七夕子ミツメイ
去年の七夕は近所の商店街で短冊を書いた。成歩堂と矢張と一緒に。
成歩堂はなんと書いていただろう、「成績が上がりますように」だったろうか。矢張は「モテモテになりたい」だったと思う。僕は「父さんのような立派な弁護士になれますように」と書いた筈だ。
でも今年の願い事は「先生のような立派な検事になれますように」
…自分の変わり身の早さに苦い思いが蘇る。父さん……
「レイジ!ちゃんと書けた?なら早く肩車しなさい!」
感傷に耽るヒマもないのが却ってありがたかった。
メイは4つでもう自分の願い事を書ける。それも日本語で。英語を使ってアメリカで生活しているのに。やっぱりこの子は天才なんだ。
庭の大きなプールの横に立てられた笹に次々短冊を吊るす。
「…ふーん。いい心がけだけど、どうせなら完璧な検事って書けばいいのに」
勝手に僕の短冊を読んでいるのか。まあいいけど。
「メイはそう書いたのか」
「バカ言わないで。私が完璧な検事になるのはもう決定事項なのよ。わざわざ願い事に書く必要なんてないわ。代わりにホラ」
渡された短冊には…「9年以内に完璧な検事になる」とある。願い事というより決意表明みたいだ。
「どうして9年なんだ?」
「去年10年って書いたからに決まってるでしょ!」
そうか、決まってるのか。なら仕方ないな。
「後はレイジがして」
まだ完成には随分遠いのに飽きてしまったらしい、メイはパラソル下のデッキチェアに寝そべってオレンジジュースを混ぜたアイスティーを飲みだした。
金銀の折り紙でメイが作った飾りは大量で、全部笹に乗せ終わった時にはメイはもう寝息を立てていた。
こういう所はまだ4歳っぽいのにな。
さて、次はメイの短冊だな。これでもかなりの短冊が完璧な四角になってないとボツにされたのに(僕が短冊係だったのだ)
メイの願い事は大量で「早く背が伸びますように」から「犯罪者が全員有罪になりますように」まで様々だった。
「レイジの地震嫌いが治りますように」と「レイジのパパを殺した犯人が相応の報いを受けますように」はちょっと意外だったけど。心神喪失で罪に問えなかったからこういう書き方なんだろうな。
あれ、これは英語で書いてある。「Can meet much daddy」…いっぱいパパに会えますように。やっぱりまだ子供だな。きっと僕に読まれるのがイヤだったんだろうけど、流石にこれくらいの英語はわかる。
まだ英語のがあった。「marry Reiji if I become 20 years old」………二十歳になったら、レイジと結婚する。
なんでこっちは決意表明なんだよ。僕の意思はどうなるんだ。
「メイ起きるんだ。飾り付けが終わったぞ」
「んー…そう」
まだぼーっとしてるな。目を擦ってる。
「でも、どうして七夕なんてするんだ?こういう迷信っぽい事は嫌いかと思ってた」
「あら、迷信じゃないわよ。だって去年の願い事は叶ったもの」
「へぇ…どんな」
「「弟か妹が欲しい。無理なら犬か猫が飼いたい」って書いたら、レイジがうちに来たもの」
……それは、僕が来なくてもペットを飼えば叶った事になるんじゃ…
「だから願えばきっと叶うわよ」
自信満々のメイの顔を見ていたら、なんだかメイの願い事は全部叶う気がしてきた。
最終更新:2011年07月08日 18:25