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ひっそりとお互いしか見えないような恋だった。
人が羨むような、そんな風にはきっと見えなかっただろう。
だけど、そんな事は大切じゃなくて、私たちがこうして一緒にいられる事だけが大切だった。

息を潜めて悪戯に交わしたキスも。
寂しくて電話の向こうでお互いに泣いた夜も。
抱きしめた時のにおいと体温も。

私に笑いかけてくれる、あの愛おしい笑顔も。

目を伏せれば、いつだって愛理の笑顔が見えた・・・。

髪を切った。
思い切り、ばっさりと。
切ってしまえばなんて事なかった。

「みんな、おはよぉー。」

楽屋のドアを開けたら、もうメンバー全員揃っていて、みんなが驚きの声をあげた。
私は照れ笑いを浮かべて、椅子に座った。
メンバーの中のひとり・・・愛理の顔だけ、見れなかった。

マネージャーに私と愛理だけ呼ばれて先に向かう。
前だったら、手をつないでお互いに笑顔で幸せで。
だけど、今は違う。
重い空気。意識的に離れた距離。
悲しく思ってはいけない、そう思うほど悲しく思う。
だけど、お互いの為に・・・そう決めたはずなのに。

「舞美ちゃん・・・髪・・・。」
「え?」

話しかけられると思ってなくて、一瞬動きが止まった。
意識的に離れた距離が縮まった。
愛理が私の髪を撫でた。

「髪・・・切っちゃったんだね。」

触れられたところがひどく熱くて、私は愛理の顔が見れなかった。
だけど、愛理は私の前に立って、顔を覗き込もうとする。

「ヤだっ。」
「舞美ちゃん・・・。」

泣いてるところなんて見られたくない。
髪を切った事にも触れて欲しくなんかない。
優しくなんかして欲しくない・・・。

愛理が困った顔して、私の髪を撫でる手を下ろした。
そして、なんでもないように先を歩く。
その背中に今もすがりついてしまいたいなんて。

…どうやって嫌いになればいいの?
最終更新:2010年03月12日 21:53