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逆転検事2ED後の話です


再び検事の道を歩むことを決意した御剣怜侍は、執務室で後処理に追われていた。事件解決から2日が経っていた。ほとんど睡眠らしい睡眠もとっていなかったが、使命感は充実感を伴い、集中力を大いに盛り立てていた。

ドアがノックされ、入室を促すと、現れたのは狼士龍捜査官だった。

「邪魔するぜ、検事さん。」

狼もまた、事後処理の最中であったが、一度西鳳民国に帰国するとのことで、合間を縫って挨拶に訪れたと話した。

「…じゃ、またすぐ会うだろうけど、とりあえず。検事さんも無理すんなよ。」

「あぁ、ロウ捜査官も。わざわざすまなかった。」

出ていこうとした時に、思い出したかのように振り向いた狼が話始めた。

「そういや、アネさんはどこへ?」

アネさんとは、狩魔冥検事のことだ。御剣は、寝耳に水という顔をした。

「いや、、、そう言えば一昨日以来見ていないが、彼女は国際警察との調査中だから、、」

「そうか。いや、あのコロシヤと了賢が対峙した時にさ、横でアネさんが見たこともない顔をしてたんだよ。肩を抑えて、震えてるようだった。気になったんだけど、オレはすぐコロシヤを追いかけて出ちまって。戻ったらアネさんの姿はないし、処理に追われてたらつい忘れててな。」

御剣の心臓が冷たく震えた。
同時に顔から血の気が引き、絶句した。

(ーそうだった…!)

「会えたらよろしく伝えといてくれ、じゃあな。」

狼に返事することもなく、御剣は口を抑えて動揺するだけだった。
2年近くは経つが、冥はコロシヤの襲撃に遭い、肩を撃たれていた。目の前に自分を撃った犯人が現れて、どれだけの恐怖や怒りを感じただろうか。
そんな事に気づきもせず、自分の事でいっぱいだった。1人晴れやかな気持ちになっていた。

こうしていても仕方ない。御剣は、すぐに糸鋸刑事に連絡をし、冥の居所を突き止めるよう指示した。しかし、国際警察との調査の場には現れておらず、宿泊先も今朝、出払ったということだった。

「くそっ!!」

空港か、あるいは成歩堂たちを頼ったかもしれない、葉桜院という可能性もある。御剣は考えられる限りの場所を探したが、夕刻になっても一向に冥は見つからなかった。

出国した形跡もなく、途方に暮れようとしていた時に思い出した。

「まさか…?」

御剣は車を走らせた。まさかと思いつつ、確信もあった。道中、御剣はここ数日のこと、そして冥のことを想った。

(事件の資料を入手するため、狩魔検事は相当の無茶をしたっス!!)

そうだ。事件現場を再現できたのも、美雲くんしか犯人と接触していないというヒントを得たのも、冥のおかげだ。

(私を…また、私を置いていくというの!?)

冥の声がこだまする。どんな気持ちで、検事バッジを棄てた自分のために尽力したのだろうか。
どんな気持ちで、犯人を目の前に耐えたのだろうか。私の推理を、事件の解決を邪魔しないように、自分の恐怖を圧し殺していたのか。

冥が襲撃された時の事も思い出した。頭が真っ白になり、失うかもしれないという恐怖に絶望した。

ーそうだ、私はメイを妹のように思って…

そう考え至ると、胸がチクンと痛んだ。

ー妹?いや、何か違う。

目的地に着いた。郊外の、広い庭園のある洋館。そこは日本での狩魔邸であった。主はおらず、貸してもいないが、管理は行き届いており、美しい佇まいを保っていた。
御剣も、この邸宅で暮らしていた時期があった。バカンスなどで、冥が日本に滞在する時は、共に過ごした。

