ポトッ、と御剣のポケットから何かが落ちる。
それは鮮やかなピンクの棒付きの飴、のようだった。
なにしろ御剣が慌ててポケットに仕舞い込んだので、冥の目にはその残像があるばかりだ。
「珍しいわね、レイジがそんなモノを持っているなんて」
「む……矢張にもらったのだ」
友人の名を出すと、彼女は眉を寄せて不快な反応をあらわにする。
「ナゼあの男からそんなものを? およそレイジには似合わないと言うか……食べるの、ソレ?」
御剣が飴を舐める姿を思い浮かべ、怪訝な顔をする。
「いやその……私は食べはしないが、トクベツなものだと言って寄越したのだ」
「トクベツ? とてもそうは見えなかったけど」
棒付きキャンディーに特別も何もあるのだろうか、と冥は怪しむ。
何故か御剣は焦りつつ弁明する。
「その、外国製で、味が付いてるということで」
「キャンディーに味が付いているのは当然じゃない」
「そ、そうだ、トクベツな味、らしいのだ」
「トクベツな味?」
冥はぴくりと反応する。
「ふうん…………レイジは食べないのよね」
「うム。食べるはずがなかろう」
「だったら私に頂戴」
「む、その、コレは……」
御剣はポケットを押さえて言いよどむ。
トクベツな飴を渡すのが惜しいのだろうか、と冥はさらに興味を示す。
「大の男がそんなモノを舐めるなんておかしいわよ。仕方がないから私がもらってあげるわ」
「む……キミが舐める、というのか?」
「レイジが食べないなら、私が食べるわよ。勿体ないじゃない」
「確かに、メイに食べてもらえるならやぶさかではないが……本当に、欲しいのか?」
「え、ええ……」
ずいっ、と身を乗り出してくる御剣に一歩退きながらうなずく。
「うむ、食べてくれると言うならやろう。そうだ、キミに食べて欲しいのだ」
御剣はさらに一歩近づいてくる。その妙な迫力に、冥は嫌な予感を覚えた。
「いえ、やっぱりいいわ。トクベツなものをもらったら悪いもの」
「遠慮するな。元々コレはメイに食べてもらうためにもらったようなモノだからな」
もう一歩下がったところでソファーに脚を取られて、ドサッと尻をつく。その上に御剣は覆い被さってきた。
「ちょ、ちょっとレイジ!」
「食べて、くれるのだろう?」
御剣はポケットからピンクの飴を取り出す。
いや違った。飴のように見えたそのビニールを破ると、ピンク色のグミのようなものが現れる。
冥がソレが何だったかと考えているうちに、御剣はズボンのファスナーを下ろし自らの棒にソレを被せていく。
「な………!」
その正体に気づき目を丸くする冥に棒付きのキャンディー……いや、キャンディー付きの棒を突きつけて、御剣は笑う。
「さあ、じっくりと味わってくれたまえ」
最終更新:2013年11月03日 20:02