仕返し
御剣が食堂に入ると席には誰も着いてなかった。
主は昨日から戻っていないようだし、冥はまだ起きていないらしい。
御剣はほっと息をつく。
昨夜のことを考えると、そのどちらとも顔を合わせる気にはなれなかった。
「おはようレイジ」
「ぬおおお!」
「……なによ」
ふり返ると、冥が眉をひそめて立っていた。
「い、いや、急に声をかけられたもので、驚いたのだ」
「そんなところにぼーっと突っ立っているのが悪いんでしょう」
「あ、ああ、すまない」
あわてて進路をよけ、席に着く。
しかし冥はそこから動かず、腰に手をあてて不機嫌そうにしている。
「どうしたのだ?」
「……きちんとあいさつをしろと言ったのはあなたでなくて、御剣怜侍」
「そ、そうだな。おはよう、メイ」
冥は満足したようにうなずくと自分の席に着き朝食を待つ。注がれた紅茶の香りを楽しみ、カップに口をつけた。
彼女はいつもとまったく変わらないように見えた。きのうのことなど何もなかったようで、そう振舞っているのか大して気にしていないのかは分からなかったが、御剣は自分だけ意識しているのが恥ずかしく思えた。
朝食が運ばれ、食事が始まる。
ひとりで食べることの多くなった御剣は、久しぶりに誰かと食卓を囲むことの暖かさを感じた。
「先生は帰っていないのか」
「仕事に対しての姿勢は尊敬するけど、パパももう少し自分のカラダをいたわってほしいものだわ」
「せっかくメイが来ているというのに、残念だったな」
「別にかまってほしいなんて思ってないわよ、コドモじゃあるまいし。コチラはコチラで好きにやらせてもらうわ」
父親のことを全身で好きだと主張しているくせに、こんな時にはけして寂しさを見せない子だった。それがかえっていじらしさを感じさせる。
「先生の代わりにはならないが、私でよければ買物でも遊園地にでも付き合うぞ」
「……そうね、でも今日はいいわ。とても歩き回れそうにないから」
「どうした、体調でも悪いのか?」
「歩くと痛いのよ、股が」
その原因に思い至り、御剣は顔を赤くする。
「そ、そうか」
「残念だけど、今日は家でおとなしくしておくわ」
やれやれとパンを口に放り込んだ。
向かいに座る冥はどうやらあまり気にしていないらしい。昨夜の話題を口にするのも、まるで道で転んだみたいな口振りだった。
朝食後、御剣は何をするわけでもなく自室にいた。
いや、勉強をしようとはしていたが昨日とは違う理由で手につかなかった。なにしろゆうべの情事が行われたベッドがそこにある。
冥の乱れた姿を、そこに触れた感覚を思い浮かべただけで、下半身に血が集まるのを止められなかった。
「しかし、メイはどういうつもりなのだろうな」
御剣はひとりごちる。
本人も言っていたように処女を捨てるのが目的で、そのために御剣が選ばれたにすぎないようだった。
しかし「頼めるのはレイジだけ」「何をされてもいい」と言うセリフからは、少なくともそのような相手は彼だけだと推測される。そして御剣にとっても、その相手となるのは冥だけだ。
家族としての感情しか持っていないはずだった。しかし、コドモ扱いされるのが嫌いな可愛い妹は、充分に女の身体になっていた。なめらかで白い肌、ツンととがった乳房、締まった腰、柔らかな感触……御剣の心の中は冥でいっぱいになっていた。
机の下のあふれ出そうな半身を収めようかと、ズボンに手をかけた時、部屋の扉がノックされた。
「!」
「ちょっといい?」
あわてて身体を机に引き寄せると、ゆうべと同じセリフで冥が顔をのぞかせた。
どぎまぎする御剣に寄ってきて、判例のファイルを机の上に開く。
「これについてレイジの意見がききたいの」
彼女はけして御剣に教えを請うようなことはしなかった。ただ「あなたの意見はどうかしら」と自分の考えと照合するようにして答えを誘導するのだった。
御剣も心得たもので、素知らぬ振りで答える。
「そうね、私も同じ考えだわ」
満足したようにうなずいた。
父親には素直に質問するくせに、御剣とは同等、もしくは上であろうとするゆえにプライドが許さないのだろう。
