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「愛理、16歳おめでとう」
ベッドのなか、わたしの頭を優しく撫でながら、舞美ちゃんが言った。
そう、今日はわたしの生まれた日。
一年に一度の特別な日なんだ。
特別な日を特別な人と過ごしたいと思うのは、当然のことでしょ?
今日は、毎年恒例の家族パーティーを延期してもらって、舞美ちゃんとお泊りしている。
お父さんには悪いことしちゃったなぁ……と思うけど、今日ぐらいは許してほしい。
どうしても16歳の瞬間を舞美ちゃんと迎えたかったんだ。


「舞美ちゃんも18歳だし、わたしたち結婚できるね」
「あ、そっか。愛理もそんな歳になっちゃったのかぁ。あーんなに小さかったのにねぇ……」
舞美ちゃんは懐かしそうに目を細めて、うんうん頷きだした。
その顔はほんとに優しいもので、心がとっても温かくなる。
そんな舞美ちゃんは、わたしの冗談にも全く気が付いていないみたい。
嬉しそうにしている舞美ちゃんを見ていると、わたしももっと嬉しくなってしまう。
どうしよう。さっきから、顔のニヤニヤがとまらない。
あぁ……16歳初ニヤニヤは舞美ちゃんだな、なんて馬鹿なことを思ったりして。
なんだか舞美ちゃんがすごーく愛おしくなってしまって。
わたしは何も言わずに、舞美ちゃんの胸に飛び込んだ。
どんなに抱きしめても、どんなに抱きしめられても、もっと近づきたいという欲求は止まるところを知らなくて。
いっそ溶け合ってしまいたい、とまで思う。
もっと深くまでつながりたい。
いつまでも離れなくてすむように――

「あ!」
わたしの思考を遮るように、大きな声をだした舞美ちゃん。
せっかく高まってきていたのに、なんだか邪魔されてしまった気分だな。
少しぶすっとしたわたしに気付かず、舞美ちゃんは続ける。
「プレゼント、家に忘れて来ちゃった……」
こんなセリフを聞いたら、普通はもっとガッカリしてしまうだろう。
だけど、わたしの顔はどんどん緩んでいってしまうんだ。
なんてったって、あの舞美ちゃんなんだもん。
こうゆうところが、可愛くって仕方ない。
まったく、こんな日まで舞美ちゃんらしいなんて。
そんな舞美ちゃんが好きだから良いんだけどね。
いつもだったらそう言って笑いかけてあげるけど、今日のわたしはちょっと違う。
昨日よりも大人なんだから。
だから、悪知恵だって働いちゃうんだ。


「仕方ないから、今日は舞美ちゃんで我慢してあげるね」
最終更新:2010年05月10日 21:12