懐かしさを感じながら、玄関の重厚な扉を押すと簡単に開いた。やはり、と思った。冥はきっとここにいる。

長い廊下を走り、冥の部屋の前で止まり、ノックをしたが返事がない。開けると、確かにそこには冥のスーツケースがあった。しかし姿は見えない。

書斎か、主の部屋かと探し回るが見つからない。最悪のことは連想したくなかったが、キッチンやバスルームにもいなかった。
焦る気持ちのまま、自然と自分にあてがわれた部屋を開けた。

冥がいた。


そこは、御剣が使っていた当時のままで、冥はベッドに横たわっていた。かすかに寝息を立てて、眠っていたが、顔には涙の跡があった。

やっと安堵して、冥の横に腰を下ろしてため息をついた。

ーあぁ、無事だ。良かった。

その時、御剣を支配したのは安堵感だけでなく、感じたことのない愛しさだった。

幼い頃、眠れないのと言って部屋を訪れては、ベッドに寝かしてやったこと。その頃と同じあどけない顔、華奢な身体。こみあげる熱い想いに我慢できず、手を伸ばした。

そこで急に睡魔に襲われた。連日の睡眠不足にこの精神的疲労、そして安堵感。
御剣はそのままベッドに倒れ込み、寝入ってしまった。

*


冥が目を醒ますと、隣には仰向けで無防備に眠る弟弟子の姿があった。一瞬、驚いたものの、想定内のような感覚もあった。

探しに来てくれた嬉しさと、子供っぽいことをして迷惑をかけた自己嫌悪とで、胸がざわつく。

ーこんな風だからいつまでも子供扱いされるのね。

溜め息が自然と出て、御剣を見下ろすと涙が滲んだ。
いつまでも素直になれずにいたら、御剣の心を盗まれてしまった。大ドロボウに。
あの娘のためには検事バッジを棄てた。どれほどの想いで検事になったのか、その過程を見てきた冥には、信じられないどころの話ではなかった。

そして、自分の仇が現れたにも関わらず、御剣は忘れているかのようだった。それが一番つらかった。

「バカが、バカゆえに、バカな期待を…」

自分への発言だった。途中で涙が溢れて両手で顔を覆った。指の間から涙がこぼれ落ちる。
すると突然、御剣の両手が伸びて冥を抱き寄せた。冥は半ば叩きつけられるようなかたちで、御剣の胸に顔をうずめた。しかし御剣は動かず、声も発しない。


「…寝ぼけてっ…誰と勘違いして、いるのよっ…!」

自分の発言に傷つきながら、胸を押し返して起き上がろうとするが、また強い力で戻されてしまう。

ー無意識にこんなことしないで!これ以上惨めな思いは嫌!

涙をこらえて抵抗するが、力でかなうはずもない。
突然、頭の上から声がした。

「…勘違いではない。このはねっかえりが。やっとつかまえた。」

冥の顔が急速に紅くなり、身体まで熱を帯びたかのようだった。それを悟られまいと強気な発言をする。
「なっ、何よ!離しなさいよ!!」

「断る。また逃げられては困るからな。」

「別に逃げたわけじゃないわよ!それに探してくれなんて頼んでないわよ!離しなさい!」

「…君が探してくれと頼んだわけではないが、私は君が突然姿を消したら、探すようにできている。」

「はっ、何よそれ!保護者気分?私は姉弟子よ!」

「…うム。そういう感情かと思っていた。…違ったがな。」

御剣の声のトーンが変わり、冥はドキリとして思わず黙った。身体も金縛りにあったかのように動けない。広くて厚い胸板に顔を押し付けたまま、背中で組まれた腕の重みと、聴こえる二つの鼓動に、ひたすら緊張する。

「…先程、勘違いかと言っていたが、勘違いでも人違いでもない。私が今、抱き締めたいと思って離さないのは、狩魔冥、キミだ。」

冥に衝撃が走り、理解が追い付かない。

ーこの男、何を言っているの?