「それと、コレだけど……」
「む」
机にかがんた時に、ふわりとシャンプーの香りがした。
今まで意識などしたことがなかった冥の香り、むき出しの肩と脇からのぞく肌……御剣の鼓動は早まる一方だ。
「……どうかしたの?」
「ぬおっ」
顔をのぞき込まれ身体をのけぞらせる。そのはずみでカップを倒してしまった。
「ああもう、なにをやってるのよ!」
冥はハンカチで机を拭く。幸い中身はそれほど残っていなかった。
御剣にかかった紅茶を拭こうと、脚に手を伸ばす。
「ぬおっ! ……い、いや、自分でやる!」
「いいわ、ついでよ」
机の下にすべり込ませた手が、異質なものをとらえた。
「?」
それが何であるかと手探りで形をなぞる。
「うっ」
「なにを隠しているの?」
「か、隠してなど……うう……ッ」
それは冥の手の中でふくらんでいった。
「いいから見せなさい!」
「うおっ」
肩を押すとイスはくるりと回転し、身体は冥へとまっすぐ向く。
真っ赤になってソコを隠すが、もう遅い。
「ふうん、そういうことね……」
面白そうに冥は見おろすと、舌なめずりをして笑った。
「そういえば、きのうのお返しをしなくちゃね」
「む……」
冥の言う「お返し」とは、ゆうべ御剣が彼女の秘所をたっぷりと舌で味わったことの報復として、同じことをしようと言うのだ。その想像をしただけで手で隠した部分は反応するが、唇を噛みしめて耐える。
「メイ……その、こういったことは、ユルされないと思うのだ」
彼女は片眉を上げた。
「淫行条例のことを言っているのかしら。そうね、レイジが法廷に上がるというなら有罪にしてあげるわ。けれど狩魔家から犯罪者を出すつもりはないわよ。
いい?18歳未満の人間を淫行条例で片端から裁いていたら犯罪者だらけよ。私たちの仕事は被告人を有罪にすること。法廷に上がらない人間にいちいちかまっていられないわ」
ちょうどきのう、師が言っていたようなことを口にする。
しかし冥はすっかり検事になったような口ぶりだ。
「たしかに条例のこともあるが、その、道徳的にもマズいのではないだろうか。7つも年下を相手に……」
「コドモではないと言ったでしょう!」
「ぬお!」
ムチが飛ぶ。
「きのう『なんでも協力する』と言ったのはウソなの? この国ではブシに二言はないと言うのでしょう」
「なんでもと言っても、出来ることと出来ないことが……」
「きのう出来たのに、今日出来ないとは言わせないわよ。それに私はもうカンペキな大人よ。そうしてくれたのはあなたでなくて、御剣怜侍」
それを言われると弱い。
「それにレイジの意思など聞いてないわ。コチラが勝手に仕返しするのだから」
冥はヒザをつくと、御剣の手をつかむ。
「い、いけないと言ってるだろう」
「こんなに大きくしておいて、説得力がないわね」
力では負けるわけがないのに、抵抗しているつもりの手は冥によってどけられる。
「んしょ……ちょっと、じっとしてなさい……」
すっかり張りつめたズボンは、ジッパーを下ろすだけでも一苦労だった。
「いたたっ……その、もう少し優しくしてもらえないだろうか」
「うるさいわね。指図しないでよ。ん……と………きゃあ!」
やっと下ろしたかと思った途端、中のモノが張り出してくる。
「じっとしてと言ったでしょう!」
「む、そう言われてもどうにもならないのだが」
「まったく、自分のモノぐらいきちんと管理できないの!?」
じっとしたくとも、この後の想像だけで半身は喜びに震える。
「……んっと……もう、脚を開いて!」
形だけの抵抗もあきらめ、御剣は言われるままにする。
やっとのことで冥はパンツからソレを引きずり出した。
ビクビクと脈打つ御剣の半身を、彼女は珍しい生き物でも見るようにしている。きのうはその姿を目におさめることなく行為に至ったため、臨戦体勢のソレを見るのは初めてのことだった。
「……コレが本当に入ったの?」
「む」
「こんな大きなものが中で動くんだから痛いはずよね。本当に気持ち良くなんてなるのかしら」
