪に顔を寄せると、優しい香りがした。
いつかはきっとこの想いに終止符を打たなきゃいけない時がくる。
だからそのいつかまで、今はまだこうして、誰にも気づかれないように愛理を想っていさせて。
最終更新:2010年03月23日 23:31