頭の回転が酷く遅い。声が出ない。
硬直していると、御剣が冥を抱き締めたまま上半身を起こし、対面するかたちになった。視線が重なったのは一瞬で、冥はまた御剣に抱き寄せられた。

「すまなかった。キミの仇が目の前にいたというのに、キミを気遣うことができず、しかも再び取り逃がした…っ」

悔しさが、心底滲んだ声だった。抱き締められている腕も強張っている。

「…キミの肩に、傷を負わせたヤツをっ…」
冥の右肩がうずく。冥も身体を強張らせた。涙をこらえているのだ。
何か言わねば、平気だと、心配なんて不要よ、とー。
しかし、言葉は出てこず、代わりに御剣が続ける。

「…メイ、すまなかった。我ながら不甲斐ないが、もう二度と、危険な目にも、不安な目にも遭わせたりしないと約束させてくれ。」

「メイ、キミへの感情は、愛しい気持ちだと気づいたのだ。」

「…な、んですって…?」

やっと声が出た。間抜けな声であったこと、頭が小刻みに震えていることを自覚した。御剣が冥の肩を掴んで押し離す。再び、視線が重なる。

「私も、よくわからないというか、このような気持ちに経験がないのだ。しかし、キミを想う気持ちは、家族的な、妹のような、そんなものではない。そう気づいた。心配でたまらなかった。見つけた時、どうしようもなく、抱き締めたいと思った。」

冥は混乱の裡にいた。ずっと追い掛けてきた存在が、自分を愛しいと、抱き締めたいと言っているのだ。それなのに、よくわからないとも言っている。生真面目で不器用で、何でこんな男…。

こらえていた涙がぽろぽろと静かに零れると、冥は自制がきかなくなった。

「…私は、レイジが好きよ…」

絞り出すような声が御剣の耳に届いた。

「メイ…!私もキミが好きだ…!」

結局「好き」という言葉すらこちらが教えなければ出てこないような、そんな男だ。それを頭の片隅で残念に思いながら、冥は手を伸ばして御剣の頬を指でなぞった。

「レイジ…本当にバカね…」

そう呟くと、冥はついばむような、軽いキスをした。御剣の唇に、一瞬、柔らかい甘い何かが触れたかと思うと、御剣の中で何かが弾ける音がした。

離れていったそれを、強引に引き戻すかのように御剣は冥の唇を奪った。

「…きゃっ!!」

冥はそのまま押し倒され、むさぼるようなキスの嵐を受ける。優しくも、スマートでもなく、本能がそうさせているかのような、激しく熱い衝撃に、すべてを委ねる他なかった。

「メイ…。」

御剣が一旦、身体を離した。互いの乱れた呼吸が静かな部屋に響いた。
冥は頬を紅く染め、潤んだ瞳で御剣を見つめる。そこには、冷静沈着な検事、狩魔冥は存在せず、ただ一人の少女しかいなかった。しかしそれこそ、御剣がよく知る冥そのものだった。

「このような気持ちが存在するのだな…」

日中、冥を妹のようだと思っていると考えた時に感じた違和感の正体が鮮明に暴かれ、今やそこには女性として愛しているという真実だけが残った。

「…私はとうの昔に知っていたわよ。」

微笑した冥の顔を両手で包み、今度は優しく深く時間をかけてくちづける。吐息が漏れて、声なき声のようだ。
そこで御剣はゆっくり身体を離した。

「さぁ、帰ろう、メイ。」

そう告げると、瞬時に冥の眉間に皺が寄り、驚きと哀しみの目を向けた。そして、冥は両手を伸ばし、御剣の首に絡めた。先程の吐息のような、くぐもった甘い声で囁くように言った。

「イヤよ、レイジ…。」

その熱のこもった視線に、冥の発言の真意を悟った。御剣こそ、ここで帰りたくはないが、傷つけてしまったこと、そして何より気持ちを確認しあって間もないことで、わずかに残った理性で紳士としてふるまったのだった。

