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年越しパーティー


今年は『トノサマンVSニンジャナンジャ!!室町とエドの歴史を守れ!大晦日3時間スペシャル!』が放映される。
前々から録画の用意は万全だったが、真宵君と美雲君の両方から「年越しパーティを兼ねた観賞会をしないか」と誘いがあった。
魂胆はわかっている。どちらも我が家の大画面テレビが目当てなのだ。
しかし二人が入ればリアルタイムで見られるし、同好の士と共に見るのもまた一興というものだ。
問題は冥だったが、思いの外あっさり許可が降りた。
他にも数名呼んでの年越しパーティと強調して提案したのがよかったのかも知れない。

当日。昼三時頃から総勢8名もの人が集まり、うちはいつになく賑やかになった。
初対面の者もいたが、すぐに打ち解けあった。
全員で買い出しにも行き、用意していたものや持ち込み物とはまた別に飲食物を買い込んだ。
冥は年越し蕎麦より味噌ラーメンが食べたいと主張する真宵君を止め、お姉さんと猫撫で声で呼ぶ美雲君の希望を却下し、遠慮する春美君に菓子を選ばせた。
とても楽しそうだった。同性の同年代と過ごす事など冥には滅多にない事だ。
糸鋸刑事も「狩魔検事がフツーの女の子に見えるッス!」と発言し、成歩堂もそれに同意したが、矢張は「フツーじゃねえよ!女の子は誰でも特別!シンデレラなんだぜ!」と某捜査官のように異議を申し立てていた。

六時から始まるメインイベントを前に食事を開始し、番組が始まるとテレビにかじりつく組とそれを眺めつつ会話や食事を楽しむ組に分かれた。
CM中には矢張の知り合いのスーツアクターが今回敵役で出演していると話し皆の興味を引いた。
ようやく今回の敵が姿を現したその時。

ぷつっ
「あー!!冥さん!チャンネル変えちゃダメですよ!」
「そうだよ狩魔検事!何するのさ!」



冥は無慈悲にチャンネルを支配し、国民的歌番組に変えてしまった。
「日本人なら年越しは紅白でしょ。アメリカにいた頃も毎年見てたんだから」
「そ、そんな~…」
何とかならないかと耳打ちされたが、冥の意思を曲げるのは容易ではないし、うちにテレビは1つしかない。
録画はしっかりされているので二人にもそれで我慢してもらうしかなかった。

「冥ちゃ~ん、俺も男が歌うのは見たくねぇよ。せめて時々お笑いに…」
「うるさい!大晦日はソバと紅白!これが完璧な日本人の年越しよ!」
矢張の無謀な主張も鞭で一蹴される。
「みつるぎ検事さん、かるま検事さんはそんなにお歌が好きなのですか?」
「いや…しかし冥は海外が長かった。その間も紅白は欠かさず見ていたから、これが正式な過ごし方だと考えているのだろう」
「御剣、じゃあ違うやり方もあるって狩魔検事が納得したら?」
「そんな事できる訳ないッス!」
「僕に任せて下さいよ。
異議あり!!」
成歩堂が法廷よろしく指をつきつけた。

「狩魔検事、あなたはさっき『紅白を見るのが日本人の過ごし方』と言いましたね」
冥も即座に臨戦モードに入る。だからなんだと言いたげな表情だ。
「しかし僕にはそうは思えない。何故なら最初から最後まで紅白を見続ける日本人は少数派だからです!」
「なんですって?」
固唾を飲んで成り行きを見守る。
「僕は子供の頃からチャンネルを色々変えて見ていました!
CM中や好きな歌手の時だけ紅白にしていた!」
「そんなのは貴様だけよ成歩堂龍一!」
「じゃあ他の証言を聞いてみますか?」
自信タップリに振り返る弁護士。
半ば傍聴人と化していた面々が我先にと発言しだした。
「そうだよ!私とはみちゃんも去年は時代劇とハシゴして見てたもん!」
「私も!お父さんが好きな歌手の時は変えられて悲しかった思い出だってありますよ!」


「俺なんて格闘技見てたからな!紅白はまだアイドルが出る時間もわかるけどリング横のお姉ちゃんはいつ映るかわかんねぇし他局も見たいし大変だったぜ!」
「自分もそうッスね、刑事ドラマと演歌で悩んだッス」
次々と上がる証言を冥は袖を掴んで聞いていた。
「御剣怜侍、あなたはどうなの?」
全員の視線が私に向けられた。
「そうだな…私は始終紅白を見ていた時もある」
冥が勝ち誇った笑みを見せた。
「しかしそれはアメリカで冥と年越しをしていた時に限る。
全くテレビを見ない年もあったが、確かに何か見ていた時はCM中に紅白に変える事もあった。
幼い頃はアニメの特番を優先的に見ていた事が多かったな」
冥はすっかり押し黙ってしまった。成歩堂が続ける。
「つまり、大抵の日本人は共に過ごす人の希望を聞き合い、折り合いをつけてテレビを見ているのです。
恐らく狩魔検事は家庭内のチャンネル権が非常に強かったり、紅白以上に興味を引かれる番組がなかった為に始終紅白を見ていて、それが習慣になったのでしょう」
「………つまり完璧な日本人の年越しをするなら、今回はトノサマンを見るって事になるのね」
「いやったー!!」
「ナンジャも忘れないで下さいよ!」
真宵君美雲君がリモコンをひったくってチャンネルを変えた。

「冥、よかったのか?」
「…だって、これが完璧な年越しなんでしょう」
「いや完璧も何も人それぞれ…」
「私の今までの過ごし方だって間違ってた訳じゃないわ。それはそれで完璧なのよ。
それに、あなたも見たいんでしょう?トノサマン。
ほら、敵が何か言ってるわよ」
「ム」
いい所でCMに入る。
途端にチャンネルは変わり軽薄そうな金髪の若者が歌う。
「何か変わった歌ですねー」
ハートを盗んだ罪で逮捕し、十八年の禁固刑に処するという歌詞だった。
「確かどっかで大魔術とかやってなかったっけ?」
「もーそんなの見てる暇ないよ!」
チャンネルを戻すと敵が仲間を呼んでいてアクションシーンが始まった。
最終更新:2010年02月01日 18:22