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筒井筒

※エロシーンほとんどなし
※冥タンのお誕生日話


 がちゃり、と短い金属音がした。
 目の前のドアが開かれる。
 輝く綺麗な髪が覗いた時、全員で声を揃えた。 

「おめでとう!!」

 渡された花束を両手で抱え、冥は戸惑ったように返す。
「あ、ありがとう」

 先日20歳を迎えた冥の誕生会をやろうと言い出したのは真宵くんだ。
 会場は成歩堂の事務所に設定し、気の置けないメンバーを召集。
 冥だけに一時間遅い集合時間を教え、その間に殺風景な事務所を皆で飾り立て、真打のご登場を待っていた。

 本日のヒロインは、その役割に相応しい格好をしていた。
 薄い水色のフリルがあしらわれたワンピースに、華奢な靴。
「おい。狩魔検事が珍しくあんな格好してきてくれたんだから何か言ってやったら?」
 思わず見蕩れていると、青いスーツに肘をつつかれた。
「彼女なんだろ。一応」
 成歩堂がニヤっと笑う。
「一応では無く、きちんとした交際だ」
「だったらなおさら、ちゃんと褒めろよ」
 そんなことは言われなくてもわかっている。
「メ……」

「メイちゃん、ちょおおおぉーーーーーカワイイ!!」

 言おうと思っていたセリフを、黄色い男にかっ攫われた。
 ……おのれ矢張。
「あー、ヤッパリさんKYだね」
「KYだな」
「KYッスね」
 真宵くんと成歩堂と糸鋸刑事がそろって溜息をつく。 

「何なのだ、その”けーわい”とは」
「キングオブ・ヤハリの略だよ」
「金が無くて・弱っちゃったの略じゃなかったっけ?」
「給料・よこせの略ッスよ」
 君たち・やめたまえ。
 ――褒めるタイミングを失ってしまった。

 思っていることを上手く口に出せないこの性格が忌々しい。
 ひとたび法廷に立てば、どんなに過酷な舌戦でも怯まず太刀打ち出来るのに。
 思えば告白した時も
「今後は恋人として、そのようなアレな、交際を……」
 としどろもどろになりながら言うことしかできなかった。
 付き合い始めてからも「腕を組んでほしい」と言えず、ぎこちない咳払いをして腕をずらして見せるのが精一杯だった。
 そして、喜んで華奢な腕を絡ませてくれた冥を脳裏に描くだけで、額から汗が出てきて冷静ではいられなってしまう。 
 成歩堂に促される前に、矢張に先を越される前に、誰よりも先に自分が褒めたかった。
 今日の君はかわいい。いや、いつもかわいい。世界で一番かわいい。
 ――超、かわいい。

「レイジ!」
 さんざん心を翻弄する、罪作りな恋人がやってきた。
「ねぇ、あなたからはもらえないのかしら。プレゼント」
「贈り物は自分から催促するものではない」
「いいじゃないの一年に一回くらい」
 ポケットに入れてあった小さな箱を渡す。
「ネックレス?」
「この間欲しがっていただろう」
「ありがとう!」
 将来指輪を贈っても、君は同じ返事をくれるだろうか。

「日本では20歳で成人なのよ」
「そんなことは知っている」
 冥は周りで談笑している他の者たちをさっと見回し、耳元に唇を寄せた。

「私はいつまでコドモでいればいいのかしら?」

 一番先に褒めたかった、などと。
 そんなスケールの小さいことはもうどうでも良くなった。


 パーティーから開放されたのは、日付が変わる頃だった。
 次の日は朝から仕事だったが、それは何の妨げにもならない。
 自分の腕の下で、最も大切な存在が名実共に大人になって行く様を、余すことなく脳髄に叩き込めたことを誇りに思う。

 夜通しの行為に疲れ果て、束の間の微睡みに落ちる。
 再び目を開けると、一晩で妖艶さを上乗せした彼女が、贈ったネックレスを身に着けて微笑んでいた。
「仕事場に着けていくのは派手かしら。どう?」
 こういう時には言ったほうがいいのだろうか。
 ――超、かわいい。 
 言えそうもない。

 自分の性格上、今の内から考え、鍛錬を積んでおかなければならないだろう。
 君に指輪を贈る時の台詞を。 



   ■end■
最終更新:2010年10月07日 19:28