「しかし…」

「…もう待つのはイヤ。さっき、もう不安にさせないと言ったじゃない。」

そう言うと、冥は絡めていた両手を降ろして、自身の胸のリボンをほどいた。

「いいのか?」

「…異議なし、よ。」

その言葉を聞くやいなや、冥の手を退けるようにして、ブラウスの胸元に顔を寄せ囁いた。

「承知した。」

御剣はクラバットを外し、床に放ると、そのまま服を脱ぎ捨て、冥のブラウスに手をかけた。不器用ゆえに、小さなボタンを外す動作はもどかしく、しかしそれが冥には焦らされているような感覚を与えた。徐々に露になる白い肌、対照的な黒く大人っぽい下着に、言い様のない興奮を覚える。

完璧だった。普段は指先まで覆うような格好をしているが、その下には彫刻のように美しく白い肌が隠されていた。

思わず動きを止めて、見惚れていると、冥が恥ずかしそうに身体をよじった。その動きで下着のストラップが肩から落ち、また色っぽさが増す。ゆっくりと下着を外し、現れた白い胸に舌を這わす。

右肩に銃創を見つけた。冥ははっとして反射的に隠す。御剣は、悔恨の表情を浮かべたが、すぐに冥の手を取り払って、そこに口付ける。熱い吐息を吹き掛ける。それだけで冥は身震いする。

あまりに甘美。2人は熱を帯び出した。冥は戸惑いながらも、黙って身を委ねていた。御剣も慎重に優しく、愛撫を続けた。

お互いの恋愛事情など知らなかった。2人は常に多忙であったし、冥が御剣に恋人がいるのか気を揉むことはあっても、遠く海を隔てているため、知りようもなかった。一方、御剣は鈍感で、冥を子供だと思っていたため、そのような発想すらなかった。

冥は初めてであった。そうに違いないというか、経験があるなんていうことは更々考えもしなかった。大切に、大切にしなければと思った。その気持ちが緊張となって御剣の指先に伝わり、冥の身体にも伝わる。慎重すぎるとも言える不安げな動きに、冥は思いきって聞いてみた。

「ねぇ、レイジ…。あなたに愛された女性はいるのかしら…?」

御剣は冥の首筋から顔を離し、冥を見て言った。

「いない。先程言ったではないか、こんな気持ちもあるのだな、と。」

冥に幸福が広がった。御剣は、昔から女性からの好意が絶えなかったが、恋人という存在までなし得た女性はいなかったのだ。身体だけの関係など持つような男ではない。いや、それ以前に、色恋沙汰にかまけてる時間などなかっただろう。自分しか、御剣の情欲をかきたてた女はいないのだ。その優越感に、より一層酔いしれる。

「…その、不安かもしれないが、任せて欲しい。」

少し気まずそうに言う御剣に、冥はいたずらに笑う。緊張が温かい空気に変わった。

「安心したわ。」

そう言って腕を御剣の首に絡めた冥は、積極的だった。起き上がって自らキスをし、唇から離れたと思ったら、耳に、頬に、肩に、その甘い唇を押しあてた。御剣は驚いて、されるがままその快感を受け止める。胸板にキスをしながら、冥は御剣の手を取って、自らの腰に誘った。御剣の指に、冥がまとう最後の布地が触れた。座った姿勢だった冥は膝を付いて腰を上げ、惚けたような瞳で真っ直ぐ御剣を見つめた。上気した顔は初めて見る表情で、まだ少女のようで、でも確かに女の顔だった。

御剣はそのまま布地を引き下げ、再び冥を押し倒した。するすると、細い脚から布地が外れて床に落ちた。御剣は、露になったその場所にそっと指を這わせ、感触を得ると、冥に口付けを繰り返す。時に胸を弄り、鎖骨や首筋を攻め、美しいくびれをなぞる。

冥は我慢しているのだろうか、吐息を吐くばかりで声を出さない。

「メイ、声を我慢しなくていいぞ。」

「…やっ。だって…。」

その一言が上擦っていて、感じているのだと安心する。そして耳元で囁く。

「聴きたいのだよ。」

動きを強くすると、あっけなく声は漏れた。

「…あぁっ!…んっ…はぁっ…」

艶のある声が脳内を麻痺させる。御剣は指の動きを早め、少し強引に探る。冥の声に反響するかのように、くちゅりと水音がした。冥は痛みを感じたらしく、目をぎゅっと閉じたままだ。しかし裏腹に蜜は溢れた。