冷静に観察・分析されて、いたたまれないというのに半身は逆に喜ぶようにその身を震わせていた。
ごくり、と生ツバを飲み込み、冥は顔を近づける。
「……………」
間近で見るグロテスクな姿とその匂いに、躊躇しているようだった。
「メイ、ムリにすることはないのだぞ」
「な、なによ。これくらいできるわよ! なめるだけでしょ!!」
それは向こう気の強い冥にとっては逆効果だった。
べろん、と一気に舐め上げる。
「うっ」
声が上げると冥の顔がゆるみ、これは仕返しだったのだと思い出す。
今度は手を添えゆっくりと舌を滑らす。
「くっ……ぬ、……め、メイ……そんなコトをしては、いけな……ッ」
始めは怖々とだったが御剣が面白いように反応するため、繰り返し舌を動かす。
「くっ………ううっ……ぬ……ぬおお」
「ふふっ、いい気味だわ……もっと声を上げなさい!」
「……くっ…」
半身がびくり、と震える。
「うあっ……」
「きゃあ!」
先端から白いものが噴き出し、冥の頭から降り注いだ。
冥の顔を、黒い服を、白が汚していく。
舌についたものを吐き出し、顔をぬぐうと冥は不満そうに言う。
「なあに、もう終わりなの?」
御剣は顔を赤くした。
この状況に興奮していたとはいえ、これでは早すぎる。
「これじゃ、ちっとも仕返しにならないじゃない。つまらないわ」
それは御剣も同じだ。
「―――いや、まだだ」
彼の言うとおり、半身はまだ上を指していた。
「これが勃っているうちは終わりではない」
「そう、なの?」
冥の視線が下がり、いたずらっぽい笑みを浮かべて再び顔を近づける。
そのしぐさだけで半身はぞくり、と反応した。
精液まみれの半身に冥はほんの少し躊躇したが、ソレを握り再び舌を滑らす。
「う……ッ」
優越感の方が勝ったらしい。
面白そうに繰り返し舌を動かす。
「……くっ……その、メイ………舐めるだけではなく……くわえたりしてもくれないだろうか」
「指図しないで! 仕返ししているのは私よ!」
「しかし、このままでは……ワンパターンで、慣れてきてしまいそうなのだが。……それではメイの言う『仕返し』にはならないと……くっ……思うのだが」
冥は口を離し、眉をゆがめてソレを見つめる。
御剣の言う通りにするのはシャクだったが、それよりももっと優位を感じたくて大きく口を開ける。
「ぬうッ……」
先端が粘膜につつまれ、それだけで声が出る。
なにより彼女の顔がそこにあり、自分のモノをくわえているという卑猥な光景が御剣自身を大きくする。
「そのまま……上下にしゃぶってもらえないだろうか」
冥は眉を寄せてニラんだが、程なくしてゆっくり頭を動かし始める。
「くはっ……はあ……ッ……ぬ……」
御剣が声を上げるたびに、冥の身体の奥から熱くなっていく。
(なんなの……コレは……)
始めは優越感が立って、御剣をオモチャのようにして遊んでいるつもりだった。しかし攻めているのは自分なのに、身体の中が疼いている。
「うっ……で、出る……」
口の中に熱いものがあふれる。
口を離し、先端から白いものがどくどくとあふれているのを冥はほっとしてながめていた。
ゆうべのように自分の意志ではない何かに突き動かされ、このままではどうにかなってしまいそうだった。
ひといき精液が出終わると、御剣の半身はそのなりをひそめる。どうやらこれで終わりのようだ。
「きゃあ!」
彼は冥を抱き上げ、ベッドへと移動する。
「ちょ、ちょっと、もう終わりでしょう!」
「今度は私がキミにお返しをしなくてはな」
「私が仕返ししたのよ! 仕返しの仕返しじゃ、キリがないじゃない!」
ばたばたを腕の中でもがくが、かまわずベッドへ横たえる。
「いや仕返しではなくお礼だ。キミも気持ち良くなりたいのだろう?」
「それはそうだけど……」
ボタンを外すとふくらみに舌を這わせ、すでに勃っている乳首を口に含んだ。
「ああっ……ん……ッ」
「どうだ、気持ち良いだろうか?」
「……ん……気持ち良くなんか……はあっ……ッ」
「では、コレはどうだろう」
「んん……やっ……ダメ………ああああッ!」
