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※幼児退行ネタ

――私は、おごっていたのかもしれない。
狩魔冥は、最近、そんなことを思うようになった。
自分は御剣怜侍のことを、全て知っていると思っていた。
同じ狩魔の“弟”弟子だし、彼に負けまいと歩んできた。
しかし、と冥は思う。
冥が知っているのは、所詮、あくまでも、そこまでだ。
DL6号事件以前の、弁護士を目指していた御剣を、冥は知らない。
そして、彼の母親の事も。

――一体、どんな母子だったのだろう。

「おいしい? レイジ……」
「んっ、む……むぅ……」

自室で、自分の胸にむしゃぶりついている成人男性……御剣怜侍を見ながら、冥は尋ねた。
尤も、尋ねたところで返事が返ってこないのは分かっている。
ここにいるのは、自分の知る御剣怜侍ではないからだ。
いや、“知らなかった”というべきか。

ある日突然自室を尋ねてきた御剣は、酷く疲れて見えた。
温かい紅茶でも、と思った瞬間、抱きしめられていた。
身体を重ねる事はあったが、まるで救いを求めるように抱擁されるのは、初めてだった。
それから御剣は冥の前を肌蹴させると、ちゅうちゅうと乳首を吸った。
快感やセックスの為ではない。冥は、何故かそう悟った。
ただそうする事が、今の御剣を支えられる、唯一の事だと思った。

そうして御剣は満足するまで乳房を吸い、眠り、起きた時にはその事すら忘れていた。
ただいつもの情事の後のように、冥の服を整えると、すまない、と、一言だけ呟いて、去った。

きっと彼の世界には、“おかあさん”が必要なのだろう。
ただそれを彼自身は自覚していない。
だから私は、彼が無意識に望む限り、彼の“おかあさん”になろう。
何度も父を奪われたのだ。せめて母だけは、奪われないように。

「レイジ」
「んー?」
乳房をぶうっと吹いて鳴らしていた御剣が、顔を上げた。
あどけない表情。幼い顔。眉間の皺は、ない。

「だいすきよ、レイジ」
「……ん!」

この世のありとあらゆる災厄から、彼を守ろう。
そう誓った。
最終更新:2010年02月01日 23:49