「…メイ、力を抜いて…。耐えきれなかったら、やめるから。」

そう言われて一瞬、身体の強張りを解いたその隙に、御剣は自身をあてがい、侵入を試みた。冥の顔が苦痛に歪み、御剣の背中に爪痕がついた。

「…レッイジッ…!いたいっ…!」

やめようかと思ったが、冥は耐える覚悟で、腕を離さなかった。慎重に押し進めるか、一気に貫くか迷っていると、冥が懇願してきた。

「…レイジ、ちょ、うだい…」
苦しそうにもそう願う冥は、まるで御剣がどこか遠くへ行ってしまうと思っているかのようだった。いじらしさに胸が痛む。

「どこへも行かない。」

そう言って、迷いはあったが、強めに押し進めた。侵入を拒むかのような窮屈さとは矛盾して、御剣はその締め付けに例えようのない快感を得ていた。
冥は、痛いという代わりに、必死で彼の名を呼んだ。

「レイジッ…、あぁぁぁ、レイジ!」

名を連呼され、いよいよ快楽の頂きに到達しようとしていた。もはや気遣えるほどの理性などなかった。

「メイ…、いくぞっ…!」

その刹那。冥の脳裏には初めて御剣と体面した幼い日の思い出が甦った。あの日から、この男の虜。ずっと欲しかった、ただひとつの、宝物。

冥は一筋、静かな涙を流した。

*


荒い呼吸が響いて、御剣の額から汗がすうっと落ちた。身体の熱はまだ冷めないが、徐々に思考を取り戻した。

「…メイ、大、丈夫、か?」

心配そうに尋ねるその声も絶え絶えだった。冥は我に返り、下腹部に鈍痛を覚えながら、大丈夫だと頷いた。それを確かめると、御剣はそのまま冥に倒れこんだ。まだ、肩で息をしている。しばし、静寂が2人を包む。

先に口を開いたのは冥だった。

「…シャワーを浴びなくちゃ…。」

「ム、しかし…。」

「水道も電気も、止めていないのよ…。使えるわ。」

冥は説明した。以前のように、自分が帰国したらいつでも過ごせるように。そして、もしかしたら、御剣がここを尋ねてーー何か必要な資料や文献を探しにーー来ることもあるかもしれない。そう思ったのだと。

「あなたには、忌々しい場所かもしれなくても…私にはあなたとの思い出もあるわ…。」

冥は目を合わせずにそう話し、その様子を見て御剣は諭すように言った。父親を葬り去った男の家ー。何も知らず過ごしていた日々。しかし御剣は顔色ひとつ変えずに言った。

「それは感謝する。私にとっても我が家同然だからな。」

そこには「忌々しい」ことなどないと、言い含められていた。御剣が続ける。

「ここが変わらず残っていたおかげでキミを見つけられたし、シャワーも浴びられる。」

冥が戸惑いながら目を合わせると、優しい瞳が迎えてくれた。冥も思い出した。眠れないのと甘えれば、あの瞳が「仕方ないな」と微笑んで、添い寝をしてくれたことを。それは、アメリカの家でも、そして、この部屋でも。

「今夜はここで一緒に休もう、メイ。」

「ええ。…久しぶりね。」

微笑んだ冥を抱き起こして、2人はもう一度キスをした。甘い甘い、幸せに満ちた口付けのさなか、一瞬、御剣は視界の端に冥の肩の銃創を捉えた。腕を掴んでいた手に力がこもる。

(許すものか、絶対にーー。)

そう固く誓い、犯人への報復の思いを強めた。しかし、その思いは御剣の胸のうちにそっとしまわれた。

今はただ、やっと安らぐ存在を手に入れた、愛を紡ぎ始めたふたりに、どうか温かい時間をーー。

(おわり)
最終更新:2013年12月09日 23:07