「や、あ・・・!」
ふいに冥が静止するような声をあげた。
「そ、そこには痕をつけないで」
「うム?」
ひとしきりの行為を終えて暫らく。
冥の白く柔らかな腹に顔をうずめて愛撫をしていた御剣が目を上げる。すると、少し困った顔の冥と目が合った。
「どうせ隠れるではないか」
キスマークを残すなという意味はすぐに分かったが、いつもならば問題のないものを咎められたのは少々不可解だった。
「明日は――違うの」
「?」
「明日は真宵と出掛けると言ったでしょ。丈の短いトップスを着ていきたいのよ」
「・・・・・・・」
「だから、今日はマークをつけないで」
「・・・・・・・」
「レイジ?」
無言で聞いていた御剣が、ようやく口を開いた。
「丈の短い、というのは」
「なによ」
「どの程度なのだろうか?」
「どのって・・・こ、この辺りよ」
肋骨の中ほどあたりを手で示すと、御剣は緩んでいた眉間に溝を刻んだ。
「短いな・・・」
「別に普通よ・・・って、ちょ、や・・・だ、だから背中もやめて!」
御剣の顰め面が再び冥の肌に近づき、言われた腹ではなくその裏側の滑らかな背や腰に唇を落とした。
「そのような丈では、君の肌がほとんど出てしまうではないか」
「だから何よ」
しっとりと汗の乾ききらない肌を撫ぜ、御剣はムっとした顔のまま意義を唱え続ける。
「他の男にキミの肌が必要以上に晒されるのは好ましくない」
「・・・気のし過ぎよ。貴方が思ってるほど、ヒトはそんな風に見てないわ」
「気にしなさ過ぎなのだ。キミが思っている以上に、オトコはそういう目で見ているものだ」
殊にここは奔放なアメリカとは違う、と指を突き付ける御剣に、応える冥の声が呆れる。
「・・・・・・貴方って・・・・」
「申し訳ないが、私はキミが考えている以上に貪欲で執着も強いのだ」
「・・・・こんなにヤキモチ焼きとも思わなかったわ」
「ふむ、異論はない」
小さな音を立てながら背を啄み、次第に腹の側へと回ってゆく。
「やっ、だ、だから・・・!」
「ダメだ。そんな服を着ていくことは許容できない。だからこうしてしまえば、着られまい?」
ちゅ、ちゅ、と手当たり次第に柔らかな肌を啄んで吸い付き、赤い痕を散らしてゆく。
「や、だ!んっ、くすぐっ・・・あっ、やっ、ダメぇ!」
「・・・・・」
腹と背に繰り返し愛撫を与えているうち、冥の甘ったるい声につい高まって、御剣は愛撫の唇を次第に上へと寄せてゆく。
「?!ちょ・・・っとレイジ!お、終わったばかりでしょう!」
「仕方なかろう・・・。キミの声が魅力的すぎるのだ」
「あ、貴方は明日仕事なのでしょう!」
「君は休みだろう?私の方はこの程度問題ない」
「バ・・・」
「バカ、は後で聞く」
結局その後2度啼かされた冥がバカ、と連呼して御剣の腹と背に無数の赤い手形の痕を残したのと、
予定した服を変更して少し疲れた顔の冥が、真宵に珍しい愚痴をこぼしたのはまた別の話。
<終了>
最終更新:2012年07月22日 13:28