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それは新曲のジャケット撮影の休憩時間、スタッフさんがアイスを差し入れてくれた。
節電の影響でただでさえ蒸し暑いスタジオの空調の効きはお世辞にもいいとは言えなく、まさに天の恵み。

まっさきに千聖と舞ちゃんがアイスの入ったクーラーボックスに飛びつき、
アイスをとると一目散にエアコンの当たる涼しいところに陣取る。
なっきぃもちょっと遅れてそれに続いた。

撮影の順番のせいで出遅れた愛理とわたしがクーラーボックスの中身を覗き込むと残っているのは梨味とチョコ味。

「愛理、どっち食べる?」

「んー、チョコ!」

愛理がチョコを選んだためにわたしは梨味。

「うちらは休憩室で食べようよ、舞美ちゃん」

休憩室はスタジオとは別室で、誰もいなかった。
明かりをつけて、エアコンと備え付けの扇風機のスイッチを入れる。

「いきかえるー」

扇風機にあたり愛理は満足そうな顔をした。
そしてパッケージを開けてアイスを嬉しそうに頬張った。

「おいひぃ」

「ねー。こう暑いとおいしいよね」

写真撮影のときには17歳とは思えない大人っぽい色気を出すこともある愛理。
だけどこうやってご飯やデザート、アイスをおいしそうに食べるときは17歳と思えないほど子供っぽくもなる。
その絶妙なバランスがたまらない魅力なんだけど。

あれ。

「口元についてるよ」

「え?」

食べることに夢中で愛理は口元にアイスをこぼしてることに気がついていなかった。
チョコ味だったので茶色くなっていた。
やっぱりまだまだ子供っぽいかも、微笑ましい。

「待ってて、拭いあげるね」

いまは2人っきりだからこれくらいしても大丈夫だよね。
3人に冷やかされることもないし。

机の上にあるティッシュで拭いてあげようとしたら、愛理は首を横に振った。

「舞美ちゃんが綺麗にしてよ」

「だからティッシュで――」

「違うよ」

愛理の指がわたしの顔に伸びてきた、と思ったら唇に触れた。

「これで綺麗にして」

その笑顔はとても艶っぽいものだった。
頭に血が上ってクラクラする。

愛理とは付き合っているわけじゃないけれど、ふとした瞬間にキスをする仲。
いまだに慣れない。

「……いくよ」

愛理は目を閉じ、わたしは口元のチョコを舌で舐め取る。
甘いはずなのに緊張のあまりで味がしなかった。

「……終わったよ」

「ありがと♪ あれ、舞美ちゃんも」

「あっ」

愛理がわたしのふとももを指さした。
チョコを綺麗にすることに夢中で、わたしのアイスがとけて太ももにビッチョリと垂れていた。

「やばっ、拭かないと――」

「ねぇ舞美ちゃん」

「ん?」

「あのさ、私が綺麗にしてあげようか?」

その表情はやっぱり17歳のものとは思えなかった。


(おわり)
最終更新:2011年08月18日 04:23