軽く歯を立てると、ビクンッと身体を反らせる。
「ではココはどうだ」
「はあッ!……ぜ、全然、気持ち良くなんか……んんッ……」
すでに全身が敏感になっていて、どこを探っても冥は反応した。しかし気持ち良くなりたいという言葉のわりに、それをけして認めようとはしない。
「ふう、困ったな。私ではキミを満足させられないようだ」
「そ、そうよ、レイジなんか……あああッッ」
認めないのをいいことに御剣は、肩から胸から反応を確かめるように隅々を味わう。先程二度出したというのに、半身はまた元気を取り戻しつつあった。
冥のズボンを下げると、ショーツはぴったりと貼りつきスリットを浮かび上がらせている。
「まだ、気持ち良くないのだったな」
「そ、そうよ」
「ではお礼はこれからだ」
ショーツを剥がすようにして脱がせる。
つぼみは露をたたえて御剣を待ち構えていた。
「ふむ、美しいな」
「み、見ないでよ!」
「しかし先程、キミもまじまじと私のモノを見ていたではないか」
「レイジはきのうも見たでしょう!」
「キミが感じるためには、じっくりと研究しなくてはいけないからな」
「エッチ! ヘンタイ!!」
今更この状況で言われる言葉ではないと思ったが、冥が暴れるので観察は諦めることにした。
くちゃり、と音をたてて指を割り入れる。
「……痛ッ」
ほんの入口をのぞいただけで、冥は悲鳴を上げた。
「そこは痛いって言ったでしょう!」
「すまない。そういえば歩くだけで痛かったのだったな」
「朝よりはマシになったけど、セックスはまだムリだわ」
「む、お礼が途中だというのに」
「いいわよ、お礼なんて」
「そうはいかない。私にはキミを気持ち良くさせる使命があるのだからな」
なにしろ、このままでは収まりがつかない状態になっている。
「きゃあ!」
冥の太腿を持ち上げて、半身を秘所に当てる。
「やめて! ムリだと言ってるでしょう!」
「大丈夫だ。痛くはしない」
スリットに合わせて先端から根元までを擦りつける。
前後に腰を動かし、入口を刺激しつづける。
「どうだ、痛くはないか?」
「え、ええ」
その言葉を裏付けるように、腰を動かすにつれて蜜が姫孔から溢れ出す。
体液がからみつき、半身を淫らに覆っていく。
「ん……はあ……」
「どうだ、気持ち良いだろうか」
「……セックスしているわけじゃないんだから……はあ……気持ち良くなるわけないでしょう」
「む、そうか?」
朱唇が御剣を挟み込み、腰を動かすたびに涎をたらした。
「はあっ……はあっ……」
硬いモノが入口に擦りつけられるたびに、脳の奥がびりびりと痺れる。
どうしたことだろうか。冥の知識では男女が繋がることで快楽を生み出すはずなのに、むしろそれ以外で彼女を昂ぶらせている。
御剣から見下ろされ、すべて見透かされているようでくやしいのに、支配される心地よさを感じ始めていた。
「い、いい?レイジ、……こ、こんなんじゃ、お礼だなんて、いっ……言えない……ッ……からね」
「む、承知している。……はあ……キミを満足させるために、……くッ……もっと努力しよう……」
ふたりとも、それが言葉だけだと知りながら快楽に身をゆだねた。
「く……うっ……」
再び白濁した液体が冥に降り注ぐ。
彼女はぼうっとした表情で、腹部に落ちた精液を指ですくってながめた。
「メイ、……その、どうだったろうか」
「そうね、悪くはなかったわ」
それは御剣を褒めることがない冥の言葉としては、充分な賞賛だと思えた。
「それでは、キミの痛みが引いたら改めて……挑みたいと思うのだが、いいだろうか」
「言ったはずよ、気持ち良くなるまで付き合ってもらうと」
「む、そうだったな。それではキミを悦ばせるために、もっと研究するとしよう」
「せいぜい、がんばって頂戴」
そこにまだ恋愛感情はないかもしれない。しかし、しばらくは冥は気持ちよさを認めはしないだろうし、それまでにもっと快楽を教え込み、御剣なしではいられないようにすればいい。
バカンスは始まったばかりだ。
最終更新:2010年11月14日 18:18